人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ティアマト『見てください、シドゥリ、エレシュキガル。クリスマスツリー・ティアマト』

「お、お母様。自分をツリーに見立てるなんて反応に困るのだわ!」

「な、なんとも神々しきツリーですね、はは、ははは・・・」

『可愛いですか?でも、これ動けなくて・・・あ』

マルドゥーク『・・・』

『・・・マルドゥーク・・・』

「お、お兄様?」

「ど、どうなさいました?」

マルドゥーク『・・・(スッ)』

『?』

『プレゼント(大量ののど飴と手編みマフラー)』

『happy merry X'mas』

『・・・マルドゥーク・・・』

『b』

「お兄様・・・あつっ!?あついっ!?熱いのだわ!?」

「マルドゥーク、神体気温上昇・・・照れていますね!マルドゥーク様!」

『SEYANA』

「あつつつつ!落ち着いて!落ち着くのだわ!茹で蛸になっちゃう~!!」

『・・・とうとい・・・フォウ、改めて、その意味が・・・』

「ティアマト様──!?」




愉しみ続けるお前に

クリスマス、当日。カルデアで最も豪奢でありそして巨大な『個室』である王の部屋にて、フォウを抱きしめスヤスヤと寝息を立てていたエアの頬を、優しくなでぺちぺちと叩く者が在る

 

──むにゃむにゃ・・・けものがったい、あるてみっとふぉう・・・

 

《どのような夢を見ているのかは察しが付くが・・・水を注す事を赦すがいい。そら、目覚めよエアよ。我等にとっても愉快な1日がやって来たのだ、寝過ごすにはいささか勿体無かろう》

 

むにゃむにゃと寝言を告げながら、魂のまま眠っていたエアは聞き慣れた絶対者の声音に従い目を覚ます。フォウをいとおしげに抱きしめもふもふしながら目を擦り、素肌に上着を羽織りミルクを飲む英雄王に挨拶を返す。ナイトキャップに厚手のパジャマをきっちり着ながらのほにゃほにゃな挨拶だ

 

──おはよ、ございます。ギル・・・

 

《うむ。今日一日はオフとする。巻き起こる万象全て、思うままに楽しもうではないか。・・・そしてそこの女も起こさねばな》

 

エアがごしごしと目を擦り、王が指差す場所には・・・PSVitaを握り締めながら力尽きたように倒れ伏しているジャージの少女、アルトリアが眠りこけている姿があった。苦笑する王もまた、PS2を起動させ・・・テレビ画面にアルトリアが映っている事からゲームを行っていた事が見てとれる。・・・ひょっとして徹夜でやっていたのだろうか?

 

《こやつめ、『原点にして頂点のセイバーの輝きを知るべきです!』と聖夜を控えた夜に殴り込んできおって。だが闇討ちで他のセイバーどもを抹消されては敵わぬ。仕方無く我が監視を兼ねて付き合っていたのだ。勘違いするなよエア。こやつの空気の読めぬ飛び入りだ》

 

──?何を勘違いするのかは解りませんが・・・でも、仲良しな事は素敵なことでは無いでしょうか?王がアルトリアさんと仲良く出来ていることは極めて喜ばしい事だと感じます、はい!

 

その言葉を聞き、笑みを浮かべながらアルトリア、ヒロインXの尻をひっぱたき叩き起こす英雄王。ふがっと目覚め、辺りを見渡すアルトリアにタオルを引き渡しながら王が呆れ混じりに苦笑し洗面台を指差す

 

「目は覚めたか?よし、顔を洗い気を引き締め何処へなりとも往くがいい。我等はこれよりゆるりとこの一日を過ごすのでな」

 

「むにゃむにゃ・・・CCC、あまり目新しいものはありませんでしたね・・・確かにギルはカッコよかったですが、カッコいいギルならいつも見ていると言いますか」

 

「此方としても驚いたぞアルトリア。まさかお前が初のマスター殺しのサーヴァントだったとはな」

 

「・・・断食、したのですかッ・・・!ギル、あなたはなんということを・・・!!」

 

