人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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獅子王「お前達が大切だ。お前達が滅ぶのは堪えられない。だからこそ、善なる魂を我が槍に納め、保存する。──それの、なにがいけない?私の行いは、全てお前達の為なのに」

藤丸「それは、生きてるって言わない!変化も成長も許さない保護なんて、標本と変わらないじゃないか!」

オルガマリー『──これは、記憶の再現かしら、
藤丸君の辿った旅路の・・・』

アイリーン『そうみたい。あそこに立っているのは、藤丸君だもの』

『・・・アイリーン。記憶の忘却に、ホワイダニット。それは私達にも当てはまると思わないかしら』

アイリーン『・・・リッカちゃんや、王様ではなく。私達が選ばれた『何故』ということ?』

『そう。解決するなら、リッカ以上の適任はいない。それなのに、招かれたのは私達だった。・・・そこに隠れているはずよ。この事件の、私達にしか解決できない『ホワイダニット』が』

アイリーン『ひとまず、アストライアとは仕切り直しかしら?』

オルガマリー『そうね。・・・流石に固有結界を使うともなれば、警戒は当然か』

アイリーン「ご、ごめんなさい、オルガマリー。あの、その・・・」

『?』

『・・・い、いいえ。出来ないって言わない・・・!頑張る、頑張るわ。出来るだけ・・・!』

『・・・???』


絢爛蒸気パッチワーク

「──おい、おい君!」

 

声が、呼んでいる。自分に声をかける、幼くも意地悪げな声がする。

 

「おい君!起きたまえ!私の弟子なんだろう、しっかりしろ!」

 

必死に声を上げる・・・──師匠、ライネスに呼び招かれ、ゆっくりと藤丸は目を開け、素早く飛び起きる。紙片を握った瞬間、意識が跳ね跳び昏睡していた様だと認識するに数泊かかった。

 

「まったく、このまま目覚めないかと気を揉んだぞ。弟子失格の烙印を押されたいのかね」

 

「ここは・・・」

 

「此処は新たなパッチワーク・・・の、様です。あなたが御無事で、本当に良かった・・・」

 

心配そうに覗き込む、銀髪のフードを被った控えめそうな蒼い瞳の少女が胸を撫で下ろす。図太くしぶといヤツだ、と嬉しげに笑いライネスは現状を整理する。

 

「『M』はあのまま逃げたらしい。まぁあのぽっと出黒幕おじさんならうまくやるだろう。──アイリーンは、まぁ後回しだ。心配はしなくていい」

 

「アイリーン所長・・・、解りました。で、ここは一体何処なんでしょう」

 

寝かされたホテルの一室らしき部屋を見渡す。豪奢で重厚ながら、シックでモダンな雰囲気を漂わせる、喪われながらも確かに其処にあると雄弁する。

 

「そこの窓を開けてみるといい。ここが何処だか解るだろうさ。──さぁ、見るといい。そしておののけ!」

 

「ここは・・・これは・・・!」

 

其処の目の前に広がるは、全ての機関から煙が吹き出す街。蒸気機関車、スチーム機関。ピストン。それら全てが、街の営みを賄う都市。──かつてとある数学者が夢見た、輝きと噴出の都市。

 

「第三のパッチワーク・ロンドン。その名も!蒸気絢爛パッチワーク!だそうだよ、我が弟子?」

 

「ロマンだ!ロマンが満ちているパッチワークだ!蒸気ロボットとかいないんですか!いないんですか!?」

 

テンションが否応なしに上がる藤丸。無理もない。蒸気、スチームは全ての男の子のロマンなのである。藤丸君だって男の子。夢見る希望と懐いた憧憬はいつまでも喪われはしないのだ。すげー、すげーとキラキラした目で見ていると、また藤丸の心を湧かせる通信が入る。

 

『通信、オールグリーン。先輩、聞こえますか?』

 

マシュである。通信が復活し、藤丸達の安否を確認しに顔を出してくれたのだ。例えそのマシュがどんなものであれ、その心遣いは彼の心を奮い立たせてくれる。

 

「マシュ!通信が回復したのか、良かった・・・!」

 

『ご迷惑をおかけしました、先輩。所長は、そしてその、そちらの方は?』

 

そう、新たな顔ぶれが現れた事をマシュは聡く追求する。フードを被った、どこかで・・・とても良く似た顔を見たと言っていいであろう風貌をした、灰色の少女を。

 

「は、初めまして!グレイと言います!あの、ライネスさんの・・・でして」

 

「友達、なのかな?」

 

藤丸の直接すぎる追求に、耳まで真っ赤にするグレイにむず痒そうに藤丸の頭を叩くライネス。善性はあれど、まだデリカシーや心の機微には疎めな藤丸君なのである。

 

「い、いえ。そんな名誉は拙には相応しくなく、そぐいませんから・・・」

 

「友達に、相応しいとかそぐわないとか必要ないよ。所長と師匠みたいに、君と師匠の心が繋がってたなら友達なんだ。いつの間にかね」

 

『イッヒヒヒ!随分とロマンチストなあんちゃんよ!気にすんな、こいつらは不器用でな!いっつもこんなんだぜ!』

 

誰!?驚く藤丸の目の前に、ガシャガシャと喋る変なアクセサリー。その不躾な物言いに、無言でグレイは猛烈な勢いで振り回す。

 

