人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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魔理沙「うぉ!?なんだ!?」

霊夢「あぁいたいた!魔理沙!説明してる暇は無いわ!厄介な妹の方が目を覚ました!」

魔理沙「フランか!?客人いるんだろ今!?」

霊夢「王様の預かり、被害は最小限にしたいわ!あんたは女性陣を見といて!」

魔理沙「お前は!?」

霊夢「時間稼ぎよ。寝惚けてるアイツに道理は通じないわ、もっかい寝てもらうしか無いわ!じゃあ頼んだわよ!男性陣は課題の為に借りてくから!」

魔理沙「お、おぉい!?霊夢ー!?」

霊夢(レミリア、あんたはなにやってるわけ・・・!?)


レミリア部屋

レミリア「(_ _)..zzZZ」




カップラーメン待機の暴虐

「行くよ。よーし、三分間遊ぼうね」

 

声音は淡白かつ、それでいて冷静。しかし、それでも濃密極まる無邪気な殺気を全員が受け止める。小さな身体と、爛々と輝く目線が白ゴボウ──カドックを見据える。・・・しかし。

 

「っ、あ・・・」

 

「どうした、カドック!」

 

「わ、解らない・・・身体が・・・!」

 

純然極まる殺意、そしてそれが向けられる本能的な恐怖。畏怖と言ってもいい生物的な感情に支配され、カドックの身体は完全に硬直する。それほど迄に、神秘側の存在たる吸血鬼の生物たる格が違うのだ。人間は、生物的に下位にいるゆえに。

 

「死ねぇ」

 

右手に握った、黒き先端に逆さのハートマークの付いた棒状の杖が振動し、熱し、猛烈極まる火炎の剣となる。辺りの空間が、一瞬で加熱される程の熱量。フランドールの得物、レーヴァテイン。それをなんら躊躇いなく人間たるグランドマスターズへと振るう。軌道上にいるもの全てを焼き尽くす、破滅と終末の剣。

 

「く、っ──うわっ!?」

 

動けずいるカドック。あわや直撃──その瞬間に、彼の身体は宙に浮く。猛烈な勢いで、後方へと投げ出されたのだ。

 

「バカ!何ぼさっとしてんのよ!」

「無事ですか、カドック様」

 

「す、すまない!・・・怨霊や、魔物とはまるで違う。これが、夜の支配者・・・吸血鬼・・・」

 

「カドック、見てみろ。これが吸血鬼のウォーミングアップらしい」

 

デイビッドの言葉に振り返るカドック。──想像を絶する破壊の跡は、爪痕を深く刻み込んでいた。

 

「こ、れは・・・!」

 

振るわれた軌道上に至るもの・・・部屋、通路、壁、天井──それだけでない。景色の空、地面に至るまで。それら全てが紅色の裂傷を刻まれて、破壊の限りを尽くされている。赤熱した地面、ひび割れた空。それらは全て、目の前の存在・・・フランドール・スカーレットに引き起こされたのだ。

 

「あぁもう、結界に傷入れてくれちゃって!咲夜!私あっちを直すからこいつら頼むわよ!」

 

「承知しました。皆様の回避を担当致します。三分間、生き延びましょう」

 

「仕方無い!礼装を使う!カドック、デイビッド!」

 

「ッ!麒麟!」

「アトラス院制服を使う」

 

キリシュタリアの号令に呼応し、戦闘防衛対応を取る三人。しかし、目の前の存在は、御約束すらも破壊し尽くす。

 

「なっ!?──ぐわぁあぁっ!?」

 

瞬時に突進したフランは、無造作にキリシュタリアの頭を掴み投げ飛ばした。引き裂かれた屋敷の壁から、猛烈な勢いで投げ出される。礼装起動の隙を、一瞬に衝かれ捩じ伏せられたのだ。そしてそのまま、フランはデイビッドを睨み見据える。

 

「ぐっ・・・!!こ、れは・・・!」

 

「デイビッド!?」

 

「筋繊維を、硬直させられたようだ・・・ッ・・・」

 

倒れ伏すデイビッド。フランドールの能力は、デイビッドの身体を死後硬直と同じ状況にしてしまい、彼を完全に無力化してしまったのだ。魔術を行使させる暇もなく・・・皮肉にも、その対応は無慈悲なまでに的確である。

 

「スペルカードルール以外で暴れてもいい?外の世界の住人は凄く寛容。すげェ」

 

「フラン様、彼等は・・・」

 

「そこの。手当てしないと・・・寝たきりになる」

 

咲夜に指差す。デイビッドの事を介抱させ、遊び相手を壊さないように処理させる。咲夜は、強制的に離脱を強いられる。

 

「っ・・・すみません、カドック様。ここは・・・」

 

「──キリシュタリアと、デイビッドを頼む!お望みなら、相手をする・・・!」

 

そして素早く、変化を行う。クラスカード、バーサーカー・アタランテをリードし、黒き衣を纏う。前傾姿勢になり、フランドールと向かい合う。

 

