人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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剣豪とか始まるとプレシャスのプの字も無いくらい血腥くサツバツとなるので、此処で穏やかなイベントをお楽しみください

時系列というか時空的には

ゴージャス『エア&フォウ』(今から月に行く)

↓ムーンセル(グランドオーダー時空にあるムーンセル)←行くトコ

月の裏(CCC時空)ザビ子ギルルート(ギルエンドにて星の大海へ)。エクステラルートに繋がらなかった戦いの跡地。虚数空間なのでどの世界でも、起きたことは起きたことと保管されている

月の表(エクステラルート)ザビが月の新王へ(↑のギルエンドへ行ったザビとは別人、エクステラ本編のザビ。なのでザビはギルを知らない)。尖兵撃退直後の平和な時期(テラ本編終了直後)

BB達(グランドオーダー時空。虚数空間にて管を巻くムーンセルが持て余してるプログラム)月の裏側のどっかにいる

ということになります

もっと分かりやすく言うと・・・

ムーンセル「お前らのやったことはチャラにする代わりに裏側に封印な」←観測者だから所業を知ってる

「「「はーい・・・」」」←cccギルルートで無かったことにされた三人組

「次にムーンセルに脅威が迫ったら困るから楽園カルデアにコンタクト取れ。コネクション取ってこい。クラッキングな」

「「「えー!?」」」

ということになります。グランドオーダーのムーンセルに、裏表で作品が違うとお考えください


月へ挑む、開闢の星
ゴージャス外交!--我等が向かうは月の深海--


「我等は少し月に出向く。留守は預けたぞ、ロマン」

 

じゃ、ちょっと散歩行ってくるから。みたいなノリとテンションにてそんな人類一大プロジェクトめいた超絶旅行をすると告げられるロマン。ロマンの脳は現実を受け入れられずにサラリと受け流そうと抵抗判定を取る

 

「あーうん。月ね。月にはウサギが餅を付いて食べてるって言うみたいだから是非とも見に行ってうぇえぇえ!?月!?月ってあの月!?ムーンかい!?」

 

──太陽系における人間が認識する月と呼べる天体は一つしかありませんよ、ドクター。現実逃避する御気持ちも分かりますが、知恵の覇者として恥ずかしき醜態を曝す事なきように

 

冷静に、努めて冷静に振る舞うエアだが。こちらも身体がプルプルと震え、自らの胸の内を隠しきれていない。胸の間に挟まれたフォウがぷるぷる震えている

 

(楽しみかい?エア。月に向かうこと、月に何があるのかが?)

 

──うん!すっごく楽しみ!あぁ、ワクワクしないはずがないよ!だってその、月だよ!?あの空に浮かぶ、お月さまだよ!?

 

ふんすふんすと熱弁を振るい空を浮かぶエアの魂。いつもはふわふわ、ふよふよだが。今はギュンギュン、ギュインギュインのヒュババババみたいなニュアンスの違いである

 

月──王が言うには、先史文明が作り上げた月の記録装置、熾天の座。ムーンセル・オートマトンなる万能のタイプライターがあるという。それらは手にした者に思うままの未来を見せ、過去、現在を掌握させ思い通りの世界の運用を担わせることが叶うと言う・・・聖杯めいた願望機の役割を持つもの。月の眼があり、それを手にする為に聖杯戦争が繰り広げられたと言う。今回は、その舞台たる場所へ赴かんと、王は決議を果たしたのだ

 

月の聖杯を手にするため・・・ではない。王はそのようなものに興味はないと鼻を鳴らした。今更、(いし)の眼や財宝を浅ましく求める理由は何もないと王は当然のように告げる

 

《お前が欲しいと言うのなら話は別だが・・・どうだ、エア。月の姫の座に興味はあるか?》

 

──王の傍らにいることを赦される。それ以外の栄誉や財宝など、ワタシの身には不要なものです

 

当たり前の事を告げたつもりだったのだが、王としては気に入ってくださった答えのようで。無言で飴を口の中に放り込まれた。むぐ。

 

「案ずるな。長々と滞在する気はない。少し用件を済ませる序で、月の新王とやらにカルデアとの認識と伝を繋げるまでよ。ふむ、──ゴージャス外交と言うやつよな」

 

王の狙いとしては、月の存在に自らの威光と存在を、カルデアを引っ張る王としての存在をアピールするために月に向かうと言う。私用にて地球を離れ、私用の序で月を治める新王に顔を見せる。そのような大胆不敵な提案をするのは天上天下に英雄王ただ一人であろう。

 

──これで月の皆様にも英雄王は凄いのだという事実と真理が響き渡るのですね!これは素晴らしい事です!フォウ!プラネットシェア・ゴージャスキングだよ!やったぁ!

