【完結】真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:妙義
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第十一話.なんだかんだ姉が好き

「どうかしら? 疲れているようだったから少し味付けを濃い目にしてみたのだけれど」

「華琳姉の作る御飯は中華一だと思う」

「そう、それは良かったわ」

 

 

 涼州から一度、長安に寄り馬超軍と別れそのまま幽州へ直行するはずだった曹犬軍は、というかぽちは何進の命令を無視して洛陽に戻っていた。洛陽へ着くやいなや、「皆頑張ったから一週間休みな!」と言ってぽちは何進に報告に行く。「馬超軍と董卓軍まじすげえ。うちいらなかったと思うよ? 損害ほぼ無しで大勝」と簡単に報告した後、「褒美で一週間休み貰うから」と勝手に休暇に入った。何進は「手柄もあまり立てず何が褒美だ」とキレたがぽちは無視した。ずっといつもの笑顔で行動していたぽちだが、尻は痛いし董卓は怖いし、何よりそもそも戦場が嫌いな男は心労が溜まっていた。ストレス耐性が余り高くないので、もういいやと勝手に休む事にした。ぶっちゃけ、勝手な事をするならクビって言ってくれないかなと思いながら無理矢理休んだが、何進がキレたくらいで意外と休みが通ったので、実家で曹操にその中華一の万能をぽちの好みに料理を作る方向に全力を傾けて貰いめっちゃ美味しい料理を食べていた。才能の無駄遣いをさせる男である。

 

 

「ぽち、戦場はどう?」

「血生臭いの嫌い。皆が傷付くのが嫌い。そもそも戦なんてさせないようにすればいいのに」

「漢王朝一の名将と言われてもそういう所は変わらないわね」

「やめてよ、その言い方はさ」

「でもそうね、戦なんてさせないようにすれば、ね。今この大陸でそう言う資格があるのはぽち、貴方だけかもね」

「……戦無くならないかなぁ」

「理想を語るなと切り捨てるのは簡単だけれど、貴方ならばと私は思うもの。私はぽちが戦を無くすと言うのであればそれを信じてあげるわ」

「いや無くすのは俺じゃなくていいんだけど」

「じゃあ無理ね、それを出来るのは貴方だけよ」

「いやなんでさ。華琳姉ちょちょっと大陸制覇してどうぞ」

「あら、漢の臣下として謀反の教唆は見逃せないわよ?」

「実家でまで堅苦しいのは嫌!」

「ふふ、それでおかわりはどうするの?」

「頂きます!」

 

 

 軽口を叩きながらとても美味しいそうに食べるぽちを、華琳は幸せそうに眺める。この姉弟、なんだかんだとても仲が良い。

 

 

 実家でだらだら袁家でだらだらしてぽちに会いに来た、正確に言えば媚びを売りに来た連中に会わずひたすらグータラするぽち。ぽちはもう仕事いかなくていいんじゃないかなとたった三日で完全に駄目人間思考に切り替わっていた。流されて働いていたが、やっぱりこうして引き込もっているのが一番自分らしいなと改めて思い直していた。

 

 

「ぽち、また人が会いに来たわよ」

「帰ってもらってー」

「いいの? 水鏡女学院から来た彼女は貴方の文通相手のようだと記憶しているけれど」

「……え、諸葛孔明? わざわざ来てくれたの?」

「ええ、そう名乗ったわ。連れもいたけれど」

「会う」

 

 

 何故わざわざ来たのだろうとは思ったが、もう文のみとはいえ三年の付き合いになる相手である。色々相談も重ねた相手を気にならない筈もなく、ぽちは直ぐ様会う事にして応接間に孔明を通してもらった。

 

 

「は、初めまして。姓を諸葛、名を亮、字を孔明と申します。初めましてというのも不思議な気もしましゅが……はわわ、噛んじゃった」

「……わ、私は姓をホウ、名を統、字を士元と申しましゅ。……あわわ、朱里ちゃん……」

「雛里ちゃん、どうしよう……」

 

 

 会いに行くと、凄まじく緊張した様子の噛みまくっているロリっ娘が二人。え? こんなロリっ娘に色々な事相談していたの? まじかよと面喰らうぽちに脅えた様子の二人。ああ、いかんいかんと気を持ち直し笑顔で二人に返答する。

 

 

「初めましてだね。丁寧な挨拶ありがとう。俺が曹芝犬、君の文に助けられていた男だよ」

 

 

 笑顔で返したのに、その言葉にビクッと震えた孔明。はてどうしたのかと不思議にぽちは思う。

 

 

「どうかしたの?」

「あ、あの、今まで大変失礼な文を送り続けて申し訳有りませんでした!」

「え、何の事?」

「曹犬様が漢王朝の将軍となり、その活躍は大陸中に響き渡っています。そんな曹犬様に今まで偉そうに文を送っていたかと思うととても恥ずかしい思いです……」

「いやいやいや、色々相談乗ってもらってずっと助かってたんだよ? 最近で言えばさ、文にも書いたけど髪の件とか!」

 

 

 髪の件、その言葉に真っ青になる孔明。ぽちの手紙には『最近働きだしてお金持ちになってきたから使うにも悩まずにすむよ』と書いてあった。それに対して孔明は『調子に乗って使い過ぎて衣服や、最悪髪など売らなくていいように気を付けて下さいね』と返した。その文を見て、なるほど、最悪衣服や髪を売ればいいのかと納得したぽち。孔明はまったく悪くない。

