人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「モードレッド、私の特訓に付き合いなさい」

「え!?マジかよ!?特訓していいのか父上!?」

「えぇ、おかわりのカリバーも良いですよ」

「特訓できるぞ!やったぜフラン!」

「うー」

「良かったですねモードレッド。こちら御弁当となります。ゲイザー眼揚げですよ」

「え、なんだよ優等生その弁当・・・」

「アグラヴェイン!シミュレーションの準備をお願いします!これより、モードレッドと特訓(しゅくせい)します!」

「はっ」

「やったぜ!行くぜ行くぜー!特訓だ!シミュレーションだぁー!・・・ところで」

「?」

「誰だオメー。シワが取れると全然わかんねぇぞははははは!」

「シミュレーションのレベルを上げておきましょう。なぁに、モードレッドなら大丈夫でしょう


「ウルクスパルタモードでお願いします」

「父上!?」

「頑張ってくださいねモードレッド。私は汗を流す程度にしておきましょう」

「父上ー!?」

「やぶへび。がんばれー」


「ふむふむ、女子力かぁ・・・それを今すぐ付与するのは不可能だが、見せて上げることはできる・・・」

「マーリン?」

「よぉし!近い内にやってあげよう!楽しみだなぁ!いじるの!」

「・・・?」

「時に王よ、何故急にシミュレーションを?」

「・・・汗をかきたい理由があるのです!」

「・・・成る程。流石は王、健康的ですな」

その後、モードレッドはしごかれボロ雑巾のようになったと言う


鬼ヶ島三番勝負--技喰の巻・賢猿槍

「たぶん青鬼が一番強いと思う」

 

 

次なる関門を目指すリッカが漏らすのはそんな感想であった。リッカ達ギーグにとっての青鬼は良く解らないかつ不気味で追い回してくるものであるからだ。未知と不明から来る恐怖は何時であろうと恐ろしいものなのである

 

「そうかしら?速さを誇る鬼の次は何を頼りにしてくるものなのでしょう。解りますか?助六殿」

 

その武蔵の問いに、豆を乗せた台車を引きながら助六は問い返す。緑色の鬼の次なる刺客、青鬼の力を

 

「次なる鬼の名は『技喰丸』。あらゆる技巧や技術をはね除け跳ね返し、無力化してしまう技の天敵なる鬼だ。その巧みな腕前は、やはり真っ当な鬼には敵うものでは無くてな」

 

「なんだ、それなら私が一番与し安い相手だわ!次なる一番、貰ったわね!」

 

助六の補足する知識に軽々と勝利を確信する武蔵に驚愕する二人

 

「流石は武蔵ちゃん頼もしい!これならひろし一行も報われるね!」

 

「流石な天下に名を轟かす剣豪と言ったところか。敵に廻すと恐ろしいが、味方にすればこうも頼もしいとはな」

 

二人の称賛とおだてに気を良くし、ニコニコと笑う武蔵ちゃん。そんな姿にロマンも同調し口を開く

 

『そこまで言うと自信の元が気になるなぁ。何か豆以外の必勝法があるのかい?』

 

武蔵の二天一流は、何も二刀流ばかりを指すものではない。何でもやる、空いた左を活用する何でも殺法といった面が強いのだ。故にロマンは、武蔵が何かしらの切り札を持っているのではと予測したのである

 

しかし、そんな三人の予測をも、武蔵は上回って見せたのだ

 

「そりゃあそうですとも。私は未熟なのだから、無力化される『技』などありませんという簡単な帰結なのです!だから、相性はバッチリというに他なりません!」

 

自分に立派な技は無いから、技を無力化せしめる鬼なぞ恐れるに足りぬ。未熟から来る自信にて放たれる珍妙な自負に、二人は言葉を失う

 

「・・・なんと」

 

「あ、そういう?」

 

「えぇ、どーんと任せておきなさい!あ、見えてきたわ!彼処にいるはずよね、早速行ってみましょう!」

 

心配など何処吹く風。自然体のまま走り出す武蔵ちゃんの背中を、顔を見合わせながら追いかけるリッカと助六なのであった

 

『うぅん、此処は武蔵ちゃんが未熟でよかった!と喜んでいい場面なのかなぁ・・・?』

 

ロマンは改めて、コミュニケーションの難しさを痛感するのであったとさ

 

・・・閑話休題(それはさておき)

 