 

(君がはしゃぐ姿を見ていられるのはボクも嬉しいよエア!横文字を使い始めるのもテンションが上がっているからなんだね!)

 

──これがワタシの、ベストテンションなのかもしれない・・・!

 

フォウにうりうりと頬をすり、喜びを表すエア。英雄王は凄い!英雄王はかっこいい!と皆が感じ、英雄王の魅力が伝わってもらえるのは本当に嬉しい。だって、ワタシが知っている中で最高にして一番カッコいい王様なのだから!是非とも皆に知ってほしいのだ。出来れば、教科書にも乗らないかなぁと淡い期待も懐いているくらいに

 

──人類の黎明には、こんなに素敵な王がいたのだと!人類の発展する過程の中でも、忘れることの無いようにしたいです!ワタシはそう信じています!

 

英雄王の事に関しては憚ることなく自己主張が激しくなるエアを愉快げに、いとおしげに目を細めて見据えながら、王はエアの頭を撫でる

 

《お前に見せてやりたいものがいくつかある。それらはお前をさぞ愉しませるだろう。楽しみにしておけよ、エア》

 

王の手の大きさと優しさに顔を綻ばせながら、力強くエアは頷く。まるで遠足を心待ちにしている幼稚園生のようだ。見た目は並ぶものなき絶世の美女にして、露出度の高いキャスターなるギルガメッシュの姿を取っているためギャップが物凄い事になっているが、其処がいいとフォウは花の慶次めいて力強く頷く

 

「まぁ、君の事だからいちいち驚くと身が保たないか。解ったよ。でもあんまり長く空けないでくれよ?皆心配するからさ」

 

「ほう、半年足らずにして我の敬い方が分かってきたではないか。貴様が培ってきた十年は伊達ではなかったようだな」

 

「君と付き合うには真っ当な精神じゃやっていけないからね。喜怒哀楽も品切れになっちゃうよ。やっと仕入れたばっかりなのにね!」

 

「ふはは!吉報を待つがいい!我は雑種や愚昧、有象無象にはぞんざいだが、これと決めた者にはむしろ与える側だ!」

 

こし餡饅頭、山吹色のお菓子を頬張る魔術王に英雄王。互いは同じ眼を持ち、同じ視点を持つ者であるがため極めて距離が近しい。そんな気のおけない同僚めいた関係にて、対話にも花が咲くと言うものだ

 

「よし、ではオルガマリーにも伝えておけ。早速我等は出向くとする、我がおらぬ間、舵取りはしておけよ」

 

任せてくれ、とロマンが手を上げる。同時に浮かんだ疑問を、なんとなしに彼は王に告げてみる

 

「滞在はどれくらいになるんだい?一週間?じゃあ帰ってくるのは二週間か三週間ほどかな?」

 

ふむ、と英雄王は考え込み、手元にあった林檎をしゃりっと食べながら道行きを計算する。地球を飛び出し、月に行き、帰ってくるその計算は、その道筋は・・・

 

「一日、交渉が手こずり三日ほどといった所だ。長く外したとしても、寂寥に咽び泣くでないぞ。必ず我は帰参しよう。涙を飲み、雛鳥の如く土産を心待ちにしておくのだな」

 

王の計算にふーんと頷いたロマンは、団子と饅頭を三つほど食べ脳に回した後に王の発言の意味不明さに気付き、椅子からずり落ちかける

 

「あーそう三日かぁ。暫くあえな三日ぁ!?全然短期じゃないか!?あれぇ!?月ってそんな、避暑地のリゾートみたいに行けた場所だったっけ!?」

 

そのワインが甘くなりそうな反応に大変満足しながら、王は素早く立ち上がり高笑いを上げ上機嫌に腕を組み、愉快げに、陰湿さが欠片もないいたずら少年めいた笑顔を浮かべる

 

「ふはははは!何度も言わせるな!我に、いや──『我等』に不可能は無いわ!楽しみに待っておけ!一足先に、我は単独にて我の庭の仕切りを飛び越えるとしよう!」

 

──そう、今の王ならば出来るのです!それが叶う理由も、きちんと備えているのですよロマンさん!あ、身体を打ち付けていませんか?シバにゃんを哀しませることの無いように!

