人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マッサージルーム

リッカ「親の悩みかぁ…」

響「解るよ、悩むよね…私のお父さんもファミレス誘っといて持ち合わせが無いとか言うマダオだった時期があったもん…それに比べたら聖人君子だよマシュパパ…」

雪泉「私はおじいさまがいたのみでしたが、私の理想と道筋を示してくださった素晴らしき御方でした。今でも、立派な忍になるという目標は微塵も揺らぎません」

リッカ「…………」

響「そういえば、リッカちゃんの御両親ってどんな人?あんまり話さないよね、実の両親の事。あのすっごいおっぱいおっきいお母さんは確か育ての」

なのは「響ちゃん?」

響「ひぃ!?」

なのは「直らないね、そういうとこ。無自覚に人の気にする事踏み抜くの…」

「あわ、あわわわわわわ」

早苗「頭クーリッシュとなります!!」

「ごめんなさいーーー!?」

早苗「もう!プライベートな話題に口が軽すぎます!だからクリスちゃんや調ちゃんがマジギレしたのでしょうに!…大丈夫ですか、りっちゃん?」

リッカ「大丈夫大丈夫!…しっかり引き継がれてるんだ、それ」

雪泉「?」

リッカ「ううん、なんでもな…ん?」

『卓球しましょう! マシュ』

「…ちょっと行ってくるね!」

「「行ってらっしゃい!」」

(悩む暇なんてない。家庭環境にやや難有りだった私にしか、言えない言葉がきっとある!)


吼えろ、己が幸せを護る為に

「オラァ!!!」

 

「ああっ…!?」

 

マシュの誘いで行われし、ピンポン卓球。勝負は全力で受けて立つ流儀のリッカの鋭すぎる一撃が、マシュの周囲の空気を切り裂く勢いで吹き飛んでいく。

 

「どうしたのマシュ?こんなもの?リッカ式サーブは108式まであるよ…!」

 

「ま、まだまだ!とことん、とことん御願いします!」

 

「よく言ったマシュ。気持ち的にバックスタンドにまで吹き飛ばしてあげるよ…!」

 

女子の範疇、それどころか若干人類の範疇を飛び越え気味なリッカの殺人卓球に、ラケットを吹き飛ばされ時には反応すら出来ずにボコボコにされつつ、汗を流していくマシュとリッカ。

 

「こ、これが…!女子力の発露…!!」

 

「世界を股にかけ、時には助ける為に身についた女子のいじらしさ!受けてみるがいい!!ぬぅん!!」

 

着弾点が焦げ付く程の凄まじすぎる世紀末卓球にマシュは全身全霊で立ち向かい、やがて終わった後にリッカとマシュは女湯へと向かうのであった。マシュの様子的に、何かを話したいことは明白である。自分の戦いは、ここからが本番である。

 

「倒すべき相手はいなくとも、助けるべき相手はいつだってそこにいる…さぁ、なすびの発育を見守ってあげるからね…!」

 

一足先に着替え、待ち構えるリッカ。その姿はまさに、威風堂々たる仁王を彷彿とさせる泰然ぶりであった──。

 

 

「私は、お父さんに育ててもらった恩があります。だから、お父さんが持ってきてくださった縁談を受けようと決心していました」

 

バスタオルでなすびボディを隠しながら湯船に入るマシュ、腕組みするリッカの隣にて悩みを語る。それは、育ててくれた親への感謝と恩返しが根底にある縁談の了承。リッカ的に、肉親の問題は遠い問題ではあるが決しておくびにも出さず聞き届ける。

 

「学業や、大学…何不自由ない生活を送れたのもお父さんと家柄あってこそです。同級生には生活に苦しみながらも必死に頑張って生きていた方も何人かいて、私はそういった頑張りには無縁でした。学業に打ち込んでいればそれでいいと、お父さんは自由な生活を受け入れてくれたんです」

 

「子供に無関心じゃない放任って本当にいいものだよね…いいお父さんだね、ランスロットさん」

 

「はい!私の欲しいもの、やりたいことをなんでも応援してくれた父親なんです。だから、決めていたんです。もし何か、お父さんが私に求めることがあるなら…受け入れようって。何か、私に求めてくる御願いは決して逃げずに受け入れようって決めていて。…そして、初めての私に向けられた御願いが…」

 

その先は言わずとも理解している。マシュにとっての最初の親孝行として考えていた誓い、そこに持ち込まれたのがランスロットの縁談、ギャラハッドとの婚姻だったのだろう。既に、藤丸を愛した末の持ちかけであった事は想像に難くない。

 

「仕方ない、そう決めた事だと納得しました。お父さんが、私の幸せを考えてくださっていることも承知しています。御相手の方にも不足はありません。ギャラハッドさんと、婚姻する。その未来を私は受け入れようと決心しました。…した、筈でした」

 

「…迷ってるんでしょ?どう理性で頭を納得させようと、心がうんって言わない。好きになった人を、諦めたくないんだって」

 

マシュは静かに…頷いた。どうしても、どうしても藤丸の事が諦められないのだと。彼女をいつも支えてくれた、大切な人なのだと。

 

「お金持ちの一人娘として、私は同学年の女子から敬遠されていました。ラウンドナイツ・コンツェルンの家柄は、一般人の皆様には眩しく重いもので、誰もが頭を下げる程の威光でした。…だからこそ、私には居場所が無かったんです。本心で付き合ってくれる人が、一人もいなかった。深く関わることを、避けられていたんです」

