人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ラマッス仮面『ラマッスー!仮面!突然ですが告知ラマッス!それはもう大変ラマッス!地球震撼、驚天動地の出来事ラマッス!』

『今年七月に『朗読ギルガメシュ叙事詩 - 深淵を覗き見たひと』のオーディオブックCD発売・アプリ配信が決定したラマッス!ナレーターはなんと!ギル本人ボイスラマッス!!(?)迫力あるセリフ、そしてナレーションにてギルガメシュ叙事詩の世界へと皆様を誘うラマッス!!』

『我が王の我が王による我が王の叙事詩の朗読・・・!んはぁあ心が昂り胸が高鳴って堪らないです!原典の王、ギルガメシュは意外と泣き虫だったりエルキドゥさんが万倍危険人物だったりするギャップ!昨今の英雄譚の出来事大体網羅せし至高の物語を、今を生きる全人類(日本地区)のウルク民に知ってもらうチャンスラマッスですよ!皆様是非!どうかこの機に王の原典に触れる御時間を何卒・・・!』

(仮面がずり落ちる音)

「あわわマスクが!以上!ラマッシャナ、仮面シアの御知らせでした!皆!今年の夏は!ギルガメシュ叙事詩で決まり!ラマッス!

(タブレット片手に走り去る音)

ギル(微笑ましすぎて超穏やかな笑みを浮かべている)

フォウ(ギルガチ勢過ぎる・・・!ちなみに彼女はこれからCD版を予約しにいくんだって!悪友の皆も、是非チェックしてみよう!)

スタタタ

フォウ(?エア?どうしたの──)

──夏の読書感想文にギルガメシュ叙事詩を推薦します!

(!?)

「理由はもちろんお分かりですね?王が直々にギルガメシュ叙事詩を朗読し、ワタシ達に拝聴の栄を賜してくださるからです!」

《おい珍獣、何処かで聞いた事のある語り口にエアが変貌しているのだが》

「覚悟の準備をしておいて下さい・・・!ちかいうちにCD版が発売です。アプリ版も配信します。池袋区にて王がナレーターを勤める博物館にも無理ない範囲で来てもらいます。ダウンロードの準備もしておいて下さい!貴方はウルクの民です!王の玉音を耳に届けられるお耳の掃除をしておいて下さい!よろしくお願いいたします!」

スタタタ

(・・・テンションが上がりすぎてジョルノ・ジョバァーナみたいになってる・・・)

《うむ・・・相も変わらず心地好い敬意よ・・・夢の一つに全宇宙ギルガメシュ叙事詩布教と語っていたその熱意は本物よな・・・流石は我が至宝にして無二の姫よ》

(いやそれは止めようよ!前書き1000文字近く占拠していった・・・これがエアの本気か・・・!)



後悔など、していない

「・・・やがて、星が降る・・・心、ときめい、て・・・」

 

「ジーク君!?やっぱり突貫コースは無茶しやがって案件だったんじゃ・・・!」

 

時刻は昼間、ミレニア庭園のトレーニング空間にて。様子を見に来たリッカの前に、ボロ雑巾のような惨状にてバタンとぶっ倒れるジークがお出迎えである。とんと戦闘力のない端末ジークを一日で立派な戦力に鍛え上げるための突貫コースの餌食とし、その精魂を使い果たさせ絞り上げたのだ。最早ジークに、指一本動かせる気概すら残ってはいなかった。それほどまでに、ケイローンの突貫コースは厳しかった。ケルト特訓の半分くらいの壮絶な辛さである。ちなみにスカサハが特訓をつけようと持ちかけたところ、コンラが全力で反対する程度には弟子に容赦が無いのがケルト流である。

 

「ふむ、まだ及第点ではありませんが、休憩としましょう。シッダールタ殿、リッカ殿と休んでおくように」

 

「たす、かる・・・割と本気で、もうむりぽだ・・・」

 

「こちらレモンのハチミツ漬けです。口に含みエネルギー補給に使うとよろしい。いやはやぺしゃんこになる前に横槍を入れて幸いでしたなぁ・・・」

 