 

(痛めるのは腰だけにしておこうね、男はね。甲斐性の証だからね)

 

それぞれ違う理由で、スッ転んだロマンを心配するエアとフォウであった。そしてこの団欒の後、エア達は、その身一つで月へと向かうこととなるのである──

 

 

「準備は出来たか!エア!」

 

深夜にて、自らの身支度を整えし王が確認の号令を玉座にて取る。その確認と号令にぴしりと手を上げるエアとフォウ

 

──はい!御弁当、身の回りの用品持ち運び、宝物庫の清掃!万事万全にして磐石です!

 

(ボクも問題ない。霊長類相手なら任せておいてくれよ。ヒトゲノムDNA持っている奴なら一瞬でダウンさ)

 

その覇気と愉悦みなぎる返答に満足し、王もまた万全の装いだ。左手に天の鎖を巻き付け、髪を下ろし、上半身を惜し気もなく露にするゴージャスカルデアを代表する王の、本気にしてエアを傍に侍らせるゴージャスの基本スタイルだ。もっと腕にチェーン巻くとか、太陽王に囁かれたのだろうか?

 

《良かろう!では赴こうではないか!空に浮かぶ寂しげな石、星を見据え、見守り続ける侘しい石に居を構えた者共の営み、そして・・・有り得ることの無かった夢の名残をな》

 

王の眼が瞬間輝き、空の強化ガラス張りの頭上に輝く月を捉える。王にとっても、月とはけして忘れ得ぬ場所であるがゆえに。その来訪には心を踊らせているのがエアとフォウには見て取れた

 

──はい!では──単独顕現を開始します!

 

エアの魂が英雄王の器に帰還し、フォウが英雄王の肩に乗り、高々と右手を上げる。そのまま、虹色と黄金、そして白金の魔力が辺りに満ち溢れ、三人の存在を此処ならぬ次元へと顕現させる

 

ロマンの驚愕する通り、月への単独への行き来を叶える、有り得ざるロジックの答えこそが・・・フォウ、そしてエアの持つスキル『単独顕現』である。本来なら、ビーストクラスでしか所持していないスキルを、エアはスキルランク★にて所持している

 

これは異世界、憑依転生を行い、その物語の当事者たれ、あらゆる事象の中心であれ、あらゆる困難を打倒する希望であれと、根源の観測者から与えられし願い。本来はEランク、ほんの萌芽でしか無かったものを・・・エアがその生き様と理にて昇華させ、グランドクラスに至った事実、そして此処に非ぬあり得ざる存在で在りながら顕現を果たしたという結論がこのスキルを測定上限にて跳ね上げたのだ

 

効果は、あらゆる時空、あらゆる空間、あらゆる時間軸に自らの存在を顕現させる事。どの時間の、あらゆる場所に存在するという事実を確定させる為、その存在を何処であろうと降臨、君臨させるという効果を・・・器、魂たるギルガメッシュにもたらす効果を持つのだ。逆説的に──エアがいる限り、王はあらゆる世界に自らの存在のみで踏破と到達、そして愉悦と蹂躙が可能となったのである。世界への移動が可能になった以上、同じ世界線、同じ時間軸に存在している天体に移動するなど造作もなく、極めて容易い事象であると断言できるだろう

 

故に──エアが至宝の銘を関する理由の一因でもある。このスキルは『既にどの時空にも存在する』という在り方をも示しているため、時間旅行を用いた時間操作、タイムパラドクスに該当する攻撃を無力化する事も叶い、同時にあらゆる即死攻撃、運命干渉、それらを全てキャンセルするのだ。極めつけには、人理を害する攻撃にすら影響を受けない。人理焼却すら燃え尽きず、人理を編纂、再編する事象ですら、エアを有する英雄王を仕留める、消し去ることは叶わない

