人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ロマン「大丈夫!?これ大丈夫!?確実に一人くらいは増援を送った方がいいんじゃない!?」

オルガマリー「わたしもそうおもうけど、ここは我慢よ。リッカの判断を信じなさい。私も信じているから。・・・それにしても・・・あのサーヴァント、単独行動を高いランクで所持しているわね」

ロマン「あ、何か単独で行動する為にですか?もしかしたら人類の手に負えない存在を単身で倒すためのスキルだとか・・・」

「それならあんなに弱い理由がわからないわ。相討ちを狙うにしても、もう少し強度がなくては話にならない。・・・謎が多いわね・・・」

ロマン「案外褐色単身繋がりで、エミヤくんと同じ抑止力の使者だったりして?日サロ好きなのかな、アラヤ・・・」

「そんなわけないでしょう。特異点は歴史から切り離されているんだから、解決しようがしまいが人類の存続に関わりが無いなら抑止が介入する理由が無いじゃない」

「それもそうかぁ。うぅん、謎だなぁ。ギルはどうおも・・・あれ、ギル?」

「あぁ、ギルならリッカの為の新たな魔術礼装を開発に師匠と行ったわ。『マスターとして戦うならば、それなりの用意をしてやらねばな』って」

「行動速いなあの王様!?」

「あなたが割りとのほほん気味なだけよ」



──ワタシがナビゲートですか・・・緊張しますが光栄です!やってみせます!

(カーソルアイコンはボクだ!任せてくれ、いっぱいタッチしていいよ!)

「マスターとしての支援、人類悪としての前線。無慈悲にすぎる万能ぶりが恐ろしいな。さて、ホーム画面は如何にしたものか・・・」

『ギルガメタブレット』



穿壊

「むっ、はっ、とぁい」

 

マジンさんの素人剣技による大刀が振るわれ、書文の槍と打ち合い火花を散らす。夜闇を照らし、そしてぶつかりあう生死の交差。不器用ながらも懸命にサーヴァントとしての使命を全うせんと褐色の少女が、神域に達した槍に挑み、乗り越えんと得物を振るい続ける

 

「『瞬間強化、全体強化、騎士の誓い、瞬間回避!』頑張れ、マジンさん!」

 

リッカもまた、人類悪ではなく一人のマスターとして懸命にマジンさんの戦いを支え抜く。カルデアの供給魔力、そして人類悪として完成した無尽蔵の魔力、オルガマリーより移植された一級品にして最高級の魔術回路にて生成されし魔力が、莫大な後押しとなってマジンさんを、未熟なサーヴァントを奮い立たせるのだ。──神槍たる書文の武に、打ち合える程に

 

「呵呵呵呵!まるで稽古か組手をしているかのような手応えよ!そら、もっと腰を入れ全身にて武具を振るえ!手打ちでは倒せる敵も倒せんぞ!」

 

「むむ、難しい。だが、負けないぞ」

 

弾かれてたたらを踏めば再び踏み込む。振るったならば身体を踏み込ませる。少しずつ、少しずつ。無明の闇を進むかのように、マスターの信頼と援護を明かりと道標にするかのように。少しずつ、マジンさんは歩み、自らを高めていく

 

「・・・何処からどう見ちゅうても素人な剣が、何の間違いであいつと打ち合っとるんじゃ。わしは夢でも見とるんか・・・」

 

弾かれればふらふらと転び、追撃には無様にドタドタと転げ回る。だが、反転し繰り出す技には冴えとキレが少しずつ宿っていく不可思議なマジンさんの戦いを、以蔵は呆然と一人呟きながら見据えている。才もない、記憶もない。そんな小娘が何故あれほどまでに・・・否、『あれほど無様でありながら戦えているのか』。自分では思い至らず、狐に摘ままれているような気概の所感を漏らしている

 

「解らないのか、ポメ蔵。マジンさんが、へっぽこマジンさんがこんなニーハオランサーとまともに戦えている理由が」

 

「ポメ蔵!?」

 