「これが日本の『オンセン』という文化ですか。霊基に染み渡るような癒しの効能・・・素晴らしいものですね」

 

王が温泉郷の真上に拵えた王専用の浮遊温泉にて、バスタオルに身を包んだ騎士王が静かに感嘆を現す。英雄王に次ぐカルデアNo.2を、労いとして招き入れたのだ

 

「サーヴァントとは言えど、魔力を取り込む手法は多彩よ。精気を取り込むも良し、魂を食らうもよし、このように肌から取り込むも良し。様は見目の問題だ。どうせ行うのならより豪奢に行う。それが王というものであろう?」

 

英雄王のその気遣いと処置に、静かに頭を下げる騎士王。その言葉には、日頃の活動への労いが含まれていたことが感じ取れるが故に

 

「感謝を。・・・そう言えば、アサシンの私は誘わなかったのですか?」

 

「無論誘ったとも。『誰もがいなくなったら入りますからそれまで入っていてくださいね!』と言った具合に駆けていきおったわ。素直に是と言えぬ所がまさにアルトリアよな」

 

「・・・負けず嫌いというか照れ隠しというか。長湯になってしまいますね、英雄王」

 

「構わぬ。気長に待ってやるのも王の務めだ。酌を出せ。注いでやろうではないか」

 

景色を楽しみながら、酒を楽しみ肴を楽しむ英雄王に騎士王。普段の聖杯戦争ならばけして有り得ぬ一幕が、此処に穏やかな形で実現するのだった

 

――ほふほふ、ほふほふ・・・良かったですね、騎士王・・・

 

エアは異世界座標から取り寄せられた温泉卵やキノコグラタンをほふほふしながら食べ、景色と二人の王の会合を笑顔で見守り

 

(胸が・・・浮く・・・だと・・・!?なんてボリュームだ・・・!バスタオル!頑張れバスタオル!弾けちゃ駄目だぞ!色々と大変な事になるからね!)

 

フォウはその隣で温泉饅頭を食べながら、騎士王の超努級の乳房に大興奮であった。そのサイズ、まさに最果てに至る規格外であるが故に

 

――ふふっ。フォウ、飛び込んでくれば?

 

(いや、ダメだダメだ!劣情と下心でダイブはもう卒業したのだから!ボクは・・・エア以外のカラダに・・・絶対負けない!)

 

「プリンセス、何を食べているのですか?・・・も、もしよろしければ。一口私にも・・・」

 

――あ、もちろんどうぞ!

 

(ファ――――――!!!!!)

 

――フォウ!?

 

騎士王と英雄姫。二人の絶世の美女の会合には耐えきれず、きりもみ回転し口からプレシャスパワーをマーライオンが如く発射しながら湯船にドボンするフォウであった

 

《華麗なる運命(フラグ)回収、見事であった》

 

(二人のバスタオルのみの共演には・・・勝てなかったよ・・・)

 

湯船に右手を上げゆらゆらと浮かぶフォウ。プレシャスパワーにより、温泉の効能が更にパワーアップするのはまた別のお話である

 

・・・そして、そんなゆったりとした時間を過ごす王達の事は露知らず。リッカ一行は新たな鬼との戦いに励むのである

 

「――!!!」

 

雄叫びを上げる一本角の鬼。右腕に地蔵を持ち、青色の身体。白い体毛に、でっぷりと出た腹。黄色く濁った瞳に見上げるがごとき偉容

 

第二の門を守護せし青鬼・・・『技喰丸』が現れたのである。一同は即座に戦闘体勢を取り、即座に交戦に入る

 

「戦い方はさっきと同じ!武蔵ちゃん、足止め頼んだよ!」

 

「おうとも!」

 

「助六くんは豆をガード!辺りの鬼は私達が何とかする!」

 

「解った」

 

即座に指示を出し、武蔵が技喰丸に飛び掛かり助六が台車を巧みに操り鬼達をいなしていく。リッカは右腕の令呪を輝かせ、高々に掲げる

 

「来て!しょぶ――うわっ!?」

 

リッカが驚愕に声を上げる。なんとこの技喰丸が配下の小鬼。召喚を果たす前にリッカに襲い掛かって来たのである

 

『ズルいぞ!そういうのは汚いんだ!スゴイシツレイなんだ!僕は詳しいんだ!』

 

ロマンが抗議の声を上げる。その目論みは正しいが、あまり歓迎される絵面ではない。技巧派といえば技巧派だが・・・

 

「邪魔!」

 

