人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
(カルデアの業務で、何か古龍のような頑丈な身体の持ち主ができそうな事ってあるかな?ちょっと聞いてみよう)
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オルガマリー「それなら、各土地の地脈確保や秘境探索等はどうでしょうか」
ルゥ「秘境探索。地脈確保」
オルガマリー「御存知の通り、カルデアは人理そのものを守護する備えを進めています。その一環が人理金箔…一時的に人理に金の膜を張り、根付こうとする空想の根から人理を守護するのです」
ルゥ「あー、ギル達が主導でやってるやつだね」
「はい。その際になるべく多くの地脈を把握する事で、より確実に強固な膜を有する事ができるのです。そしてこれは極地における場所に多く点在するものでもあるので、人間の耐久では困難であったりするのです。よろしければ、古龍の皆様に担当していただけたなら…」
「なるほど、そういう事ね!だったら任せて!」
「助かります。どうぞよろしくお願い致しますね」
『ヒマラヤやエベレスト…今の時代にも、この様に厳しい神秘の環境が残っているとは。鍛錬にもなり、郷愁にもなる。素晴らしい仕事を斡旋して下さいましたね、ルゥ様』
「でしょー?」
カルデアから受け取った部署、秘境探索地脈確保部隊の仕事を早速こなすこととしたルゥは、先の龍達を呼び集め自分の監修の下、人間が未だ開拓の進んでいない土地への飛行とそれによる地脈の確保を目的とした外出を行っていた。今はクシャナを連れ、超標高の山脈とそこにある地脈の確保に邁進しているのだ。鋼の肉体を持つクシャナの翼は、荒れ狂う吹雪などものともしない。
『彼処の土地から強い大地の力を感じます。恐らく目当ての地脈の地点かと』
「よしよし、じゃあ確保しちゃおうね」
ルゥは背中に乗せてもらい、大地の地脈のエネルギーをカルデアへと向ける細工を行う。こうすることにより、地球そのものの魔力をカルデアへ回すことができる。絶えて浸しい魔力の穴、神秘の大源を先んじて確保するのだ。
「ここは確かに人間にはちょっと厳しいね。鍛え抜かれた精鋭じゃないとあぶないよ。助かったよ、クシャナ」
『いえいえ。ルゥ様にお仕えできる事こそ私の喜びです。紅き詩人と黄衣の王もよくやってくれましたが、負けていられませんもの』
クシャルダオラとは金属と鋼の龍であり、風や嵐などものともしない。ルゥの翼として、極寒の地へのエスコートは完璧にこなすことが可能であった。
『しかし、カルデアの人員は地球そのものを本気で守護しようとしているのですね。調和を理念とする狩人達の想いは受け継がれていると見ました』
「私達のいた頃は生命同士のぶつかり合いだったけど、今は結構複雑なんだよね。外宇宙からの侵略だったり、神様だったり。生き延びる為には何でもやるのが人の長所だもの、備えあれば嬉しいな、というやつだね」
『備えあれば嬉しいな…。なるほど。人間は慎重になりましたね』
「これでよし!じゃあクシャナ、レポート書いてカルデアに報告してもらえる?」
『解りました。備えあれば嬉しいな作戦、第1段階は完了ですね。ルゥ様はどちらに?』
「砂漠と、湿地帯地域にまだ手付かずの秘境があるんだ。テスカ夫婦とナズと行ってくるね」
『ご武運を。ご帰還、お待ちしております』
そうしてルゥは、単身現地集合にて極限環境たる秘境を渡り歩き、カルデアへと神秘と大地の力を確保する作業に勤しむ…───。
〜
【砂漠!ここは生きていくだけで生命の強靭さが問われます。強者を見出すにはとってもいいところではありませんか、ルゥ様!】
「サソリとかには気をつけたいよねぇ。あ、ナナ。そこそこ」
『はーい。マーキングするわねー』
テスカ夫妻の力を借りて、油田確保めいた地脈の獲得を行うルゥ。彼女個人は深海だろうと真空だろうと意に介さない生命の究極であるため、シャツとズボンのラフスタイルで何処にでも出張できるのだ。ナナの導きに従い、地脈を確保する。
「どう?カルデアではうまくやっていけそう?」
『お陰様で。人間は小さくても多様性に満ちているから、欲しい物がすぐに手に入るもの。集落を作って繁栄しているのはそういう意味があったのね、なんて驚いちゃったわ。借りたマイルームも広くて申し分ないしね』
