人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
恐ろしくなるほどの奇跡を目の当たりにし、現実か疑いました。
以下本編です
マーリン「こ、これは一体どういう事なんだろうか!?聖剣が一気に二振り造られるなんて前代未聞だ!マーリンお兄さんビックリだよ!?」
ウーサー「…驚く程の事ではないと、俺は思う」
ルイノス「私もです。それくらい、一つの聖剣に収まらないくらい…トネリコ様の束ねた想いと願いは強く、多く、かけがえのないものだったんです」
ギルガメッシュ「成る程。これほどの聖剣、刀剣においての格式は我の蔵にすら無い。まさしく至純にして至高の聖剣よ。──騎士王」
騎士王「はい、解っています」
ギルガメッシュ「ならばよい。この聖剣、貴様に賜わす。秩序と人の理性を体現せし騎士の王よ。嘗てのように、ブリテンに光と救いをくれてやれ」
騎士王「えぇ。──カルデアの騎士王として、アーサー王たる者として。全力を尽くします。救世主の聖剣に誓って」
──あなたなら大丈夫ですよ、アルトリア!
(おまかせください、プリンセス)
キャストリア「ちょっと凄すぎて夢みたいな気分だけど…これもやっぱり、トネリコが皆と頑張った証だよね」
CCA「えげつない聖剣と奇麗な聖剣。…邪悪な属性が無いのが、なんというか姉さんの心を表してますよね!」
モルガン『…また、照れるような事を』
マーリン「いやはや、ともかくいいものを見せてもらったよ。その御礼に、君達を巫女の祭壇に転移させてあげよう」
リッカ「いいの?」
マーリン「まだ君達の巡礼は終わってないからね。これは私なりのエールと思ってくれ。ここで待っているから、必ず全てが終わったら再会しよう!」
ホープ「…トネリコ様のお墓を、よろしくお願い致します!」
ビリィ「エクター様の墓所も、必ずや!」
マーリン「勿論だとも。さぁ、行っておいで──!」
オベロン「…行ったか。あんたたちは行かないのか?」
ギルガメッシュ「うむ。まだ、鋳造すべきものがある故な」
ブライド『形見、です』
『ペンドラゴンの身体』
オベロン「…何をする気だ?」
マーリン「おーい、独り言かーい?」
「──ここが、天の祭壇。ウーサーが作り上げた、妖精達との絆の祭壇…」
騎士王が告げるように、マーリンより送り出され辿り着いたそれは雲海を見下ろす黄昏の空に作り上げられた巫女を安置する為の場所。罪業のブリテンから隔離された、天空の墓所。
「ルイノス、体は平気か?悪魔の呪いは消えたか?」
「…はい、大丈夫です。身体を蝕む呪詛は消え去っています。ですので、後はこの世界の巫女を鎮めなければ」
眼前には、肉体を再び合わせられ眠るように安置された巫女が存在する。それは悪魔どもに道具に貶められた姿ではなく、あくまで一人の人間としてだ。
『そうよ。彼女の心に、直接語りかけてあげて』
「!」
「この声は…!」
眼の前に、清らかな光が一つ灯る。それは二つ、三つと増え、やがて六つとなりて一同を迎えるように灯りきる。
『我等の愚かさ、よくぞ乗り越えてくれた』
『フン、オレは心配していなかったぞ?』
どっしりとしたスタイル、そして強靭な妖精二人。
「ソイル様、ファング様!」
『ごめんね、本当にごめん!あんなに私達が馬鹿だったなんて予測できなかったよ…!』
『嫌な気分にさせて、ごめんなさい…』
お洒落な衣装に、雨具のようなコートを着る妖精二人。
「ミラ、レイン…!」
『力を貸せず、すみませんでした』
『皆さまを、心より歓迎致しましょう。よく頑張ってくれました』
小さく理知的な妖精と、輝ける羽の妖精。汎人類史の始まりの六人、プルムにウィンダ。そう、ここには集っていたのだ。
『始まりの六人!ウーサー君の宝具の真名解放で招かれた魂たちか!』
「拝謁、光栄の至り。始まりの六人よ」
ウーサーが恭しく跪く。彼にとって、人類史にとって彼女らこそが大英雄であり、始まりの悪魔を対象にした置換認識によって召喚された、汎人類史の妖精達。祭壇を作り上げしは彼女らだったのだ。
『ウーサー。ルイノス。ケルヌンノスは留守番ですね?』
『無関心と思わず、他人事と決め込まず。本当によく頑張りましたね。…異なる世界とはいえ、我等六妖精の悍ましき悪行により、地獄を強いてしまった事に面目次第もありません』
ウィンダはウーサー達をいたわり、プルムは代表し深々と謝罪を行う。その在り方に、ホープ達は逆に頭を下げるほどの誠実さを感じる。
「い、いえ!こちらの罪と皆様は全く別ですから!むしろ…ありがとうございます。カルデアの皆様の歴史で、責務を全うしてくださって」
「そのお陰で、僕達も今なんとかして進んでいけています。それは、皆様がいてくれたからですよ」
「余計な負い目なんていらねーよ。顔が同じだけで、皆様とあのカスどもは別人だ。お前たちが悪い事したわけじゃない、だろ?オヤブン」
「そういう事だ。あたいの子分とも仲良くしてやるんだぞ、始まりの六人」
『〜。流石は救世主トネリコが見出した素晴らしき妖精達ね。皆ならきっと、巫女に認めてもらえるでしょう』
