人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『リスト』

オルガマリー「さて、誰からスカウトしましょうか…様々な分野で欲しい人材は引く手あまただけれど…」


(個人的には、色んな世界を旅する人とかもいいわね…色んな景色や映像は、施設づとめの皆への癒しになるわ)

「でも、まずは…この二人からね」


〜ダマーヴァンド山


アフラ・マズダ『見よ、使徒よ』

少女『眠っている…』

『善き夢を見ているのだ。起こしてはならぬ』

少女『はい。──今は【彼女】を見守りましょう』


別地点

■■■【…絶対悪悪の遺した遺産…】

(起きる気配が無いのなら、そっとしておくべきね)



カルデア

アジーカ【へくち】

アンリマユ【風邪かー?ケツにネギ刺して寝とけー】

アジーカ【(すっ)】

アンリマユ【私にじゃねぇよ!?】


オルガマリースカウト〜才色兼備とズボラな天才〜

「お久しぶり…というほど時間は空いていないわよね。あれだけの事があったから、あなた達との初対面が遠い昔のよう。改めて…こんにちは、カルデアス所長さん」

 

アーネンエルベにて待つオルガマリーの下へとやってきた人影。それはカルデアにおける非戦闘員スタッフを募集、面談する為の集いである。そしてその記念すべき第一人者…その仲介人を兼ねた人物が現れる。その人こそ、夏草のあれこれに様々な便宜を図ってくれた人物であり『天才』と唯一強い関係を持つ教師。

 

「夏草では大変お世話になりました。近日行う夏草召喚の際にもよろしくお願い致します、榊原先生」

 

榊原処凛。リッカら夏草組の心の支えであり現役教師。市長ラオウを始めとした夏草の様々な場所にコネクションを持つ敏腕教師だ。オルガマリーの用意した特製コーヒーの香りに、微かに頬を緩める。

 

「メンタルセラピー、そして夏草の皆へのカウンセリング。そういった目的でのカルデアへの参加…本当に素通りで大丈夫なのかしら」

 

そう、今回のスカウトの面談はあくまで形式のもの。夏草の皆を見れば、その腕前など言わずとしれている。採用しない理由などないからだ。

 

「戦う力があるとはいえ、多感な学生の身分たる彼女達の心を教師という立場で支えられる人は貴重です。私の親友を始め、どうぞよろしくお願い致します」

 

礼を尽くし、彼女を迎え入れる。榊原は支部と本部を繫ぐ役割も担ってもらう事となるため、引き込みはある種必然であった。そして…彼女はとある人物とも面識がある。

 

「わぁ、小綺麗なお店ねー!あたしも学生の頃はこういう場所によく来てたわー。こういう場所の作業って、捗るのよねー♪」

 

スーツを着てはいるものの、ボサボサ頭とずれた眼鏡が人柄を示す格好で現れしは教授にして榊原の友人、沢城である。彼女は独自の研究を進める、俗に言う天才の観点を持つ女性だ。彼女の存在を示唆したのは、AIディーヴァでもある。

 

「あなたねぇ…大人なんだから面接くらいはきちっとしなさいとあれほど…」

 

「だーって堅苦しいのあたし苦手なんだもーん。研究職や神学とかに没頭してるのも人付き合いとかがめんどくさいからだしねー。好きな事をたくさんして、やりたくないことはやらない人生を求めるの、あたしは!」

 

そんな偉大なんだか駄目なんだかなポリシーを言ってのける沢城に呆れ顔の榊原。意外にも名前が似通う二人がカルデアの職員スカウトの先駆けとなったのだ。

 

「カルデア、確か人理保障機関って触れ込みの施設よね?人類の千年先の繁栄を保証する為にアレコレする組織、天体科アニムスフィアの酔狂な夢物語がどういう訳か形になった奇跡の結晶…ここまで合ってる?」

 

カロリーメイトを齧りながら、説明すらしていない魔術分野におけるカルデアの大まかな概要、有している家柄をさらりと当ててのける沢城。榊原に目を向けたところ、キョトンとしている為説明した訳ではないようだ。自前で調べたのだろう。

 

「で、半年の空白に起きた人理焼却を解決し、次に起きるであろう人理を揺るがす事件に備えて一年の戦力補強期間って感じかしら?まるでヴァルハラに勇士を集めるオーディンね。油断しないのはとてもいいこと!グーね!」

 

「…御自分で調べたのですか?」

 

「まぁそれなりにね。組織があることさえわかれば、あとは因果関係の割り出しに注力することで結果は導き出される。物事は大抵繋がっているもので、突発的な事象というのは案外少ないものなのよん」

 

フレンチを頼みながらメガネをクイッとするあからさまな秀才アピールと共に沢城は笑う。彼女にはきっと、魔術に関わる大体の全貌は掴めているのだろう。

 

