世界でただ1人のLv.9   作:しぐ

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六話

 結局、合流出来たのは50層のキャンプ地でだった。

 あの後、待ち構えたようなルーナに見つかってホームに泊まる事に。どうせいつでも追いつけると言う事でゆっくりしてたらもうフィン達はこんなに深くまで潜っていたのだ。

 歩いて行くのは面倒なので【ワープ】を使ったが。

 

「遅かったね、これから先にいないのは少しばかり不安だからとうしようかと思ってたんだけど」

 

「思ってた以上にお前ら早かったわ。どうしようもない時以外はこの先だろうと手を出さなくていいんだな?」

 

「ああ、それで頼むよ」

 

「わかったよ。それでいこう」

 

 フィンに確認を取ってその場を後にする。ちなみにだが俺のテントは野営地の少し離れた場所にある。リヴェリアと一緒が良かったとか思ってないんだからね。

 

「暇だし、寝るか」

 

 野営地から離れているから人通りも殆どない。見えるのはトイレにかけていく人達だけだ。

 出発は明日の朝イチなので、今から寝るのも悪くない━━と思っていると。

 

「ハルさん……起きて、ますか?」

 

「暇だから寝ようと思ってたところだけど、動きたさそうな目をしてるな。いいよ、付き合ってあげる」

 

「ありがとうございます」

 

「ただ俺は反撃しないから、思いっきり向かってきなよ。反撃して怪我させない保証は無いからね」

 

「はい……わかりました」

 

 あ、ちょっと不服そう。

 怪我させるのは厳禁とフィンからも言われてる事だし仕方のない事だ。俺も反撃して楽しみたいけど駄目なんだ。わかっておくれアイズよ。

 

 

 

「じゃあ……行きます」

 

「おう、来いよ」

 

 一階層上がったところに俺たちはいた。ここはボス部屋だから雑魚が湧く心配もないし、ボス自体はフィン達が先に倒してるから安心。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

前回とは違ってアイズも最初から本気だ。反撃出来ないことを惜しみつつ、俺はアイズの攻撃をいなしたり避けたりする事に徹した。

 

 

「むぅ……一歩も動かせなかった」

 

「はっはっは、そうむくれるなアイズ。オラリオ中の冒険者から狙われても傷一つ付かないと豪語する俺がアイズ一人を相手にそんな事あるわけないだろ。まあ……レベル差もあるが、絶対的に経験値が足りない。アイズにあと200年程の経験値があれば俺も一歩も動かずは無理だったな」

 

「私、そんなに生きられません……」

 

「ものの例えだ、気にすんな」

 

 はっはっは、と笑ってアイズの頭を撫でる。何より自分より遥か上の高みを知っているのはいい事だ。俺だってまだ両親の面影を追いかけてるさ。影も形も見えないけど。

 

 俺がオラリオ中の冒険者を相手にして無傷でいられるのも経験値の差が大きい。経験の差が千年も空けば例え同じレベルだとしても赤ん坊と大人ぐらい違う。赤ん坊がいくら増えたところで大人が負ける道理はない訳だ。

 

「さて、これ以上は明日に差し障るから早く帰るぞ。フィンに怒られてしまう」

 

「はい、わかりました」

 

 

「遅い」

 

「えー」

 

「いいかい、君は怪我とか体調不良とかとは無縁だろうけど。アイズは絶対にならないとは言い切れないんだ。大方アイズの攻撃を躱すのが楽しくてついとか言うんだろうけど皆が皆君みたいに不老不死の肉体じゃないんだ。わかってるかい? 明日は大事な攻略なんだからもしもの事があったら━━」

 

 などと二時間。

 途中で「フィンも体調不良になるかもしれないからこの説教も無駄じゃねえ?」といってからさらに二時間。

 流石に疲れた。夜もどっぷり更けてるし。あんなに怒る事なくない? そりゃあ興が乗ったのも茶化したのも俺が悪いけどさー。

 

「ちっ……あの中年め。可愛い容姿してるけどジジイに片足突っ込んでるんだぞ」

 

「へぇ?」

 

 後ろを振り返らず、全速力で逃げた。

 

 

 

「眠い……」

 

 出発前のミーティングがあるとリヴェリアに叩き起こされ、寝惚け眼を擦りながらフィンの話を聞く。

 

「それじゃあ51階層から先を攻略するメンバーを紹介していく。まずは僕、ガレス、リヴェリア、アイズ、ティオナ、ティオネ、ベート、ハル。そしてサポーターにラウル、レフィーヤ。鍛治師として椿にも付いてきてもらう」

 

