人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

2250 / 3000
トトロット【…トネリコ…じゃあ、あいつらがトネリコの、ええと、こっちのトネリコの言ってた黄金の旅団なのか…】


■■■【■■■…!】

トトロット【今更やめるのか、だって?寝言は寝てから言えよ、ヴォーティガーン。…あいつらは、ボクを騎士と呼んでくれた。ここで妖精どもを殺すのをやめたら、向こうに妖精が放たれちゃうだろうが】

【…………■■……】

【ボクは厄災として、最後の妖精として、このブリテンを滅ぼす。それは絶対にやり遂げる。…もう、こんな意識もいらないな。邪魔になるだけだ。ヴォーティガーン。もっと喰らってくれ。その代わり、力をもっと寄越せ】

【…■■!】

トトロット【あ、でも…最後にちょっとだけ、時間をくれ。最後に、言わなきゃいけないことが出来たからさ…】

(メッセージ、感想は今から返信します)


末期

『…色々と、凄まじい一時だったわね』

 

深い溜め息と共に、オルガマリーが直近の作戦活動の成果を締めくくる。それはこのロストベルトが悪意の下に見捨てられ、原罪の溢れ返る土地であったという驚愕の事実。

 

「ビーストΩ…グノーシス主義に語られる、世界の不完全性は神の偽りによる落ち度とされた信仰体系に語られる、デミウルゴス…或いは神の側面、嫉む者との一面も取り込んだが故の世界への干渉力なのやもしれん。探求しがいのある智慧のテーマが出たものだ」

 

「あー、CCA知ってますこういうの。未知害って言うんですよね」

「その謂れはあんまりじゃないかなぁ…」

 

『流石にここまで重苦しい展開が続く異聞帯、特異点は初めてかもしれないわね。禍肚も、高天原にイザナミ御祖母様の明るさに助けられていた処が過分にあったのを再認識したわ』

 

根底に娘へ世界を捧げるという愛、母へ世界を再び託すという親愛の下の禍肚は、振り返れば反転の恨みとして受け止められる。しかし、このブリテンに蔓延るのはひたすらに悪意、罪、呪い、怒り。そういった、最早心あるものへの呪詛溜まりにも等しくなっている。おぞましい地獄以外に形容する言葉が見当たらないだろう。事実、カルデアスタッフの数名はメンタルケアルームへ搬送される運びともなったのだから。

 

『リンゴを食べた人間の原罪なんて可愛いものさ。神を毒殺、巫女を解体、世界を見殺しにして罪人達のワンダーランドを作り上げた原罪となれば…』

『ロマニ。慎みなさい』

『あ、ご、ごめんよ!もちろんいい妖精は、ここにちゃんといるからね!』

 

「いいんです、ロマニさん。覚悟していましたから。私達妖精の罪深さは、ちゃんと。…でも」

 

ホープは俯き、項垂れる。あまりにも、それは残酷な真実であり。心を加速度的に衰弱させるには十分だった。

 

「私達は…皆様に、トネリコ様に。こんなにしてもらう資格があるのかな…」

「ホープ…」

「世界を見捨てて、反省もしないで増え続けて。自分は悪くない、悪くないって言い続ける私達の祖先たち。そんな血を、罪を引く私達は…本当に救われてもいいのかな…?」

 

「…まぁ、情状酌量の余地はとっくに超えてんだろ。私達はお母様に見出されたから生き延びたってだけだ。他にもいた善の妖精は、皆殺されたわけだしな」

 

バーヴァンシーはその言動に公平さと聡明さを見せていた。それは、妖精騎士のギフトにより衰弱から開放された事による本来の才気煥発が発揮されているゆえだろう。

 

「気まぐれ、たまたまという逃げ道すら僕らにはない。はじまりの悪魔…いや、最早そちらの悪魔にも失礼だ。六匹の魔物は、自分以外の全てを悪用し世界を滅ぼしたのだから」

 

絶望はせずとも、その心は弱り果てる。善に目覚めたものは、犯した悪に心を焼かれる。なんと残酷な事であろうか。彼女たちは、過去に犯した謂れなき罪で、塵も残さず燃えさる危惧すら生まれてしまったのだから。

 

『ぬ、ぬうう…最早、どんな言葉を懸ければいいのかすら解らん。悪党の一人勝ちならまだいい。だがこう、悪人も善人も纏めて地獄の底にいるような状況は一体どうすればいいのかね…』

 

『ロマニさんの言う通り、反逆の傲慢や責任逃れの虚飾なんて原罪にできる人間は余裕がアリアリなんですね。凄まじい悪辣の極地を見てしまうと、ねぇ…』

 

「お前ら……」

 

チルノもまた、無責任な激励は控えざるを得ないほどの鎮痛ぶり。安全地帯でありながら、心は静かに潰れていくような重苦しさ。そんな中、ブリテンに響く声がある。

 

【──異世界のトネリコと、その仲間たち。聞こえるか。僕はトト…いや、ヴォーティガーン。ブリテンを滅ぼす復讐の厄災だ】

 

『!トトロット…』

 

それらは、妖精の国全てに伝わる意志だった。トトロットは最早善を確認できない。会う事も、探知も出来ないのだ。それは、伝える。

 

 

【このブリテン、異聞帯がどれだけ救いようのなく、滅びの結論が如何に妥当かは解っただろう。罪を赦す、赦されないの次元にもうボクら妖精はいないんだ。ただもう、滅びる事でしか何もかもに報いられない】

 

「………」

『チチチ…』

 

 

【ケルヌンノス神は怒りのままに妖精達を呪っている。それは巫女を殺された他に、【妖精という邪悪な生き物を、このブリテンから出してはならない】という使命感の下にブリテンを呪い続けているんだ。その意味が、お前たちにももう伝わったろ】

