【完結】真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:妙義
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第十三話.戦場の盃

 対烏丸の方針を孔明が公孫サンに伝えそれを公孫サンが了承した為、今まで遭った襲撃の情報を元に伏竜鳳雛が予測を立て次に襲撃されるであろう地点に陣を構えた曹犬軍と公孫サン軍。

 

 戦場に向かうぽちは険しい表情を崩さない、それは曹犬軍の誰しもが見たことの無い顔だった。いつも笑顔で飄々としているぽちが初めて見せる顔。厳しい戦になるかも知れないと皆一様に思う。そしてその思いは曹犬軍の兵にも伝染する。兵士一同の心は一つ。いざとなれば我が身を盾にして曹犬様を守り抜くと。

 

 

 

 皆、ぽちは二日酔いなだけだからな。

 

 

 

 伏竜鳳雛の予想通りに、烏丸が現れた。今まで神出鬼没だと思っていた公孫サンは半信半疑で、しかしぽちの言う事ならばと陣を構えていたのでこの結果は驚きを少なからず隠せなかった。けれど予想外の事があった。当初の予定では二軍を持って烏丸の倍の数で当たる想定であったが、烏丸の数が予想を上回り同数、または少し相手のほうが上といえる兵数だったのだ。

 

 将や兵の質、気力共に曹犬軍のほうが圧倒的に上ではあるが、将の質はともかく兵の質、気力という面では公孫サン軍に若干の不安がある。また曹犬軍は騎馬隊が多くない。対して烏丸はほぼ騎馬で揃えている。そして一番不安なのは横の連携が取れるかである。即席連合と言って良い布陣であるこちらは細かい連携を取る事は難しいだろう。勝つには勝つだろう。だが多くの犠牲を強いるかも知れない。ただ勝てばいいのか。ぽち様の性格であれば犠牲が多く出る事をきっと悲しまれるだろう。恐らくぽち様は予見出来ていたのだ。これから出る犠牲を悲しみ、しかし総大将として一言も弱音は吐かず凛々しい姿で鼓舞してくれているのだろうと曹犬軍は考える。この方の為に少しでも犠牲を少なくせねばと得物を握る手にいつもより力が入った。

 

 吐かずに我慢しているのはゲロなんだけどね。

 

 

「……ぽち様」

「ちょっと行ってくる」

「ぽち様!?」

 

 涼州の時は任せていたけど、戦の前はたしか舌戦だよねとぽちは一人、ゆっくりと馬を前に出した。烏丸という蛮族相手に舌戦なんて聞いた事ないぞと驚く公孫サン陣営はぽちの姿を見て更に驚く。帯刀していないのだ。ぽちは己の陣から誰も連れずに一人対陣している中央まで行くとあろうことか馬を降りてその場に座り込んだ。まさしく豪胆としか言えない行動である。曹犬軍の面々は、見れば全員何かあればいつでも弾丸の様に飛び出せるよう構えていた。

 

 ぽちは疲れてるだけなんだけどね。

 

 

 

 烏丸の陣から一人、馬を走らせぽちの前までやってきた。丘力居、単于(君主)であり女性である。

 

「貴様らが蛮族と罵る我等の前に単身で姿を晒した馬鹿の顔を見に来てやったわ」 

 

 啖呵を切った丘力居の言葉を何処吹く風と気にせず腰に手をやるぽち。腰には大きな瓢箪が下げられていた。こいつこんな場所で迎え酒する気である。瓢箪を腰から外し、杯を取り出し酒を継ぎ一気に飲み干したぽち。呆気に取られる丘力居。そしてその杯を差し出してぽちは言う。

 

「呑む?」

 

 丘力居は笑った。先に飲み毒が入ってない事を示した上で、更に同じ杯で酒を呑もうと言っている男が目の前にいるのだ。蛮族と称し我らと戦い続けている漢民族の男が、しかも戦場のど真ん中である。そして良く見れば何千という烏丸の集落の長である丘力居も見た事が無い良き見た目の男であった。これは応じねば怖じ気付いたと見られるであろうなと馬から降りぽちから杯を受け取った。ぽちが注いだ酒を一気に飲み干し丘力居は問う。

 

