人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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《暴食。日常で摂取する食事を大罪と捉えたものだ。味わい、糧にするのではなく、喰らうために喰らうもの。けして満たされることはなく、乾きが癒されることもない。何故か?『喰らう』事こそが宿業に変じているからだ。味も解らぬ、意味も解らぬ。ただ乾くままに、飢えるままに喰らい続ける。森を喰らえどまだ足りぬ。海を飲み干せどまだ足りぬ。『喰らう』ものが有る限りその罪過は無限に積み上げられよう。世界の総てを喰らうに至る最も身近に潜む破滅の因子、それがこの罪の正体よ》


――食べることが目的となる事が罪・・・それはけして満たされない、癒されない・・・喰らうものが有る限り・・・


(それが暴食。まんまだね。で、それの対処法は・・・) 

「英雄王、よろしいですか」

《む?エア、少し下がれ、我が対応する》

――はい!


「どうした?お前に急務は任せておらぬが?火急の用か?」

「いえ・・・その」

『パン』

「アルテラとパン作りに挑戦してみたのです。試作品はいかがですか?」


――わぁ・・・!

《フッ、目を輝かせおって。・・・良かろう。おあつらえ向きの教材であることだしな》

「戴こう。王の責務ではないお前の手掛けた料理、査定してやろうではないか」

「お、大袈裟ですよ」


暴食

「では、見回りにいってきますね。いいですか、私がここに戻ってくるまで、けして外に出てはいけませんよ」

 

 

ジャンヌが、リッカに言い聞かせるように伝える

 

 

「気を付けてね、ジャンヌ」

 

 

 

「大丈夫です。必ず戻りますから、貴女の下に。・・・それでは」

 

すっ、とリッカの頬に口づけを施し、出ていく前に2度ほど振り返りながら牢屋を出る

 

 

「いってらっしゃーい!」

 

 

「・・・ふふ。ジャンヌ様も、アヴェンジャー様も、とても優しいお方たちなのですね」

 

 

メルセデスが、微笑ましげに笑う

 

 

「うんっ。アヴェンジャーって、誰かの世話を『焼く』クラスだからね!」

 

 

どや顔で伝えるリッカ

 

アヴェンジャーもジャンヌも、率先して見廻りを申し出た。二人はここで待機し、試練を待つ

 

 

「はい。あの二人は、言葉は荒々しくあっても。あなたを重んじ、尊重し、何よりも気にかけている・・・まるで、あなたを暖かく照らす暖炉の炎のよう」

 

「うん。ジャンヌは暖炉の火だね!ずっと一緒にいたい!アヴェンジャーは・・・何て言うのかな?キャンプファイヤーの火かな。近くにいると熱いけど傍にいたいみたいな」

 

「ふふふ。素敵な所感です。・・・あなたたちは、毎日戦っているのですね。裁きの間にある支配者と」

 

心配そうに、メルセデスはたずねる

 

 

「うん。そうしないと帰れないからね。私やジャンヌの終わりは、ここじゃないから。――奪われた皆の未来を取り返すために、進まないと」

 

ミシリ、と拳を握る

 

 

「――アヴェンジャー様は言いました。此処に集うのは、何かに囚われた魂なのだと。英霊、ヒトを越えた魂さえ」

 

片手で顔を覆い、苦悩する

 

 

「私は、そんな風に立派なものではありません。英霊だなんて、有り得ない。でも私も、今はシャトー・ディフにいるのだから・・・囚われた魂。きっと何か、罪の具現として選ばれたのかもしれません」

 

「――そっか。それは、そうなのかも・・・しれないね」

 

にっこりと笑う

 

 

「私、メルセデスとは戦いたくないな!だって・・・こうして話せて、気持ちを交わせたんだもん!だからきっと、大丈夫!もし、戦いあうとしても・・・私はあなたを恨まないし、悪く思ったりしない」

 

 

「リッカ様・・・」

 

「敵だからって、戦うからって。憎んだり恨んだりしなくてもいいんだよ。きっと。・・・もし、メルセデスが出るために私を倒さなくちゃいけなくて、逆もそうだとしたら」

 

スッ、と拳を突きだす

 

 

「戦うことを、放棄しないで。生きることを、諦めないで。私達は憎み合うために戦うんじゃない。生きるために戦うの。この地獄で、理解しあえたことは・・・紛れもない。奇跡だと信じて」

 

ね?とウィンクするリッカ

 

「だから・・・その時は、よろしくね!メルセデス!」

 