 呼ばれた俺の名前に、不満気な雰囲気が上がる。ま、そりゃそうだよな。ロクに知りもしない相手に深層という場所に挑む機会を奪われたんだ。いい気はしないわな」

 

「さて、今回はヘファイストス・ファミリアの鍛治師達に加えて、とあるファミリアに所属しているハルという助っ人を呼んでいる。本来なら行く前に説明するべきだったんだが、こっちの方が手っ取り早いと思ってここで説明する事にした。さて、ハルとアイズ。前に出てきて」

 

「へいへーいっと」

 

「はい」

 

「さて、みんなハルの実力が気になってるよね? 色々な(おとな)の事情で所属とレベルは明かせないけど。ハルの強さならここで明かしておかないとみんな納得しない。なら、させればいい。アイズ、剣は持ってるね」

 

「はい。持ってます」

 

「うん、準備がいいね。じゃあリヴェリア、僕の槍を」

 

「了解した」

 

 リヴェリアから二本の槍を受け取ったフィンは石突きの方を地面につけながら、こう宣った。

 

「僕とアイズで1分間ハルを全力で攻撃する。その間、ハルが傷一つ追わなかったらみんな、認めてくれるね?」

 

 そりゃあ……といった、どうせ無理だろみたいな雰囲気が流れる。まあ実力も出来れば隠しておきたいが回避だけに特化されてると思われておくのもいいか。ロキ・ファミリアはフィン達がいるから言わずもがなだけど、鍛治師達はあのヘファイストスだ。真っ直ぐな神だから大丈夫だろう。帰ったら行かないとな。

 

「わかった。いつでもいいぞ」

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

「【ヘル・フィネガス】」

 

 おっと、フィンも本気か。なら俺も手ぐらいは使わないと失礼かな。

 

「団長の魔法だ……」

 

「初めて見た……」

 

「すげえ、あの猛攻を一歩も動かず捌いてるぞ……!?」

 

「一度も聞いたこと無いけど、アイツ何者なんだ!?」

 

 ああ、外から聞こえてくる驚きの声が気持ちいい。俺を雑魚だと思ってカツアゲしようとしてきてLv2くらいの冒険者を半殺しにした時みたいだ。畏怖の視線がいいね。

 

「かっこいいな、ハル」

 

 ボソッ、とリヴェリアが呟いたのを俺は聞き逃してはいない。

 リヴェリアを盗み見ると顔を赤くしてそっぽを見ていた。呟いた言葉を聞かれたのを察したのだろう。可愛い。

 

「はぁ……これが、ハルの実力だ。これで、連れて行くのに反対の人はいないね?」

 

 流れ出た汗を拭うフィンの質問に否を言える人はいなかった。

 

「さて、20分後、出発する」

 

 

「まさかフィンまで魔法を使うとは思わなかったよ」

 

 休憩してるフィンのところまで行きルーナ印のポーションを投げ渡す。

 

「飲め、元気が出る」

 

「ああ、ありがとう。ちょっと僕も興が乗っちゃってね」

 

「ちょっと前にアイズにも渡してきた。これで消耗分は回復出来るだろ」

 

「助かるよ」

 

「お前とアイズが落ちれば俺が出る確率が上がるからな、そうしない為だ」

 

 戦闘も出来る指揮官というのは貴重だ。後ろで指示を出すより前線にいた方がいち早く異常を察知出来る。臨機応変に対応できる。

 フィンは並の敵じゃ落ちないし、揺らがない。オッタルはLv7とフィンよりも上回っているが、指揮の面をみるとフィンが大幅に上回っている。指揮、という面だけでみると俺をも上回る。別に俺がボッチってだけじゃないぞ? ちょっとソロで潜る事が多かったから指揮する機会に恵まれなかっただけだ。

 

「そうだね。僕が落ちるわけにはいかない」

 

「ああ、それを理解してるだけでもお前は強いよ」

 

 指揮があるのとないのでは攻略の効率も段違いだ。俺の様に実力が飛び抜けてるヤツだと指揮も必要ないが深層は指揮が頭飛び抜けててそこそこ戦えるヤツがいないと先に進むのは厳しいだろう。

 

「良かったな、フィン。指揮という面では俺を超えてるよ」

 

「それは嬉しいね。ハルは千年も大人数に指示を出す事が無かったのかい?」

 

「最初の百年くらいはあったんだが、最近やってないからな。指揮の腕も鈍ってるよ」

 

「そうかい。そろそろ20分だ。行くよ」

 

「おう、回復したか?」

 

「ああ━━バッチリだ」

 

 それは重畳。

 こうして俺たちは深層へと足を踏み入れた。

 

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