「同時に貴様は何故鼻息荒く突っ込み返り討ちを繰り返すのだ。自殺志願の特効癖を持つ破綻者のマスターに猪突猛進の騎士王。似合いではないか。これは我の出る幕では無かったな」

 

「ぐぬぬぬぬ・・・!で、でも最後はカッコいいんです!アヴァロンカウンターとか物凄くカッコいいんですからねーだー!!ギルのセンスzero!本能が夜の帝王ー!!」

 

PSVitaを握り締め涙目でスタタタタと走り去っていくアルトリア。どうやら断食はタブーだったらしい。哀しげにダッシュして去っていく後ろ姿を見送りながら、ふむと頷き気を切り替える

 

「全てのENDを回収したのだがな。・・・いかんな、雑種めの長々と垂れ流される独白に何度機材を叩き壊そうと思ったことか。粗削りであり、勢いに乗れねばちと辛いが・・・まぁ出典なのだ、無粋は言うまい。神どもも若かったのだ」

 

──カニでも使える必殺剣もかなりアルトリアポイントマイナス案件だったのでしょうか・・・

 

(あいつ初代だと味方じゃ頼りなくて敵ならクソ強いの典型だからなぁ・・・)

 

「後でアルトリアには何かを奢るとして・・・さて、出向くとするか」

 

鎧ではなく、黒いライダースーツを纏い、エアに手を差し伸べ起こし、英雄王は笑顔で告げる

 

《今日は聖なる日だと聞く。──我としても思い入れのある日だ。ゆるりと堪能しようではないか、エア。フォウ》

 

──思い入れ・・・?王が聖人なるお方の生誕を祝福なさるのですか?いえ、欲と我を第一とする王が清貧と倹約を是とするお方を賛美するなど起こりうる筈が・・・

 

(──あぁ、そう言うことか。なるほどね。エア!とりあえず出掛けようじゃないか!たくさん楽しいことをするためにさ!)

 

頭を悩ませるエアを、フォウもくいくいと後押しする。その勢いに背中を押され、いつものようにエアの魂はふよふよと王の傍に侍り浮く

 

「よし、では行くぞ。なぁに、何かを為すわけではない、ただ過ごすことこそが肝要なのだ。向かいたい場所、赴きたい箇所があらば遠慮なく告げるがいい」

 

──わ、分かりました!・・・なんだか今日の二人とも、随分嬉しそうに見えますね。ワタシ、何かを見落としているのでしょうか?王とフォウの事で見落とす筈は無いのですが・・・

 

(ふふん、いいからいいから!)

 

うむむ、と頭を悩ませるエアを、愉しげに侍らせ後押しする王と獣は鼻唄混じりに部屋を後にするのであった──

 

せいなるひ たいせつないみ けものかな

 

 

王と姫、獣は三人でまずは朝食を摂ることにした。王のみが許されるゴージャス席、ギルガメッシュ座席に腰掛け、シチューやバターケーキを食べながら穏やかな時間を過ごす

 

──はい、フォウ。あーん

 

(あーん!あぁ、美味しい!幸せ!最高だよエア!あぁ、生きていて良かった・・・)

 

──大袈裟なのは変わらないね、フォウ。王も如何ですか?素敵なバターケーキ、美味しいですよ!

 

《ふむ、では我もそこな獣と同じく・・・》

 

そんな、傍目からみたら王と獣の戯れ、じゃれあいにしか見えない微笑ましい光景に更なる彩りを加える者達が現れ、王達の団欒に声をかける

 

 

「「「メリークリスマース!」」」

 

それはカルデア子供組、ジャック、ナーサリー、アステリオスの三人組だ。クリスマスの装いに身を包み、朗らかに王に挨拶を返す

 

「うむ、存分に堪能しているな?良い良い、赦すぞ。思うままに振る舞うがいい」

 

「フォウと遊んでるの?めるへんだね、おーさま」

 

ジャックの言葉にフガッとフォウが反応したが、アステリオスにひょいとつままれじたばたと動く獣に、一同が笑いを同じく上げる

 

「フッ、我は動物にも子供にも優しき博愛ムツゴロウ王だぞ?そこな獣とも最早万全な関係を築いておるわ」

 

(テキトー言うな!ボクのパートナーであり対等なのはエアだけなんだからな!)