つばぜり合い、拮抗するマジンさんがふと声をかける。何処にそんな余裕があるかじゃ、と告げたい口を開く前にマジンさんが自慢げに答える。自分はサーヴァント。マスターと共に在る者。なればこそ、其処には──

 

「自分を信じ、マスターも信じる。サーヴァントとはそういうものだ。私は今、リッカにたくさん助けられている。だから戦える、だからがんばれるのだ」

 

「・・・マスターじゃと・・・?」

 

リッカを見やる。漆黒と真紅、そして純白の魔力を練り上げマジンさんに力を送る。同時に礼装の効果を極限まで集中し適切に選択しながら戦いを進めている。その有り様は真剣かつ、自らが戦っているかのように必死だ

 

マジンさんもまた、莫大な魔力をたぎらせ至らぬ身を限界以上に引き上げている。一人であるならばもう既に100は死んでいる打ち合いを乗り越え生き延びている。マスターたるリッカの信頼が、力となりて心身を奮い立たせる。打ち払われ転げても即座に立ち上がり、大刀を自在に振り、懸命にランサーに追い縋る

 

二人の在り方、有り様はまさに一心同体。出会ったばかりの筈なのに、その信頼はとても強く固い。そしてそれは形となりて現れ結果を為す。鎧袖一触の戦力差を、懸命に埋めて食らい付いていく

 

「・・・・・・わからん。わしにはわからん世界じゃ・・・」

 

「分かるぞ。分かるはずだ」

 

剣を弾き飛ばされたマジンさんが、回し蹴りにてランサーを牽制しバック転を行い刀を握り、リッカの下へ舞い戻る。魔力を再び練り上げ、立ち向かう構えを取りながら、以蔵へと告げる

 

「見たところ、ポメ蔵はこれからだ。まだまだやれる事はある。マスターを、リッカを・・・誰かを信じてみろ」

 

「──何を、わしは・・・」

 

その返答に応えている暇はマジンさんにもリッカにもなかった。一度でも触れられれば終わり、二の打ち要らずの槍を捌くために全神経を集中している為だ。その戦いには、油断や緩慢は即座に絶命の断崖に落ちることを意味する。──だが、それでも伝えたかったのだ。同じサーヴァントとして。お前はまだ、これからだと

 

「よい眼だ、よい覚悟だ!打つ度に蓋の開く音が響く、研ぎ澄まされる刃が見えるぞ!呵呵!たぎるたぎる!血が!肉が!」

 

ランサーからしてみれば愉快にして痛快きわまりない戦いだ。目の前の幼児にも劣り剣を振り回す稚児が、一振りする度に・・・自らと打ち合う一合一合に『強くなっていく』。少しずつ、少しずつ。確かな一歩を踏みしめるように、遥かな山を乗り越えるかのように

 

己では越えられぬ壁を、苦難を主と共に越えていく。感じる限界と結末を変えていく、乗り越えていく。信義と仁義を刃に乗せ、自らに食らい付く。サーヴァントならではの合理にして活路。戦いの中で成長しメキメキと腕を上げていくマジンさんとの戦いに、存分に腕と心をランサーは昂らせていく

 

「そうだ!己の限界を越えていけ!一人で至らぬなら共に歩め!遥かな頂を共に睨め!くははははは!召喚されてみるものだ!まさか仕合の中で奮い立ち磨きあげられる者と出逢おうとはな!」

 

その出逢いと奇怪な成長を心から歓迎する。そう、戦いにて向かい合う相手が、一秒一瞬ごとに強くなる。瞬間瞬間に見違えた強さとなっていく。その事実に、ランサーの身体はたぎり心は教導を良しとする本来の心待ちをさらけ出していく。得難き敵であり得難き戦いだ。いつまでも続くというのならば続いてほしいものである。この者等の辿り着く果てとは如何なる者か、想像するだけで仕手が奮う。目の前の青空がごとき深さのサーヴァントに、そのマスターに期待が高まっていく

 

「だが、儂程度倒せなくば頂など夢のまた夢よ。どれ、一つ先達として長城と成るか──!」

 