 

【───■■■■■……】

 

 

【そしてヴォーティガーンは、ブリテンが未だこんな形で残っていることに嫌悪と憎悪を懐いている。厄災という形で妖精達を害し続け、今度こそ全てをゼロにするために、終末装置は作動しているんだ】

 

『……かなしいです。あなたも、妖精なのに』

 

──ブライド…

 

 

【神を欺き殺し、巫女を解体し玩び、遂には救世主にすら見捨てられた。このブリテンには、もう一欠片の慈悲だって赦されない。ただ消え、ただ滅び、亡くなる以外の選択肢なんて赦されないんだ。………せっかく来てくれたのに、こんな無様な姿を晒してごめんよ。御土産の一つも渡せない、ゲロウンコアイランドなんだわ、ここ】

 

「アイツ…ちょっとは頭冷えたのか」

(チルノ、やっぱりなんとなくでも解ってたんだ…!)

 

その声音に、先の問答無用ぶりな荒々しさはない。理性の欠片故か、極めて落ち着いた様子の語り口で、説き伏せるように語る。

 

【だから、お願いだ。このブリテンから脱出してくれ。ボクは復讐を辞める気はない。こんな事になってしまった責任を、妖精として、ケルヌンノスとヴォーティガーンの意志を継いでやり遂げなくちゃならない。これはもう、ボクがボクである最後のやるべきことなんだ】

 

『…トトロット…』

 

【もうボクは妖精共を滅ぼす事しか考えない。君達の事ももう、忘れてしまうだろう。だから、ボクの事を少しでも考えてくれるなら…このまま、ブリテンを去って欲しいんだ】

 

それは、トトロットの最後の理性。本来の彼女の意志なのだろう。

 

【君達がかつてのトネリコの様に、妖精達を救い、罪を償おうとしているのは聞いていたよ。その優しさとお世話焼きは、本当にトネリコにそっくりだ。でも…】

 

「トトロット、貴様…!何故相談しなかったのだ!トネリコとそんなところまで似通いおって!」

 

【断言するよ。その行いは絶対に報われない。君達が悪いんじゃなくて、これはもう妖精の限界なんだ。気まぐれで、幼稚で、恩知らずの恥知らず。それはもう、あのバカどもを見てわかってくれたろ?】

 

段々と、声が遠くなっていく。それは、彼女の理性が無くなるが故か。復讐の厄災に、立ち戻らんが故か。

 

【こんなカスどもを助けようとしてくれる君達の高潔さや、御人好しさは本当に素晴らしい。だからそれを、こんなクソみたいな場所で無駄遣いしないでほしいんだ。君達が助けられる人はたくさんいる。君達が救える世界はたくさんある。少なくとも、こんなところで無駄遣いしていい気持ちじゃない。…えっと、モルガン、だっけ?】

 

『!トトロット…!』

 

【──頼むよ。異世界のトネリコだというのなら、ボクのお願いを聞いてくれ。もう君が傷付くのも、裏切られるのも。見たくないんだ。君の夢みたいな理想が、ボロボロになるのを見たくないんだ】

 

『そんな…何故です、トトロット…!それは、あなたがそんな姿になっていい理由にはならない!決して…!』

 

【騎士王と、えっと、マシュ?あとそのマスターだっけ。さっきは、騎士としての自分を思い出させてくれてありがとう。だから、これは忠告なんだわ】

 

「妖精騎士…トトロット」

「……」

 

【そっちのトネリコを、大切にしてあげてほしいんだわ。寂しがり屋で、自分の居場所がほしい普通の女の子を…守り抜いてあげてほしい。ボクみたいに、ならないでおくれ】

 

「トトロットさん!マシュ・キリエライトの所感ですが!あなただって素敵な妖精ではないですか!そんな、まるで遺言のような…!」

 

 

【ここにはもう、罪しかない。終わりのない罰しかない。救いなんて、罪人自ら手放した。…だから、もう傷付かないでおくれ。この地の負債は、全部ボクが連れて行くから】

 

そして、声が掻き消える。それは、妖精騎士トトロットの末期の呟き。

 

【──あぁ。どうせなら。トネリコが目指した、夢みたいな理想郷。君達を招きたかったなぁ……──】

 

 

……妖精国に響いた、理性の声は消えた。

 

 

それは、妖精騎士トトロットの…二度目の死。

 

誇りを抱き、理性ある振る舞いを見せた救世主の、再びの死であった。




ヴォーティガーン【■■■■■■■】

トトロット【…安心しろよ、今更日和ったりしない。クソ妖精から剥ぎ取って宿した瞬間から、絶対にやり遂げると決めている】
【■■■■、■■■■、■■■…】

トトロット【…慣れない事ばかりしてると疲れるだろ。でも、これはやらなくちゃいけないことだ。妖精を一匹でも外に出したら、第二、第三のトネリコを生み出す事になる】

【……………■■……】

トトロット【やり遂げる。最後に生き残った【悪妖精】として。何もかもを完遂させるんだ。…さぁ、もうひと踏ん張りだぜ、ヴォーティガーン。ケルヌンノス】

ヴォーティガーン【■■■■■】

【はじまりのカスどもを皆殺しにして、それでそいつらを諭したクソ野郎も殺す。穢らわしい死骸のブリテンも海に沈めて、後始末はおしまいだ。任せろって。【妖精どもを罰し、ブリテンを滅ぼす】ってお前らの願いは──】

【……■■……】

恩讐の厄災【──ちゃんと、ボクが形にしてやるから】


異聞帯No.■

悪性妖精獄ヴォーティガーン

異聞帯深度 EX


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。