 

つまる所、エアがいる限りゴージャスたる英雄王はあらゆるものに対処、対応が叶うのである。その魂を有し、庇護する事。エアを傍に侍らせる事には、磐石なる理があり、そして公私ともに完全なる王の確信があるのだ。彼女を傍に置くことによりあらゆる時空の全悪を討ち滅ぼす事が叶い、エアの生きざまを見て愉悦が叶い、同時に・・・

 

(月にはボクも行ったことがないんだ。畑違いだからね。凄く楽しみだぞぅ!エアとの旅行だもの、楽しみじゃないわけない!)

 

──ワタシもワタシも!眠れなかったの!あれが・・・遠足に行く幼稚園生の気持ち!

 

・・・霊長の殺戮者たる星の獣も自らの手中にて手綱を握る事が確定する。あまりの磐石かつ完全無欠ぶり。王に相応しき君臨を約束させる至尊の魂。魂のみでありながら生命の輝きを持つという唯一無二の至宝が自らにもたらす様々な恩恵、そして──

 

──王!この様な機会をお与えくださり、本当にありがとうございます!ワタシ、本当に毎日が愉しいです!心から、毎日が嬉しいことばかりです!

 

《であろう、であろう。これより先も、我の傍にいる事・・・後悔も退屈もさせぬと思え!》

 

──はいっ!信じております!ギル!

 

・・・無垢なる敬愛、尊敬と憧憬。王に不可欠なその全てを傍らにて自らに注ぎ続ける魂。けして汚れぬ魂の確保が有る限り、笑いが止まるハズもなかろうと言うものだ。・・・ならば自らも、全身全霊でこの魂を愉しませてやらねばなるまいと英雄王は決議するのである

 

《よし!では行くぞ!しばし浮くが、笑顔で堪えろよ!》

 

いよいよ以て転移が始まり、玉座の間を輝きが照らす。絢爛なる魔力が充ち溢れ、遥かなる光の矢となりて一直線に駆け抜ける。目指すは彼方、空の果てにして星の向こう。──一つ寂しく浮かぶ月である

 

──フォウ!離れちゃダメだよ!

 

(離れないさ、絶対に!)

 

《ふははははははは!さぁ、王の君臨である!その味気のない姿ながらも歓待して見せるがいい、石塊──!》

 

三人の意識は、刹那と光速を駆け抜ける

 

──其処には、王と一人の人間が紡ぎ上げた思い出が眠る場所──




--声がする

(エア、エア!大丈夫かい?単独顕現はまだあんまり試したことが無かったね。大丈夫。少しずつ慣れていけばいいよ、大丈夫さ)

親友の声に、飛んでいた意識が覚醒する。同時にこの場における存在が確定され、確かなる君臨が、時空における英雄王の絶対性が約束されるのである

《目が覚めたか?ならばその目でしかと見よ。この場は月、ではあるが正しき月の表に非ず。我等でなくば容易く呑み込まれるであろう虚数なりし月の裏側》

射し込む、静かなる夕焼け。夕方の時刻を思わせる夕暮れが、エアたちを優しく照らす

《味気無く、欲望の薄い表を我が疎んじ、閨を造り退廃に微睡みし虚数の海--そして、異なる我が、人間の見本品たる雑種を拾い上げし共闘の場》

そして目の前には--木造二階建ての、古めかしい学校の校舎が建っている。その入り口の前に自分は建ち、その傍らには--桜が咲き、花弁が舞い散る

《我にとっての月とは此処なのでな。順序不覚は笑って流せ。--よくぞ来た、エアよ》

--わぁあ・・・!
(ほーぅ・・・成る程ね。月の裏に、まずは来たわけか)

王が手を広げ、校舎を指し示す。自慢気に、自らの別荘を紹介するかのようだ。・・・それだけの価値が、此処には在るのだ

《虚数なりし月の裏--我が根城にして我が追憶の結晶である。些か古めかしいが、存分に探索するがいい!》

--王の遠き戦いの場に、今、二人は降り立つ--

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