 

「確かに、一人や二人の人生を終わらせるくらい訳なさそうだもんね…ランスロットさんというか円卓の皆さん」

 

「そんな私に、物怖じすることなくお付き合いをしてくれたのがリツカさんでした。彼は私にずっと付いていてくれて、私が寂しくないようにそばに居てくださったんです。令嬢ではなく、私個人と付き合ってくださって…私は、訪ねたんです」

 

どうして、ここまで優しくしてくれるのか。どうしてこんなにも親身になってくれるのかと。心無い人は、令嬢の財産目当てと言っていたが、彼はそんな人物ではない。むしろそういった浮ついた先輩や人物から、箱入り娘の自身を護ってくれていた。彼の答えは…極めてシンプルだった。

 

「…『好きになっちゃったから』、と。一目惚れで、なんとしても君の傍にいたかったからと、リツカさんは言ってくれました。誰にも渡したくないから、私と一緒にいたいからと、リツカさんは言ってくださったんです。私も…本当に嬉しかった。だって、私も同じ気持ちだったから…」

 

(ISIの力によりプレシャス昇華を堪えるリッカ)

 

「でも、言い出せなかったと。自分は貧乏苦学生で、マシュとは立場が違いすぎるからと…でも、どうしても離れたくないからと。卒業間近にリツカさんは言ってくださったんです。私は、それでもいいと返しました」

 

立場なんていい、ずっと一緒にいよう。一緒に生きていこうと決めた。それは自分自身の決断であり、自分が初めて手にした人生の宝物だったのだ。

 

「…そして、今に至ります。私は今、自分の決断を取るのか、リツカさんとの身勝手な行いを取るべきなのか…悩んでいます。あれほど、良くしてもらったお父さんに、家柄に…私は不義理を働こうと…」

 

「…リツカ君と、何もかもを捨てて駆け落ちって事?」

 

「最低なのは解っています…!一生懸命育ててもらって、一生懸命手塩にかけて育ててもらったお父さんに、お家に報いるどころか裏切るなんて…!でも、でも!それでも…!リツカさんを諦めるなんてできない…!したくないんです…!」

 

それに、今まで過ごしてきた彼との想いをこんな形で終わらせたくない。終わりにしたくないとマシュは吐露する。自分の気持ちを裏切ってでも、育ての親に背いてでも。どうしても、自身が見つけた運命を諦めるなんて出来ないのだと。

 

「リッカさん…私は…どうすればいいんでしょうか?この気持ちに素直になるべきなのか、それとも、自分の全てを捨ててでも父に報いるべきなのか…私は、一体どうしたら…?」

 

「…………そうだね。凄く、幸せな悩みだね」

 

リッカからしてみれば、羨ましいとも言える悩みかもしれない。設定とはいえ、実の親と愛のすれ違いを行うマシュは、眩しく映る程だ。

 

(でも、今の私は天涯孤独じゃない…!ちゃんと、私に愛を教えてくれたお母さんがいる!)

 

無償の愛はあると示してくれた母、身の内に宿り、全てを薙ぎ払う荒ぶる母、宿業すら超え自身を重んじた母、そして太陽のように祝福をくれた母。沢山の母に、家族に支えられた今ならばきっと答えを告げられる。

 

「──私の答えや考えでいいなら、伝えるね。きっと──」

 

一昔前のリッカなら伝えられなかった、家族への想いを。マシュへと告げる──。




リッカ「親は、見返りや恩返しを求めて子供を育てたりしないんだよ、マシュ」

マシュ「!」

「親子の愛って、見返りや身代わり、人生の二週目を求めたりするものじゃない。生まれてきてくれてありがとうっていう、ただそれだけの想いを子供に向けてくれるものなんだよ」

マシュ「リッカ、さん…」

リッカ「だからマシュ、あなたは間違ってる。自分がやりたいこと、手にしたもの、生きてきた人生を全部捨てて親の言うことに従うなんて、そんなの親孝行って言わない。親の言いなりになって、楽な方に逃げてるだけだよ」

はっきりと、告げる。彼女は知っているのだ。親の、本当の願い。人類を滅ぼすほどの愛を懐いた親心が、子供に求める本当の願い。

「マシュはもう、自分の人生や価値観を持ってるじゃない。ならそれを納得できるまで話して、話し合って、解ってもらう様に頑張ってみなよ!世の中には、そんな簡単な事が出来ずに殺し合うしかなかった親子だっているんだから!あなたには素敵なお父さんがいるでしょ!逃げたいだの恩返しだの…自分自身から逃げるな!マシュ・キリエライト!!」

マシュ「!!」

リッカ「好きになったんなら!自分の全てを捧げるつもりで殉じなよ!好きな相手もいて、優しいお父さんもいる!そんな幸せな悩み、向き合わなくてどうするのさ!!」

正直、曇らせと言う観点ならばリッカにも突き刺さる問題である。リッカの人生に無い、無かった全てを取捨選択しようとするマシュという構図だからだ。しかし、彼女の魂は最早、決意の龍鱗に纏われている。挫け、曇る隙間などありはしない。

マシュ「…──リッカさん。ありがとうございます」

そして、その言葉を聞き…

「解りました。これから、どうするべきか」

マシュは、一つの決断を下す──

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