人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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(感想返信は今から行います)

アンリマユを有する、藤丸リッカの魔力は尽きることはない。実質、本来はあり得ない『無限の魔力』を彼女は行使している。

これはアンリマユという神霊を宿した際に起きた効果であり、アンリマユとは人間の悪性そのものたる神である。

即ち、アンリマユの魔力リソースとは人間の悪性感情であり、集合無意識のデストルドーといった破滅願望からも魔力を抽出できる。

それをアジーカ…アジ・ダハーカの存在を『心臓』としてリッカに魔力を媒介させ、彼女に無限大の魔力を供給しているのだ。

理論上、アンリマユとアジーカを消滅しない限り、魔術師としてのリッカの戦力は戦略兵器クラスとも言える。

とはいえ、生成する魔力が無限であれ、一度に大過剰魔力を使用すれば生成量が間に合わない場合もある。そしてそれは、リッカへの致命的な窮地ともなる。

そうならない為に、アンリマユは一つの活動をしている。

彼女が言うには『副業』。趣味と実益を兼ねたライフワーク。それは──


清掃担当神&魔王

【ヒャハハハハハハハハ!!いつ来ても、いつ暴れてもここは最高だぜ!ぶっ殺してもぶっ殺しても誰も文句を言わねぇからなぁ!!】

 

そこは、リッカの精神世界。その奥底にある廃棄口とも言える場所。彼女も知覚することない、魂の奥の奥、下の下の部分。そう、【この世すべての悪】たる彼女が住処としている場所。外界に出ている彼女は触覚、端末に過ぎない。故にそれほどの力を持たない。本体たる悪神アンリマユは、リッカの魂の最奥にガッチリと食い込み、息づいている。

 

そこは無意識領域、夢ですら来ない神の加護すら届かぬ場所。そこでアンリマユが何をしているのかと言えば…端的に言えば、食事とゴミ掃除だ。

 

【【【【【■■■■■■】】】】】

 

闇の空間から、多種多様な姿を取る影が現れる。それは魔物であり、怪物であり、敗軍の長でもあり、踏み躙られた数多無数の存在たち。【英雄に溜められた淀み】そのもの。

 

【いいねいいね、私は人気者だからよぉ!引く手数多で嬉しいねぇ!!】

 

彼等は英霊の人生にて積み重ねられた死骸、澱み、屍達。決して消えぬ犠牲者たちである。それらは英霊の情報として、契約パスを通りリッカの魂に汚れとして溜め込まれる。サーヴァントの夢を見るのと原理は同じだ。契約の上で、避けて通れぬ道だ。

 

当然それは汚れであり穢れなので、蓄積すればリッカの魂に悪影響をもたらす。言わば英霊の悪性情報なのだ。英霊という高次元情報体の擁する悪性など、人間には許容できないだろう。

 

だからこうして、アンリマユは暴れ狂い、喰らいつくし、己の力としている。流れ込む悪性を統べる王、神として。リッカの魂をずっとずっと護り続けているのだ。本人的には、ただ暴れているだけのつもりだが。

 

【デメリットのある力なんざ欠陥品!時代は安心安全クリーンじゃなくっちゃなぁ!!】

 

本来は己のみで対処していたが、後に巌窟王、丑御前も加わり三人体制でリッカの魂の淀みを駆逐している形式をとっている。こればかりは、彼女の魂の深奥に踏み入るきっかけがなければ叶わないものだ。二人はそれに合致した。

 

終わりはない。果てはない。彼女が人類最悪のマスターとして戦い続ける限り、アンリマユ達の喰らう悪性は絶えることは決してない。それは楽園のマスターを選んだリッカの使命の影、闇であり毒である。

 

だが彼女の最悪にして最高の幸運は、彼女が有した半身の神が比類なき悪神であった事だ。アンリマユはこの世すべての悪。人類の悪性情報、人類史の淀みなど彼、彼女にとっては色とりどりのご馳走でしかない。

 

その吸収、処理効率は凄まじく、楽園のサーヴァント全員の悪性を喰らい尽くして未だ無尽蔵の余裕を有す。逆説的にこの世すべての悪がアンリマユなのだから、この世すべての悪がアンリマユの容量を突破する筈もないのだ。人類史に刻まれた英霊全ての情報を悪性にしてリッカに流し込めば或いは、破裂の可能性が出るといった規模である。

 

とはいえ万事完璧というわけにもいかない。アンリマユとしての力はここの悪性の捕食に費やさなくてはならないため、触覚に本来の悪神の力は有せなくなっている。キャパは無限だが手が回らない、といった形容が相応しいだろうか。

 

次に、この内部闘争こそがリッカ無尽蔵の魔力の源泉であり、アンリマユとしての霊基の根底なので、全ての契約が断ち切れてしまえば、悪性に枯渇が起きてしまう。その場合でも自身が特大の悪性になれば燃料は確保できるが、アンリマユはそれをやるつもりはない。

 

【ヒャハハハハハハハハァァァ!!】

 

暴れているだけでリッカのスピリチュアルケア、ストレス発散、魔力供給が出来るのだから止める理由もないし、自分がリッカを害する理由もないのだ。そもそも巌窟王と丑御前が怖い。

 

とはいえ、その戦いは正真正銘終わりのない無間地獄だ。リッカの魂を清澄に保つ為に、アンリマユという神はそのほとんどの能力を費やしている。触覚が取るに足りない英霊に見えてしまうほどに。絶え間なく国家戦争を開催しているようなものだ。悪性を喰らえば喰らうほど回復するのも相俟って、その宴に終わりはない。その為に──

 

【!!】

 

【Laaaaaaaaaaaaaaaa!!!】

 

こういった──超弩級の悪性情報にやや遅れを取ることもある。ティアマトの形をした悪性情報に、突撃を受けるアンリマユ。

 

