人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

6 / 2535
技量で勝る同業者がいたらどうしますか?


金にあかせた最強装備を用意しましょう


真贋

「――先輩!所長!私の後ろに!決して離れないでください!」

 

「敵襲だ!所長!私を護って!」

「何言ってるのよ!サーヴァントに身を護らせなさい!」

 

絶え間なくミサイルのような矢が降り注ぐ。すんでのところでマシュが戦闘態勢に入り巨大な盾でオルガマリーとリッカを覆い直撃を防いだのだ

 

「フン、いい反応だ。肝が冷えたわ……医師!」

 

「解ってる!サーヴァントの反応を探索中だ!見たところ僕達を狙っているのはアーチャーだろうけどね!」

 

弓兵か。思案していたところに当て付けのように現れてくれる

 

 

矢の量と勢いは次第に増していく。とどまることを知らない暴風雨がごとき波涛となって盾を打ち据える

 

「くっ、うぅっ……!」

 

デミサーヴァントとはいえ娘の細腕でよくぞ凌ぐものだ。護りし者としての技量は紛れもなく一流らしい

 

「英雄王……!マスターと所長は私が護ります……!どうか、反撃を……!」

 

途切れ途切れにこちらに言葉を飛ばす。マスターの心配は無用だろう。易々と彼女の芯は折れはすまい

 

「よく言った。そこな二人は、貴様に任せよう」

 

「いいぞマシュ!やっちゃえギルー!」

「危ないから身を乗り出さない!もう!」

 

 

とはいえ、あまり時間はかけられまい。盾の強度は城塞が如くだが、肉の身はその限りでは無いだろう。このまま狼藉を許していては押し込まれる

 

 

剣を波紋から抜き取る。撃ち放たれる弓矢の方向、勢い、強度、頻度から狙撃を行うポイントを頭の中で計算し、弾き出す

 

「我の眼から逃れようなぞ片腹痛いわ、うつけがッ!」

 

 

剣から光量の束を放つ。無数の熱量を持つビーム足るそれは、矢を蒸発させながら一直線に彼方へと迅る

 

やがて、着弾。ビームは数百メートル離れた廃ビルの一角に着弾し派手に爆散し倒壊していく

 

「やった!?」

 

「気を抜くな。高台を壊した程度で死ぬはずもあるまい」

 

「見えたぞ!サーヴァント反応だ!……ってあれ!?もう位置を割り出していたのかい!?」

 

「怠慢は許さんと言ったばかりであろうが!阿呆か貴様は!」

 

「君より早くとは言われてないだろう!?」

 

 

「――ほう、随分と珍しい顔がいるな」

 

声が響く。同時に黒いモヤのようなオーラを纏った、ただならぬ雰囲気の男性が正面に相対する

 

 

「あれは……!?」

 

「シャドウ・サーヴァントだ!恐らく、この冬木にて召喚された本来のサーヴァント……!」

 

ボロボロになった赤い外套、浅黒い肌、白い頭髪

 

英雄と呼ぶには一見みすぼらしささえ感じられるその姿、だが纏う殺気と溢れる力は誤魔化しようがない

 

「まさかこんな形でまみえるとはな、英雄王ギルガメッシュ。いつから君は、少女達の子守りなどを始めたのかね?」

 

「いつの間にかだ。貴様は随分と侘しい格好だな、シャドウサーヴァントとやら」

 

「……どうやら貴様の眼中に私はいないようだ。いつもの如く、贋作者と罵る事もしないとは」

 

……どうやら、この器とかのシャドウサーヴァントとは何かしら因縁を持っているらしい。向こうはこちらを知っているようだ

 

器の記憶を呼び起こす。――あれはフェイカー。見た武器をそのまま投影し、使役する贋作者という認識らしい

 

成る程、この器が気に入らないのも頷ける。唯一至高の財宝達を我が物顔でコピーし使い倒す狼藉者に好ましい感情を懐くはずがないだろう

 

「浮浪者まがいの装いに、通り魔紛いの襲撃…我の知己にそんな生き恥を晒す者はおらんわ、たわけが」

 

「随分と物言いに余裕がないな、英雄王。いつもの油断と慢心はどこに置いてきたのかね」

 

「さて、な。我も気分というものがある。我がその時どう振る舞おうとも贋作者たる貴様に関わりはあるまい」

 

「ごもっともだ。では、私は私の仕事をさせてもらう――!」

 

瞬間、アーチャーが天高く飛び上がり弓を構える。また矢の雨霰を放つ腹積もりなのだろう

 

「距離を取るとは小賢しい……弓兵ならば泰然と構えぬか。だから貴様は贋作者なのだ!」

 

「生憎貴様の矜持に付き合うつもりはないのでな!」

 

刹那、膨大な数の矢が振り落とされ、リッカ達をめったやたらに打ち据える

 

