人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
内海「そうか…。良かった、彼等は揺るぎなく日々を進んでいるようだ」
うたうちゃん「はい。間違いなく」
内海「私達も、より一層気合をいれねば。彼女たちの故郷を…護るために」
うたうちゃん「どこまでも寄り添わせてくださいませ。夏草の善き人々に…人類という種に」
内海「うたうちゃん…期待している。人類の隣人としてのAI。共存者にして、比類なき友よ」
うたうちゃん「はい!姉妹たちと、マスターの為にも頑張ります!」
(こっちは大丈夫。だからそっちも頑張って…ディーヴァ!)
【喰らえー!ファイブキングの懇親パワー!!】
『なんの!僕のボルメテウス・イカルガ・ドラゴンはメカとロボ、そしてドラゴンというカツ丼ステーキケーキが如き最高傑作!ウルトラシリーズにだって負けない楽園での宝物なのです!受けて立ちます!!』
トレーニングルームにて、夏草のメンバーが記念の節目を御祝するために集まり一堂に会する…のはいいのだが、自身の希望や願望がいくらでも叶うこの楽園カルデアにて、彼ら彼女らが平穏に振り返られる筈もなく。こうして思い思いの時間に浸るのはある意味で必然だったと言えよう。
「礼装スキルのオート発動システムを開発しようと思うんだ。リジェネやバフを自動的に最適な状態で発動させてくれたら、マスターの皆の生存確率がもっと上がると思わない?ルル」
「確かに。ならば提出書類は俺に任せろヤマト。お前はなんというか…フィーリングに振り切っているせいで書類や報告書が簡潔だからな」
「ねぇねぇゆかな!私と一緒にカルデアキャンペーンガールやらない?ホームページとか立ち上げたり動画作ったりして、もっと幅広く正義の組織としての名声をあげるわけ!」
「あ、あの…天空海さん。カルデアは秘密裏な組織ですから…」
『ぇえぇまさかのボツゥ!?わたしこう見えて一生懸命作ったんですけどぉおぉ!!』
『まぁまぁ…さばちゅーぶのチャンネルバナーとかにしましょう、アクア?』
「スザク、やはり対襲撃マニュアルはもう少し敵対者のレベルを上げたほうがいいと思うぞ。私と君で対処できる相手を脅威とは呼べないからな」
「そ、そうは言うけどね。全員を特殊部隊と想定した訓練だからこれ以上は望めないんじゃないかな…」
「ユフィさん!こちら、ご注文されていたカルデア制服です!お収めください!」
「わぁ、ありがとう飛鳥!あなたのデザインセンスはスザクから聞いていたわ。それでは、着付けまで手伝ってもらえますか?」
「は、はい!私でよろしければ!」
『…振り返り、っていう名目で集まったのに…いつも通りのカルデアライフね…』
リッカの生活サポート端末に常駐するAI、ディーヴァがぼやくように…一度語り出せば全く落ち着いていられない高校生達が集まればこうなるのは必然であり、皆はカルデアにて自分の使命に邁進している。それぞれの役割、成すべき事。それらは彼等、彼女らが真っ直ぐ未来を見ている証拠だ。
『あーん、もー!振り返りの為の総集編とか副音声付き上映会とか色々考えてたのに〜!榊原先生とか、うたうや皆と割と頑張って考案したんだからー!』
「あはは、ありがとうねディーヴァ。それは必ず改めるのを約束するから!」
『むぅ。…リッカはいいのかしら?記念というか、ただのいつも通り過ぎる夏草組の部活テンションみたいな事になってるけど』
ディーヴァの言葉に、リッカは頷く。彼女にとっては一字一句を繰り返すことも、思い返す事も不可欠では無かった。この光景…もっと言えば、皆がいてくれる事だけが最高にして最上の報酬であったからだ。
「人理焼却。ビーストⅠが引き起こした未曾有の大偉業にて…一度はリッカ殿以外のここにいる全ての方が焼き払われてしまった」
リッカの隣にそっと座るグドーシ。リッカは皆の和気藹々とした様を愛おしげに、慈しむように見守っている。
「彼等の笑顔を、彼女らの未来を取り戻すためにリッカさんは全てを懸けて戦い抜いた。やがてその大健闘は奇跡を起こし、奪われた全てを取り戻した」
全員分のカップケーキと手作りソーマを皆に振る舞いながら、カーマはグドーシの考えを補足する。
「リッカさんが頑張ってこれたのは、ここにいる皆さんの未来…彼らを生み出した土地…そして自身を受け入れてくれた世界そのものへの感謝の思い。リッカさんだけの信念と決意が、その歩みを最高の結末へと導いたんですよ」