今回は槍の戦法を実践形式で見て学びたいのだ。自分が出張るわけにはいかない。飛び掛かってきた鬼の首を、腕だけ邪龍アーマーに変換、魔力強化にてパンクラチオンによりへし折り、死体を鬼どもに投げつける。女ならぬ腕力に、首があらぬ方向に曲がった死体にたじろいだ瞬間に、召喚を完遂させる

 

技巧派には技巧派。技の極みに達した槍使いならうってつけの方がいる

 

その槍、二の打ち要らず。あらゆる敵を、一撃の下に葬り去りし神槍・・・

 

「来てください!『李書文』!」

 

輝きと共に槍の極みに達した武術家、李書文が槍を構えて現れる

 

「呵呵!呼ばれたのは良いが、我が絶昭・・・教えてやれるほどの上等なものかどうか」

 

一笑いしたのち目の前にいる鬼どもを一睨みし・・・周天に、自ら練り上げた『気』を充たす

 

「良く目の当たりにするがいい。瞬間にて事は済む」

 

そして書文自身も構えに入る。軽く動作に入り、腰を落とす。――その軽い動作にすら、リッカは目を奪われた

 

あまりにも流麗、あまりにも自然。身体を意識せず動かすかのように、事も無げに必殺の構えに移行して見せる

 

「我が槍は正に一撃必倒――」

 

辺りに書文が練り上げた気が充ち溢れ、鬼達の心胆を極度に緊張させる。心的動揺は身体に伝播し、必殺の構えを目の当たりにしながら、小賢しき技を振るうことも叶わない

 

そして、放たれる。六合大槍の奥義。八極の拳すら、この槍を学ぶための前段階に過ぎぬとすら言われた武術の奥義。大量にいようとも、一人であろうともなんら変わり無く

 

「神槍と呼ばれたこの槍に、一切の矛盾なし――噴ッ!!

 

大地が割れるほどに踏み締め、対象の間に横たわる距離と空間を零にするその極みの歩法にて放たれる、究極の一撃――『神槍无二打』が刹那の一拍を置き

 

覇アァァァァッ!!!

 

過たず放たれる――!大地を踏み締める爆発音、気迫の叫びに、音速の壁を突き穿った事による衝撃波に大爆音。それら全てが、鬼の群れを通りすぎた数秒後に徒党を成して降りかかる

 

軌道上にいた鬼は過たずみな絶命していた。音の刃に切り裂かれ、または気に当てられショック死、様々な屍が打ち捨てられている

 

・・・槍を直撃した者は、死体が残ってすらいない。完全に、血肉の一辺すら残さずに、槍にて消滅させられたのだ

 

「・・・すごぉい・・・」

 

人は真理を目の当たりにしたとき、それを形容する言葉は例外無く陳腐となる。リッカが槍の極みを目の辺りにした感想は、ただそれのみだった

 

『辺りに自分の気を満たし、対峙する相手を極度の緊張状態にさせ、そこを一撃。食らった相手は例外無くショック死する。・・・これが、二の打ち要らずの根本的な原理か・・・!』

 

ロマンの言葉でようやく飲み込めた。つまり、相手を呑み込むほどの気の練りをなんとか再現できれば、雑魚相手なら一撃で葬りされる空間を再現できる、ということなのだと思う。・・・あの槍の一撃。音速の壁すら突き穿つ槍は、どうやっても真似できそうに無さそうだけど・・・

 

「如何かなマスター。我が槍、少しは役立てたなら良いのだが」

 

ぽふぽふと魂が抜け出たリッカの頭を叩き、笑う李書文。その表情は教え子に模範を見せた先生がごとき穏やかさだ

 

「は、はい!原理を、参考にさせてもらいます!」

 

アジダハーカの魔力を限界まで練り上げ辺りを呑み込み、スカサハ師匠の槍技にて突き穿つ。・・・ヴラドおじさまの技を加えたら言い逃れのできない粛清空間の槍術を垣間見、リッカは更なる自らの槍の形を垣間見る

 

「呵呵呵呵!思うままに振るえばそれでよい。武とは即ち、単純に敵を殺すことが出来るかどうかよ。術理は後々着いてこようさ。――さぁ、幕引きだぞ」

 

くい、と鬼らを見やる。すると其処には・・・

 

「り、リッカさーん!その、気付けをお願いできますか・・・!その、そちらの槍使いに当てられてしまいまして・・・」

 