「そこまで優秀なあなたに、建前は不要ですね。その頭脳を活かし、アドバイザーとしてカルデアに参加しては貰えないでしょうか」

 

アドバイザー。神学や様々な研究から詳しい特異点や現象を割り出す者。未明、未開、あるいは未解を暴くもの。ホームズに並ぶ地位に就くことを提案するオルガマリー。

 

「そんな重用してもらっていいのかしら〜。偏屈でズボラな変人よ?こっちのクールビューティと違って、駄目な方の了子よー?」

 

「駄目だからと切り捨てる事は、その人しか持たない美徳を捨てることとなります。確かに私生活や身だしなみはちょっとズボラかもしれませんが、愛嬌の内でしょう。その知識と推察力を不意にする理由にはなりえません」

 

あくまでその腕前と才覚を評価したいと所長は告げる。その熱烈なラブコールに、沢城は感激とばかりに声を弾ませた。

 

「こんなに人に褒められたのっていつ以来かしら…!大人になるとできて当たり前がデフォルトになるから誰かに褒められることってとんと無くなるのよねぇー!」

 

「あなたさっき、人付き合いが嫌だから研究やってるって言ってなかったかしら…」

 

「それはそれ、これはこれ!頭脳を褒められて嬉しくない科学者なんていないわよぉ。よーし決めた!大学教授やめてこっち一本で頑張るわ!ただでさえ少ない人付き合いから完全におさらば!さよなら俗世、こにちは楽園!あとはいい人見つかったら最高ね!」

 

即決。ノリで人生生きているような沢城に圧倒されるオルガマリー、溜息が漏れる榊原。彼女はどうやら、人の理屈で生きてはいないらしい。とはいえ、参加を決めたのならば嬉しい限りなので。

 

「決まりですね。どうぞよろしくお願い致します。榊原先生、沢城教授。必要なものはなんでも取り揃えます。これからは共に力を合わせて頑張りましょう」

 

オルガマリーは礼をし、二人を歓迎する。初スカウトは大成功といったところだ。そんな折に、沢城が声を上げる。

 

「あ、所長さん。条件といってはなんだけれど…一つお願いしてもいいかしら」

 

沢城はどこか真剣に挙手する。先程までの軽さはなりを潜め、静かに告げる。

 

「いつか…カルデアに私の友人を招いては貰えないかしら。今はどこにいるかもわからないんだけど、きっと必ず会うはずだから」

 

「ご友人、ですか?榊原先生とは別の?」

 

「えぇ。サカキーは親友で、そっちはなんていうのかしら。くされ縁?物理的にホントに長い付き合いなの。…ホントに、長い付き合いでね」

 

目を細める沢城はどこか遠くを見ている。ここにはいない誰かの事を。

 

「彼女、どこにも居場所を見つけられない性分でね。この世界をあてもなく、ずっと放浪しているのよ。その癖、人一倍人間を愛していて人の苦しみをなんとかしようとずっともがいてる。そんな…私の友人。その子をいつか、『楽園』に招いてあげてはくれないかしら」

 

「了子…」

 

彼女の願いは真摯なものだった。それは利用、打算ではない一人の友人としての願い。彼女が気にかけている存在への保護の要請を、所長は引き受ける。

 

「分かりました。では、その方が誰かはあえて聞きません。邂逅の際、あなたが我々に教えてくださることを願います」

 

「お任せ♪私なりに頑張って役に立ってみせるわ!サカキー共々、よろしくね♪」

 

「こんな人ですけれど、私も一生懸命に励みます。夏草の皆と共に、お世話にならせていただきますね」

 

榊原、沢城と握手を交わすオルガマリー。所長として最高の戦果に、人知れず心でガッツポーズを取る。

 

(これで彼女達の心身の摩耗や負担を軽減できる。あとはゴルドルフ副所長のお食事会でレクリエーションも完璧ね。ますますカルデアの労働環境が盤石になったわ…!)

 

…自分では知ってか知らずか。ゴルドルフ副所長の恰幅に負けず劣らず、心に贅肉がたっぷりついているオルガマリーであったとさ。

 

 




沢城(…お前は恐らくカルデアと敵対するのだろう。ならばその時、私とお前は敵同士となる。だが…寄り添うばかりが友誼ではない。時には互いに衝突するも付き合いの一環だ)

〜夜の砂漠

外套の女性【………】



(お前の出す答えがどのようなものか、待っているぞ。そして…お前の帰る場所も用意してやる。生半で返せぬ貸しと思えよ、■■■…)

榊原「ちょっと?」

沢城「あーなんでもないわ!じゃあ歓迎も兼ねてパーッとやりましょ!パーッとね!」

榊原「歓迎される側でしょう…私達」



【…月と星だけは、いつも変わらない美しさね。でしょう?フィーネ…】

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