リリス【…聖霊?何故こんな所に】
?『それは私が、今日と言う日を覚えたからだ。君という存在に、会わせたい者たちがいるからだ。もう君の放浪は幕を閉じるべきだからだ』
リリス【……違うわ。あなたはただの鳩ね】
『ポ?』
【あの神に連なる者が、これ程世話焼きなはずがないもの。あなたはただの光る鳩】
『ポ…だが、それは受け入れよう。さ、中に入って入って』
【何があるというの?】
『言ったはずだ。これは、記念すべき日だと』
リリス【…?】
『というわけで、無垢なる獣にして人類の盟友ビーストIFの資格を持つもの達。今日はビーストネット設立の日だというのでマナカなる見習いに頼まれ皆を集めさせてもらった。せっかくだから、ここで皆の親睦を深めていこう。幸いここには美女しかいないからね。眼福っポ』
毎度の事ながら貸し切りのアーネンエルベ。しかし今日は記念すべき日だ。ビーストネット、獣の集いが初めて開かれた日…人類的にはあまり喜ばしくはないが、縁と憧れは止められないのである。
『藤丸リッカ君、アジーカ君、アンリマユ君。アマノザコ君。つむぎ君、そしてリリス。これらが今、世界が観測した未知の獣だ。ビーストIF・アジ・ダハーカ・アンリマユを頂点とし、人類を滅ぼす悪たる皆は世界に出ている』
『桃源郷から呼び出したのはそれが理由か…』
【先駆者】
アマノザコ、アジーカも出席しているこの会合、アンリマユは不参加である。元々リッカの半身であるし、そういった集まりや序列はアンリマユにとって面倒くさいものでしかないのだから。
【先生、私達も普通に呼び出されてますね…何者なんですか?あの鳩】
【聖霊…神と救世主と同一とされる存在よ。まぁ、あんな親しげな存在では断じて無いから頭がイカれているのでしょうね】
『酷い言いぐさだ…まぁそう言われて当然だが。それでは皆、楽園にのみ立ち塞がる者達として親睦を深めていこうッポ。今日は私の奢りだよ〜。パンとワイン、食べ放題飲み放題』
そう促されるままにはじまった、ビーストIFの資格を持った者達の会合。リリスはつむぎをリッカと語らせるよう促す。
【せっかくよ。夏草の後輩と話しなさい】
【先生…】
【見ているだけでなく、触れ合う事で伝わることもあるのよ】
その言葉に頷き離れていくつむぎを見やり、アマノザコの真正面に座るリリス。共に、最高級のパンとワインを口にしながら言葉を交わす。
『私はアマノザコ。異聞帯の伊邪那美の子であり、親愛の理を以てビーストIFとされた。今は伊邪那美と共に贖罪として神の座を降りている。よろしく頼む』
リリスにそのように語るアマノザコは、もうビーストIFとしては討ち果たされている。ここにいるのは人類愛たる人理の守護獣だ。そうでないリリスに、語りかける。
【私は、リリス。楽園より飛び出し、人類に救いと安らぎをもたらすことを願う女よ。よろしく、アマノザコ】
『うむ。…では早速訪ねよう。お前はどうやって救いと安らぎを齎すというのだ』
アマノザコの問いに、リリスは揺るぎない確信を有し答える。それだけが使命と言わんばかりの決意が滾る。
【勿論、平等を以て。貧富、優劣、上下関係。世界に満ちる差別や区別を、人類に刻まれた原罪ごと取り除きもたらすの。誰とも比べられる事もない、真に優しい世界を】
『平等…か。確かに人間とは差別や優劣をつけずにはいられない存在だ。お前はそれが許せないと言うのだな』
【あなたの懐く親愛より、私の理は漠然ながら幅広いわ。あなたはたった一人の為に、私は数多無数の誰かのために世界を手に入れるのよ】
リリスの言葉と確信を受け止め、アマノザコは静かに頷く。たしかに人間社会にはそういったものが満ちている。そこから産まれるものは数多無数の悲劇や哀しみ、憎しみや争いだ。
『そういえばお前はフェミニズムの象徴ともなっていたな。人類における女性差別への反抗のシンボル…お前は既に不当に虐げられる者達の希望なのだ。それは知っているか?』
【そうだったの?…人類は私をそう受け止めていてくれたのね】
『ほう。…笑えるのだな』
アマノザコが言うように、リリスの目元は微笑んでいた。彼女にとって人類は、大切な子たちなのだ。リリムでなくとも、皆大事な子孫だと信じている。
『ビーストⅣは比較の獣らしい。今は至尊の守護者をやっているようだが…出逢えば殺し合いだったかもしれんな』
【比較など平等を妨げる温床よ。不倶戴天なのは間違い無いわね。…私は平等の世界を手にする手段を既に見出しているわ】
『何だと?』
【世界に働きかける運用装置、万能の願望機、月の聖杯。あれに、平等を齎す為の仕掛けが眠っているの。地球という楽園から離されし石…私はもうすぐ、あそこに至る】