 

──フォウがパタパタしてる・・・かわいい・・・やっぱりフォウの可愛さは、かけがえのないオンリーワンだよ・・・

 

「凄いのだわ凄いのだわ!物語の王様が、皆貴方のような王様だったらどれだけ素敵なのかしら!」

 

「童話が裸の王様のみになるが構わぬか?」

 

──あっ!王様がオールタイムフルヌードだよ!

 

(それなんてソルサク?)

 

そんなやり取りをした後に、チャイルドなサーヴァント達は顔を見合わせ、もじもじとしながら二の句を告げようとしていることを見抜いた王は脚を机に投げ出しながら会話を促す

 

「なんだ?この我に頼み事か?良いぞ、赦す。如何なる願いも二つ返事で叶えてやろう。そら申してみよ。我が威光に目を輝かせるがよい。姫のようにな」

 

その言葉を聞いたジャック達は満面の笑みを浮かべ意を決したように声を揃えて王に告げる。そのお願いとは・・・

 

「「お願い、王様!ラマッス仮面に会いたいの!連れてきてくださいな!」」

 

──ラマッス仮面に!

 

キュピーン、と目が輝くエア。その予想外のお願いに吹き出しながら、フォウの頭をぺちぺちと叩く王。その手をぺしっと尻尾ではたくフォウを傍に、にっこりとエアが微笑みラマッス仮面の活躍を思い返す

 

「ウルクでカッコよかったあのラマッス仮面に、クリスマスに来てもらいたいなって。ラマッス仮面は、サンタともお友達なんだってエルキドゥさんが言ってた」

 

「そう!素敵な素敵なメルヘンヒーロー!ラマッスなのに獅子頭なヘンテコヒーローにもう一度会いたいのだわ!聖なる夜だもの、カッコいいヒーローに会えるのもきっと叶うはずだわ!だから・・・」

 

「あい、たい!あくしゅ、したい!」

 

──チビッ子の皆!会いたいんだね!ウルクを駆け巡ったあの弱きを助け強きを諭す正義のヒーロー、ラマッス仮面に!ウルク出典、けれど何処にでもいるラマッス仮面に会いたいと言ってくれるんだね!

 

(これは豆と酒の大賢者も出番ありかも!やったねエア!大反響だ!)

 

──うん!王!その、そのですね!是非、是非とも今回ばかりは、皆さんの要望にお応えしたいと言いますか!ラマッス仮面リターンと言いますか!是非、是非ともですね!

 

興奮覚めやらずふんすふんすと目を輝かせ直訴するエア。ラマッス仮面は自分としても御気に入りのヒーローで、ウルクの民たちを手助けするために王が御忍びで仮面を被り影に日向に民を救う(設定)ヒーローを再び求めてもらえるのはとても喜ばしく、嬉しい事であったからだ。その態度に優しく頭を撫で、ふむと頷き──

 

「──良かろう。その願い聞き入れてやろうではないか!再びウルクのヒーローを呼び出したいと言うならば叶えてやろう!再び歓声を以て出迎えるがいい、かの人面と獅子を間違えた妙なるヒーローをな!」

 

「「「わーい!やったぁ!」」」

 

喜色満面となり跳ね回るチビッ子達。深々と頭を下げるエア。それでは早速と宝物庫から変身グッズを用意しようと波紋に身体を射し込み・・・

 

《そう逸るなエア。ただ見せるだけでは味気がない。どうせやるのだ、プレゼントの配布をも兼ね、娯楽としても愉しませてやろうではないか》

 

その言葉の意味を理解するのに時間がかかり、キョトンとしているエア。王は立ち上がり、即座に宣言する

 

「見たいと言うならば見せてやろう!叶えたいと言うならば叶えてやろう!それが御機嫌王の威光であり矜持である!では行くぞ!集まれチビッ子よ!──ラマッス仮面ヒーローショー!!開幕である!!

 

(は!?)

 

──な、なんと・・・!?

 

その言葉から僅か三十分後・・・王によって建てられた特設ステージによって、クリスマス特別講演のラマッス仮面ヒーローショーの開演が高らかに告げられるのだった・・・!