「・・・はい、リッカ様。例え、あなたに立ち塞がることになろうとも。私は、貴女への感謝を忘れません・・・」

 

「うん!」

 

ギィ、と扉が開く

 

 

「女子会の語らう時間は残念ながら終幕を迎えるぞマスター。さぁ、立て。第五の裁きが」

 

「ちょっとどいて」

 

ぐい、とジャンヌが帰ってくる

 

「ただいま、リッカ。アヴェンジャーの言う通り、試練へと向かいましょうか」

 

「はーい!」

 

「フッ、エデなりしアヴェンジャーよ。余程マスターが愛しいと見える」

 

「そう見えないなら節穴も良いところですね。私の、こう・・・全身からあふれでる炎はリッカへの気持ちです」

 

「ありがとう、私もジャンヌ・オルタが大好き!」

 

「ン・・・っ。・・・そういうストレートな気持ちは、やっぱり嬉しいですね」

 

照れ臭そうにもじもじする

 

 

「さぁ残る試練も少ないのです。さっさとギルガメッシュの作った楽園に帰りましょうか。アヴェンジャー、案内」

 

「クハハ!良かろう!天に至るため、地獄を確かな足取りで進むがいい!」

 

 

「じゃ、ちょっと地獄を覗いてくるね」

 

「はい、リッカ様。お気をつけて」

 

 

三人は、すっかり慣れた足取りで地獄へ向かった・・・

 

 

 

 

 

 

 

「先に、裁きの支配者を伝えておくぞ」

 

 

歩みながら、楽しげに告げる

 

 

瞬間――

 

『――総てを喰らわんとしたことはあるか』

 

 

頭に、声が響く

 

 

『喰らい続けても満ち足りず、飢えがごとき貪欲さによって味わい続けた経験は』

 

 

偉大さと、優しさを秘めた声が響く

 

 

『消費し、浪費し、後には何も残さずに、ひたすらに貪り喰らい、魂の乾きに身を委ねた経験は』

 

 

その言葉は説く。地獄に屹立せし大樹のごとく

 

 

『それは、喰らい。費やし、愛なき身に欲望を詰め込むもの』

 

 

穏やかに、しかし悲しみを込めて説く――

 

 

『――暴食の罪。即ち、我がローマの悪性』

 

 

――暴食・・・

 

思い返されるのは、高校時代のラグビー部、マネージャーをやる前の体験入部・・・

 

 

いいからチャンポンだ!

 

 

腹一杯になりゃあいい!質なんぞどうでもいい!

 

 

食え!とにかく食え!エネルギーに変えろ!

 

味なんて二の次だ!食えりゃあいいんだ!

 

 

食らえ!食らえ!食いまくれ!!!

 

積み上げられる器

 

食い散らかされた残飯

 

 

散乱する食事

 

それこそは、食べるために食べるという行為そのもの――

 

 

『・・・気高く戦う魂よ』

 

更に、声が響く

 

 

『お前の対する敵は、ローマの悪性に翻弄されしもの。我が愛しきローマの一部』

 

 

威厳ある声は告げる

 

 

『――頼む。我が子に、細やかなる救済を。魂の迷いを晴らす、確かなる刃を。――世界を背負い、新生を果たさんとする輝きの獣よ』

 

――同時に、声は遠ざかる・・・

 

「ヤツは、暴食の具現だ。前の敵のようにあれこれ理屈をこねてくる心配もない。殺せ。殺すだけでいい」

 

「――マスター?」

 

「へっ?」

 

ジャンヌの声に、はっと我に帰る

 

 

「大丈夫ですか?熱でもある?あまり時間は無いかもしれませんが、疲れたのなら一息つきますか?」

 

「随分と甲斐甲斐しいな、エデなりしアヴェンジャー」

 

「当たり前です。アヴェンジャーとは何よりもマスターを重んじ、労り、傍に寄り添うクラスなのですから。――リッカ?」

 

「あ――大丈夫。具合悪いとかじゃないの。ただ

声が聞こえて・・・」

 

 

「声?」

 

「ほう。このシャトー・ディフに声を届ける何者か。地獄の魔王か、気紛れにこちらを翻弄する神とやらか。まぁどちらでもいい。どのみち行き先を決めるのはお前なのだから」

 

 

「もちろん進むよ。ごめんごめん――あ、ジャンヌ」

 

照れ臭そうに、リッカは話す

 

 