『確か、ムーンセル・オートマトンだったか。世界の運営装置、思うがままの未来を世界に齎すというものか』
【あなたたち魔術師や英霊は、聖杯を手に入れるために殺し合うのでしょう?そして聖杯で願いを叶える…。私も、それに習ってそうするの。平等な未来をもたらし、アダムとイヴの愚劣な原罪を全て抜き取り、世界を満たす。それが私の成すべき事。生きる全て。唯一神という愚劣にして傲慢に満ちた存在から、人類を取り戻す】
リリスの独白を、アマノザコは静かに聞いていた。その決意と方法を以てして世界を救うという決心。それを否定することはない。彼女もまた、今の世界に牙を剥いたのだから。
だが…アマノザコは聡明であり、伊邪那美を支える娘である。そのリリスの理の危うさを、見抜いていた。
『お前の愛は伝わった。ではいくつか、質問させて貰っていいか』
【どうぞ】
リリスにとって、それは確信に近い理念だ。だがアマノザコは、端的にその理の脆さを突く。
『まず、平等を齎すと言った事だが…どうやって齎すつもりだ?』
【…先程言ったように、月の聖杯を手にすることで…】
『そうではない。少し棘のある言い方になるが、『お前はただの一度も、平等に扱われた事など無いだろう』』
【─────!】
『アダムに見下され、神に見下され、お前は楽園を飛び出した筈だ。夜魔として扱われ、世界から弾き出された。お前はいつ、他人に平等を齎せるような経験をした?お前は知るまい。『平等』のなんたるかを』
【………それは…】
彼女は徹底的に虐げられた。アダムに、唯一神に、世界の全てに。アマノザコは言う。お前が知るべき平等は、ただの一つももたらされていないと。
『ついで二つ。お前の齎す平等は原罪を抜き取り、罪を消し去る事のようだが…』
【…それは、間違っていない筈だけれど】
『人類は今に至るまで、罪と共に生きてきた。罪は確かに刻まれているが、人が懐く美徳でもある。それらを抜き去った人は、果たして本当に人と言えるのか?』
【言えるわ。謂われのない罪など、子どもたちが背負う必要なんて…】
『いいや、人とは言えんな。罪を犯さぬ人間などいない。アダムとイヴとやらがそうなのだ。逆説的に、罪を犯し、改め、前に進むが人という生き物だ。お前のいう罪を抜き取られた平等な人類は『人間』とは言わん。貴様の子『リリン』という全く別の種になるだろうよ』
リリスの目に動揺が走る。その二つは、アマノザコに告げられた新観念だったからだ。自分は平等を知らず、また、世界に人類として自らの子、リリンを満たそうとしていると。
『お前は未知の獣の資格を持つという。その意味をよく考えてみるんだな。お前の平等は、どこから出て誰に向けられているものなのかを』
【…………………】
『これはあくまで、私が感じたものだが…お前が平等を必死に齎そうとしているのは『願い』に見える。お前はただ、信じたいのではないか?そういった世界が確かにあると。そしていつか、その平等こそは…』
【言わないで。……その先は、言わないで。お願いよ…】
アマノザコは口をつぐみ、パンとワインを口にする。想像以上に、リリスの理念に揺らぎを入れた事を悔やむ。
【…………………】
リリスは拘束具を嵌められた姿で、ワインの波紋を見やる。表面には、自身が映っていた。
誰のための平等なのか?
何故平等の世界が欲しいのか?
どうして、平等があってほしいと願うのか?
【…………】
かつて、自分とまともに話せる相手は一人だけだった。
同じ獣が、問いかけた。
…その答えは、今の彼女の中にはない。
彼女は、誰を救いたかったのか。
彼女はまだ、未知の獣のままである。
リッカ「こんにちは!私はリッカ!好きな事はサブカル全般、嫌いなものは先入観!よろしくね!」
つむぎ「あ、あの。白銀つむぎ。よろしくお願い致します」
リッカ「そんな固くなくていいよー。パパポポから聞いたんだけどさ、同じ夏草の出身でしょ?」
つむぎ「ま、まぁ…はい」
リッカ「じゃあ、ますます遠慮なし!歳もそんなにだからさ、ね!友達として!」
つむぎ「そ、そっか。じゃあ…よろしくね」
リッカ「うん!夏草、凄く良いところだよね!」
つむぎ「うん。でも最初はいい場所ってわけでもなくてね。リッカちゃんが来てるときには良くなってた」
リッカ「そうなの!?」
つむぎ「うん。例えば……は?」
リッカ「?」
つむぎ「………今、販売サイト見てたんだけど…」
『天空海のブロマイドグッズ』
『ロボットのサイン色紙』
「天空海ちゃんとうたうちゃんのグッズとかサインとか…転売されてる」
リッカ「……………………は?」
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