踏み込む震脚にて足場を粉々に砕き、そして槍を構え周天に極まりし気を満たす。陰陽を分け隔てなく貫き、相対した者を余さず絶命させしその銘を開帳せしめるランサー

 

「防ぐもかわすも好きにするがいい。諸共に打ち砕いてくれよう。──我が槍は此まさに一撃必倒」

 

「むっ──来るぞ、マスター。どうする」

 

練り上げられし気にて大気が震撼する。踏み鳴らされた大地が悲鳴を上げる。数秒後に現れる死が見える。マジンさんはリッカの指示を仰ぐ。生死の選択を、躊躇いなくマスターへと委ねる

 

「・・・──行くよ、マジンさん!命、燃やしちゃってみる!!」

 

迷う暇はない。迷っている内にマジンさんが貫かれるならば即座に決断を行わなくてはならない。そして選んだのは──回避や迎撃ではない、最も困難かつ、最も活路を見出だせる選択であった

 

「『魔力放出』『瞬間強化』『全体強化』!『オシリスの塵』『騎士の誓い』!『霊子譲渡』!──決めるよ!マジンさん!」

 

限界極限まで強化し、力を奮い立たせ必殺の一撃に懸ける。回避では逃げられない、防御では貫かれる。ならば、虎穴に飛び込み討ち果たす。魔力支援を受け、大刀が真紅に輝きを放ちマジンさんの瞳に決意が灯る

 

「あぁ、行こう。──決着だ、ニーハオランサー」

 

「応とも。渾身の絶技を以て我が異名、覆してみるがよい!」

 

踏み込めば、共に必殺。首を貫くか、心臓を穿つか。突きと突き、必殺と必殺が今、ぶつかり合い覇を競い、雌雄を決する

 

「神槍と謳われたこの槍に、一切の矛盾無し!!」

 

放たれる、払い、崩し、そして必滅の槍の一突き。次や二は不要なる、過たず絶命を招く六合大矢槍の極意。──八極の拳すら、槍を収めるための前準備とされる程の宇宙合一を是とした槍の一撃が、音速を越えた衝撃波と覇気による一帯の崩壊を伴いマジンさんを穿つ

 

「──マジン剣、必殺突き」

 

マスターの支援を受け、赤と黒の光を放ち打ち放たれる輝き。素人ながらも全霊を込めた、意地の三連突き。信頼と期待を力にするその突きが、神の槍を迎え撃つ

 

「──駄目じゃ!勝負になぞならん!殺されるだけじゃ!」

 

叫んだ以蔵には見えていたのだ。突きの精度、練り上げ、軌道、そして威力。それら全てが上回られている。このままぶつかり合った処で、無惨に死体が一つ出来上がるだけだと。彼の溢れんばかりの才覚が告げていたのだ

 

「殺されるきに、無駄死にさせゆうがか!おまん、全部分かって・・・!」

 

「──無駄死になんてさせない!マジンさんは、私が護る!!」

 

叫びと気迫にてリッカが宣言する。──同時に、彼女の練りに練り上げられた魔力が、漆黒と純白の『鎧』の形を取りて現れたのだ。それはリッカが纏いし鎧。人類悪の証にて自らの魔術礼装であり、魔力であり力の顕現。今回は、それを纏うのではなく──

 

「アーマータイム!いっけぇえぇえ!!!」

 

象られた鎧を、力の限りに蹴り飛ばす。甲冑のように待機していた鎧の部品は一直線に飛来し、マジンさんへと向かい飛び込んでいく

 

「なぁっ、おまん、何を──!?」

 

以蔵が言葉とすると同時に轟き渡るは、爆発に爆風、気当たりによる震撼と激震。巻き起こる風圧が、二の句と周囲の全てを弾き飛ばし蹴散らしていく

 

「ぐっ、ぅうっ──!」

 

「なんじゃああぁぁ───!!」

 

飛ばされまいと懸命にリッカは踏ん張り、吹き飛ばされそうだった以蔵をがっしりと掴む。風圧に豪風、閃光にて目を開けぬほどに荒れ狂う空間の直中に、二人は、そしてマジンさんとランサーは晒されているのだ