「い、今巫女様はどうなっているんですか?まさか、まだ憎悪に…?」
『そうではありません。彼女はケルヌンノス神、そして自身を使って希望を護るため、善性を切り離しているのです』
プルムの説明によると、巫女とケルヌンノスは一計を講じたようだ。完全に殺された訳では無い状況を逆手に取ったのだという。
『ケルヌンノスが祭神として祀られる前夜、巫女はケルヌンノスを必死に説得していたのです。今まで素振りすら見せなかった妖精たちが急に心を入れ替えるなどありえない、と』
『それに応えたケルヌンノス神は気付いたのだ。始まりの六人は、悪妖精なる状態に移行していることを。それはまさに、明確な悪意の化身であったのだ。それを指摘すれば必ずや強硬的に殺められる。それにケルヌンノスは対策を施した。巫女と自分の魂の一部を、無の海の何処かに逃がし漂わせた』
悪妖精の善意など、欺きの手段。そう知った二人は、自らの魂の破壊と巫女を護るために魂の一部をブリテンに溶かした。それらはそれぞれ、ケルヌンノスの妖精を見定める意志として。そして巫女は漂う善性として無の海に残された。それらは魂の破壊とセーフティであった。悪妖精への備えとも。
『ケルヌンノスは毒酒を飲まされ、巫女は道具と貶められた。しかしそれでもケルヌンノス神と巫女は未来に対策を示したんだよ。切り離された魂は、心から反省した妖精への赦しに。巫女の精神と魂は、肉体が死なぬ限り自然発生した陽妖精と結びつく善性として』
「それが私、バーヴァンシー…ようするに、巫女の精神を引き継いだ妖精ってわけかよ。道理で自分でもやばいくらい頭がいいわけだ」
バーヴァンシーとはつまり『巫女を先代とした妖精』と言っていいだろう。或いは、単純に妖精となった巫女。ケルヌンノスと共に、ブリテンの罪業を乗り越えるための希望としての手段を取っていたのだ。
『だが、善意と善性、魂を切り分けた事により脆弱になったケルヌンノスの魂の大半は砕け、歯止め無い呪いの積層に。巫女は苦痛と絶望から怒りと憎しみに塗れた呪霊めいた存在にとなり、終わらぬ罰を望んでしまっている。それぞれを、止めてあげなくてはならぬ』
許されぬ終わりのない罰。永劫の苦痛と苦悶を強いる巫女。それらを止めなくては、赦免は訪れないと妖精達は告げる。
「妖精を罰し続けるケルヌンノスの身体を祓い、巫女を還す事によりケルヌンノスと巫女が振りまく呪いを終わらせ祓う。それこそが、聖剣と妖精が行う赦免」
『ウーサー、ルイノス!出番だよ!巫女の心に入って、呪いを振りまく呪詛を祓ってあげて!』
妖精達は既に儀式の手筈を整えていた。善なるバーヴァンシー…巫女が鎮める為に、止まらぬ呪物となっている巫女の精神と魂と向き合わなくてはならないのだ。
「じゃあよろしく頼むぜ。私はビリィと一緒に、巫女の心に問いかけなくちゃならないからな」
「バーヴァンシー…!」
「お前ほど人間を好きになって、尊敬したヤツは知らねぇ。お前の想いはきっと、巫女に届く。巫女の善性を持った私が言うんだ、間違いねぇっての。…お母様に会うために、きっちりと終わらせようぜ」
「リッカ、改めて君にも来てもらいたい。対話スキルは、必須な筈だ」
「うん!まかせてよ!」
「では、守護の剣としてのこちらを。カリバーンは必ずやお役に立てるかと」
カリバーン・ホープをリッカに託す騎士王。エクスカリバー・トネリコは騎士王に拝領されたが、カリバーン・ホープはその御祓の力を他者にも扱える寛容の聖剣であった。
「ありがとう騎士王!マシュをよろしくね、すぐ戻るから!」
「先輩…お気をつけて!待っていますから…!」
『私達が全力で護るわ。気をつけて、ウーサー、ルイノス』
「ウィンダ…」
『永きに渡る道具としての苦痛と絶望は、彼女の心を憎しみと憎悪で支配させてしまった。バーヴァンシーが善だとするなら、今の巫女は妖精への憎しみそのもの』
『対話するにも相当な難易度でしょう。憑き殺されないよう気をつけなくてはなりませんよ。相手は巫女。精神や心に訴えるのは得意分野なのです』
「…尚更、そのままにしておくわけにはいかない。友たるケルヌンノスの大切な巫女を、悍ましき悪霊になどさせてはならないのだ」
『ヌン!ヌン!ヌン…!』
『えぇ、ケルヌンノス。…バーヴァンシーを見ればわかるように、彼女が他者を怨み憎むなど異常事態。早々に止めてあげなくてはね』
そして、一行は巫女の精神世界へと移る。ウーサー、ルイノス、バーヴァンシー、ビリィ、そしてリッカ。
ケルヌンノスと共に貶められた、巫女の救済。贖罪の旅も、大詰めに向かっていた。
巫女の心象世界
リッカ「ここが、巫女様の…」
一行は辿り着く。血涙を流し続ける巫女の鬼相の超像の下に蠢く【それ】を。
ルイノス「そん、な…」
バーヴァンシー「…そうかよ。救いがねぇ」
そこにいたのは、腕と足が逆になり、蜘蛛のように継ぎ接ぎされた生き物。
赤き髪をふりみだし、頭部が逆向きになった悍ましき怪物。
【キィイィィィェエァァァァァァァァァァァァ────!!!】
憎悪と呪詛に塗れし、巫女の心の成れの果てたる怪物が、リッカ達に向け猛烈に突進を仕掛けてきたのだった──
(今から返信します)