人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1449 / 2530
管制室

メイ「ほー。いきなりエンカウントか。状況からして金時と鍔競り合っていたな?元気で結構、実に鬱陶しい」

ロマン「まずいんじゃないかな…!?サーヴァントと違って生前の英霊はクラス側面なんてない!なんだってやってくる!というか綱さんホントに人間!?」

ゴールデン「自分は刃だ、人ではないが口癖だったからなァ…刀の扱いは大将以上かもしれねぇ。桃子ッチじゃなきゃマジでバッドゴールデンだったかもな…流石リッカのチョイスだぜ!」

頼光「綱…!何故解らないのです!私の愛娘であることは一目瞭然でしょうに!そっくりでしょう!」

オルガマリー「……ぐ、具体的には?」

頼光「愛嬌、でしょうか♪」

酒吞「可哀想やわぁ…リッカはんがこんな年増と似てるやなんて。へいとすぴーちも大概にせなあきまへ」

ムニエル「機材がぁー!!!!」

酒吞「おぉこわ。うふふっ♪似てるならうちやろ?ねぇ、お母さん♪」

頼光「死にたいと受け取りました」

金時「ノー!大将ノー!!」

メイ「リッカちゃん大丈夫かな」

リッカ(プルプルプルプルプルプルプルプル)

ロマン「あれは!『何が失言になるか解らないから最低限の言葉しか口にしないモード』!リッカちゃんは今戦っている!ネタバレ撒き散らしに!」

メイ「人類愛レベルのトーク力も良し悪しだなぁ。…そうだ、桃子ちゃん?」

桃子『はい!』

「こう言ってみて──?」


初戦〜茨木童子〜

「くっはははははは!夜分にして草木も眠る丑三つ時!しかし貴様らに安息などあるとおもうな源氏の武士共!貴様らは残らず吾に!鬼たる吾に食われる運命しか待っておらぬわ!!」

 

桃子と綱の軽い手合わせに、轟音裂孔と共に乱入せし二つの金色の影。風雲急を告げる事態の発端である金色の鬼が気炎と共に吼える。リッカら楽園には、非常に縁深き鬼であることに疑いの余地はない。

 

「データ照合。間違いありませぬ、彼女は茨木、茨木童子…!大江山における首魁!鬼であらんとする鬼!」

 

目視にて把握できるほどの気風にして威圧、疑う余地も無し。武士もあらば鬼も在る。とびきりの大物が天より来たる。そしてそれと真っ向から競り合うもう一人の黄金武者。軽き侍装束に身を包む、マサカリ担いだ金髪碧眼の筋骨隆々快男児。

 

「いっつつつ…茨木の野郎、どつきかましたと思ったら空に振り回しやがって!落ち着きのねぇ!」

 

「…茨木相手に腑抜けたままでは手に余ろう。俺が変わるぞ、金時」

 

『金時!リッカ殿、ではあの超絶イケメンはやはり!』

 

「うん!間違いない、おにいっ、(エフン)坂田金時!私達の金太郎、ゴールデンヒーロー!!」

 

その姿が、出で立ちが違おうとも間違える筈も無し。その真っ直ぐさを、その堂々たる姿を間違える筈も無し。彼女にとっての魂の兄。思わず漏らしかけるほどに感極まった口が紡ぐはゴールデン!

 

「──おう?嬢ちゃん、お前さん…」

 

なればこそ──彼が彼女に、リッカに並ならぬ『何か』を感じるのは、ある意味で必然であったのか。彼は橙髪の少女を『真正面』から見つめた。彼は元来、女性は苦手にも関わらず。

 

「金時!!貴様ァ、吾と相対しておきながら他所見をするか!その隙だらけな有様、吾を馬鹿にしているのか!こちらを──向けぇ!!」

 

茨木の激昂に滾った魔力炎が、金時に襲い来る。魔力で編まれたそれは、空気を吸えば肺が焼けただれる程の火焔灼熱。呆けた金時を呑み込まんと迫る鬼の怒り──

 

「うぉっ、やべぇ──!」

 

「マシュ!お願い!!」

「されましたっ!!」

 