 

 

 

 

「っあぁあぁ──ッ!っく・・・!」

 

ステージにて、ついに追い詰めた邪教イシュタル団の総帥たちとの最終決戦。世界の平和を懸け最後の戦いに挑むラマッス仮面。だが悪の総帥達の強さは並ではなく、劣勢に陥り吹き飛ぶラマッス仮面。誰も知らぬ仮面の下の素顔が、破損したマスクより眼の真紅を覗かせる。孤立無援の戦い、そのピンチに固唾を飲んで見守るチビッ子達。悪役の皆さんもノリノリで演じながらラマッス仮面を追い詰めていく

 

「此処まで一人で辿り着くとは素晴らしいネラマッス仮面。獅子は蜘蛛の糸に絡ませるには大きすぎたようだ。だが・・・それも此処で終わりだよ」

 

悪の教授、アラフィフ☆パパンも張り切って悪役ムーブを行う。フランやオルガマリーに手を振りつつ、妥協なしの演技を行う。他の幹部たちも同様だ

 

「デュフッ!やはり仮面の下は絶世の美男子あるいは美女なのが御約束!さぁさぁ、捕まえてひんむいて御対面ですぞー!」

 

「美女ならアビシャグ!男なら戦場に行ってもらおう!噂のラマッス仮面、もう少し顔を見せてほしいなぁ!」

 

「おぉ、なんという。美人であるならば投降したまえ。美貌の君が喪われるのは真に惜しい、解るか、惜しいのだ。シーザー的に」

 

「自白剤は大量にあります・・・あることないことを洗いざらい話し、お友達になりましょう・・・」

 

「聖杯ください」

 

「・・・!」

 

左目に亀裂が走ったマスク。脚本を手掛けた某少女R・Fによる外せないシチュエーションに従い、仮面の下の美貌がやや露になりながらも、力強く敵を睨むラマッス仮面。観客席には、サーヴァント、職員問わずカップルが大半を占めている。チビッ子を楽しませ、クリスマスを彩ると言う計らいにて執り行われしヒーローショーに、皆が顔を出しているのである

 

「あぁっ!此処まで戦い抜いてきたラマッス仮面、多勢に無勢の大ピンチ!此処まで来て、邪悪で極悪な邪神イシュタルに敗れてしまうの!?ピンチ!ピンチなのだわ!」

 

必死に脇で緊張を掻き立てるのは司会のお姉さん、エレシュキガル。キャップにエプロンを掛け、迫真のナレーションで盛り上げていく

 

「みんなー!応援するのだわー!エッ・・・ラマッス仮面に大きな声でエールを送ってー!せーの!」

 

「「「「頑張れー!!ラマッス仮面ー!!」」」」

 

その応援も一度でも届かず、悪役の皆さんの攻撃エフェクトに合わせ鎧がブレイクされていく。素肌面積が広がり、金色の長髪が少しずつ顕となっていき、ピンチを演出していく

 

「もっともっと大きな声でー!ラマッス仮面ー!頑張れー!!」

 

「ラマッス仮面さーん!頑張ってくださーい!!先輩も・・・先輩!?」

 

「何処行ったのよリッカ・・・一番好きそうなショーじゃない・・・」

 

団扇やサイリウムを振るい、パワーと応援を与えていくマシュにオルガマリー。そして会場の皆。中には太陽王だったりアーサーもいたり中々に豪華なチビッ子達が集まっている

 

「さぁ、チェックメイトだラマッス仮面。君の事は忘れないヨ」

 

「聖杯ください」

 

一同の攻撃、会場を揺るがす応援。片膝を付くラマッス仮面。会場が一つとなり、全てが重なったとき・・・──

 

【クハハハハハ!笑止!!この世界で、私以外の邪悪など認めるものか!!】

 

総帥に幹部たちの攻撃に待ったを掛けるものが在る。それはラマッス仮面永遠のライバルにして、己のみを絶対唯一の悪とする孤高の邪悪にして『悪の敵』・・・

 

【アジダハリッカ!見参!──とう!!】

 