『わぁあ振るな!その腕力で振るなグレイ!!』

 

「この子はアッド。いささか、・・・かなり・・・非常に付き合い辛い子ですが、拙共々、どうかよろしくお願いいたします」

 

ぺこりとお辞儀し、振り回されるアッドと共に誠実な挨拶を交わすグレイ。その様子に、ライネスは安心したとばかりに返答と補足を付け足す。

 

「私の、まぁ・・・友達でいいか。今更一人くらい増えても構うまい。よし!グレイはオルガマリーと同じ関係だとも!マブダチだ!」

 

『なんだ?頭でも打ったか?』

 

「彼女らは私の兄の内弟子に当たる存在だ。まさかサーヴァントになっているとは驚きだったがね。ほら、もう少し歩み寄りの挨拶を続けるといい」

 

「は、はい!あの・・・藤丸さん。ライネスさんから師匠の事を聞きました」

 

「・・・ごめん。オレが辿り着いた頃には、全部手遅れだった」

 

「いいえ、藤丸さんのせいではありません。・・・師匠に何が起きたかを、一緒に突き止めましょう。そうでないと、拙が此処にいる意味がありません。師匠は・・・」

 

自分に居場所を与え、意味を見出だしてくれた大切な人だとグレイは答えた。気が付いたらこのロンドンにて目を覚まし、どうして召喚されたのか、何に召喚されたのかは解らないままに、ロンドンを案内を伝って歩み続けライネス達を探していたのだという。

 

「──マスターがいないっていうなら、良ければ力を貸してほしい。マスターと名乗ってるのはいいんだけど、今は諸事情でサーヴァントの手助けが乏しくて。師匠や所長の負担を減らすためにも、オレと契約してマスターとしての責務を果たさせてほしいんだ。」

 

「願ってもいない提案です。ライネスさんの弟子なら、きっといいマスターだと思いますから」

 

そうして、藤丸はグレイと握手を交わす。すると右手の甲の令呪が輝き、契約が交わされる。この特異点の間の仮契約だが、此処に藤丸は、困難に立ち向かう刃を手に入れたのだ。

 

「よし。オルガマリーに加えてもうひとつ磐石な勝ち筋が見えたな。グレイの宝具とオルガマリーの魔術に武力が合わされば、神の防御だろうと突き破れる!」

 

「宝具・・・グレイ、そういえばクラスは何なのかな?」

 

「はい、アサシンです。武器を隠していることが、アサシンに適用された様ですね」

 

『ま!ブンブン振り回してるあの鎌は俺なんだけどな!イッヒヒヒ!』

 

「乙女の秘密をあっさりばらすとは・・・!お前は全く変わらないな!」

 

『当たり前だ、刻まれた因果や起源は簡単に変わりゃしねぇもんさ!期待しときな兄ちゃん。そんときになったらバッチリ披露してやるよ!』

 

会話と対話を経て、情報を整理しつつも新たな仲間との交流を済ませる一同。謎はまだ多いが、決して一人ではない。だからこそ、力を合わせて立ち向かう事が正解へと向かう道なのだと言葉にせずともそれを為す。

 

「よーし!それじゃあ特異点攻略の再開だ。張り切って行ってみようじゃないか!おー!」

 

『おー!おいおいノリが悪いぞグレイ!ダチなんだったら音頭取れって!』

 

「お、おー!・・・と言うわけで、これからよろしくお願いいたしますね、マスター」

 

「あぁ、こちらこそ。サーヴァントとしても、一人の仲間としても頼りにさせてもらうよ」

 

そうして一行は、次なるパッチワーク・ロンドンへと挑む。其処は、かつて一人のコンピューターの父が夢見たとされる絢爛なる蒸気世界のパッチワーク──




藤丸「ところで、アイリーンさんは何処に?アストライアから、なんとか逃げ切れたんですか?」

ライネス「・・・それがな、弟子」

「・・・えっ?なんですか、どうしたんですか・・・?所長に、何か・・・!?」

ライネス「実は、彼女は「全員揃っているわね。パッチワーク・ロンドンについて新しいギミックが判明したわ。このロンドンには記憶紙片の種類の一つとして小紙片が用意されている様なの。これも順次回収しましょう」

ライネス「あ、こら!はやいぞオルガマリー!」

「並びにかの神の真名はアストライア。ギリシャにおける正義の女神で、裁定と裁きを司る神でもあったみたいよ。なんとか私のオペラで撃退したけれど・・・あら」

藤丸「ぶ、無事だったんですね!?良かった・・・!」

ライネス「くそっ、タイミングが合わなかったな・・・!寝坊して気をもませてくれた礼として、泣き顔の一つも拝むつもりだったのに!」

オルガマリー「あら、それはごめんなさい。安心して、この通り健在健康そのものよ」

グレイ「し、神霊と交戦して無事だったんですか・・・!?」

『オイオイ、一体何処の大英雄宿してんだ、なんちゃらマリーさんよぅ?』

「神に勝つのは当然よ。何故なら私はアイリーン・アドラー。──世界の全てを震わせる、オペラ歌手だもの」

藤丸「・・・オペラ歌手って凄いんだなぁ・・・」

ライネス「オルガマリーは何故、こんな正体不明の女傑に選ばれたのやら・・・」

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