「変身ヒーロー。面白い。ヒーローショー・・・なら私は・・・」

 

フランはその様子を興味深げに見つめ、にまりと笑う。人間とはもろく、柔らかいものと認識していた吸血鬼の妹は・・・

 

「・・・!」

 

更なる悪夢を見せる。

 

「ヴィランやる」

 

パチリ、と指を鳴らす。瞬間──カドックの目の前に、信じ難い光景が現れる。

 

「・・・!!」

 

「本物は・・・」

 

「「「だーれだ」」」

 

フランドール、なんと四人へと増える。カドックをじろりと見据える、八つの瞳。

 

「「「「死ぬがよい」」」」

 

「どんなとんでもなんだ・・・ッ!?」

 

飛び退くカドックを、猛烈な勢いと速度で追いかけるフラン。彼女は能力の一環にて、四人にまで分身、増殖が可能である。空腹のためか、眠気の為か、本来の能力はほぼ出せない状態である。何故そう推測されるのか。それは容易い事。

 

(一先ず外に出ないと!紅魔館が保たない・・・!)

 

「ひざまずけ、いのちごいをしろ。あなたはフランドールの前にいるのだ」

 

カドックを遊び相手と定めたフランドールは、彼のみを追い立てる。ぼんやりと眠ぼけ眼で、辺り一帯を七色の光で破壊し尽くす。部屋が、屋敷のあらゆるものを消し飛ばしながら、カドックを追い立てる。

 

(範囲も規模も底無しか!それに速すぎる!全速力でも振り切れない──ッ!?)

 

「しかし まわりこまれて しまった」

 

その広範囲破壊担当のフランから、転げ回るようにエントランスへと駆け抜けていくカドック。しかし──そこには既に、フランドールが待っている異常事態。瞬間、カドックの周囲を取り囲むように虹色の光弾が、辺りの全てを削り取りながら円の形にて追い詰めていく。

 

「くっ──!」

 

「おーおー、心も身体もぴょんぴょんしておる」

 

素早く跳躍で離脱するカドックを、ぼんやりと見据えるフラン。彼女はその様子を見送るのみだ。何故なら──

 

「恋はいつでも、ハリケーン」

 

「なっ!?──うあぁあぁあぁっ!?」

 

カドックを巻き込むように、渦を巻く空間を作りかき回す。猛烈な勢いと、抵抗すら許されない力場に取り込まれ、カドックは五体を引き裂かれないように耐え抜くのが精一杯な状況に陥ってしまう。

 

「回れ回れ。回らないとダメなのは経済と同じ。いつもより多めに回して参ります」

 

「ぐぅあぁぁ・・・っ!」

 

その過程で、屋敷の調度品へと叩き込まれる。壁を砕き、天井を破壊し、部屋を蹴散らし、嵐に放られた船のように、カドックを弄ぶ。

 

「真っ先に周りを巻き込まないように、離脱しようとした。中々のヒーロー気質。人間にしては骨がある。やりますねぇ」

 

「く、っ・・・ぐ・・・あぁっ・・・!」

 

「だから、その気持ちに免じて・・・」

 

淡々と告げるフランは、鞭のようにカドックをしならせ──

 

「壊すのは、あなただけにしてあげる」

 

渾身の勢いで、カドックを最上階から叩き付ける。屋上から、地下室にまで到達する程の剛力と衝撃にて叩き付けられたカドックは──

 

「ぐ、ぅ・・・あ・・・っ」

 

クラスカードとの融合が解け、満身創痍の状態にて倒れ伏す。指の一本も動かせない程に、疲弊とダメージを蓄積させ・・・

 

「こ、れが・・・吸血鬼・・・」

 

生物としての格の違う、闇夜の支配者。幼児とは言え、決してその実力は──人間が敵うものではない。矮小な、人間では。

 

「・・・こんな・・・時・・・」

 

こんな時、彼女なら。皆ならどうしたのだろうか。薄れゆく意識の中・・・カドックは手を伸ばし・・・

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

「っ・・・」

 

四人のフランに、囲まれる──。




フラン「「「「・・・・・・」」」」


カドック「・・・悪いな・・・僕じゃ、遊び相手にもなれなかった」

フラン「・・・・・・」

「──と、思ったけど・・・まだ、意識はある。なら・・・」

「!」

「まだだ・・・まだ、生きている・・・生きているなら・・・遊べる筈だ・・・!」

フラン「・・・」

「──がっ!?」

なお立ち上がらんとするカドックに、フランは鉄槌を下す。それは──ヘッドバッド。

「これを見てみなよ」

「っ・・・砂時計・・・?」

「三分。あなたと既に遊ぶ時間は終わった」

一人に戻り、歩き出すフラン。

「不完全燃焼。だから──」

「「「「また遊ぼ」」」」

・・・見逃された。それを理解するカドック。しかし、それを無念に思う事も、安堵するも許されず・・・

「──ッ」

カドックは、静かに倒れ伏した──

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