ライバルのピンチを助けるという美味しいポジションを独り占めにし、ステージ上空、東京ドームシティ並みの会場にINし、ラマッス仮面を庇うように立つ。ウルクで散々に悪役を為したアジダハリッカの参戦に、会場のチビッ子は大いに沸き立つ

 

「アジダハリッカ!アジダハリッカよ!まさか出てくるなんて!あぁ、いないと思ったらそういう!?」

 

「ノリノリかマスター。ジャンクフードをドカ食いしていたのはそう言うことだったのだな」

 

「クハハハハハ!!クハハハハハ!!」

 

「きゃー!!リッカちゃんカッコいいー!!」

「ぷぎゅるるる!!」

 

「ダークヒーローとヒーローが力を合わせる・・・ゴールデン、めっちゃくちゃ王道ゴールデンじゃねぇか・・・!!」

 

ラマッス仮面とは目線を合わせず、ただ手を差し伸べ助け起こすアジダハリッカ。その手助けに深々とお礼をし、そして問う

 

「ありがとう。でも・・・どうして?」

 

【勘違いしないで、ラマッス仮面。私は別にあなたを助けたわけじゃない。あなたを倒すのは私だし、それに・・・】

 

「ほう、我々のような悪党が許せないと?」

 

【言った筈だ。私はこの世全ての悪。世を脅かすのは私のみ。世界を蝕む私以外の悪など認めるものか】

 

「おおっと!ここでお決まりのツンデレ!御約束なのだわ!」

 

ダークヒーロー好きなチビッ子のハートを鷲掴み、悪属性のハートを掴むアジダハリッカ。ラマッス仮面と共に大歓声を受けながらもクリスマスショーが続いていく

 

「勇ましい事ですな!だがよぉ、この人数差を相手にイキるのはちょっと身の程がお見えになっておられないのでは無いのですかなぁ?リッカたんよぅ!」

 

「おうティーチ!やりゃあ出来るじゃないのさ!悪役やらせたら天下一品なんだ、弾けてごらんよ!」

 

「オッフ、その、降伏するなら、今のうちでちゅよ?」

 

 

海賊・カリブ・ティーチが凄み威嚇する。以心伝心のアドリブも込めて劇を進めていく。ドレイクの野次を受ける度台詞をトチるうぶっぷりも見せつけながらも、リッカ達に華を持たせる

 

【クハハ!笑止!此処に何の策も無く私が飛び込む脳筋だと思うか馬鹿め!】

 

「割りと」

 

「かなり」

 

「否定は出来ませんね」

 

師匠三人の酷すぎる同調にダメージを受けながら、リッカは手を上げる。そして、この場限定の新たなる仲間たちを、高らかに呼び出す──

 

「待たせたわ!ラマッス仮面!ですが私達が来たからにはもう安心でしてよ!」

 

「・・・この声は!」

 

次々と現れ、ポージングを取っていく初披露となる戦士達。ラマッス仮面を支える、心強い仲間たちが。アジダハリッカに連れられステージINを果たす・・・!

 

「いつだってヴィヴ・ラ・フランス!白百合の輝き!ロイヤル☆マリア!」

 

「慈悲と慈愛はナイルの恵み。エジプトの恵み、ハトホル☆ネフェル」

 

「ウーサー・ペンドラゴンの嫡子。アルトリア・ペンドラゴン。・・・騎士王です」

 

『お指を詰めるはオトシマエ。着物で無敵なお姉さん、ケジメ☆リョウギ』

 

[月に輝く真祖の顕現。明けぬ夜を照らせし一・アルテミット☆アルク]

 

義賊、巫女、騎士王、着物、ドレスを纏った新たなる仲間たちの登場に、ボルテージが最高潮となっていく。エアもそれは例外ではない。これはサプライズで、知らされていなかったのだ。──王の差し金である。予め、声を掛けていたのである

 

「皆、どうして・・・!?」

 

「せっかくのショーなのだもの、皆で楽しみましょう?友達として、オタスケするわ!」

 

「ラーメスが、是非貴女と肩を並べろと・・・精一杯頑張るわ、シャナ」

 

「ギルに押しきられました。さぁ、決めましょうプリンセス。決着の時です」

 

『衆目に晒され、注目を集めるのは初めてね。でも、これが友達として普通の事なのでしょう?』

 