「――、――!」

 

李書文の気迫に当てられ、動く事の出来ぬ鬼と武蔵が向かい合っていたのだ。たった一突きで場の全てを支配した書文には、感嘆の念が尽きない

 

「助六くん!豆!豆!」

 

「――・・・・・・」

 

こちらも同じく。助六は完全に立ったまま硬直している。人類悪として耐性があり、武人としては未熟で鈍感なリッカ以外の皆は全て無力化されてしまっているため、リッカが全てをやらなくなってしまわなくてはならなくなったのである

 

「達人ってすごい!改めてそう思った!!」

 

そこからのリッカの行動は迅速であった。投げれば複雑怪奇な軌道で必ず相手に当たる『賢猿豆』を手に取り力の限り技喰丸にぶん投げ、退治可能な状態に持ち込み

 

「起きて武蔵ちゃん!」

 

「はうっ!!」

 

ぺちぃん!と良い音を響かせて武蔵ちゃんの頬を張り、復帰させる。スナップを利かせた為、赤いもみじが頬に着いてしまったが不可抗力である

 

「効いたぁ・・・!これ、今までで一番痛いかも・・・」

 

「さぁさぁ、止め止め!」

 

未だ動けぬ技喰丸を指差し武蔵を焚き付ける。その言葉に頷き、素早く跳躍する

 

「そちらには随分と技を打ち付けましたが、やはりこちらは力任せが性に合っています!いざ覚悟!その首――殺った!!」

 

口では嘯きながら、放たれるは正確に首の脆き軌道を穿つ一閃。切断面鮮やかに、技喰丸の頭は宙を舞い、どしゃりと肉体が倒れてのける

 

「技喰丸、此処に成敗!――はぁ、死ぬかと思ったぁ・・・」

 

へたりこむ武蔵の肩を叩きながら、硬直している助六の頬を叩く

 

「しっかり助六くん!リッカビンタ!」

 

「アリマッ!?」

 

ぱちぃん!とフリッカーめいてしなるその一撃を頬に受け、ぷっくりと頬を腫らせる助六。首から上が飛ばなかったのはちゃんと加減したからである

 

「か、忝ない。・・・むぅ、げに恐ろしきは槍使い。まさか、気迫のみで必殺を謳い、その一撃は正に神がごとき一撃とはな・・・」

 

武術を嗜む者は例外無く感じとる書文の鬼気。それを理解できなかったリッカは無事であったのだが・・・それを武蔵は好ましく思った

 

(彼女は、私達のように生命を奪う側じゃない。どうか、そのままでいてね。リッカさん)

 

力をもちながら、平穏な性根を持つリッカを好ましく思いながら、武蔵ちゃんは剣を収める

 

「さて、書文おじさまにあやかった形ですが勝ちは勝ち!勝鬨と参りましょう!せーの!」

 

「「えい!えい!おーっ!!」」

 

「呵呵!この様な殺戮の技が持て囃されるとは、時代とは解らぬものだ・・・!」

 

・・・槍の極致と剣の閃きにて。技喰丸、此処に成敗つかまつった――




温泉郷

「・・・温泉か・・・まことに珍妙な文化ばかりが進歩したものだ」

「私は好きですよ。えぇ、日本の生み出した文化の極みだと言っても過言では無いほどです。セミラミスにも気に入ってもらえたならよいのですが」

「ふん。裸の付き合いなど無防備にすぎる。首を差し出しているようなものだ。全く・・・全く・・・」

「ですが、本心は?」

「・・・悪くは、ない」



「いいねぇ、お風呂。暖かい水に浸かれるって凄い進歩だよね、ラーメス」

「フン、太陽ではなく大地の恵みに預かるのは気に食わぬが・・・まぁ良しとしよう。ネフェルタリが良しとし、我が友が気に入るならばそれらは全て赦す!我がオジマンディアスの名の下、太陽の輝きにて照らそう!オンセンとやら!!」

「はははは、蒸発しない?」

「わはーい!温泉!温泉!御父様と一緒に温泉です!」

「走り回んなよー。頭打つぞー」

「はーい!まずはかけゆ!かけゆですね!」

「いやぁクー・フーリン。良いものだな・・・なんというか、良いものだな・・・」

「フェルディア、ますます頭悪い言動になってんぞ」

「・・・のぞきイベは望めそうにもないな。鉄板なのだが」

「まだラノベ読んでんのかロイグ・・・」


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