「もしかしたら、疲れがたまってるのかも。終わったら・・・甘えていいかな?」

 

 

それは、リッカなりの・・・弱音の吐き方でもあった

 

 

「――えぇ、えぇ!もちろんです!私の炎は、貴女をしっかり暖めてあげますよ!」

 

「フッ、敵には弾劾の業火、マスターには癒しの暖炉か?随分と炎の扱いに慣れたようだな、エデなりしアヴェンジャー」

 

「フン、ほざきなさい。アヴェンジャーとは日々進化・・・いえ」

 

バンッと胸を張る

 

 

「ジャンヌ・オルタとは!日々進化する英霊です!!」

 

「クハハハハハ!ならばその進化、途絶えぬようにすることだ!さぁマスター!試練の時間だ!!」

 

上機嫌に、扉を粉砕するアヴェンジャー

 

 

「よーし行こう!」

 

「リッカ」

 

「ん?」

 

ジャンヌに振り返る

 

 

「――その。変なことを言うようですが」

 

すっと、手を握る

 

 

「――ありがとう。私に、弱音をみせてくれて。良かったら・・・これからも、リッカの弱いところを見せて、そして・・・支えさせてくださいね」

 

「――うん。ジャンヌは私だけのジャンヌだからね。特別!」

 

「――嬉しい、です。貴女の特別になれることが、こんなにも――」

 

アヴェンジャーは、胸に抱いた暖かい焔を確かに噛み締めた――

 

 

 

 

「オォオォオ、オォオォオオォオォオ!!!」

 

 

裁きの間に響き渡る、地獄の獣がごとき雄叫び

 

 

「余の、振る、舞いは、運命、で、ある・・・!余は、総てを――」

 

地獄の総てを震わしながら叫ぶ

 

 

 

「貪り!!喰らうのみ!!!」

 

 

「・・・どうして地獄のケダモノは無駄にレパートリーが豊かなのです?」

 

うんざりげにジャンヌが吐き捨てる

 

 

「もっと、こう・・・ケルベロスとか、カッコいい感じの・・・」

 

「クハハハハハ!共通する事柄は一つ!一様に!醜いということだ!!」

 

 

「――それもそうですね。では、さっさと片付けましょう。・・・行ってきます。リッカ」

 

そっ、と耳にささやく

 

「貴女のカタチ、しっかり見つけてくださいね。あのケダモノは、私が引き受けますから」

 

「ありがとう、ジャンヌ!」

 

「はい。――では」

 

しゃらりと剣を抜き、旗を掲げる

 

 

「おまえは、なんだ・・・余を、とめるか・・・余は、皇帝、なるぞ・・・!」

 

「止めません、殺します。喰らいたければ差し上げます。臓腑を余さず焼く、私の特製業火をね」

 

 

「余は、喰らう!!もう味さえ解らぬが!!余は、喰らう!!もう意味さえ解らぬが!!女神ディアーナが、すべて、ゆるし、たもうた!!」

 

 

「腹下して死ね――――!!」

 

 

拳が、剣が、今地獄にてぶつかり合う!!

 

 

「味も、意味も、解らない・・・」

 

 

「――それこそが罪。それこそが暴食。食えど食えども満たされぬ永劫の乾き」

 

バサリと、マントを翻す

 

 

「お前は何を見出だす。この原初の乾きに、何を得る?どのような美徳を見出だす?」

 

 

「私は・・・」

 

 

 

――落ち着いて、と思った

 

 

 

ゆっくり食べて、と単純に思った

 

 

ご飯は無限じゃない

 

 

肉、野菜、魚、あらゆる生命を戴く大切なものだ

 

それを味わわず食べてしまうのはあまりにももったいない

 

どうせ食べるのなら、楽しく、皆で、味わって食べるべきではないのか?

 

 

 

そう考えたからこそ、私はマネージャーになった

 

 

食べる時間をきっちり決め

 

 

皆で顔を合わせて食べ

 

 

いただきます、ごちそうさまを徹底させた

 

 

献立を考え、きっちり摂取するよう呼び掛けて、

 

 

食べ過ぎ、食べないはけしてしないように徹底したのだ

 

 

そして、練習が終わり、帰った時には皆で打ち上げをする

 

大会に優勝したら、とことん皆で騒いで歌いながら食べる

 

 

食べるために食べるんじゃない

 

 

食事とは、彩るために行うのだ

 

 

かけがえのない毎日を

 

 

いつも欠かさず行われる、三食の儀式を・・・

 

 

 

「――皆で囲うご飯はね」

 

ゆっくりと顔をあげる

 

 

「たとえ、ちっちゃいお弁当でも・・・物凄く美味しいんだよ」

 

 

「――ほう」

 

 

そう。一人ではただ、食べることにしか目がいかなくとも

 

 

皆で、肩を組んで、楽しく味わえば

 

 

自ずと『食べたいだけ』食べれるようになるんだ・・・!