[日頃愉快にさせてもらっているからな。付き合ってやろう。お前に免じて特別にだぞ]

 

皆の付き合いの良さに、感激し頷きながらショーのクライマックスに移る。いよいよ、悪党の成敗タイムだ

 

【さぁ皆!プレシャスパワーを高め!──パワーをラマッス仮面に!!】

 

 

「「「『[いいですとも!!]』」」」

 

ラマッス仮面を先頭に、肩に手を置きV字の配置につき七色に輝く一同。輝きの演出はフォウが担当し、迫真の虹色が立ち上っていく

 

「え、なんかすごいパワーが見えるんですが。拙者たち大丈夫?大丈夫?」

 

「諦めよう黒ひげ君。悪役の決まりはこういうものさ!」

 

「美しき者たちに破れる定め。そう、クリスマスはそれが通例なのだ・・・」

 

「聖杯ください」

 

「ふむ・・・王手、かな?」

 

極限まで高まったその力の高まり。放たれるは必殺ビーム。ラマッス仮面が皆の力を以て放つ最強の必殺技・・・その名も!

 

「「「『[「天地乖離す開闢の星!(エヌマ・エリシュ)──!!!」]』」」」

 

放たれる、虹色のフォウ型光弾。本物のフォウが悪党たちに放たれ、やがて大爆発を起こし吹き飛ばされる。爆発が巻き起こり、やがて収まり・・・

 

「やった、やったのだわ!悪の邪神教団イシュタルメンバーは、ラマッス仮面達により倒され、メソポタミアに平和が戻ったのだわー!ばんざーい!ばんざーい!やったのだわー!!」

 

司会のお姉さんの号令に釣られ巻き起こる大歓声。チビッ子の興奮にハイクオリティな役者の演技に演出を称える惜しみ無い拍手。それらが巻き起こり、突発的なヒーローショーの大成功を示す。

 

「ありがとう、皆!皆の力と願い、応援があったからこそ、聖夜を取り戻すことができた!どうか忘れないでほしい!皆の心には・・・いつもラマッス仮面がいる!皆が困っているとき!ラマッス仮面とその仲間達は、必ずやってくる!それを信じて、日々を生きてほしい!愛と希望、絆の尊さを信じて!皆で叫ぼう!せーの!」

 

 

「「「『[【ラマッス~!仮面!!】]』」」」

 

ラマッス仮面をセンターに、思い思いのポーズを取り、大爆発で〆を執り行い、幕がゆっくりと降りていく。拍手は鳴り止まず、そして──上空から風船付きで落ちてくる、大量のプレゼント

 

『ふはははははははは!!解りきっていた結末を手に汗握り目の当たりにするとは純真な奴等め!だが良い!子供だましと断せずよくぞ最後まで見続けた!その殊勝さに免じ、此処にいるチビッ子どもに我が蔵よりのプレゼントをくれてやろう!!ありがたく、そう!ありがたく受け取るがいい!ふふはははははははははは──!!!!』

 

プレゼント、そしてヒーローショー。両方を同時にこなし・・・英雄王は高らかに、楽園の皆にその気前の良さと豪奢さを見せ付けたのであった

 

──日が沈む時刻になるまで、各ヒーロー達、ヴィラン達のサイン会と握手会、撮影会を行い・・・クリスマスは夜が深まるまでに過ぎていった──




──・・・・・・(にんまり)

すべてを終わらせ、食堂のとあるルームを貸し切り食事を行うエアとギル、フォウ。ラマッス仮面が大人気だったこと、皆と一緒にショーがやれたこと、プレゼントを配れたこと。かけがえのない大切な時間と想い出を胸に秘め、幸福を表情に顕す

《フッ、堂に入った演技ではないか。流石は我が器を駆動させていた魂よ。ウルク地方のヒーローはこれで決まりよな》

(皆も快く付き合ってくれて・・・本当に良かったね、エア!)

──うん!フォウも皆も、本当にありがとう!このクリスマス、素敵に過ごすことが出来たのは皆のお陰だよ!

