世界でただ1人のLv.9   作:しぐ

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十一話

「おはようリヴェリア。……リヴェリア?」

 

「正座」

 

「え?」

 

「正座」

 

「はい」

 

 なるべく陽気な感じでいこうと思ったのが失敗だったのか、有無を言わさず正座させられ説教される事数時間。

 アイズはリヴェリアの剣幕に目を逸らし踵を返した。フィンとガレスは顔ににやけ顔を作ってどっかいった。アマゾネス姉妹はリヴェリアにひと睨みされてどっかいった。少年達一行は触らぬ神に祟りなしとばかりにスルーしてどっかいった。

 ようやくリヴェリアのお説教から解放された俺は、少年達が向かったというリヴェラの街へ急ぐ。小耳に挟んだ話によるとアイズも付いて行ったという事だ。ヘスティアが完全に邪魔なので連れ去りにいこうと思う。

 

「モテる男はつらいなー、さすが少年」

 

 ヘスティアを引き剥がさなければならないが、それはそれとしてあまりリヴェラの街に寄ったことがなかった事を思い出す。中間地点にすらなり得ない場所だから寄らないのだが、機会があったら寄っておこうと思ってすっかり忘れていた。

 ガラの悪い奴らしかいないな、という感想はそこそこに気になる奴を見つけた。

 

「ヘルメス……? と、あいつはファミリアの団員か。何でこんな所に……?」

 

 神ならこんなところで酒なんて飲むはずもないし、と。

 

「まあ、聞いてみりゃわかる話か」

 

 野次馬根性を発動させ、覗きを敢行する。そもそもあんな大っぴらに覗きをしてたのは【ロキ・ファミリア】の管轄内だからだ。こんな人通りもあるし誰が俺を見てるかわからないところで覗きがバレるような真似はしない。Lv.9の身体能力とスキルを遺憾なく発揮させヘルメス達の会話が聞こえる位置を陣取る。

 

「…………へぇ」

 

 随分とナメた真似してくれるじゃねえの。

 

 

 

 

 

 

 つまりヘルメスのファミリアの団員が渡したアイテムを使って少年をボコるってこった。ヘルメスになんらかの意図があるのはわかるが気にいらない。

 

「まあいい。現場を押さえてボコる」

 

 【ロキ・ファミリア】が帰った後を狙うそうで。そりゃそうか、アイズに蹴散らされる。

 まだ猶予はあるみたいだし、ゆっくりしてますかね。

 

「おっと、こうしちゃいられねえ。邪魔者を片付けに行かないと!」

 

 ヘルメスが何を考えているのか、とか少年は大丈夫だろうか、とかいう心配は先送りにして、目先の楽しみを追い求める事にしよう。

 目標補足。おっと、小人族(パルゥム)の少女まで。なんというハーレム状態。だが誤差! 誤差であるぞ少年! 例えそこに10人いようと全員連れ去ってみせる!

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「綺麗……」

 

「私のお気に入りの、場所」

 

「凄いですねっ! アイズさん」

 

 高台の頂上から見える絶景を楽しんでいた4人。アイズに一途なベルと天然なアイズ。そしてアイズに対抗心を燃やすベルに想いを寄せるヘスティアとリリ。その光景を隠れて見ているハルは、疾くベルとアイズを2人きりにするべく行動を開始した。

 

「綺麗だねベル君! 2人っきりで見たらもっと綺麗に見えたな! 2人っきりでね!」

 

 2人っきりを強調してベルに抱きつき、アイズを威嚇する。

 

「か、神様……胸が!」

 

 顔を真っ赤にしたベルを見てしたり顔を暫定恋敵の2人に向けるヘスティアだが、がっちりホールドしてたはずのベルの腕からいつのまにか離れ、あまつさえ身体が宙に浮いていた。

 

「へ?」

 

「な、何事ですか!?」

 

 それはリリも同じ状況だった。ヘスティアに対抗してベルのもう片方の腕に抱きつこうとした瞬間、身体が宙に浮いていた。

 