一部始終を見ていたシッダールタが言うに、それはそれは凄絶な特訓だったようで。弓矢を掻い潜りながら接近、宝具の前動作モーションと定めた動きの際に剣の一撃を放ちなさいとのお達しではあるがフェイント迎撃当たり前。半端な避けでは弓矢で蜂の巣、タイミングを誤ればバキバキ殴られガシガシ関節を極められの八方塞がり。ジークに戦士の勘と一連の流れを叩き込む荒行は、ギリシャの荒々しき部分を凝縮した豪華絢爛殺意モリモリな殺人メニューであったのだ。むぐむぐとシッダールタに口にレモンを運ばれながら、ジークはリッカに尊敬の目を向ける

 

「こんな苦行を、本気の大英雄相手に・・・それは確かに強くなる筈だ、リッカ・・・心から敬服する・・・」

 

「お陰さまで大抵の出来事は怖くなくなったよ・・・!ヘラクレスと戦う他に怖いこととかそう無いもん!でもジーク君はこっちに、人外メンタルに来ちゃダメだからー!」

 

「ごゆっくりお休みください。我々は術式の講義を兼ねた罠を仕掛けにいきます。王の戦いに邪魔を入れぬための結界術式・・・向こうのキャスターが解除するまでの強固な人払いです」

 

「え、アヴィ先生そういうの苦手だって言ってたよ。『ゴーレム師に結界破壊とか求めてはいけない。最終的に殴って壊すしか無いのだから』って」

 

「赤のキャスター、シェイクスピアも同じだ。どうやらとある聖女を追い詰めた事は知っているが・・・」

 

「ま、控えめにいって純正キャスターとは程遠い輩なのが幸いですな。バフデバフ無しのパーティーなどおそるるに足らず。メガテンとか絶対クリアできんでござるよ」

 

「三騎か。・・・シェイクスピアは喋る前に喉を貫きゃいいし、アヴィケブロンはゴーレムごと蹴散らしゃいい。ジャックなんたらは・・・姉さんがいなくて・・・」

 

「アキレウス?行きますよ。それと詳しいフィニッシュは口に出さなくてよろしい。割と血生臭いので。結界術式の構築をします。手伝ってください」

 

手先の訓練ですよ、と言われ明らかに嫌そうな顔をするアキレウス。罠とかさー、そんなん蹴散らせばいいじゃん?駆け抜けちまえばノーカンじゃん?と韋駄天には無縁の戦術であった為である。まぁケイローン的に、知らないものや苦手なものをそのままなんて有り得ないので・・・

 

「苦手な事は把握しています。だから頼んでいるのです。仮想戦闘を行いながら結界術式の補助を行いなさい。分割思考の御勉強ですよ」

 

「この期に及んで講義とか・・・へいへい、やりますよやりますってば!ったく、気の休まる暇がほとんどねぇ・・・お前らはしっかり休んどけよー!」

 

引っ込んでいくアキレウスとケイローン。そんな微笑ましい様子を見てか否か、シッダールタとジーク、リッカは一様に顔を見合わせて笑っていた。本当に、実に。教師と生徒らしいと所感がひとつになった為だ

 

「・・・あの二騎は、黒のアーチャーに赤のライダー。つまり、先の聖杯大戦では敵同士だったんだ」

 

「あ!アキレウスも言ってた!『先生と戦うのは二度とごめんだ。リッカもオルガマリーも、マフラーとか長モノつけるのはぜってぇ止めとけ』って!」

 

「アキレウス殿は神の血を引く者、つまり神性スキルなくば勝負の土俵にすら上がれぬ勇者。ケイローン氏がいたのは幸運だったでしょうなぁ。いやはやしかし、黒の陣営は勝つ気があったのか疑問に思えるサーヴァント選抜ですなぁ」

 

そしてケイローンに手抜きや手加減などといった言葉は存在しない。アキレウスの言葉から聞くに壮絶な死闘であったと言う。そして駆け引きであまりにズルく酷い目にあったと。具体的には・・・

 

 

「殴り合いは私の敗けです。あなたの盾をこちらの陣営に貸してください。死に際の師匠の願いを聞き届けるくらいの度量は見せてもいいでしょう・・・?」

 

「・・・考えておきます」

 

「ありがとうございます。さて、では発動済みの宝具をあなたに撃ちます。勿論あなたの踵に」

 

「ぎゃああぁあぁあぁあぁ!!踵が熱いぜぇえぇえぇえぇ!!」

 

「サーヴァントとしての務めを無事果たせましたか・・・(ガクッ)」

 

 

「えげつないな」

 

「えげつないですな」

 

「それはそれこれはこれを神話スケールでやる人初めて見た・・・」

 

一同、ケイローン先生を敵に回さなくて良かったと心から思った瞬間だった。・・・そしてリッカは思う。ジークの聖杯大戦における博識さはすごいものだと

 

「うん。俺はサヴァイブしたからな、聖杯大戦に。でも、別に強かった訳じゃない。俺はマスターでもない。なんというかサシミのツマだ。俺と言う存在のせいで、陣営対陣営の群像劇の視点がとっちらかってしまった。あの戦いの不満点、批判の元で相違無い。言ってて申し訳ない気持ちに一杯になるな。・・・実力もないし、サーヴァントを従えるカリスマがあった訳でもない」

 

「あ、カリスマは別にいらないと思う。何処かの世界では不愉快なワカメの擬人化がマスターやってたってメドゥーサさんキレてたし」

 

「なるほどなるほど。・・・お話、聞かせてもらってよろしいですかな?人ならざる存在として、興味が湧くでござる」

 

「・・・うん。友達として、君達には話しておこう。腹を割って語り合う相手が友達だと、俺は教わったから」

 

そして、休憩の間に語りだす。ジークというホムンクルスの成り立ちを。そして、その生の所感を──




ジーク「元々、俺はホムンクルスという生命体だ。フラスコの中で受精卵から培養される生命体・・・ホムベビの成長体と言っていい」

リッカ「え?白い雪だるまみたいなエネミーと同じってこと?グドーシもホムンクルスだったみたいだけど、・・・凄く、見た目が酷く貶められてたけど」

シッダールタ「ホムンクルスと言えど術式は千変万化。そのグドーシというホムンクルスは、聞き齧りと在り合わせの果てに産み出された廃棄品だったのでしょうなぁ。いやはや無情無情。救いがあった事が幸いですな」

ジーク「俺達ユグドミレニアの製造工程は、確か錬金術の大家から学んだものだという。・・・グドーシというホムンクルスは鋳型が悪かっただけだ。性根や心は絶対に失敗作なんかじゃなかったと俺は思うよ、リッカ」

リッカ「・・・ん!私も!・・・あれ?ユグドミレニア?どこかで・・・」

シッダールタ「いやはや、いやはや・・・ホムンクルスが大量に入り用など用途は一つ。魔力タンクですな」

ジーク「あぁ。サーヴァントの現界、宝具の発動の為のE缶、それが俺達の役割だった。・・・そして俺は、そこから逃げた。生き延びたいと、願ったが為に」

リッカ「・・・後悔してたりするの?もしかして・・・」

ジーク「いや、していない。今なら、今ならはっきり言えるんだ。俺には、素敵な出逢いが五度もあった。一度は、俺を助けてくれた英雄に。一度は、俺を生き返らせてくれた英雄に。一度は、俺を導いてくれた聖女に。一度は、・・・俺に色彩をくれた友に」

リッカ「ジーク君・・・」

「そして、五度目の出逢いは・・・俺の声に応えてくれた君に出逢えた。だから、俺は・・・生きていて、良かったと。そう思えるんだ」

シッダールタ「・・・──善哉、善哉。輪廻と因果は巡るもの。善と善が巡ったのですなぁ。ま、私はいつの間にかそれから解脱していた訳ですが・・・ホムンクルスでも悟りに至るとは。人間ではないので覚者の名は汚しておりませぬ故ブディストはご安心を」

リッカ「二人とも・・・(ヒュバァ)」

ジーク「リッカ、リッカ粒子出てる。消えてはいけないネバギバだ」

シッダールタ「はっはっは。随分と感動屋さんになられましたなぁ、リッカ殿は!」

・・・こうして三人は、日没まで自分達の事を語り合い、親睦を深めていった

──そして、時刻は夜に移らんとす。聖杯大戦の幕開けである──

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