真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:キンシャサ・ニーストライク
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第一話.愛される弟

 彼は自室の扉を閉めて施錠した。この時代の、自室の扉に鍵とかあるのかな? まあそれは置いといて、さっきこそっと買ってきた新作の春画を彼はドキドキしながら履き物を降ろし、下肢の中央部に血流を貯めながら、貯めた情熱を吐き出す為、春画を舐め回すように眺める為に机の上に置いたその時だった。


「ぽち! ぽちはいるの!」
「華琳姉!?」


 施錠していたはずの扉があっさりと破壊音と共に開かれる。正確に言えば我が姉、華琳姉こと曹操孟徳と共に現れた春姉、夏侯惇元譲が蹴破った。いつもの事である。部屋の中に吹き飛んで来た扉だった残骸が床に飛び散るまでの間に、曹操の弟である曹柴犬、真名ぽちは一瞬で春画を破り捨て履き物を履き直した。いつもの事である。


「どうしたの……」
「こっちの台詞よ。また私塾さぼって何してるの」

 ナニしようとしてました。なんて言ったら瞬時にこの首が飛ぶことをぽちは理解していた。

「今はもっと大切な事を考えてたんだ。私塾に行くよりさ」
「……そう」


 昔から姉である曹操は、というより曹一門ほぼ全員は何故かこのぽちに対してだけはその確かな観察力と考察力が節穴となる。ぽちがこうやってぼかしながら言葉を吐くと、彼女らの素晴らしい頭脳は何故か彼の都合の良い方向へ解釈される事がとても多いのだ。


「……確かに今の都の情勢を見れば貴方が考えている事は間違いないじゃないわ」
「え? ああうんそんな感じだよね」
「でも今はしっかり基礎を身に付けるべきよ。分かるでしょ?」
「……でも私塾なんて行ってもなあ」


 だってほとんどさっぱり理解出来ないんだもの。意味無いと思うんだよなあと思うぽち。高い学費が無駄になるだけなのだ。曹一門の中に置いて姉がこの大陸最高峰のチートに生まれた。この弟の分の才能ほとんどは姉が吸い付くしたかの如くである。若干変な方向には才能を持ってはいるのであるが。但しその親類一同と同じく、容姿だけは良い。容姿だけは。名だたる将が女性であるこの世界では、容姿が良い男というだけで本来ならば超がつく程の勝ち組であるはずだった。ヒモで種馬になれば良いだけだもの。しかし彼は何故か期待され、その低脳っぷりを勘違いされ続けて今に至るのだ。


「そう、もう全て覚えたのね。流石だわぽち」
「へ? ああいやそうじゃ──」
「でもね、あの私塾に通っているのは名門士族の家柄の子ばかり。そういった子達と縁を結んでおくのは大事よ?」
「……華琳姉がやればいいだけじゃない」
「……貴方はそうやって私を立てようとする。ぽち、私は貴方にも私の隣に立って欲しいの」
「俺じゃ無理だよ、男だし。華琳姉に迷惑掛けたくないし」


 これだけはこの男の本音である。姉と一つ違いである彼は同じ私塾に通っている。


「それにどうせそのうちどっかに婿に出されるだけ──」


 破裂音がした。今まで黙っていた夏候惇が壁を殴ったのだ。壁が粉砕された。いつもの事である。


「ぽち様が婿に出されるだと!?」
「落ち着け姉者。まだ決まった訳ではあるまい」
「これが落ち着いていられるか!」

 夏候惇を宥める、静かに姉の横に立っていた妹であるクール美女、秋姉こと夏候淵妙才。だが妹の言葉にも姉の興奮は止まらない。

「じゃあ秋蘭はぽち様がどこぞの馬の骨の所に婿に行ってもいいというのか!」
「いい訳あるまい。どこぞの馬の骨の所になど行かせるものか。だがなあ姉者、そもそも華琳様がそのような事を一言でも言った事があるか?」
「そうよ春蘭。私はぽちを政略の為の婚姻などに使う気は無いわ」


