世界でただ1人のLv.9   作:しぐ

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十四話

 ゴライアスが振り下ろして来た腕を弾く。咆哮(ハウル)を冒険者達に当たらないように弾く。

 あくまでタンクに徹するつもりなので実質やる事はそれだけだ。なんて容易い。

 

「リュー! 攻撃は任せた!」

 

 無言で動いてくれるのがとても気持ちいい。こう、少しの言葉だけで十全に把握して動いてくれるってのは以心伝心というかなんというか。冒険者の経験とかじゃないよ本当だよ。

 

(さて、良いところを少年に譲る為にはどうすればいいかな、っと)

 

 俺のレベルが知られてしまったのはマズかったと今更ながらに反省する。苦戦してる風を装ってトドメを譲るなんて事が出来たかもしれないのに。いや、過ぎたことをとやかく言うまい。

 取り敢えず帰ったら一回アイズに稽古をつけてやろうと心に決めておく。

 

(ん……? ヘルメスがこんな所で何を……)

 

 ああ、なるほど。

 少年を英雄にさせたがっていたヘルメスがここで動かないわけがない、か。

 どうベルを言いくるめて、どう決めてくれるのかを楽しみに、もうちょっとタンクを続けますか!

 

「少年が来るまで、遊ぼうぜ?」

 

「私は結構いっぱいいっぱいなのですが……」

 

「実は俺もいっぱいいっぱいで」

 

「貴方がふざけた性格だと言う事は今とても理解しました」

 

「くっ、こうしてる今もゴライアスの攻撃を弾き続けてる俺に向かって何たる辛辣な言葉! でも俺、エルフに冷たくされるのは慣れてるんだ!」

 

「攻撃に行って来ますね」

 

「無反応って結構辛いんだよ? 戦場に癒しは重要だと思うんだよね。モチベーションにも繋がるし……ねえ聞いて!?」

 

 仲良くなったと思えばいいか。

 

 

 

 

「怪我はありませんか、神様!?」

 

「あ、ああ。ボクは大丈夫。それよりもアレは何で一直線にボクを……?」

 

「君が、神たる力を解放したからだろうね」

 

 まるでタイミングを見計らっていたかのように、ヘルメスが姿を現した。

 

「ヘルメス様……?」

 

「やあ、ベル君。君にも話があるんだけど、先にヘスティアに状況説明する方が先かな」

 

「解放した、って言ってもちょっとだけなんだけど!? まさかそんなちっぽけな力の解放で……?」

 

「そう、そのまさか。俺も予想外だった。ダンジョンがこんなにも神を憎んでいたとは。その点で言えばヘスティアは軽率だったと言わざるを得ないな」

 

「でも、あの時はベル君が──」

 

「ああ、あの場面での理想的な行動はベル君がどんな目にあっていようと、指を咥えて見ている事だ」

 

「──ッ!そんな事」

 

「出来るわけない。知ってるよ。ヘスティアがそんな性格なのは。俺も少しなら大丈夫だと思っていたが、現実はこうだ。俺らの幸運は、ハルという規格外の存在がいた事だけど……」

 

 責任を感じて、ツインテールがしなしなしているヘスティアから視線を外し、ベルに向き直る。

 

「そこで、話はベル君に変わるわけだ」

 

「僕に……ですか?」

 

 きょとん、としているベルの為に説明を続ける。

 

「規格外のハルだけど今回は防御しかしない。あれを見て」

 

「……すごい」

 

 その光景は、まさしく圧巻だった。盾も持たず、ゴライアスの攻撃を受け流し、弾き飛ばす。苦しんでいる様子もなく、むしろ楽しんでいる様にすら見える。リューが攻撃する事で咆哮(ハウル)が別方向に向くのを防いでいる。

 ──ハル、リュー共に被弾していない。

 自身が目指す、情景が目指しているものの片鱗を、ベルは見た気がした。

 

「時間は彼が稼いでくれる。だからベル君、トドメは君に任せる、と彼は言っていたよ」

 

「え、ええぇぇぇえええ!? 僕がですか!?」

 

「ああ、可能だろう? 先程ゴライアスの顔を吹き飛ばしたあの魔法に使用したスキルがあれば」

 

「…………」

 

「さあ、ベル君。トドメは君だ。──情景を燃やせ。己が理想を成し遂げて見せろ」

 

 大剣が降ってきた。

 グリップを握ると、とても手に馴染んだ。見ればハルが遠くでサムズアップしているのがわかった。

 目を閉じ、思考の裡に意識を向け。そして──。

 

 

 

 リンゴーン、という鐘の音が聞こえてきた。

 

「時間を稼いでください! お願いします!」

 

 同時に、少年のそんな声も聞こえてきた。

 

(チャージスキル。詠唱を必要としない魔法があれだけ強くなるのだから、その性能は計り知れない。本格的にチャージしようとすると無防備になるがこの大人数だ、少年の事を守るのは容易いだろう)

 

 Lv.2でこんな怪物を打倒する手段を持っていることに嫉妬を隠せないよ、俺は。

 

「ゴライアスは俺1人で引き受ける! リューは少年のカバーに! 森のモンスター達が少年に向かって移動してる!」

 

「わかりました」

 

 俺がLv.2になったのは、冒険者になって果たしてどれくらい時間が過ぎていたかな。5年か、10年か。多分、そこら辺。

 弱くて、才能が無かった俺は、ロクにパーティーにも入れてもらえずソロでダンジョンに潜り続けて、それだけの年数が経ってようやく器の昇華を体験できた。

 

「羨ましいよな、ガムシャラに頑張ってたら、どんどん強くなる事を実感出来るんだぜ?」

 

 強化されて落ちてきたゴライアスに語りかける。返答が返ってこないのはわかりきっているからこれは、俺の独り言だ。

 

「ソロでしか潜れないから、浅い階層しか潜れない上に経験値だって溜まらない。朝から晩まで潜っても大した収入にならず、ルーナの2人で食べれる草はどれか話合った事もたくさんある。ああ、羨ましい。俺にそんな力があればあの時──」

 

 いや、そんな事は考えるべきじゃないな。ただ今は若い人達の為に、その芽を摘まない為に行動するべきだ。

 

「つまらない話をしているうちに、チャージが終わったようで」

 

「ハルさん、道を開けてくださぁぁぁああああああああああああああい!!」

 

「はいよっと」

 

 俺が道を開ければその直線上には少年とゴライアスしかいない。

 

「さあ、決めてくれ。少年」

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」

 

 決着。




ゴライアス戦が決着したので次はウォーゲーム編ですね。
アポロンファミリアに無慈悲な敗北が約束されたも同然である。
プロットとかないのでどうなるかは作者にもわかりませんが、たのしんでいただければ。
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