人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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それだけで、きっとこれからも歩いていける

大丈夫だよ読者の皆さま方

オレも、これから頑張っていくから


衝撃

「貴様は――」

 

「よう、久し振りだな。金ぴか野郎」

 

 

器の記憶が呼び起こされる

 

目の前にいる英霊の真名は、『クー・フーリン』

 

アイルランドの光の御子。ゲイ・ボルクを駆り、様々な逸話を打ち立てたケルト神話の大英雄

 

――かつて此処ではない何処か、別の次元の聖杯戦争にて、この英雄としのぎを削ったと、この器に、というより座の英霊本体に記録されている

 

 

サーヴァントとは、英霊の座に顕在している英霊の魂の側面を切り取り、クラスに則った一側面として召喚されるもの。いわば英霊の影法師だ

 

別の次元で役目を終え、また別の次元で召喚されたとしても。それは『限りなく同一人物に近い別人』か『限りなく別人に近い同一人物』でしかない

 

召喚時に重ねた経験は座に『記録』として還元され、新たに召喚された際にはそれを閲覧する、というのが真実だ

 

例えるなら、自分が主役の映画、小説を読んだような感覚だ。親近感を覚えはしても当事者では決してない

 

だから、顔馴染み。というのはおかしくないが、今この場で殺し合いの続きを…ということにはなりえない、はずだ

 

 

「――フ」

 

しかし、どういうわけだ?目の前にいるケルトの大英雄を目の当たりにしていると全身が震え、堪えきれぬ感情が沸き出してくる

 

どういうわけだ……?そう感じる間もなく、堪えきれず口火を切ってしまう

 

 

「フ――ハハハハハハ!!なんだその格好は!なんの冗談だ猟犬!自慢の槍はどうした!そんな木の杖で何を穿とうというのだ!?」

 

「あー、あんだろ。クラス適正ってヤツだ。今回はキャスターとして召喚されたってだけだ」

 

「待て、控えるがよい腹がよじれる!貴様の隠し芸も大層なものよな!まさか字の読み書きの巧さの一芸でキャスターにすらなれようとは!これは失敗した、あの時に芸でも仕込んでやれば良かったわ!無駄に器用とは知っていたがよもやここまでとはな!フハハハハハハハハハ!!!」

 

腹がよじれんばかりに大笑し、堪えきれず膝を叩きまくるギルガメッシュ

 

「チッ、相変わらずいけすかねぇ野郎だぜ。テメェも覚悟しとけよ。いつか割に合わねぇ格好で割に合わねぇクラスに呼び込まれるだろうさ」

 

 

「馬鹿め!まかり間違っても魔術師の真似事などせぬわ!ウルクの危機の折り、民どもと結集せねばならん事態にも陥らん限りはなぁ!ハーッハハハハハハハハ!!」

 

 

……英雄王ギルガメッシュは笑い上戸なようだ。落ち着くまで、自分の出る幕は無いようだ

 

 

 

 

 

「手を組む、だと?」

 

ようやく落ち着いて会話を再開する場面で、キャスターが突拍子もなく口火を切るのに、思わず聞き返す

 

「まかり間違ってもテメェとじゃねぇぞ。テメェの主、マスターとだ」

 

言うに、このキャスターはこの特異点に召喚された英雄で、なぜかキャスターだけは侵されず、おかしくならずに済んだらしい

 

そしてこの特異点を元に戻すべく、シャドウサーヴァント達と戦い、孤軍奮闘していたようだ

 

「おかしくなっちまったサーヴァントを介錯してやろうとあちらこちら飛び回ってよ。やっとこさアサシンを仕留めたと思えば、ランサーとアーチャー、バーサーカーを潰していく奇妙な魔力を関知してな。誰かと思えば会いたくもねぇ顔見知りじゃねぇか。ついてねぇ」

 

「マメな事よな。流石は犬よ」

 

「抜かせ、テメェこそなんの気まぐれだ?しらみ潰しにサーヴァントを蹴散らすなんざ。どんだけ暇潰しに飢えてんだ」

 

「暇潰し、か。まぁ貴様にはそう見えような」

 

「あん?」

 

「――なんでもない、忘れよ」

 

「おう。しかし、テメェもまさか節約を覚えるとはな。毛の先程見直したぜ」

 

「節約?」

 

「あん?テメェの十八番のこったよ。いつもは宝具をめったやたらに投げ撃ちまくるじゃねぇか。だからアーチャーなんだろうがテメェは」

 

 

……

 

…………

 

……………………

 

 

「それがアーチャーの所以だとぉ――――!!?」

 

 

今まで振る舞ってきた中で最大級の衝撃だ。

 

アーチャーってそういう?そういうものなのか?財から剣を撃てば、というか撃てばアーチャーなのか?それでいいのか?アーチャーとはなんだ?アーチャーとは……アーチャーとは……

 

 

「何を今さら驚いてんだ。腕組んで宝具撃ってんのがテメェの黄金パターンだろうがよ」

 

 

「そうだったか……そうであったのか……」

 

 

「……頭でも打ったか?召喚に不備でもあったか?よく生きてられたな、マスターは」

 

がっくりと肩を落とす。的確に道具を選び戦っていた自分はなんだったのか

 

英雄王、戦い方が雑だったのか……知らなかった……

 

「……礼を言うぞ、犬」

 

「は?……は?」

 

「お陰で一つ思い出せた。賢者の真似事は伊達ではないな、流石だ」

 

「――――――おい、なんだお前。マジにギルガメッシュか?礼とか」

 

今度はキャスターが硬直する番だ。あまりに予想外の物言いに絶句する

 

英雄王が誰かに礼などと……そんな事がありえるのかと言わんばかりに開口している

 

「うむ、英雄王といえば我だろうが。贋作など許せるはずもない」

 

――かといって、真作の英雄王かと問われれば微妙な所ではあるのだが…転生した以上は紛れもない英雄王であろう。そう自分を定義する

 

「――よし。貴様の博識ぶりを認め、同盟の案、乗ってやろうではないか。有りがたく思え」

 

「まだ事の仔細聞いてねぇだろうが……まぁいいや、詳しいことはテメェのマスターに話す」

 

「よい、特に許す。ふっ、驚くであろうな。とんだ拾い物だ!」

 

器の機嫌が良いのか、こっちも楽しい気分になってくる

 

やれやれと肩をすくめるキャスターに、クックッと肩を震わすギルガメッシュ

 

……皆は、少しは休めただろうか。そんな事を思いながら、皆と合流するために歩き出した




無銘の魂、カルチャーショック

この衝撃は文字通り魂に刻まれたであろう

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