 

勝利者は一人、戦いを制するものはたった一組。どちらかが倒れ、屈し、そして未来へと歩を進める。神に至りし無二の槍、未熟かつ無明なれど、信義と仁義を乗せし、いつか遥か彼方へと進むであろう無垢なる剣

 

「!マジンさん!!」

 

──勝敗は即座に判明する。猛烈な勢いで、吹き飛ばされ転がり落ちてくるマジンさんを、リッカはその身体で抱き留める

 

【ぐ、っ。・・・大丈夫だ、マジンさんは生きているぞ】

 

「おまん、その姿・・・」

 

先程リッカが蹴り込んだ漆黒と純白の鎧。それらに全身を包まれたマジンさんは、自らを無事であると告げる。胴体部分がクレーターが如く陥没はしているものの、龍の鎧は確かに、纏わせた中身であるマジンさんを護りきったのだ。

 

【だから言っただろう。マジンさんには、可愛いマスターがいると】

 

自慢げに告げるマジンさん、そして──

 

「くははははは!!存分にたぎったぞ!野良試合と侮れぬ!!いやはや、無駄の極地を極めた素人剣、その上で儂の槍を落とす機会が三度もあったとは!」

 

立ち、奮起するランサー。その顔は、存分なる戦いと喜悦を堪能したとばかりに破顔し・・・

 

「素人剣法も忠義と仁義、絆の三光と束ね極みとするか。──御主らは、恐らく、それでよいのだ」

 

・・・・・・噴き出す鮮血、貫かれ砕ける霊核。勝敗を決し、そして導かれた結末を、ランサーはその身を以て告げていた──




書文「・・・・・・神仏も酷な事をなさる。自らにも見えぬ宿命。故に無明、無穹。起死回生の一撃よ。そして──儂の槍をただ一度、防いだ龍の鎧もまた奇怪。まこと、何を悟っていた気になっていたのやら。世には儂の知らぬ事が未だ数多くあるということだ」

マジンさん「ニーハオランサー・・・」

「まこと、強く清らかな信念であった。よほど、その娘が大事と見える」

「──あぁ。名前をくれた、信じてくれた。共に戦ってくれる。世界で一番リッカが大好きだぞ」

リッカ「マジンさん・・・!(シュワァ)」

「・・・とはいえ、脇道に逸れ気を緩めた儂の落ち度でもあったな。いやはや、打てば打つほど強くなる敵など。ついつい打ち込みに師の観念が混じってしまった。まこと、良き体験であったぞ。──そこの卑屈なアサシン。こやつらと違い、貴様の剣と儂の槍な。紙一重と言った所よ」

以蔵「な、んじゃと・・・?」

「だがその紙一枚、決して薄くはない。──今一度、その剣を鍛え直せ。今からでも遅くはあるまい。マスターがいる貴様ならばな」

「どういうつもりじゃ、おまん・・・」

「なに、その凶相に覚えがあってな。儂もまぁ
若い時分は凶拳そのものであった。年寄りの忠告として聞いておけ。この戦いにて、必ず意義はあろう。──『相手より己が上である』と吼えるのではなく、『相手より己は上回るのだ』と牙を剥け。やるべき事は変わらんが、いささか心持ちが違う。何より──」

リッカ「・・・先生・・・」

「自身の限界を越えるのは、楽しいぞ?」

・・・そして、ランサーは消滅する。晩年には、子に武術を教えし穏やかなる先達としての言葉を残して

マジンさん「・・・紛れもなく強敵だった。私だけでは絶対に勝てなかった」

以蔵「・・・わしの、剣を鍛え直せ、じゃと。・・・」

「以蔵さん・・・」

「・・・おい、リッカ。おまん・・・『腕のいい剣士』に、心当たりはあるか?」

リッカ「!!あるある!そりゃあもうあるよ!」

マジンさん「───やる気になったな。うん。誰も欠けず、大勝利ー・・・というところか。それにしても・・・」

(・・・リッカのあの凄く速い剣を見たら、動きが良くなった気がする。私はやっぱり、何かあるのだろうか・・・)

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