「私は丘力居だ。貴様名はなんという」

「曹芝犬」

 

 この男が曹芝犬かと丘力居は驚く。稀代の名将、聖人、その人となりの噂は風となり烏丸まで聞こえてきていた。

 

「ねえ、戦やめない?」

「降伏するならば応じてやるぞ」

「降伏はしないけど、なんで戦しなくちゃいけない?」

「知れた事、我らの土地では育たぬ食糧を奪いに来たまでの事」

「食糧? 育たぬって寒いから? 水不足?」

「なんだと言うのだ貴様は」

「それなんとかなるんじゃないかな。涼州と一緒で」

 

 

 舌戦であればお互いの陣営に届く声で言葉の応酬があったはずなのだが始めの丘力居の言葉のみがお互いの陣営に届き、その後は二人して座り一つの杯で酒を交わしあっている様子しか見えない。その様子自体が両陣営からしたら信じられない事である。しばらく様子を見守っていると丘力居が笑いながらぽちの背を叩き肩を組んだ。この様子に曹犬軍が違う意味で殺気立った。だいたい一つの杯とか何様だと。ぽち様にお酌してもらうとかふざけてんじゃねえよと漆黒のオーラが立ち上ったように公孫サン軍からは見えた。

 

 それからもしばらく二人で話し合っていて、ようやく終わりぽちが戻って来て一言。

 

 

 

「戦は無いよ。話せば分かるっつー事だね。じゃあしばらく烏丸の所行くんでどっか近くで待ってて」

 

 流石に言葉が足りな過ぎてどういう事かと皆が問い詰める。ぽちは言う。「食糧問題解決するまで向こういるから。収穫終わる二、三ヶ月後には帰るよ」と。つまりだ。戦を回避し向こうの食糧問題の目処が立つまで、自らを人質として烏丸に差し出すと言うのだ。誰しもが反対をする。「御身自ら行かなくとも」「せめて護衛を」と口々に言うがぽちは聞く耳を持たなかった。「ならうちに収穫終わるまでいるなら最大限の歓待をしよう」とか言われたからではないと思う。決して「上手い酒を用意しよう」とか言われてほいほい蛮族と呼ばれる民の元について行くような馬鹿はいないだろうし。……いないよね? しばらくニートだ万歳とか思ってる馬鹿いないよね?

 

 

 

 三ヶ月後、戦場で交わした杯の誓い通りにぽちは烏丸の地に実りを与え幽州に帰って来た。烏丸は漢王朝に降伏、いや曹犬に降伏を申し出た。単于となり烏丸を治めて欲しいと願ったが曹犬が断った為、曹犬に服従を誓った。不毛の地に実りを与えた衝撃が大きすぎた模様。烏丸でも相変わらず子供達と遊んだりして食べて飲んで寝ていただけなんだけどなんでだろうね。ソバって凄い。どうしても何かさせてもらえないかと言われたぽちは、「じゃあ軍馬売って」と独自の交易ルートを開拓。烏丸、曹犬を通してのみ軍馬を売る事を了承。精強な軍馬を容易に仕入れる事が出来るようになりました。後、曹犬に烏丸史上最高の汗血馬の白馬、緑牧場王が贈られた。なのね~って鳴きそう。

 

 戦をせず烏丸を降伏させた曹犬。伏竜鳳雛は己を恥じる。振り返れば初陣でいかに相手を圧倒的に下すかという考えに固執していたのではないかと考える。勝つ事に固執した時点で視野が狭くなった。戦になれば勿論勝ったであろう。それにいかに視野を拡げようとも、己の主を人質に差し出す真似など出来る訳が無い。恐らくだから何も言わなかったのであろうと考える。己が仕えた曹犬という人物がいかに高潔で器の底知れぬ人物かという事を思い知らされた二人は、伏竜鳳雛と言われ自らの才に思い上がっていたと恥じ、曹犬に相応しい軍師となれるよう心に再度誓うのであった。

 

 ぽちは食べ物に釣られてあっちで遊んでただけだけどな。

 

 

 こうして烏丸を降した曹犬軍は何故か付いてきた元公孫サン軍の客将三人を新たに加え、洛陽へ帰るのであった。




孔明チートからバグ化フラグ。







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