世界でただ1人のLv.9   作:しぐ

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本作、プロットも何もない勢いだけの作品ですのでご注意ください。
さらに不定期で申し訳ないです。


十二話

「ふははははは……あーっはっはっは!」

 

 この時を待っていた。

 そう、それは女性陣が泉に水浴びにいくこの瞬間、チラリとヘルメスと目でやり取りをして、兎が逃げようとしていたので捕まえる。

 

「おや少年、何で逃げようとしているのかな?」

 

「何か嫌な予感がしたので……え、ええっ? どこ行くんですか?」

 

「ちょっくら覗きをしに、な」

 

 目を輝かせるヘルメスと嫌がるベルを引き連れて、女性陣が水浴びしてる所へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 そも、覗きとは犯罪である。

 女性の裸を無遠慮に覗くというのは言うまでもなく最低の行為である事は明白。

 しかし、女冒険者の鍛え上げられ引き締まった身体を見たいという男は多いだろう。

 一級や二級ともなればよほど気を抜いていない限り邪な奴が近づいて来たら気付くだろうが。

 

「まあ、つまり楽しもうぜ少年よ」

 

 作戦はこうだ。

 俺は別方向に、少年とヘルメスは一塊りになって木の上へ、気付かれそうになったら俺が陽動するというもの。

 

「さあ、ご禁制の場所を見る決心はついたかな?」

 

「ついてませんけどぉおおおおおおおお!?」

 

 無視。

 

 

 

 

 

 

 気付かれる事なく配置についた。

 第一級冒険者の裸を見せまいと目を光らせている【ロキ・ファミリア】の女性団員達を掻い潜れたのは、ヘルメスとベルを抱えた上で、音一つ立てずに木の上まで移動したハルの活躍によるところが大きい。

 

「お、おおお……! これが花園……!」

 

 木の上から遠慮なく覗きを敢行するヘルメスに対し、ちらりと入ったヘスティアやリリ、【ロキ・ファリミア】の面々の裸に一気に頬が紅潮する。

 

「や、やっぱりやめましょうよ、こんな事!?」

 

 罪悪感に駆られたベルが戻ろうとヘルメスの手を掴む。

 

「ここまで来て戻るっていうのは無しだぜベル君」

 

 しかし男ヘルメス。意地を見せて抵抗する。

 木の上で男二人がじたばたと暴れれば何が起こるか。

 

「へっ?」

 

 ベルが足を滑らせた。

 裸を見た事で気が動転して、ここが木の上である事をすっかり忘れていたのだ。

 

 ドボン、と。

 

 泉に落ちたらもう遅い。

 

「あれー? アルゴノゥト君も水浴びに来たの?」

 

「へぇ、可愛い顔してやるじゃない」

 

「ベル様っ!?」

 

「ベル君!? 一体君は何を……!」

 

「まさか……ヘルメス様」

 

 落ちて来た木の上を睨むと、「やべっ」という小さな声と共に隠れるが、第二級冒険者の目は誤魔化せない。

 

「あわ、あわわわわ……」

 

 パニックになったベルが振り向いた先には。

 

「あ……」

 

 恥ずかしそうに身体を隠ずアイズがいた。

 そして一瞬で紅潮が限界突破したベルはおもむろに立ち上がり。

 

「ご、ごめんなさぁああああああい!?」

 

 Lv.2とは思えない瞬発力で、脱兎の如く逃げ出した。

 

「あっ、逃げた!」

 

「とりあえずヘルメス様の捕縛優先!」

 

 ばたばたしている泉を眺めて楽しんでいたハルは一人、小さな笑い声を漏らしながら消えた。

 

 

 

 

 

「あー面白かった」

 

 長生きしてるとこういう娯楽が楽しくて仕方がない。

 ひとしきり笑った後でのんびりと戻ると、そこには仁王立ちして魔力を迸らせているリヴェリアが。

 

「ハル、正直に言ってくれ」

 

「はい」

 

「覗きに加担したか」

 

「ああもちろん、こんな面白い事を逃す手はないからな!」

 

「そうか。ならば死ね!」

 

「はっはっは。三十六計逃げるに如かず、ってね!」

 

 ボロボロになって吊るされているヘルメスが目に入ったが、それはヘルメスの自業自得である。

 

「避けるな! 当たれ!」

 

「嫌だよ痛いじゃん」

 

 次々と放たれる魔法は、しかし周囲に被害を及ぼすものではなく、リヴェリアもそこまで怒っていない事がわかる。本気で怒っていたら、【レア・ラーヴィテイン】くらいは放ちかねない。

 その魔法攻撃は、リヴェリアが精神疲弊(マインドダウン)する寸前まで行われた。

 

 

 

 

「うちのリヴェリアがごめんね、今回の遠征でかなりストレスが溜まっていたようで、発散させてた」

 

「いや、大方の原因はお前じゃろうが」

 

「犯人は主にヘルメス、という事になっているけど、今回のはよくないな」

 

「わぁーってるって。反省してる。やらないとは言ってないけど」

 

「どうせ何を言っても止められないし、極力問題を起こさないように注意してくれると助かるかな」

 

 寝ているリヴェリアの頭を撫でながら、フィン達とそんな話をする。

 

「今回は戦闘も激しかったし予想外の事も多々起きた。思いっきり魔法を放てる時に放っておいた方がいい。【ロキ・ファミリア】が帰るのももうすぐだし、あとは俺がなんとかするとしよう」

 

「ヘルメスか」

 

「ヤツがダンジョンに来た事自体がきな臭いからのう」

 

「ああ、少年に良からぬ事を考えているらしいから灸を据えようかなと」

 

 段取りでは明日のはずだ。

 あのヘルメスが【ロキ・ファミリア】の本隊がいる時に狙わせるとは考えにくい。

 姿が見えないくらいではフィン達の目は誤魔化せないし、アイズを始めティオネやティオナも気に入っているから黙ってはいないだろう。

 

「ンー、さすがに帰る日を遅らせるわけにはいかない。ロキに直接伝えたい事もあるし」

 

「いや、そこまで望んじゃいない。予定通りで大丈夫」

 

 結局、俺がヘルメスの事を気にくわないという自分勝手な行動に【ロキ・ファミリア】を付き合わせるわけにはいかないし。

 

 

 そして、夜は明け、【ロキ・ファミリア】はホームに向けて出発していった。

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