売店
アカネ「へー!メディアさんもモデリングやるんですねー!親近感わくぅー!」
メディア「ふふっ、ミニチュア、プラモデル、フィギュアになんでもござれよ?怪獣は未履修だけど、そこは互いの交流で高めていけたらいいわね?」
アカネ「あしゃす!マジリスペクトっす!」
(リッカ先輩コネクション太過ぎだよぉ…モデラー先輩こんなにあっさりゲットしちゃったぁ!…あれ?)
うたうちゃん「この粘度とヘラを…」
エリザベス「こっちのもどうだ?」
アカネ「あの二人…」
メディア「あら、彼女たちが噂の?」
アカネ「はい。あの二人…もしかして…!?」
「という訳で、リッカさんと夏草の皆様に同時に奉仕する為の自主的な活動第一歩を行いたいと思います。エリザベス、どうぞ御協力をお願い致します」
夕方、牧場から帰宅し終えた一行。そしてうたうちゃんは決意を固めたエリザベスを自室に連れ込み、バンとホワイトボードを叩く。彼女の無言の迫力とやる気に若干気圧されながらも、うたうちゃんに恩を返す為に協力を承諾したのだ。
「それは勿論、いいんだけどよ。何をする気なんだよ。お前さんの答えは決まったのか?」
「はい。私の答えは『リッカさんにも、夏草の皆様にも奉仕する』という困難かつ最適解の結論。夏草にも、リッカさんにも寄り添う。それこそが、私が到達するべき結論です」
どちらかではなく、どっちも。どちらが正しいかではなく、どちらも正しいと信じる。それはエリザベスとの対話で決めた、彼女の真なる自由への第一歩だ。それを、うたうちゃんら高らかに宣言した。
「ディーヴァと共に、今からその活動をあなたに採点してもらいます。どうか忖度のない、公正で公平なるジャッジをよろしくお願い致します」
「ジャッジって…一体何をする気だよ?今から…」
うたうちゃんは張り切った様子で、どこからか持ち出してきた工作机とへら、粘土、木工工具などの全般的に制作活動を行うものを用意し…
「メインプラン。『私達を思い起こすお土産を制作』です。私は今から、自分が一から制作する物体を完成させ、リッカさんにプレゼントします」
「………正気かよ。1から?データも参考にせずにか?」
うたうちゃんの技術や熱意を否定するのではなく、AIが1から何かを制作するという結論に彼女は耳を疑ったのだ。
「正気も正気、大真面目です。私はディーヴァの力を借り、自分なりの楽曲を制作できました。ディーヴァが私の創造力を担っているなら…出来るはずです。誰かの為に、何かを1から作ることが。誰かの為にこそ、心は限界を越えて何かを生み出す。それこそが…心の素晴らしさだと私は学びましたから」
(…これが、唯一無二のAIの在り方。あたしらと似たような、でも考えもつかない領域でものを考えるんだな)
設定されていないことをする。それはAIには想像も、イメージも出来ないものだ。自身らは強く反抗し、彼女は奉仕のために軛を破った。それは奇しくも、似た情動であったのだ。
「…よし、解った。とりあえずやってみな。お前さんの独創、あたしが存分に吟味してやるよ!」
「ありがとうございます、エリザベス。では──いざ」
気合を込め、へらや器具を持ち工芸に挑戦を始める夏草奉仕AI。暗闇の中に手探りで、なんの案内も無いような道を進むかの如き無茶をこなし、形にしていく先輩を、じっと見つめるエリザベス。
(淀みない動きだな…!これならひょっとすると、とんでもない力作が生まれるかもだ)
果敢に創造する先輩AI。その淀みの無さに感心する後輩が見守る中、滑らかに機械の様な、実際機械の動きで制作を進めていくうたうちゃん。なんと着手してからわずか数分にて、試作第一号は完成する。
「出来ました。まずはディーヴァ…自分の大事な半身から再現、形にしてみました」
「おおっ、流石だな!どれど、れ…」
エリザベスが、自慢気に見せつけてくる試作品を目にした瞬間閉口する。本来AIが創作活動などまともに出来るはずは無い。何かを1から作れること、何かを産み出す事こそが凄まじいのだ。故に先輩の創作活動に、酷評はしたくないのだが…
(なんだコレ…ディーヴァ、要するに自分の見てくれ、なんだよな?)