 

 

 

『暴食』は、自分以外の誰かの存在により『節制』が叶う

 

 

だからこそ――食卓という言葉が生まれたのだ

 

 

――業がまた、光へと変わり。怨念が総て引き寄せられる

 

 

 

「だから――!」

 

「クハハ!飛び込むか!いいぞ!お前の刃を突き立ててやれ!」

 

 

リッカが駆ける。ジャンヌとカリギュラの間に割り入る

 

 

「カリギュラ!!」

 

「リッカ!?」

 

 

カリギュラの反撃をアヴェンジャーが食い止める

 

 

「さぁ!奮い立たせろ!お前の所持せし、伝家の宝刀を!」

 

「うん!ジャンヌ、ここは私が!」

 

 

「――貴女を信じない日などありませんよ!」

 

スッと距離を離すジャンヌ

 

 

――そう。どれだけ武器を持とうとも

 

どれだけ拳を磨こうとも

 

 

私の最高の武器は、何一つ変わっていない――!

 

 

「ァア、ァアァアァアァア!!」

 

「カリギュラ!!――ネロ!好きだよね!!」

 

 

「――!!?」

 

 

びきり、と動きが鈍る

 

 

「ネロ!大好きだよね!!」

 

 

リッカは叫ぶ

 

「ネロ・・・――ネロ・・・――!?」

 

 

「あなたはそれでいいの!?味も解らない、意味も解らない食事なんて、それでいいの!?」

 

 

「・・・ネロ・・・!!」

 

 

――そう、私の信念。私の戦い

 

 

それは――

 

「あなたが欲しいのは、食べても食べてもなくならない乾きじゃない!あなたが望むのは、終わりのない食事じゃない!」

 

 

――『意識があるなら、対話を必ず諦めないこと』――!!

 

 

「――あなたが望んでいるのは!ネロや、大切な人との細やかな食事じゃないのかなって、私は思う!!」

 

 

「――――――――!!!!!」

 

 

――・・・そうだ

 

一人で満たされぬなら、一人で乾きが癒せぬなら

 

それはきっと――『誰か』が近くにいないから。

 

 

心が満たされていないから・・・総てを見失ってしまうのだと、私は感じた

 

 

だって、彼は獣じゃない

 

ちゃんと・・・ネロを愛する、心があるのだから・・・

 

 

「――――あぁ、そうだ。その通りだ」

 

 

カリギュラから狂気が薄れ、理知的な振るまいを行う

 

 

「そうだ、そうだ。余は、愛している。アグリッピナを、ネロを・・・愛している。余は、味わう。彼女たちが愛した総てを。余は、飲み込む。彼女達が産み出した、かけがえのないものを」

 

ゆっくりと、目を閉じる

 

「それだけで――余の心は、余の魂は・・・満たされるのだ――」

 

「・・・鎮静に成功したか」

 

ゆっくりと戦闘体勢を解くアヴェンジャー

 

 

「・・・礼を言う。気高き獣。人の道を歩み始めし獣よ」

 

「――声が聞こえたんです。あなたを頼むと、誰かの優しい声が」

 

「・・・そうか。・・・余の魂は反英雄の身に相応しき身でありながら、英雄として刻まれた。それは――まさに、ネロへの、ローマへの愛があったからに他ならぬ」

 

 

スッ、と肩に手を置く

 

 

「故にこそ、余はお前に伝えよう。――愛を知るのだ、獣よ。世界にでもよい、隣人にでもよい。あまねくある世界の中に満ちる、愛を知るのだ。それこそ――お前を人たらしめる、かけがえのない感情である」

 

「愛・・・」

 

 

「――この余でさえそうなのだ。ならば、人の気高さと高潔さを知り、湛えるお前が落ちるはずは無い。――月の女神に真に愛されし美しき獣よ。余は、お前の道行きを信じているぞ――」

 

「――はい。カリギュラ・・・皇帝」

 

 

「・・・女神ディアーナ、彼女を頼む。――嗚呼、ネロ。我が妹の生き写したる愛し子よ」

 

