世界でただ1人のLv.9   作:しぐ

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今回、視点がコロコロ変わりますのでご注意を。
見辛かったらSide〜とかつけようかなとは思っていますが、多分大丈夫だと思ってます。


十三話

 その日の朝、ロキ・ファミリアを見送った俺に大胆にもヘルメスは話しかけてきた。

 

「俺が何をしようとしているのかは、気づいていそうな顔だね」

 

「まさか、どんな手を使って俺を止めるのかと思っていたが、態々出張って来るとは」

 

「どんな策を用意しても力技で抜けられたら意味がない。だから俺が止めに来た。ベル君は人の悪意に慣れていない」

 

「だからあんなことをして少年を傷つけると。何故お前にお膳立てされなきゃいけない。少年は、お前如きにちょっかいをかけられなくても強くなるやつだ」

 

「世界は英雄を欲してる。俺はベル君を英雄に仕立て上げるのさ」

 

「──ッ!! (おまえ)人間(俺ら)の可能性を限定するような事をしてるんじゃねえぞ!!」

 

 可能性を与える神が、選択肢を与える筈の神が、どうしてそんなふざけた事をしてくれる。

 英雄を作る? ふざけるな、少年が例え英雄になりたいと思っていても、それは断じて神のお膳立てでなるものじゃない。

 

「ところで、姿を隠したくらいで俺に気づかれないと本当に思ってる?」

 

「アスフィ、逃げ──」

 

 ドッ、と。

 何やら薬品を持って近づいてきたアスフィと呼ばれた女の首根っこを掴んで地面に叩きつける。

 

「普段なら手を出したりはしないんだけど、今回のは頭に来たんで、ちょいと手を出させてもらおう。安心しろ、殺しゃしないさ」

 

 挨拶の意味も込めて、蹴ってみると思いの外頭に来て力が入っていたのか、体から響く嫌な音と共に吹き飛ばされたアスフィは、木にぶつかってぐったりと倒れ伏した。

 

「……あれ、えーっと。手加減間違えたかな?」

 

「…………」

 

「よく外へ出てるとはいえ、俺の強さは知らないわけじゃないよな。放っておいたらちょいとまずい事になると思うけど。動いた方がいいんじゃねえの?」

 

 ピシリと、何かひび割れる音がした。

 

「痛めつけたのは俺だけどさ、ポーションなりなんなり常備してたりしないのかね」

 

 バキッと、何かが砕ける音がした。

 

「殺しはしないと言ったけどこれはなぁ……」

 

 パキンと、何かが致命的なラインを超えた音がした。

 ソレはこの階層の天井から生まれてきた。

 ああ、理由はよくわからないがこれは異常事態(イレギュラー)だろう。だってほら、ヘルメスだって呆然とした顔をしているじゃないか。

 

「しゃあない、これ使え」

 

 ルーナ印のポーションをヘルメスに投げ渡す。ヘルメスよりもアレの対処が先だ。その為にはアスフィにも働いてもらわなければならないだろう。

 基本的に俺は後方支援だ。

 

「しっかり働かせろ。それで不問にしてやる」

 

 

 

 

 

 

「損な役回りをさせちゃってごめんね? アスフィ」

 

「主神を守るのは仕方のない事ですが……もう二度と敵対したくないですね。戯れだったからいいものを、本気だったら私死んでましたよ」

 

「というわけで彼にも言われた事だし、俺を助けると思って働いてくれ」

 

「はぁ……わかりました。行ってきます」

 

「よろしく、アスフィ」

 

 

 

 

 

 

『始末しろ、始末しろ』

 

 怪物は誰かの声を聞いた。

 

『憎い憎い憎イ……! 神を、忌まわしき神に凄惨たる死を』

 

 怪物はソレを母の声だと認識した。

 

『殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。異物を排除し

ろ。我が体内に入り込んだ異物()を!』

 