『夏草と…そこに生きる皆の為に…その為に、リッカはどんな苦しい事も乗り越えられた?』
「ふふ、ちょっと違うかな。グドーシとお別れしたのが一番辛い事で、そこから先はね、苦しい事なんてなかったから!」
そう、リッカの歩んできた道筋に挫けたくなるような試練、何もかも投げ出したくなるような絶望などは存在していなかったのだ。少なくとも、たった一度も逃げ出したくなることも、戦いを止めたくなるような事も無い。ただの一度も、彼女は運命や使命に敗北する事はなかった。
「私は、私の願いの為に戦ってた。どこまでも自分の為に、自分の願いの為に戦ってた。自分が望んだ願いや戦いなんだから、自分の力でとことんまでやってやる!って気持ちだったんだよ」
『リッカ…。…聞いても、いいかしら?あなたの願いを。世界を救う事で叶えたかった、あなたの…願いを』
ディーヴァの問いに照れくさそうにはにかんだ後、リッカは自信と希望に満ちた顔を上げ告げる。
「私の大好きな皆の未来がずっと続いていきますように。皆の道行きが、幸せに満ちたものでありますように。…後は、世界への恩返しかな。こんな私を受け入れてくれてありがとう…って!」
「リッカさん…」
当然ながら、彼女の生誕は祝福など与えられなかった。普通の善性、普通の感性を持つ『藤丸立香』の道は、ビーストを生み出さんとしたゲーティアによって閉ざされた。数多の実験、数多の悪意により彼女は悍しき悪龍となった。
だが、それでも彼女は自身を世界が受け入れてくれたと評した。そこにあるのは生への感謝。自らが受けた宿命を、呪いを、自分自身のものとして受け入れられた者のみが懐ける感情である。
『それがあなたの信念に繋がるのね。…あなたは、あなたであることから逃げない』
それが彼女の源泉。悲しいことも、運命も、己の因果を受け入れ前に進む。これまでも、これからも、ずっとずっと胸に懐く信念。
『なら、私達は全力であなたを支えるわ。あなたがあなたを見失わないように。あなたの心が死なないように。あなたの理想が摩耗しないように』
ディーヴァの言葉に、カーマもグドーシも頷く。リッカが世界の全てを護り抜くというのなら、周りにある皆はその戦いの中で傷つけるものから守護していく。
「もう、リッカ殿だけが護る必要はありませぬ。天上天下唯我独尊。世界の中にあるリッカ殿もまた、尊い命なのですから」
「まだまだ、私達の愛がリッカさんを満たしただなんてこれっぽっちも考えていません。…リッカさんの全ては、何もかもがこれからなんですから」
もう、カルデアはたった一人のマスターが支えるような歪な組織ではない。周りを見渡し、辺りを見据えれば、自分の背中も傍らも任せ、共に同じ目的を見据え、轡を並べし頼もしい同志たちが集っている。
「うんっ!私達の戦いは始まったばかり…だからこれからも頑張っていこう!私達の望む、完全無欠の結末に向かって!」
「あ、またリッカが暑苦しい決意表明してるわよ皆ー!」
「全く…。士気を上げるなら俺に任せろ。正義の魔人、マルコシアスが提案する!全員!円陣ッ!!」
「おぉー!これが噂の体育会系!アカネさん!参加しましょう!」
「まるでリア充みたいだぁ…(恍惚)」
「こういうの、いいね。皆でやれる友情の表れ」
「大和さんって意外と熱血ですよねー。ま、嫌いじゃないですよ、私!」
「飛鳥!上から物を言うなこのバカ野郎!」
「アンタは私にばっかりうるさくなりますよね!」
「エンジン?肩を組むの?」
「声を重ねたりもするんだ。じゃあ…」
「ハイハイハイハイ!この天空海が音頭取るわ!先輩だものね!」
「サナちゃんとか来るたびにもっかいやるからね!じゃあ…!」
「夏草ー!!ファイ、オー!!」
「「「「「「「オー!!!!」」」」」」」
高々と上げられる歓声。戦いの果て、取り返した幸福を噛み締め、リッカは強く想う。
(この幸せを守り抜いてみせる。皆と、一緒に!)
…その後、いい感じに落ち着いた皆にディーヴァ主導の振り返りプログラムの上映が無事叶うのであった…。
墓地
榊原「……どこかで、あなたも皆の活躍を見ているのかしら」
(いつかあなたに伝えに行くわ。私達の教え子は立派に育ったと。…たくさんのお土産話を持ってね)
良子「やーっぱりここだったわねー。考えは一緒、ね♪」
榊原「…忘れられないわ。だって…私達という影から、あんな眩しい光達が生まれてくれたのだものね」
良子「…何もかも、遅すぎたものね。私達は」
榊原「………」
『白銀つむぎノ墓』
入口
リリス【……………】