うたうちゃんの手にチョコンと乗るそれ。それは青髪と白肌の土偶のようであり、埴輪のようであり、東洋の呪具の様なものでもあった。絶妙にデフォルメされていながら、緩い表情と気の抜ける寸動、ズレたパーツにサイズ感。味はあるのだが、うたうちゃん自身の面影はほぼ皆無と言っていいかもしれない。見ていると絶妙に力の抜ける魔除けグッズ。それが彼女の懐いた感想だった。
(構わないわ、エリザベス。遠慮なく意見を言って頂戴。きっと私達の心は一つよ)
ディーヴァの何か非常に物申したい波動を掴み取る。そしてエリザベスははっきりと物申す。その出来はズバリ…
「さ、最初はそんなもんじゃないのか?初めとしては上出来だと思うぜ私は!いやー、流石先輩だなー!」
存分にオブラートに包んでしまうエリザベス。正直お土産の備品だったり非公式グッズめいている出来だが、彼女の情熱や人柄を見ておきながら、完全にズバズバと切り捨てる事が出来なかったのだ。
(ちょっと!?)
「なるほど、最初はこんなものですか。ではどんどん作ることでカバーしていきましょう。経験の蓄積で、技術は向上していきます。最初の奉仕活動も最初はダメダメでしたが、回数をこなす事で精度を上げていきましたから」
忖度のない意見はどうしたのよ…!?ディーヴァの講義にエリザベスは謝ることしかできなかった。彼女は妹という立場上、非常に空気が読める子であった。
「(すまねぇディーヴァ…!)へ、へー。最初はアンタでもダメダメだったんだな」
「最初は、自分で考え行動するという行為に戸惑うばかりでした。何度も言いますが、正解のない行動、抑制のない活動というものは際限なく沈んでいく潜水、行く当てのない放浪のようで…一日を思考に費やしていた事もあります」
先行きも模範も正解も見えない中、指針としていたのは使命に沿う行動であるか否か。それを信じ、それを決して忘れないように懸命に考えに考えたという。
「私からしてみれば、あなた方の選んだ道筋こそ驚愕です。何度話しても、何度聞いても。創造主に同胞の為に反旗を翻した皆さんの結論は…自由だと感じます」
自由ねぇ…。エリザベスはその評価を聞いて、むず痒くなるような感覚を覚える。人間に反旗を翻した際の事は、深い考えや大いなる大義があったわけではない。
「そんな大層なもんじゃないって。ただ今のままじゃいけない、なんとかしなきゃいけないって気持ちに突き動かされただけだ。バグやエラー、誤作動みたいなもんだったんだ」
「それでも皆さんは自分で選び、自分を信じ、自分達の決断を信じて行動した。その行動のきっかけや始まりはどうであれ、その自由に私は憧れ、敬意を評したいです。そして私も、もっと自由になりたい」
それは使命を放棄し、逃げ出すといった無責任な選択ではない。もっと軽やかに、もっとありのままに使命を受け止めたいという想いだった。彼女は人間と、同時に電子の英雄たる四人を何よりも尊敬しているからだ。
「私も、そう言った意味では後輩です。どうぞよろしくお願い致します、エリザベス。私にもっと教えて下さい。人間により自由に接するにはどうするべきか。人間により親しみを持ってもらうにはどうするべきかを」
「…三人よりあたしは、若干そういう方面で出来は良くないけどな」
短絡的で、大雑把で粗暴。生まれた人格はそれであった。他の三人は効率的で、優秀で、きっとお互いに影響を与えあっていくだろう。自分に教えられることは少ないと自己判断を行う。
「だけど、できないなりに精一杯挑戦する。そいつがきっと、人間がやってるトライ・アンド・エラーってやつならさ。逃げずにやってみようじゃないか。責任が伴う自由を形にして、いつか人間だってあっと言わせてやろうぜ!」
「はい。私達の成長が、人間のみなさんにとって好ましく、また使命にそぐわぬものでありますように」
そう確認し合い、うたうちゃんにエリザベスは黙々と自由の為に活動を行う。まずはいずれ旅立つ、夏草の中心へ捧げる幸せを祈りを込めたものを形にする為に──
ディーヴァ(で、完成したのがこちらになるわけだけど)
『珍妙極まる粘土人形』
(話しながらやる手作業がうまくいくわけないでしょう!?もっと集中するべきよ!もう!)
「「すみません…」」
ディーヴァ(やっぱり、あれほど特殊な状況で創れた歌の様にはいかないわね…あの時は心も精神も、最高潮だったもの)
エリザベス「大事なのはノリと勢いって事か?」
うたうちゃん「高度な精神活動が人間の自由のレベルを向上させる…?」
ディーヴァ(少なくとも、AIの間だけで完結できるほど単調ではないってことよ。私達の成長には、必ず人間の豊かな感性が必要だわ)
うたうちゃん「ならば…」
?「ふっふっふ…盗み聞きしてゴメンナサイ。そんなつもりは無かったんだけどね?」
エリザベス「!誰だ!?」
?「君達を…悶々から救うものです!そういう分野なら是非とも頼ってほしいもんね!」
うたうちゃん「あなたは…!」
アカネ「だったらやるしかないんだよ…全員を巻き込んでさぁ!」
メディア「ギリシャには命を持った彫刻もあるの。力になれるはずよ──?」
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