「ハルさん、何を……?」

 

 唯一、ハルが起こした行動をギリギリ補足出来たアイズがハルに質問を投げかける。

 にっこり笑ってアイズの質問には答えなかったハルは、宙に浮いた2人をがっちり抱える。

 

「はっはぁー! お邪魔虫2人確保だぜぇぇえええええええ!!」

 

「謀ったな最強君めぇええええええ!?」

 

「え、え? 何事ですかぁあああああ!?」

 

 愉快な叫び声をあげていなくなっていった3人にしばらくポカンとした表情をしていたベルとアイズだったが、沈黙を破ったのはベルの方だった。

 

「あの、ハルさんっていつもあんな感じの方なんですか……?」

 

「うん。私が小さい頃からずっと、変わってない」

 

「それにしても凄い速度で走って行きましたけど、もう見えなくなってますね」

 

「ハルさんは私よりも強い、よ?」

 

「へ? ええええぇえええ!?」

 

 明かされた衝撃の真実。Lv.6の『剣姫』であるアイズ・ヴァレンシュタインをもってして自分より強いと言わせるハルとは一体何者なのか。アイズと2人きりである状況もすっかり忘れているベルはその事に対する興味が先行した。

 

「ハルさんって、そんなに強いんですか……?」

 

 目の前の憧憬よりも強い存在。これまで何回か会って得た印象ではハルの事はよくわからないが凄い人っぽい、だった。

 

「私がずっと目標にしてる人。Lv.9で二つ名が『最強(ザ・ワン)』って。二つ名はハルさんが恥ずかしがって、教えてくれなかったから、リヴェリアが」

 

「Lv.9……へ? Lv.9ぅううううう!?」

 

「うん。私の……目標」

 

 ここにハルがいたら「普通の人が生きてる年数で俺のレベル超えられたら立つ瀬が無いんだが」と苦笑する所だが、ハルの生きてる年数を知らないベルと天然なアイズしかここにはいない。

 

「僕も頑張らなきゃ……」

 

 憧憬が目指してる存在と聞いて、自分の恋を応援してくれたあの人がとても大きな存在に見えたが、ちらりとアイズの方を見ると目に見えてオロオロしてたのでそんな考えも吹っ飛ぶベルであった。

 

「どどど、どうしたんですかっ、アイズさん!?」

 

「レベル……秘密……お説教……」

 

 慌てふためくアイズをどうにか落ち着かせて話を聞いたところによると、ハルは目立ちたがり屋ではないから世間にはレベルを秘密にしてて、都市最強と言われてる武人の上はいないという風になってるとの事。

 

「あ……謝りに行きましょう、アイズさんっ! きっと許してくれると思います。僕も秘密にするので!」

 

「うん、そうだね。ありがとう、ベル」

 

「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

「……で、俺の所に来たと」

 

「……ごめんなさい」

 

「アイズさんは悪くないんですっ!? 僕が無理にハルさんの事を聞いてしまったというか!?」

 

「別に少年に言うくらいなら構わないし、アイズがうっかり人に言った程度で怒る程狭量じゃないって言うかなぁ……いや、俺は怒ってる」

 

 びくっ、とアイズの身体が震えた。

 

「何の為に俺があの2人を連れ去ったと思ってる! そんなどうでもいい事に時間使うくらいならもう一回どっか2人で行って来いやァ!」

 

 ポイッとテントから放り出されたベルとアイズはまたしばらく捲し立てられた事を飲み込む為にぼうっとしていたが。

 

「じゃあ……どこ行こっか」

 

「え、えっと……何処でもアイズさんの好きな所でっ!?」

 

 取り敢えず、森を歩こうという事になった。

 

(ハルさんの後ろで何かごそごそ動いてたけど……)

 

「ベル?」

 

「へっ? あっ、今行きます!」

 

 それについては考えてはいけないような気がして、動いていたものを頭の中から削除し、アイズについていった。




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