【子離れしろ、母ちゃんよぉ!!】

 

援軍など望めない。丑御前も巌窟王も、それぞれ終わらぬ戦いに身を投じている。必要ならば自分が代わっているが、今ではそれは望めない。

 

【【【【【ウレシイ!ウレシイ!アソブノ、タノシイ!】】】】】

 

ラフムの形まで取り始めた時はいよいようんざりしたが、その分カロリーは高い。今日もリッカの魔力には困らなそうだ。

 

来いや、歯茎共。そう吠えんとしたその時───。

 

【なるほど。オレの捕食者と大賢者みたいなものか】

 

【ぁ?】

 

【神之瞳、起動────神之怒(メギド)!】

 

聞き慣れない声が空間に響いたと思えば、悪神状態のアンリマユをかわすように、ティアマトとラフム悪性目掛け暗黒太陽光が降り注ぎ一瞬で蒸発させる。

 

更にその勢いは、リッカの魂に氾濫していた悪性を一旦焼き払う程に増大し、一掃を完了する。対国宝具ばりの、凄まじい威力。

 

【リッカからもらったスキルで、この空間を探知できたんだ。まぁ、魂の中なんだけど。やっぱり人類最悪のマスターっていうのはその反動も大きいんだな】

 

【お前…リムルじゃねーの】

 

【やぁ、アンリマユ。リッカの力の源。お邪魔させてもらってるよ】

 

以前に出会った、しかしあまりにも圧倒的な風格を纏うスライム、リムル。リッカの魂にて、奇しくも再会を果たす──。

 

 

【ほー、聖魔混世界リムル・ザ・ワールド設立の手始めに魔王になって、リッカから貰ったスキルで廃棄口にやってきた訳ねぇ】

 

【そうなんだ。この世すべての悪スキルのお陰で、リッカの魂の淀みを感知出来た。戦力差でいえば一万対一なのに圧倒してるなんて訳の分からない状況が気になって…】

 

【それでうら若き乙女の魂に不法侵入かぁ?チクっちゃおうかなー】

 

それだけは勘弁してくれぇ!と慌てるリムルだが、今の彼の肩書きは八星魔王、アルティメットスライム、カオスクリエイトと幅広い。それだけの力を有しながら、彼はリッカを心配してやってきたのだ。

 

【まぁ正確には、未来にオレが至る力の可能性を引っ張って顕現させてここに来たから、本来のオレは駆け出し魔王なんだけどな。アンリマユ】

 

【魔王ってだけで私より下だな。私の配下も七大魔王だしな】

 

 

【うんうん、やっぱりチヤホヤされるより目指す上がいるほうが張りがあるな!それで本題なんだけど、ここはリッカの魂の…ゴミ捨て場なんだよな?】

 

アンリマユは頷く。心の光すら差し込まぬ無明の闇。そこがアンリマユの戦う場所だ。彼女がいつか戦いを終えるまで。

 

【ゴミ掃除の人員は多い方がいい。オレにも手伝わせてくれ、アンリマユ】

 

【はぁ?魔王様がゴミ掃除だぁ?】

 

【あんただって、オレの世界風に言えば絶対悪神性(アンリマユ)じゃないか。…この世すべての悪スキルで、リッカの抱えているものを少し読み取れたからさ。リッカの抱えてるものの重さがわかったんだよ】

 

言葉少なく俯くリムルを見て、アンリマユは得心する。どうやらリーマンには少々刺激が強かったらしい。

 

【まずは…友達として、陰ながら彼女個人を支えたい。彼女が世界を護るなら、オレは彼女を護りたいんだ。そのための戦いなら、オレも力になりたい!】

 

その問いに、アンリマユは口笛を吹いた。予期せぬ場所から有能人材がダークネス企業に就職希望だ。

 

【…言っとくが、終わりはずっとずっと先だぜ?】

 

【覚悟の上だ。もう国の一つや二つ合併したり占拠したりしてるしな!魔王として!】

 

どうやら、友達としての誓いは彼にはとても大事らしい。こうして、誰にも認められぬ戦いを望むほどに。

 

【なら止めねぇよ。倒せば倒すほどリッカに還元されるぜ、気張れよ!】

 

【おう!友達の為に戦うのも魔王ライフのファクターだ!】

 

アンリマユとリムルは立ち上がり、。目の前に現れし四凶の悪性情報へと向かい合う。

 

【リッカに伝えておいてくれるか!】

 

【何を!】

 

【こっちは元気だ、って!】

 

【ハッ、近況報告くらいテメーでやれや──!!】

 

世界より、まずは大事な友達を支える。

 

魔王となったリムルの志は、あのときのように甘く。

 

───そして、綺麗なままであった。

 




リッカ「すや〜…」

アンリマユ【へへ、気持ちよさそうに寝やがって】

アジーカ『へい大賢者とディーヴァ。リッカのメンタルとバイタルは』

ディーヴァ『メンタルは極めて良好!ストレスは適正値、大丈夫!』
大賢者『バイタル健康値を維持確認。体型、維持を確認』

アンリマユ【よしよし】
アジーカ『お疲れ』

アンリマユ【おう。もしかしたらこれから楽できるかもな?】
『?』



【さぁ、アンリマユ神の代理だ。かかってこい!】

(まだギルガメッシュ王には顔向けできないけど…いつでも力になるからな!)



アンリマユ【頼もしいヤツが入ってきたからよ】
アジーカ『?』

キラナ『セーヴァースイーツたべよー!アジーカもー!』

アジーカ『本日5度目』

アンリマユ【…青春してんなー】

リッカ「すや〜」

今日もまた、リッカは皆に愛されている。

…デメリットのない力を。アンリマユの人知れぬ努力はこれからも続いていくのだ。

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