彼女は命の遣り取りが介在していない故か鷹揚にしてのんきしており、人類の発明や集落、文化をきままに楽しんでいるようだ。古龍故に子孫を慌てて遺す必要もなく、強者ゆえのエンジョイ勢といったところだろう。現に砂漠にいようが、汗一つかいていないのがその証拠だ。
【先日、シミュレーターなるものをイジらせていただきました。我々の土地の火山や砂漠すらも再現できる人間の技術には感嘆を隠せなかったです!なんとまるでそこに帰ったかのようなクオリティで大層驚きました!人の技術、恐るべし!】
どうやらカルデアの技術に夫婦揃って御満悦のようで、嬉しげに語る二人にルゥもまた満足げに頷く。これが恐暴竜や金獅子であったなら大惨事であるだろうから、古龍ならではの知性と理性に感謝だ。
「私達の時代は終わったのかもしれないけれど、こうして後の世の為に出来ることはあるからね。人間がいつか後ろに託すことが出来るよう、私達なりに支えて行こうよ」
【はっ!ルゥ様の御心のままに!】
『だとすると、ルゥ様もうかうかしてられないかもね?煌黒龍や煉黒龍なんて現れたら、今じゃ貴女しか打つ手が無いんじゃないかしら』
「むぅ〜。現れてほしくはないけど、現代社会ならそうだよね…でも、私がやらなきゃいけないのは赤龍だと思うな。ゼノは見つけ次第始末しなきゃね」
【噂には聞きましたが、古龍の王などを名乗る不届き者でしたか。それほどまでの力を持つので?】
「まぁね。地脈を吸い上げて星を殺すのは…まぁちょっと、死んでもらうしかないかなぁ…」
悲しい事だけどねぇ。そう告げるルゥの目は、どこか遠くを見つめている。彼女はやはり、星とその全てを愛しているので。外来侵略と星を脅かす存在だけは看過できないのである。
〜
「あっつ〜〜…蒸し暑〜い…」
『ルゥ様バテてるんだ〜。私は全然平気だよー』
次は湿地帯、密林地帯とも言える生命の根源である地帯への敢行だ。まともに歩くのすら難しいそこを、ステルス機能を持つナズの龍体に載せてもらう形でやり過ごしている。特有のジメジメはどうしようもないので気合しかないが、ルゥ的には早くもぐったりであった。
「流石だねー。私はつらい」
『変なの。ルゥ様は龍達の祖なのに、なんでわざわざ弱点とかニガテなものを残しているの?モロコシとか』
ナズの言う通り、本来ならば彼女は遥か原初の時代から君臨し、その気になれば時空移動すら出来る超生命体だ。狩ることどころか人間が目の当たりにすることすら難しい。しかしこうして、不便な機能を有してまで人の世にいる事がナズには不思議に見えているという。
『最強!誰も敵わないとか、ルゥ様はいらないの?』
「そだねぇ。そういうたった一匹の最強じゃ、生命は多様性を育てられないんだよね」
ルゥやマルドゥークもそうであったが、弱き生命体は弱さを補うために多種多様な進化をする。脅かされれば脅かされた全てに対処するために進化する。そうするためには、世界のあらゆる脅威に挑まなくてはならない。
その上で、全ての脅威を上回る存在がいてしまったら、それは進化の一極化を生み出してしまう。ルゥを倒すためだけの進化をしてしまう、龍に打ち勝つ民族となる。それはあまり、良くない変化であるのだ。
「みんなと一緒になりたいのなら、弱点とかも必要なんだよね。痛さを知らないと、誰かの痛みをわかってあげられないんだよ」
『誰かの痛みをわかってあげられない…ふーん。ルゥ様っておばあちゃんみたいな事言うんだね』
「もう最古レベルのおばあちゃんなんだよねぇ、本当は。イザナミやティアマトと同年代!本当にぃ?」
『あはは!じゃあルゥおばあちゃんって呼んだほうがいいかな!』
「うぅ、出来ればそのままルゥ様でお願いさせてぇ」
そんな事を言い合いながら、無事に地脈を確保。こうして、第一回の秘境探索組の活動は完遂されることとなる。
「お疲れ様、ナズ。カルデアに帰ったら美味しい物を食べようね」
『はーい!美味しいもの、美味しい物!』
龍達も結局、今の世界は好きなので。こうしてささやかながら、人の世に力を貸してくれるのであったとさ。
ルゥ「……確かハトさん、最後の敵は神とか言ってたような」
(空想樹の役割をもたせたムフェトジーヴァとか出ないよね…)
「…現れませんよぅに」
『?』
人知れず、こっそり祈る龍でしたとさ。