人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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田村麻呂「おいおい、ばらきーらが見てないのに戦うのかよ?」

アテルイ「ちゃんとカルデアにも中継されているわ。祖龍と鬼神の戦いなんてめったに見られない、みたいな要望があってね」

田村麻呂「そりゃまあ確かに!金取れるわ!」

鈴鹿「でもいいの?ショーとかのリソース…」

アテルイ「大丈夫よ、鈴鹿。むしろこれが、私とカムイの黄金が招かれた意味だと思うから…」



ベンチ 

クリームヒルト「……………………」



誠心誠意!お願いは心を込めて

「ここか…よ、よし。では、行くぞ…!」

 

 

ニャルニャルの願いに応え、あるいはオニキュアの危機を救うために。茨木童子達は竜が封印されし間へと辿り着く。そこにはふわりと珠が浮いており、それこそが封印の証なのだと伝えられていた一同はそれを見つけ意を決して触れんとする。

 

「う、うぉおぉおぉお!?」

 

恐る恐る伸ばした手の先から、溢れ出し燃え盛るような焔が吹き出す。それは火山の噴火が如くに飛び散り、辺りを焼き、そしてやがては竜の形を取り戻す。

 

『お、ぉお…!!よし、なんとか封印が解けたな!』

 

伸びのように手を伸ばし確認せし、筋骨隆々なる紅きドラゴンが口を開く。背後にも幾人かのドラゴンがいるが、彼こそはその首領格、ボルシャックドラゴンその人である。キョロキョロと辺りを見回した後、ボルシャックは茨木達に目をやる。

 

『ん?お前ら…鬼じゃないか。なんだって鬼がこんなところにいる?』

 

返した答えは意外にも剣呑なもの。じろりと睨むように顔を近付け、訝しむように茨木とカグツチを見やる。生唾を飲む茨木、並びにカグツチ。

 

(アマノザコ、あんまり歓迎されてなさそうなのはなにゆえに…?)

(オニキュアの舞台感では、オニキュアというより鬼は他の種族と折り合いがわるくてな。野蛮で粗野、特にドラゴンとは相性が悪い傾向にある)

 

な、なるほど…伊邪那美が聞き及んだように、ドラゴンだけでなく鬼はどんな相手とも相性が悪い。強く孤高であるが故、他の種とは馴れ合わない。それを一年かけて解消していくのがオニキュア達だが、どうやら設定はワンシーズン終盤、戦争間近な時代を選んだらしい。詳しい娘に伊邪那美は舌を巻く。

 

「汝らが封印されていたのを解放したのは吾等である!その恩義に報いるというならば、吾等に力を貸せ!オニキュアがピンチであるのだ!」

 

茨木もその設定に忠実に、尊大に助けを求めた。それは当然、竜の不況を買う。

 

『イヤだね。誰が鬼なんぞを助けるか。そもそも助けてくれと頼んだ覚えもねぇなぁ』

 

「何っ…!?恩を仇で返すというのか!」

『せっかく助けてあげたのに…』

 

『助けてあげたのに、だぁ?』

 

ずい、と茨木とカグツチに顔を近付けるボルシャック。本来なら二つ返事なのだが、見ている子供サーヴァントにも向けるようにあえて偽悪的に持論を突き付ける。

 

『恩返しや見返りをハナっから求めるようなもんを善行として振る舞うのはよくねぇな、ちびっ子ども。何かをしてもらう為に何かをしてやるってのに恩や仁義はねぇ。ビジネスってんだよ。人間ごときを助けるのならそうでいいかもしれねぇが…生憎俺達はそういうのがキライでなぁ』

 

「ぐ…」

 

『初めから何かをやってほしいが為に封印を解いたってんなら余計なお世話だ。誰かに頭を下げて傅くくらいなら、アンセス様のお言葉に従い封印されたままで良かったぜ。ま…なんか様子がおかしかったがよ。もうちょいバカっぽくて愛らしかったんだがなぁ』

 

鬼という立場、神という立場にも竜は靡かない。強いが故に竜達の心を動かすことは叶わなかった。茨木は頭領としてのプライドが、カグツチは幼い精神がボルシャック達への救助の邪魔をする。

 

「えぇい!議論を交わしている暇はない!こうする間にもオニキュアが死地を彷徨っているのだ!」

 

『ほう、そりゃ大変だな。ならどうする?助けてなんかやらないがよ』

 

『なら、力づくで…!』

 

『上等だ、かかってこい!真っ向勝負上等だコラァ!!』

 

あれよあれよという間に決裂、対立の状態へと雪崩込んでしまった。ショーであるが故に流れは決まっているが、そこに至るまでの道筋は無数だ。視聴者参加型のショーならではと言える。

 

(やれやれ…ヒーローのピンチが冷静さを欠かせたか)

 

アマノザコは二人の焦りをフォローするが如くに一歩踏み出す。それは大人がフォローすべきものと判断したからだ。ここで争いをして得をするものなど…

 

【───付してお頼み申す!竜の方々!】

『…!?』

 

だが、アマノザコより早く行動に移さんとする者がそこにいた。丁寧な土下座にて、竜に頭を下げるもの。

 

「なに!?」

『えっ…』

 

