世界でただ1人のLv.9   作:しぐ

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八話

「うっわ。何これ密林じゃないか」

 

 足を踏み入れた59階層は俺の記憶に残っている光景とは180度違う密林。

 何かがこれを引き起こしてるのだとしたら相当だぞ。これを討伐するのが俺の役目なのかね。まあ、そうであってもそうでなくてもロキ・ファミリアの面々が死ぬ寸前まで俺は見てる契約だからな。何が起こっても静観するしかない。

 正直リヴェリアが傷付くのは見たくないのだが。どうにかならない?

 

「リヴェリアだけ贔屓するのは駄目だよ。こっそりフォローするのも駄目。わかった?」

 

「はいはい。わーってるよ」

 

 渋々とそう呟く。

 それと同時に、何か変な音が聞こえた。

 この先から聞こえてくる、不協和音。あまり、聞いていたくない音だ。

 

「進むよ」

 

 警戒度を上げて、フィンの声に従ってさらに進む。

 ベートとティオナを先頭に、音の発生源まで進んでいくと、

 

「……なに、あれ」

 

 ティオナの唇から、声がこぼれ落ちる。

 

「……これは、壮観」

 

 その光景を目にした俺も、思わずそう呟いてしまった。

 密林が姿を消して、灰色の大地が顔を出し。夥しい量の芋虫と奇怪な植物型のモンスター。

 その、中心に。

 

「『宝玉』のモンスターか」

 

「寄生したのは、『タイタン・アルム』なのか?」

 

「寄生って?」

 

「モンスターに寄生するヤツがいる、そういう事だよ」

 

「ふーん」

 

 結局倒す事には変わりない。それに俺は難しい事を考えるには向いていないからな。考える暇があれば敵対者は全て潰せばいいって思ってしまう。

 

「さて、気づいているか?」

 

「ああ━━これは、予想以上だ」

 

 今俺たちがいる灰色の大地。これが全てモンスターの灰であると。

 その事実に気づいたフィン達に震えが走る。

 

「ハル、手は出さないでくれよ」

 

「いやそりゃあ出さないけど。あれ、大丈夫か? 相当強くなってそうだけど」

 

 あの程度のなら俺ならば瞬殺出来る━━が、そうだな。フィン達の成長ぶりでも確かめるとするか。あんなのに屈するほどヤワじゃないだろう、こいつらは。

 

「俺は離れて見てるから、存分に戦ってこいよ」

 

「ああ、見ていてくれ。僕達の勝利を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━ああ、成長を実感できた。

 

 これが限りある寿命で生き抜く人達の輝きか。

 フィンもガレスもリヴェリアも。

 アイズだって模擬戦でわかっちゃいたけど、それでもモンスターと人じゃどうしても力がセーブされる。

 ああ、みんな強くなった。

 強い。本当に……その才能に嫉妬してしまいそうになる。

 

「俺は、1000年努力してもまだ9だってのに……」

 

 これは考えても栓無き事。

 俺は落ちこぼれだが、それでも今は最強だ。

 【ロキ・ファミリア】のみんなは勝利を噛み締めてる。

 ボロボロになりながらもあの怪物に勝利した。

 俺はそれを讃えよう。

 

 

 だから、次は俺の番でいいよな?

 

「来いッ!!」

 

 ゲートを通って取り出した剣を握りしめ、全速力で走る。

 異空間から口を開き、今にもリヴェリアを呑み込もうとしている怪物を容赦なく蹴り飛ばした。

 

「え……?」

 

「さあ、ここからは俺の番だ! 邪魔だから出来るだけ後退しておけよ!」

 

 残念ながらリヴェリアに構っている余裕はない。

 一瞬前まで死の危険が迫ってることにようやく気付いて顔の色が少し変わっている様をずっと眺めていたいがそうもいかない。

 アレから目を離すと誰かが喰われる。

 

『バァアアアアアアアアア!!』

 

 他の獲物には目もくれず、怪物は俺に向かって一直線に突っ込んでくる。

 本能でわかっているんだろう。俺から意識を離すとやられてしまうと。

 

「フッ━━!」

 

 ポイッと剣をゲートに放り投げ、大口を開けて突っ込んで来る怪物を蹴り上げる。

 剣は苦手なんだ。出したのはただのカッコつけで……ああっ、こんな状況にもかかわらずリヴェリアが白けた目を向けてきてる!

 

『バァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 魔法の複数同時展開。

 リヴェリアが生み出す魔法を遥かに上回るソレがざっと数えただけで10は超えている。

 

 なるほど全部撃ち落とす━━!

 

 やる事は単純明解! 魔力で覆った拳で叩き落とす!

 

「ハッ!」

 

 全部後ろを狙ってやがる。

 俺が守らざるを得ない事に気付いていて、魔法を撃ち落とす事に専念させているとしたら━━確実にあの怪物は。

 

「狙いがバレバレなんだよ! 所詮は獣か!」

 

 全ての魔法を撃ち落とした瞬間を狙って、異空間を通ってきた怪物が俺を捕食しようと大口を開ける。

 

「これでも食ってろ……よ!」

 

 ゲートに眠っていた大剣を射出。

 口を斬るつもりで放った大剣はしかし、何一つ傷つける事なく怪物の胃の中へ吸い込まれていった。

 

「えぇ……ブラックホール的な? 口の中に入ったものはなんでも吸い込んじゃう的な身体の構造してるんですかねぇ!?」

 

 何それ超面倒。

 そもそも明らかダンジョンの生き物じゃない。

 俺が出張らないといけないレベルの敵なんてこのあたりの階層にはいないはずなわけで。芋虫みたいな新種はいるしなにやら不穏な気配が漂ってるけどそれは【ロキ・ファミリア】の面々に任せるとして、俺は本当は戦う事しか脳のない人だから。

 1000年生きてれば多少は賢くもなる。

 

「うおっ、余計な事考えて現実逃避してたら掠った!?」

 

 この怪物、意外と速い。

 

『バァアアアアアアアアアアア!!』

 

「考え事をしてたとはいえ、俺に擦り傷を負わせた褒美を与えようじゃないか」

 

 ゲートから取り出したのは一丁の銃。

 そこに込めるのは鈍色に輝く一つの銃弾。

 

「よくわからん怪物に……理不尽な最期を」

 

 放たれた銃弾は、真っ直ぐ怪物の口に吸い込まれ。

 

 ━━斬ッ!

 

 そんな風に最後はあっけなく、身体を真っ二つにされて、怪物は地に沈んだ。

 

「うん、よくわからんが俺の出番もこれで終わりだろう」

 

「……ああ、そうだね。僕の親指もそう感じてる」

 

 たしかにフィン達にとっては勝ち目がない相手ではあったが、俺も苦戦するようなのが迷い込んでくるのかと思いきやそうでもない。

 しかも亜空間を通る奴だから迷宮にダメージを与えるような事にもならなかった。

 

「まあ何はともあれ、一件落着って事かな」

 

 リヴェリアのめっちゃ怖かったけど澄まし顔で誤魔化してるのが何とも可愛いけどこれは家に帰るまでからかうのはやめておこう。

 




気付けば新年も通り過ぎ二月も終わりになろうとしてる今日この時。
時が経つのは早いですね。
めちゃくちゃ間隔空いて作者も何書いてるかわからなくなりましたが、主人公の性格が前半と後半で変わってたらすいません。
更新が滞っている間にダンまち13巻が出てしまいました。控え目に言って最高でしたモンハン楽しいです。
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