その一本一本が必殺の一撃。受け止めるマシュに決して易しくはない衝撃を叩きつけていく

 

「ぐぅうぅう……っ!」

 

マシュの苦悶の声が響き渡る。よく護ってはいるものの限界は遠くない未来に訪れよう

 

いかんな、いつまでも防戦一方では先に音をあげるのはこちらだ

 

しかしどう攻めたものか……奴を黙らせる一撃必倒の一撃、ないわけがないのだろうが、下手に奥の手を開帳するのもこれからの長い戦いに不利に働くやもしれぬ

 

「ギルー!」

 

思案していると、盾の後ろに隠れていたリッカが声をあげる

 

 

「ちょっと藤丸!危ないわ!何を考えているの!?」

 

「ギル!同じアーチャーだよ!?」

 

「遅れをとっていいの!?」

 

――彼女の発破が耳を叩く

 

「眼には眼、歯には歯!弓には弓で応戦だよ!」

 

……ちょうど、先刻思案していた戦法を思い出す

 

――アーチャーらしく、弓矢をつがえて戦うとしよう

 

「――ハッ、ハンムラビめが定めた法を我に説くか、小癪な娘よ!」

 

「大丈夫!絶対負けないよ!英雄王なんでしょ!?」

 

「私は信じてるよ!だってマシュもギルも、私のサーヴァントだから!」

 

 

「先輩――」

 

 

信じている、信じているときたか

 

こちらは未だ己の戦法を確立していない半端者、出逢ってまもない関係にも関わらず信じていると

 

――眩しい、と一瞬思った

 

なんて輝かしいのだろう。窮地にありながら誰かを信じる。相棒に生死を託すことを恐れない

 

それが死の定めに続くものだとしても、彼女は笑って受け入れるのだろう。信頼を託すとはそういう事だ

 

――なるほど、ここは転生先に相応しい

 

「――その物言い、撤回は許さんぞ?」

 

この期待に応えてやりたい、と素直に思う

 

そうだ、サーヴァントとして何かを為す。何かを為したいと願った自らの願いを果たす

 

いつか、世界を救う少女の旅立ちを、こんなところで止まらせはしない

 

 

それが自分の――

 

無銘の魂に刻んだ意義だ――!

 

金色の波紋に手を伸ばす。決意を以て、財宝を掴む

 

 

「――なんだ、それは」

 

 

それは黄金に光輝く弓、のような形を成したもの

 

弓身は弓の体を為してはいるが、そこには張られた弦がない。つがえる矢も見当たらない

 

代わりに、絶えず弓身の廻りをいくつかの宝石が浮遊し、回転している奇怪な様相だ

 

「弓以外の何者でもあるまい、たわけめ」

 

左手に構えたそれを真っ直ぐにアーチャーに向ける。同時に浮遊していた宝石が弾け、辺り一帯に破片として弾け飛ぶ

 

「これは遥か未来に人類が造る光の弓。弦は無く、矢は無く、だが過たず敵を穿つ至高の逸品よ」

 

「光の弓……!?まさかそんなオーパーツみたいなものも持っていたのか!?あの王様は!」

 

「わぁ……綺麗……」

 

 

(この結晶、光の弓……まさか――!)

 

「さぁ、その身を以て真贋の違いを知るがいい。慢心はせぬ、油断も捨て置く。この一射にて貴様の霊核を穿とう」

 

「くっ――!!」

 

絶対的な危機を悟ったか、アーチャーの姿が霧散する。だが、自らに刃を向けた無礼者をみすみす逃がしてやるほど寛大ではない

 

「何処へ失せようと逃がさん!この一撃、光の速さを超克せねば回避は無意味と知れ!」

 

光の弓に莫大な光量のエネルギーが充填される。同時に眼を潰さんばかりの眩い輝きを宝石が照り返し、辺りを朝焼けの如く照らし尽くす

 

 

「先輩!眼を閉じてください!」

 

「くっ――!!」

 

 

「いざ受けよ――これが真作の偉容と言うものだ!」

 

臨界寸前まで溜め込まれた光の矢が放たれる。ギルガメッシュの眼にて完全に位置を割り出されていたアーチャーの存在する空間めがけ光条が莫大なエネルギーとして空を駆ける

 

射線を阻む障害物を飲み込み、蹴散らし、また宝石の乱反射にて自在に射線を確保する至高の一撃

 

その威光、逃れる術はなく

 

 

(――まさか、慢心の欠片すら感じられない英雄王と出くわすことになろうとは。私もよくよく、運のない――)

 

自嘲に思考を巡らせた刹那、アーチャーの存在は光の中へと過たず消え去った




シャイニングレーザー。相手は死ぬ

道具があるなら、躊躇わず手に取れば万事OK

この際油断と慢心は抜きだ!

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。