リッカの鋭い指示より速く、マシュは盾を振り上げ間に割って入る。未だオルテナウスは未起動なれど、白頭巾と白装束に火の粉すら寄らぬ程の防護が荒武者たる金時を守り抜く。リッカが信ずる、無双の盾にして防御はけして翳りなく其処にある。

 

「大丈夫ですか金時お義兄さん!お義兄さんと呼ぶくらいあの方は貴方のファンなのです!よろしくしてあげてください!」

 

『マシュちゃんwwwww』

 

身分を明かすのか秘匿するのか微妙なフォローに爆笑する晴明。素直だねぇ、騙しやすそうと笑う中でも、火除の札を頭巾に貼っていた抜け目の無さは変わらずに。

 

「キャスター、そして…改めて名を問おう」

 

「桃子。あちらの少女の刀にして鎧、具足にして妹。綱殿、ここは停戦し協力を」

 

「…それしかあるまい。仲違いして下すには、やや手を焼く相手だ」

 

桃子が並び立つのを見やり、静かに太刀に手を乗せる綱。鬼切安綱、そして天叢雲剣。日本が誇る絶世の名刀が、大江山の首魁へと向けられる。

 

「──何?やや、手を焼くだと?」

 

「……」

 

「吾を…駄々を捏ねる幼子と同列に語ったか!綱ァ!!!」

 

綱の涼やかな態度とは逆に、歯を打ち鳴らす程に憤怒を燃やす茨木童子。その情念、その憤激。それは──楽園にて茨木を見てきた者達が見たことが無いほど…

 

『あの怒り…ジャンヌ殿のスペシャルスイーツを奪われた茨木殿並の怒りだ!』

『えぇ、とんでもない憎悪ね!』

『カグツチ殿とわちゃわちゃしている茨木殿とは似つかぬ。しかしGIは同一人物と…』

 

『来るよ〜』

 

「綱ァァァァァァ!!!」

 

割と見たことがあれど全く見せぬ激憤のまま、茨木は綱に襲いかかる。剛腕と俊敏さを完璧に両立させた鬼そのものの暴虐の只中に晒される綱。

 

「……」

「くはははは!声も出ないか!それでいい!吾を見ろ!吾を見ろ!誰に重ねぬ吾を見ろ!そして慄き屍晒せぇ!!」

 

破壊の嵐と見まごう恐ろしき旋風。いくら平安武者と言えどただでは済まぬ暴虐に──

 

「……」

 

 

(…目を、閉じてる?)

 

リッカが見据えたもの、それはその一撃一撃を完璧にかわす綱の姿。如何なる心境か、完璧に目を閉じたままで。メディアの感覚強化を受けていたとしても。それがどれほどの難行にして神業かなど語るに及ばず。

 

『流石の武芸ぶりだ、綱くん。彼は茨木ちゃんには縁があるからねえ。さぁ、腕の一本も落として退いてもらおうじゃないか』

 

「!──桃子!お願い!」

 

桃子に指示を託し、サブマスター達の術式を起動し桃子にバフを重ねがけする。朝焼け色の魔力と刃の煌めきを有し、桃子が瞬時に茨木の間合いに詰めよる。

 

「なっ───!?」

 

「その気風、削ぐ!!」

 

踏み込み、刃を閃かせ──。

 

「──『峰』で!!」

 

リッカの指示を遂行し、首の裏筋目掛け渾身の『峰打ち』を見舞う桃子。殺しはせぬ活人の剣、しかし茨木には反応も、対処も叶わぬ絶技にて。

 

「ぐ、お──!!?」

 

「────!!」

 

その揺らぎにて、綱は『奔った』。桃子の渾身の太刀打ちを、言葉なき至純の奥義にて繋ぐ。その真紅の太刀筋は、宵を切り裂く一閃となりて──。

 

「ッッ──ぎゃあぁあぁあぁあぁァァァッ!!!」

 

切り落とした。右腕を。天剣絶刀、悪鬼を切り裂きその剛腕宿る腕を断つ。それは正に、源氏の誉れたる武勇の顕現。絶叫、血飛沫。天上天下における至純のセイバーが、鬼の首魁を打ち払う。