先程打ち上げが終わり、完全に三人きりの空間。ギルもエアの様子に満足げに頷きながら、酒を優雅に飲み煽る。フォウもまた、エアの笑顔に割れ、砕け、砕け散り、プレシャスパワーを溢れ出させているのだ

《余さずプレゼントを配り終えるには丁度よい催しであった。突貫劇場もこなすとは。我ながら多才にも程があろう。・・・さて》

酒を飲み干し、器を投げ捨て告げる。一人、配っていない者がいるのだ。プレゼントを、渡していない者がいる

《要望を聞こうではないか、エア。お前が望むままのプレゼントを好きなだけ与えてやろう。いらない、は通さぬぞ?さぁ、我に振る舞わせるがよい》

──ワタシ、ですか?

《然り。この一年にてお前は存分に成長した。その自意識、自我の芽生えを示すがいい。万象の王の下、その全てを叶えてやろうではないか》

・・・ひょっとしたら、最初から王はこれを伝えたかったのかもしれない。その顔は、期待と愉悦に充ちていた。この魂が欲するもの。姫となりし者が欲する望みとはなんなのか。それを確認したいとする王の真摯な問い掛けでもあった。紅い目線が交錯し、そして二の句を王が待つ

──ワタシが欲しいもの・・・

蔵の中のあらゆる財を見ても、欲は起こらなかった。あらゆるものを見ても、指輪を除いて欲しいとは思えなかった。それは、欲が起こらないのは・・・やっぱり──

──傍に、いさせてください。英雄王。貴方の傍らで、ずっと、貴方の威光を目の当たりにさせてください。これからも、ずっとずっと。一緒にいたいです

自分の今が・・・幸せで、満たされているからなんだと確信する。一番欲しいものは、もう貰っているのだ。告げることは、これしか有り得ない

──御声を、聴かせてください。愉しげに、共に語らせてください。日々を、共に笑いながら過ごさせてください。貴方を、一番近くで目の当たりにさせてください。これからもずっとずっと、貴方の笑い声を聴かせてください。一緒に、いつまでも共に在ることを、御許しください。親友のフォウと一緒に、ずっとずっと

それだけが望みだ。それだけが願いだ。この身体に、魂の名前に。もう、数えきれないくらい貰っているワタシが欲するならば・・・これだけしか有り得ない

──ただ、あなたのそばにいたいです。英雄王ギルガメッシュたるあなたのお役に立ちたいです。もっともっと、貴方のカッコいい活躍を目の当たりにしたいのです。願いは沢山で、一つに絞りきれないけれど・・・どれも絶対、譲れません。全てが、ワタシの大切な願いです

はっきりと眼を逸らさず、全身全霊を以て告げる。欲しいものはこんなに沢山だ。──でも、叶えてくれると信じている

──ワタシのお願いを・・・聞いていただけますか?ギル

真っ直ぐと、毅然と告げるエア。想定してはいたが想像を遥かに越えていった答えに、眼を白黒し固まる英雄王。フォウは最早消し飛び跡形も残っていない

そう、自分はもう、何も要らない。要らないけれど・・・どうしても、問われるというならば。答えはこれしかない

ずっと、ずっと。貴方の傍にいたい。それだけでいい。これまでも、これからも。一番近くで貴方を支え、愉悦したい

どうか、叶えてほしい。これがワタシの、転生を果たした時より変わらぬ願いなのだから──

《・・・・・・・・・・・・たわけめ》

不意に頬に手が伸び、優しく撫でられる。その手付きは優しく、緩やかで・・・

《今更、当たり前のものを求めるでないわ。・・・まこと腹立たしい。何度我の予測と想像を覆せば気が済むのだ、お前は》

その顔に浮かべる英雄王の微笑みは・・・今までで一番、穏やかで優しげで。──エアの望みへの返答を、万の言葉よりも鮮明に語っていたのだった──

・・・聖夜の夜は過ぎ、行く年は過ぎ、やがて来る年がある

それでも・・・王にとって唯一の『友』、そして・・・無二たる『姫』の価値は未来永劫、変わることは無いのだろう

姫をいとおしげに、獣を撫でながら抱き、玉座にて寝息を立てる王の就寝を以て──聖なる夜は、終わりを告げるのだった──

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