 え? そうなの? 寝耳に水なんですけどとぽちは自分の耳を疑った。夢のヒモ生活が遠のいた瞬間である。


「簡単な話よ。他家と縁を深く結ぶ事より遥かに、ぽちには曹一門の一柱になってもらう事が遥かに有意義だわ」

 当然でしょ? と笑みを浮かべる姉曹操。曹操よ、それは無い。絶対にだ。

「……で、貴方はいつこちらを向いてくれるのかしら」

 ぽちはずっと曹操達に背を向けて椅子に座っていた。だって一物に血流が集中したままなんだもの。屹立しっぱなしなので振り向くなんて出来る訳がない。

「……空がね」
「空?」

 とりあえず窓の方を向いていたので適当に呟いた。ふむ、と華琳は窓から空に目をやる。

「風が……、なるほど。分かったわ。今日はいいから明日は一緒に私塾に行くわよ」
「華琳様……?」
「今から一刻程で恐らく雨が降るわ。ぽちはそう言いたいのよ。じゃあね、ぽち。二人共行くわよ」
『はっ!』


 え? そうなの? めっちゃ晴れてるけど。内心でそう思いながら三人が部屋から出ていった後、床に散らばる扉だった木屑や粉砕された壁、そして自身の息子を眺めながら、まあ良く分からんがいつもの事かとため息を付いた。そして一刻後、ちゃんと雨が降った。華琳姉すげえ。




 翌日、華琳姉に連れられて嫌々ながら私塾にやってきた。授業中、先生の問いに対して無視を貫いたりもしたが、答えが分からなかっただけである。


「ちょいとぽちさん?」
「ふぇ? ああ、何じゃらほい麗羽さんや」


 何故か私塾でしょっちゅう絡んでくる名門袁家のお姫様、袁紹本初こと麗羽さん。姉と喧嘩も多いが、それでも何故か仲が良いようで姉が真名を交換する際に何故か一緒に交換する事になった。真名ってついでに交換するもんじゃないと思うの。


「さっきの先生の問い、何故答えなかったんですの?」
「そんなの……分かってるでしょ?」


 俺の頭の出来では解答なんてさっぱり分かりません。ちなみに麗羽さんは頭すっからかんで夢詰め込めているように見えて、私塾で一番成績が良い。姉は二番手である。まあ姉はひねくれた解答や、自身が正しいと思った解釈、それも新しい解釈を貫き通すときがあるのでそこが減点対象になっているだけだが。それはともかく、勉強は出来る。頭はおかしい。素晴らしいおっぱい。それが麗羽さんなのである。


「ええ、分かっていますわ。貴方が一歩引き他の方を立てていることなんて。ですがぽちさん。確かに女性を立てる事も殿方の大切な役割かも知れませんが、貴方も自身に見合った評価をされるよう少しは動いても罰は当たりませんことよ?」
「ええ、良く言ったわ麗羽!」

 なんか勘違いしてる麗羽さんにいつの間にか横に並び同調する我が姉。二人とも金髪がくるんくるんで仲の宜しい事。

「そうよぽち。この前の試験、白紙で出したそうね。さっき先生から聞いたわ」
「まあ。ぽちさん? 流石にそれは駄目ですわ」
「確かに男より成績が下と言われれば誇りを傷つけられる人間は一定数間違いなくいるわ。でもそれで傷つく程度の相手に貴方が気を使う必要はなくってよ?」
「そうですわ。たまにはぽちさんの全力を見せて頂きたいものですわね」
「あら、ぽちが全力を出したらこの私塾の人間なんて貴方や私を含めても勝てるかどうか」


 なにそれ。姉の俺に対する評価が天元突破やばい。いや麗羽さんの評価もかなりおかしいけど。話題を逸らさねば。


「……勝ち負けなんて意味無いし。それより美味しい物食べたい」
「まあそれでこそ、ぽちさんらしいのかも知れませんわね。今日はうちに来ませんか? 美味しい茶菓子を用意していましてよ? おーっほっほっほっほ」
「じゃあ頂きに行きます」
「あら、じゃあ私も頂きに行こうかしら」
「良くってよ? おーっほっほっほっほ!」


 高笑いをする麗羽さんに即答するぽち。割りとゴチになりに行ってるからいつもの事なのである。金持ちの袁家のヒモになりたいとぽちは常々思っているのである。ぽちにプライドなんてないのかって? ないよ。



華崙と柳琳の姉妹が大好きです。あと秋蘭の新ボイスも好きです。個人的に違和感無かったし。声優変わって無いはずの恋が一番違和感を感じるという……。