 

 

「その、お髪の件は……」

「いやー助かったよ、褒美出すお金足りなくなっちゃってさ」

「はわわ……やはりそうでしたか……」

 

 

 ぽちの言葉に身を小さくし項垂れる孔明と、その様子になんで? と首を傾げるぽち。

 

 ぽちの文の内容は常に何処かをぼかしたような内容であった。孔明はそのあやふやな内容から推測し返答する楽しみを持っていたし、ぽちはただその言葉が足りないだけである。ぽちが将軍となるずっと前から文通をしていたのに、ぽちは就職したとしか書いた事もないし、曹犬の名が有名になってきても孔明は同名の人くらいの認識だったのは仕方がないかと思える。

 

 徐々に孔明が何かおかしいと思い、文通相手が漢王朝の名将と呼ばれるその人だと気付いた時は自分がまるで上から助言してたかのような文を送り続けていた事に恥ずかしくなったものだ。その助言全部正しかったよ。そして髪の件、見目麗しき男性と噂が聞こえたその将軍に、振り返れば暗に髪を売れと言った内容になってしまっていた事に気付いた孔明はなんて失礼な事をしてしまったのだと思う。そしてあの噂が聞こえてくる。示唆してしまったのは自分だと目の前が真っ暗になった。勝手にやったのはぽちなので孔明は何も悪くないよ。すぐに謝罪をと、しかし幼い彼女は一人では勇気が出ず親友の士元に相談して勇気を振り絞り、少し時間は掛かったが二人でここまでやってきたのだ。

 

 

「あの、本当に申し訳有りませんでした。私に出来る事ならなんでもします」

「ん? 今なんでもって言った?」

「は、ひゃい」

「あわわ……」

 

 

 ぽちの返答に、あれ、とんでもない事言ってしまったんじゃないかとちょっと後悔する孔明と行く末が不安になってきた士元。しかしぽちの考えは孔明の斜め上だった。

 

 

「じゃあ、俺の軍師にならない? 漢じゃなくて俺の。良ければ士元、君も」

「「!!」」

 

 

 漢王朝の名将、曹犬がいれば漢王朝は滅びぬと言われた男が言った、漢ではなくて個人に仕えて欲しいとの言葉。漢王朝をその行動で善き方向へ確実に変えている筈の聖人が言った言葉。二人は瞬時に悟る。それほどまでに漢王朝内部の腐敗は進んでいるのかと。そして、目の前の人物は漢王朝に見切りを付けたのだと。二人は幼いながらも伏龍、鳳雛と言われている才女である。その言葉の重みが分からぬ筈がない。ごめん、ぽちは二人が才女って事知らないんだ。文のやりとりで頭良い事だけは知っているから代わりに色々仕事してもらおうとしてるだけなんだ。頭良い娘に付いてきてるからこっちも頭良いだろうと両方誘っただけなんだ。

 

 

「私と雛里ちゃんの力が必要ですか?」

「当然(俺がサボる為には)必要だとも」

 

 

 人となりは散々噂で聞いているし三年も文を交換していればその人の良さも知っている。ここまで請われれば断る筈もなく。

 

 

「あー、でも一応一緒に仕事する為には二人共公的には俺の従者扱いになっちゃうんだけどさ、お願い出来ないかな」

「はい、私で良ければ御力添えさせて下しゃい……はわわ」

「わ、私も頑張りましゅ……あわわ」

 

 

 可愛い。癒される。殺伐とした職場でもこれなら癒されるわと安心したぽち。流石にぽちは幼女を戦場に連れていこうとかいう発想は無かったが二人がどうしてもと志願した為、二人の幼女を従えた上で曹犬軍は再び洛陽を後にした。勝ったな(確信)

 

 

 

 

 

 曹犬軍が離れた洛陽で事件が起こる。

 とある酒宴で何進が言う。

 

「何、ぽちは私の前では発情した雄犬の様なものだ」

 

 その言葉に激昂したのは曹操と袁紹である。恐らく帯刀していればその場で切っていただろう勢いでキレた。「今の言葉を取り消せ」と怒鳴る。「誰にものを言っている」と何進も怒鳴る。「あら、年を取ると誰に話を掛けられているかも分からないのですか?」と袁紹が煽る。「麗羽、もしかしたら大将軍は耳が遠いのかも知れないわ。年増だし」と曹操が更に煽る。激怒した何進とキレている袁紹と曹操を周りがなんとかその場を収めたが、正直その場は地獄だった。

 

 そして後日、ぽちの漢王朝の影響力の大きさも危惧であった何進はその影響力を削ぐという意味合いも兼ね、二人を中央から遠ざける決定を下した。流石に袁家という巨大な力や、余りに理不尽な人事ではぽちがぶちギレるであろうと考えた何進は袁紹を州牧に、曹操を県令とし洛陽から追い出した。まあぽちが文句を言ったら、官位でも正式に与え俸緑を増やし多少なり甘い蜜を吸わせてやれば納得するだろうという己の価値観での判断だった。

 

 何進はぽちの我欲の無さを完全に見誤っていた。








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