 

ゆっくりと、カリギュラが消えていく。リッカの言霊に討ち果たされた裁きの支配者が、満足げに消えていく

 

 

「どうか、どうか。ささやかでも構わぬ、お前だけは幸福であれ。狂気も怒りも、余が連れていく」

 

 

ゆっくりと――空に手を掲げ

 

 

「お前の行く道が――祝福の薔薇で埋め尽くされん事を――」

 

 

狂気に思いを込める愛の皇帝は、消滅していった――

 

 

 

『感謝する。胸の内にローマを抱く美しきものよ』

 

 

再び、声がする

 

 

『お前は美しい。罪を知りながら、美徳を掲げ、信ずるお前の心は、真に美しき浪漫(ローマ)に満ちている』

 

その言葉は、優しく心を満たす

 

 

『――進め。真なる人を目指せ。この世総ての悪を味わいし獣の最期は近い。揺るぎなく進むのだ。お前を、お前の魂を。世界(ローマ)が待っている――』

 

それは、リッカの在り方を、穏やかに肯定する、神がごとき声であった――

 

 

 

「・・・はい!」

 

「驚いたぞ!まさか武器のひとつも振るわず裁きを突破するものが現れようとはな!」

 

「そう?――私にとっては、ずっとやってきた事だよ」

 

 

「・・・まったく。ますます惚れ直してしまうではないですか。ズルいですよ、もう」

 

 

「ジャンヌ、アヴェンジャー。ありがとう。・・・さ、戻ろう!まて、しかして希望せよ!」

 

 

「まてしか!」

 

 

「クハハハハハ!!残る試練はあと二つ!その果てに何があるのか!俺は楽しみに待つとしようか!!」

 

 

――獣を穿つ剣は、あと二つ――




《暴食を打倒する方法、それは他者と食卓を囲むことだ。互いの会話に華を咲かせ、歓談し合い、一口一口を味わいながら咀嚼する。一人では暴食であろうとも、二人になれば同伴に、家族になれば食卓に。数多になれば宴に変わる。そして、糧となる生命に感謝を捧げることだ。己が生命を喰らうという事実を噛み締め、天に、地に、恵みをもたらすもの総てに感謝する。漫然と食を口に運ぶな。己が何を口にしているかを常に意識せよ。故にこそ、日頃の儀式として手を合わせ、感謝を捧げる習慣が産まれたのだ》

(いただきます、ごちそうさまを忘れるなってことさ。解ったかい?エア?)

――もむもむ、はむっ、はむっ

(かわいっ――(爆散))

「うむ、悪くないな。やはりお前はあらゆることを器用にこなす。なればこそ、人の理想の王足り得たのだな」

「王がパンを焼く、などと・・・あまり相応しい業務とは言えませんが」

「何、案外己の性に合わぬ真似をした方が新たな発見を見出だす事もあろう。我は日頃からそのような発見の連続なのだからな。ふはははは!」

「・・・そんな貴方が、私は嫌いではないですよ」

「ふっ、おだてても何も出ぬぞ。代わりを寄越せ、気に入った」

「ふふ、はい、どうぞ」



「よし!マスターが帰ってきたならローマ料理を振る舞うぞ!手伝え!ヒロインなんとか!」

「ヒロインXです!ぐぬぬ、マスターの相棒ポジを確立させようかとしたさいにこの足止め!やはり、私には抑止力が!?ギルもランサーのアルトリア顔と職務してますし!ヘルプ!救援を要請します!!ヘールプ!!」


「今回は特別に、叔父上が教えてくれた料理を振る舞う!楽しみにするがよい――!」



「ただいま~・・・は~・・・あと二回かぁ」

「楽しい地獄巡りも終わりが近いですね、リッカ」

「うん・・・ねぇ、ジャンヌ」

「はい、なんですか」


「――一人じゃ、どこかで挫けてた。来てくれて・・・ありがとう」

「――私こそ。あなたに求められていなかったら、もっともっとひねくれていました。――私を求めてくれて、ありがとう」

「・・・ジャンヌ」

「はい」

「ずっと、一緒にいてね」

「地獄の底まで、私のリッカ」


「――ふふ、御休みなさい。二人とも」

「・・・」

「アヴェンジャー様・・・」

「・・・この世総ての悪、そして・・・それを苗床に育まれた獣」

「・・・?」

「――獣に堕ち果てるか、人として生まれ変わるか。――正念場だぞ、マスター」

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