【完結】真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:妙義
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第十六話.曹犬軍の日常

 徐晃は誓っている。その魂、身体、髪の毛一本まで、己の全てをぽち様の為に捧げ、主の為に命を懸ける事を。

 その徐晃が今最大の危機に直面している。全力を持ってしても、自分の全てを掛けても、自身の持つ実力以上を振り絞っても勝てない相手がいる。しかし、闘いが始まる前にぽちに言われた言葉、「がんばれー」だけを胸にここまで最強の強敵相手に食らいついてきた。

 しかし、もう限界であった。徐晃は手に持つ得物を落とした。その意識は朦朧としている。

 

 

「香風!」

 

 ぽちが徐晃に駆け寄る。

 

「……ぽち様、シャン……頑張れるだけ頑張った……よ?」

「香風!」

 

 徐晃がゆっくりと意識を手離した。ぽちが徐晃を抱き締め急ぎ医療班を呼び、運ばせた。ぽちは言う。

 

「何で皆こんなに頑張っちまうんだ……」

 

 戦場では闘いが続いている。

 

「ま、負けないのだ~!」

 

 唯一、食らいついている張飛もどうやら限界が近い。それほど相手は強大である。誰もが、勝てない。

 

「恋殿に勝てる訳がないのですぞ!」

 

 呂布側に付いている陳宮が既に勝ったかのように勝ち誇る。それは正しい。ぽちの周りは、限界を越え倒れた将軍達で死屍累々である。誰しもが、呂布に敗北している。

 

「もう入らないのだ……」

 

 最後まで残っていた張飛が倒れた。この瞬間、勝者が決まった。勝利を告げる銅鑼が鳴り孔明が告げる。

 

 

 

「第一回、曹犬軍大食い大会、勝者、恋さんです!」

 

 

 

 食糧の備蓄が怪しい中で何やってんですかね?

 

 

 

 曹犬軍の面々はかなり忙しい毎日を過ごしていた。急に人が増えすