人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リヨぐだ子【どいつもこいつも私が爆死したサーヴァントどもを見せびらかしやがって。なすび、貴女はあのイキり鯖太郎を殺れ。あのフレサーは私に任せろ】

マシュ「あ、あなたは!?せ、先輩なので」

【はやくやれ】

「はいぃっ!!」

スカディ「な、なんだあのスルトを越える邪悪な気配は・・・!仕方ない、皆、宝具で畳み掛けるのだ!」

イヴァン「仕方無し・・・興は乗らぬが・・・」

アルジュナ「あちらのマシュ嬢とは違い、悪な事に──」

バン!!スゥ・・・

『フレンドポイント×10』

【ゴチャゴチャうるさい】

スカディ「!?」

イヴァン「おのれ!!不敬者がぁあぁ!!」

【わぁ、でっかいマンモスだ。なつかしー】

スカディ「ま、待て!」

【スライダーなんか作って無いでゲームに還元しろ】

バン!!スゥ・・・

『フレンドポイント×10』

スカディ「な、なっ・・・」

リヨぐだ【・・・どうした?】

「──っ、く・・・!」

【あいしてみろよ】

「ま、マスター──!」

バン!!!


・・・スゥ・・・

『フレンドポイント×10 』

【てごわかった・・・こっちはなんとか倒した。頑張れ、なすび・・・】


小説で解る、FGOの闇

【くそっ、どんな奴等が来ようとガチャを回して藤丸龍華を出せば僕がアレに成り代われる!じゃあさっさと──、ぶわぁっ!!?】

 

焦り、気の逸った自尊の怪物が本来の目的を果たそうとガチャに振り返るよりも早く、その全身をブースターにて加速し円卓の盾を何倍にも強力にした渾身の殴打が叩きつけられた。高々と盾を上げ、先輩を──リッカの全てを護るようにマシュはガチャの前に雄々しく凛々しく仁王立つ。

 

「させません。あの人の、藤丸立香さんの総ての尊厳をこれ以上好き勝手に弄ばせません!」

 

【くっ、マシュ!君は本当にキャラ崩壊が酷い・・・!僕のメインサーヴァントの癖に、僕を思い切り殴るなんて!】

 

凄まじい勢いでもんどりうった怪物が忌々しげに呪詛を吐き、先程の何倍もの触手をマシュに向けて放つ。それらは全て、マシュを魔力と霊基から汚染、洗脳する為の怪物の手段だ。両手と両足に巻き付いた触手を、マシュはあえて受け止める。

 

【君は僕を護るのが仕事だろ!丁度いい──君をぐちゃぐちゃにした記憶をまずは消してやる!乗っ取りの手始めとして、その間違ったキャラ付けを塗り替えて初期化してやる!】

 

「やってみてください。あなたに──あなた『ごとき』に出来るのならば!」

 

リッカなら、先輩ならきっと相手を怒らせるためにこう言う筈だ。自分自身、初めて放つ罵倒も敢えて使う。可憐で儚い自分が彼の理想なら、自分は一から十まで先輩のものであると告げるように・・・!

 

【僕に上から目線でものを言うなぁッ!!】

 

マシュの魔力を吸い取り、無力な状態にせんとする怪物。触手に澄みきった魔力が、怪物の下へと魔力を運んでいく。

 

【はははっ!凄いじゃないかマシュ!僕のサーヴァントとして相応しい力だ!この力さえ、この力さえあれば今度こそ、今度こそ──!】

 

狂喜し、更に吸収のペースを上げた時。──それは、起きた。

 

【ねぇ】

 

【──!?】

 

マシュの傍に少女が、黒き布一枚を纏った少女がいることに怪物は思い至る。なんだ、あの女の子は?いつの間に?どこから?

 

【私を知りたいの?私になりたいの・・・?】

 

【な、なんだ、君は・・・?誰だ!?】

 

異質だった。異様だった。少女であることは解る。女の子であることは解る。だが──その姿が、余りにも恐ろしい。

 

肌はびっしりと鱗に覆われ、漆黒の翼が三対生えている。眼の瞳孔は人間のものとは思えないほど縦に裂け、小さな口にはびっしりと生え揃った牙。一歩歩く毎に足許が地響きと共にひび割れ、漆黒の泥が、マグマの様に噴き出している。

 

【嬉しい、嬉しいな。私を知ってくれるの?ありがとう、ありがとう】

 

【な、なんだ、なんだよ!来るな、来るな!!】

 

触れてはいけない、話してはいけない。それなのに、一歩も動けない。あどけない笑顔に、裂けた口から覗く牙が、真っ赤な口が恐ろしい。此方を値踏みしているような眼の細まりがおぞましい

 

 

【挿絵表示】

 

 

【う、うわっ──】

 

そして、その少女が──リッカの魔力が怪物に触れた瞬間───

 

【あ、ぁ───あぁあぁあぁあぁ!!うわぁあぁあぁあぁ!!あぁあぁああぁあぁああぁあぁああぁあぁああぁあぁあ!!!】

 

口から泡を吹き、喉をかきむしりながら白眼を剥きのたうち回る怪物。彼は見たのだ。リッカの魔力・・・リッカの意志の濾過無き魔力【この世総ての悪】。それに刻まれた、リッカの過去と底知れない人間の悪意を。

 

【うわぁあぁあぁあぁ!!あぁあぁあぁあぁ!やめろ!やめろ!!触るな!触るな!そんな目で!そんな目で僕を見るなぁあぁあぁあぁ!!】

 

リッカの存在は、即ち人類の悪性そのもの。それを強固な意志と比類なき決意にて自らの力と、未来を切り拓く力へと還元している。言うなれば不撓不屈、初志貫徹というリッカ自身の魔術。彼女の意志なくそれに触れること、即ち劇毒を身体に取り込むに等しい。『人理を臨む龍心』の制御から離れたリッカの魔力のほんの一欠片が、怪物の心を、精神を、魂を加速度的に汚染していく。

 

【なんで、なんでぼくがこんな目に!ぼくが何をした!ぼくがなんでこんな目に遭わなくちゃいけないんだ!助けて、助けてくれ!誰か僕を!ここから出してくれ!僕を助けてくれぇえぇえぇ!!】

 

発狂にまで追い込まれた怪物。──これもまた必然である。藤丸龍華でない彼の力は、存在は。人類が滅ぼす悪。ビーストIF、アジ・ダハーカでしかないのだ。過去に受けたあらゆる体験を、魔術回路を通じて汚染していく魔力が脳に叩き込んでいく。そうなれば最早、助かる手段は介錯の他ない。

 

【───ましゅ、おねがい】

 

聞こえてはいない、彼女の力のビジョン・・・獣の少女がマシュに促す。また再びの拒絶。そして、自らに触れてしまった、最早助かりはしない存在の解放を。

 

「──それが、その痛みと苦しみが。貴方が成り代わろうとしていた人が背負うもの。あの人の総ては──」

 

【ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、たすけてください、たすけてください、たすけてください・・・】

 

「──あの人にしか、背負えない!!・・・真名、開帳!私は煌めく路を歩む!」

 

その声は聞こえていなくても。先輩の、リッカの尊厳を護る為に為すことは決まっている。マシュの鎧が総てパージされ、片手で持ち上げしラウンドシールドに装着、武装され。超巨大なパイルバンカー、レールガンへと姿を変える。これこそ、オルテナウス=アルティメイト=モード=オフェンス。銘、『カムラン』の姿──

 

「それは総ての悪、総ての苦難を越える。我等が楽園──」

 

マシュの言葉と共に、光の束が無数に回され、装填され、猛烈な勢い、熱量と共に集中し、収束し、やがて総てを呑み込み消し飛ばす極限の光となる。獅子王の裁きよりも強く、それは、かつてその盾で受け止めた魔術王の偉業。人類史総てを燃料とした、聖剣数億本分の熱量の架空、疑似再現。

 

そう、この宝具とはマシュが歩んだ足跡の顕現。防ぎ、弾き、受け止めてきたダメージを、攻撃を排熱という形で前方に発射するオルテナウスの攻撃宝具。それらはマシュが『受け止め』『生還した』ものであるならばカウントされ、再現が可能となる。即ち──

 

「顕現せよ──!!」

 

楽園に在りしマシュは、リッカとフォウと共に魔術王・・・否。ゲーティアの第三宝具を受け止め、凌ぎきった。ならばそれは即ち、魔術王の宝具を再現、攻撃に転用できると言うこと。その火力、その威力は正しく評価規格外。楽園にて研鑽を、己の使命と勇気を奮い乗り越えてきたマシュが辿り着いた極致。ランクEX、対終焉、対滅亡宝具──!!

 

「『今も煌めく(ロォォォォッド)楽園の旅路(シャングリラ)』───!!!!!」

 

放たれる、マシュが決して折れなかった証明にして、楽園に在りしマシュのみが振るいし最大最高火力の熱量が、螺旋と灼熱の光と化し怪物となった『藤丸立香』を焼き尽くす──!!

 

【うわぁあぁあぁあぁ!!この光は!この光だけは嫌だぁあぁあぁ──!!!】

 

怪物が、その断末魔を上げる。この世のものでは防ぐ事が出来ない熱量に呑み込まれた怪物。かつて、世界を救ったマスターがその最期を迎える──

 

【マシュ!マシュ!!僕を助けて、護って──違う、違う!!僕は、僕は──!】

 

「はあぁっ──おぉおおぉおぉおぉぉおーーーッ!!!!」

 

耳を貸さない。自分の先輩は一人だけ。後ろで、見えずとも傍にいる雄々しくも可愛らしいマスター一人。そして、マスターの様に咆哮し、魂の滾りのままに総てを撃ち放つ───!

 

【君と──君と一緒に青空を見たかったんだぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ───!!】

 

かつて、目の前でマシュを焼き尽くした光に、同じ様に呑み込まれながら。最早取り返しのつかない己の旅路に慟哭し、その肉の一片までを蒸発させながら。怪物は散っていく──




いつからだろう?新しく来てくれたサーヴァントを、間を置かずくべられるようになったのは。

いつからだろう?誰かに自分の成果を誇示するようになったのは。

いつからだろう?周回に、育成に、新しく招いたサーヴァントに、なんの感慨も持てなくなったのは。

いつからだろう?──世界を救う旅路が、いつの間にか他人にひけらかす為の旅路になったのは?

いつからだろう?他人に言われる悪口や陰口を、何一つ流せなくなったのは。

いつからだろう?自分自身の周りに、誰もいなくなったのは。

いつからだろう?・・・自分が、取り返しのつかない事をしてしまっていたと気付いたのは

いつからだろう?そんな自分に残されていたのは、『世界を救ったマスター』なんていう、虚しい響きの栄光だけだったと気付いたのは。

いつからだろう?『◼️◼️』と呼び掛けてくれるあの声が、二度と聞こえないと知ったのは。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。そんなのは嫌だ。嫌だ。

僕はマスターだ、世界を救ったマスターだ。誰よりも素晴らしく、誰よりも、何よりも最高のマスターなんだ。

だって、だってそうじゃなきゃ、ロマンが、マシュが、皆が、何のために消えたのか、死んだのか──

「──先輩」

・・・──!

「・・・一言だけ。マシュ・キリエライトがいたならば。きっと、あなたに言った事を。」

マシュ・・・

「・・・本当に、お疲れ様でした。貴方を、身を呈して護ったのは。紛れもなく。私自身の決断だった筈です」

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・そうか。

・・・・・・僕は、気付かなかったんだ。

世界を救っても、どんなに課金しても。誰かより上になったとしても。

「・・・さようなら。先輩だった人。貴方のマシュ・キリエライトは、もう何処にもいないのです」

・・・君がいない『藤丸立香(ぼく)』なんて。何の意味もない、空っぽな虚しい存在なんだって。

・・・どんなに生まれ変わっても、もう。僕は・・・藤丸立香じゃないんだ。

もう、僕が手を握った君は、どんな世界の何処にもいないんだ。

どんな世界でやり直しても。君はもう、僕の君じゃ無いんだ。

君は、死んだんだ。もう二度と、戻っても。帰ってもこないんだ・・・。

・・・でも。

「さようなら。──藤丸立香、だった・・・あなた・・・」

・・・最後に。

違う君でも。かつての君と、同じ声で。

僕を、先輩と呼んでくれて。


・・・──嬉しかった──

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