 

「おおっ──片や桃太郎!片や渡辺綱!我等日本の英雄が憧憬を集めるセイバーの共演…!」

 

『どんぎゅーちゃんwwww』

 

「ぐ、あっ…!吾、吾の、腕…!腕がッ…!!」

 

次は首かと、茨木が睨む。が、桃子も綱も刃を振るう気配はない。彼女を見逃す、或いは露払いとして見ていたのか。その事実が茨木を奮い立たせる。

 

「許さぬ…!許さぬ、許さぬぞ綱…!そして見知らぬ陣羽織…!!何故命を取らぬ!何故刃を収める!」

 

(えっと、確かメイさんが言うには…)

 

「それは──」

 

綱が彼女に声を掛けようとした時…桃子が事を穏便に済まさんと告げる。

 

「あなたは私達にとって、敵では無いのです。だから殺しませんでした。あなたもいずれ、必要になる日は必ず来るので」

 

「!?」

『『主!?』』

『うわちゃ〜…』

『桃子ちゃんwwww』

 

確かに、楽園の敵はリンボ一人。倒すべき相手は黒幕のみ。しかし、されど強者にして勝者、鎧袖一触にて打ち払った立場の桃子が告げてはそれは火に油を注ぐ結果に他ならず。

 

「お、おのれ…おのれぇ…!吾など敵では無いと、そう言ったか…!陣羽織…!!」

 

「敵では無いですよ?共に力を合わせて───」

 

「決めたぞ!必ずや潰す!陣羽織に綱!覚えていろ──!その腕は!貴様らの頭蓋を付けて返してもらう!!」

 

悔恨に歯軋りしながら、大跳躍にて茨木は逃げおおせる。静かに太刀を納める綱に、不思議に首を傾げる桃子。

 

「…大江山の首魁の鬼相手に敵ではない、か。これ程の大胆不敵さ、やはり天覧武者だけの事はある」

 

「?マスターではないですよ?私はサーヴァントです。それに、一丸となる相手なのですから敵ではありませんよ」

 

「?…お前がマスターであり、キャスターはあの橙髪ではないのか?」

 

「違いますよ?」

 

「すみません、マスター…全員サーヴァントとは言いましたが、あちらの橙髪の女の子は生者です。あまりに異質…といいうか、不思議な魔力だった為…」

 

「…」

「?」

 

誤解が余りにも多い…綱と桃子は、互いに首を傾げ合うのであった。認識の齟齬は、刃にて解ける事なく…。

 




金時「流石の腕前だぜ、綱の兄貴!そんで、そっちの嬢ちゃんも大したもんだ!まさか綱の兄貴と刀で並んじまうとはよ!」

桃子「応援してくださる皆があってこそ、です。大事はありませんか?」

金時「おうよ、あれぐらいでケガする程ひ弱じゃあねぇさ!」

綱「…おい」

リッカ「あ、はい?──わっ!?」

『茨木の腕』

「腕!?」

綱「数々の非礼の詫びとして、それを預ける。そして我々は今日は退こう。だが──天覧武者である限り、行き先は同じ。此度はただ、その場しのぎに過ぎない事を忘れるな」

リッカ「は、はい!」

綱「金時。この者達を任せる」

金時「はぁ!?任せるったって…!オイオイ兄貴!そりゃねぇぜって!」

「この者らは困っているぞ」

「!」

「見捨てるなら好きにしろ。行くぞ、キャスター」
リリィ「は、はい!」

金時「…ったく。意地のわりぃ言い方をしやがらぁ」

リッカ「あ、あの…その…金時さん、ですか?」

金時「おう、オレっちが坂田金時その人よ!嬢ちゃんが大将かい?」

リッカ「は、はい!私、リッカって言います!その…!」

金時「おう!」

「力を、貸してもらえませんか!?」
「まァかしとけ!!」

(((即決!!)))

桃子(良かったね、リッカねぇ!)

こうして、一夜の波乱を乗り越えたリッカは、金時──自身の魂の兄と出逢った──。

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。