 怪物は憎悪の念によって育つ。急速に、急速に。

 体内で感知した神の気配。憎き神の気配を敏感に感じ取った、『母』は我が子を解き放つ。

 それは17階層主『ゴライアス』。怨念が、恨みが、執念が、ゴライアスを別の怪物へと作り変える。

 

『───────殺せ』

 

 怪物は18階層(セーフティエリア)へと生まれ落ちた。

 

 

 

 

 

「く、黒いゴライアス!?」

 

「なんでここに階層主が出るんだよぉ!?」

 

「逃げるしか無いって!!」

 

 前例のない事態に冒険者の思考が止まる。

 

「ボールス!」

 

「アンドロメダかァ!? ありゃどうなってやがる!?」

 

「わかりません。ヘルメス様も聞いたことがない事態だと。逃げるにも逃げられませんし」

 

「逃げられない? そりゃどういう事だ!」

 

「そのままの意味です、17階層への道が落石によって閉ざされました。幸い、下への道は繋がっているようですが?」

 

「ハッ、そりゃ死ねってか! ならあの怪物を倒さにゃいけねえって事だよなァ! 聞いたな野郎共! あの怪物を倒す! 逃げた奴ァ二度とこの街に踏み入らせねえぞ!」

 

『オオオォォォオオオオオ!!!』

 

 虚勢でも何でもいい。大声を出して心を奮い立たせなければ、修復不可能なくらいにボロボロにされそうなのを冒険者達は必死に押し殺した。

 

 

 

 

 

(何かを探してる……?)

 

 何処かでこの戦いを見ているヘルメスと同じようにハルもまた後方から戦いを眺めていた。

 何一つ動かないわけではなく、俯瞰しながらピンチの冒険者達を陰ながら救いつつ黒いゴライアスの動きを眺めていた。

 

「ここは少年に譲りたい訳だが」

 

 そう一人呟く。

 事実、ベースがゴライアス故、いくら強化されたとしてもそのポテンシャルは知れたものだ。ベルに顔を飛ばされても再生する、その再生能力は驚異だが、言い換えればLv.2であるベルの攻撃も通るという事。

 

「それにしては魔法の威力が高かったのは置いといて」

 

 リュー、アスフィが必死に食い止めているお陰で大した被害は出ていないものの、黒いゴライアスに引き寄せられるように集まってくるモンスターが少なくない被害を出している。前も後ろも警戒しなければいけない、さらに前には特大の脅威。それが冒険者達を疲れされる。

 

「よっと」

 

「す、すまねえ!」

 

「もっと固まって動け。そうじゃないと死ぬぞ」

 

 また一人、ピンチになっていた冒険者を救いながら、それでも積極的に前に出ないでいると。

 

「なるほど、なっ!」

 

 今度は、狙われた神を救う為に駆け出した。

 

 

 

 

 

 見つけた。

 母が憎悪を向ける敵。白い服に黒くて長い髪。

 あれだ。あれだ。あれだ!

 

『オオオオオオオオオオオオオ!!』

 

「なっ!」

 

 纏わりつく敵を跳ね除け走る。痛いが引き離しさえすれば問題ではない。

 

「……神ヘスティア!」

 

「うええっ、嘘だろ!? 何でボクが!」

 

 遅い。

 あと一歩で踏み潰せる。

 母の怨敵をこの手で──。

 

『オオオォォォオオオオオ!!』

 

 単純な振り下ろし。

 破壊力は抜群。抗う力を持たない神など簡単に潰れる事間違いなし。

 なのに。

 

 バチンッ、と。呆気なく、簡単に。何者かに弾き飛ばされた。

 

「神様ぁぁあああ!!」

 

 凄まじい速さで駆けてきた白い髪の冒険者に攫われて、また距離が離される。

 ああ、誰だ。邪魔をした奴は。

 

「流石に神を狙ってるとあっちゃあ、出ないわけにはいかないよな」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

「温い。温すぎるぞお前!」

 

 目の前の敵を排除しない事には母の命令を達せられないと察した黒いゴライアスは、最大の敵と認識して、攻撃を開始した。




早く14巻出て欲しい
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