【どうか何卒、何卒力をお貸し願わんが故に我等ここに赴けり!助力を、助力をいざ乞いたもう!伊邪那美に免じ何卒、何卒!】

 

それは、伊邪那美であった。子より早く、子の不手際の責任を取った。それは、誰もが予測できなかった行動だ。

 

『え、あっ、ちょ…な、なんのつもりだ?なんたってそんなにも俺らにへりくだる?』

 

伊邪那美やイザナミがどれくらい偉いかは知っているのでガチテンパりを見せながらも懸命にヒールを演じるボルシャック。伊邪那美は構わず、毅然と応える。

 

【子を救うため…それの為ならば恥などいくらでもかき捨てようぞ。それが、親の努めなれば。なによりも!】

『…!』

 

【かの『おにきゅあ』!妾の孫娘ですので!!】

 

よろしくお頼みしたもうや!!額から血が出るレベルで叩きつけた土下座にボルシャックが困惑を見せる。本当ならよし、任せろ!なドラゴンなので、芝居の妙と言えるだろう。

 

『…すまぬな、母よ。手間を掛けさせた』

 

それに倣い、深々と頭を下げるアマノザコ。それはカグツチにも伝える、人付き合いの基本中の基本。

 

『誠心誠意。これに勝るものはない。恩を売るのではない…真に必要であるがゆえに助力を願う。種族の軋轢はあろうとも、今だけは力を貸してくれ』

 

『…お子さんの為に、か』

 

『そうだ。子を大切に思わぬ親はいない。そうでない親は、最早親ですら無いのだ。どうか、頼む』

 

その姿を見ていたカグツチも…また、それに倣う。

 

『お願い、します』

「ぬぅ…だが、外交としての基本、永らく忘れておったわ…」

 

膝を折り、ボルシャックに頼む姿勢。それはまさに誠心誠意たる具現。人が行う、弱きからこそ生まれる仁義礼節。それが今、神と鬼に宿ったのだ。

 

『フッ、なるほどな。家族のため、ヒーローの為。それのためなら立場や確執なんてどうでもいいって訳か』

 

ボルシャックは満足げに頷いた。後ろにいるボルメテウス達もボルシャックをせっつく。誰に頭を下げさせているのだ。さっさといい感じに持っていけ。戦えればそれでよし!

 

『──よし解った!種族としての貸し借りじゃなく、個人的な助けがいるならしょうがねぇ!それなら後々の外交や戦争にはなるまいよ!あぁ、了解だ!』

 

「では!」

 

『おう。力、貸してやるぜ。素敵な親御さんに免じてな!親孝行しっかりやれよ?言う事聞いて、困らせんなよ?』

 

ボルシャックの言葉に、跳ね上がり歓喜する茨木とカグツチ。見ているものに、頼みや助力はどうするべきかの教育シーンも考えられた場面を無事完遂する。

 

【ふぅ!なんとかなって一安心…良かった良かった…】

『母よ、私より先によくぞ動いた』

 

【ん?ふふ、年の功であるばばぁも偶には役に立つというものだ。老害、と蔑まれないようきちっと決められたのならよいが…】

 

その心配は杞憂…言うまでもなく、伊邪那美の行いは報われる。

 

「流石だ伊邪那美!あちらのアレとは大違いぞ!流石は伊邪那美!」

『お母さん、カッコよかった』

 

【え、そう?ほんと?ほんとに?ふへへ、根暗な方の伊邪那美も、少しは役に立てたなら幸いであろうや】

 

『〜ふっ…』

 

伊邪那岐に裏切られた絶望も、順調に癒えてきているようだ。ここはサーヴァントではないが故の、成長に当たるのであろうか。

 

『さぁ行くぞてめぇら!!オニキュアを、こいつらの大事なの奴らを助けに行こうぜ!!』

 

 

『『『おう!!』』』

 

【話は済んだか?では、飛ばすぞ。ほれー】

 

マイペースな黄色い従者に飛ばされ、決戦の地へと赴く。いよいよ、ショーもクライマックスとなる…!




ドラランド大広場


キュアオンラ「がぁあぁあぁっ…!!」

ボレアスマスク【ふふははは、わはははははは、ふはははは。五七の五風に笑ってみました】

キュアオンラ「くっそ…軽い態度のくせにアホみたいに強ぇ…これがドラゴンの元締めの力かよ…!」

ボレアスマスク【私は戦う必要がない存在。無敵って事。意味わかる?金持ちが喧嘩しないように、私と勝負になる者なんていないんだから。争いになんの価値もないから戦わない。多分これ平和へつながる理念。覚えてね?】

キュアオンラ「まだだ、まだ…ぐっ…!」

ボレアスマスク【古龍フルコースを食らって死なないのは流石オニキュア。だけどそろそろ飽きてきた。終わりにしようか】

キュアオンラ「…!」

ボレアスマスク【黒龍必殺の凄いブレスで…焼き尽くしてあげようかな!ん〜〜〜〜〜〜!】

渾身のブレスを吐く態勢となった…その時。

ボルシャック『ちょーーっと待ったァ!!』

ボレアスマスク【むむ!】

会心のタイミングで、ボルシャックたちが間に割って入る──!

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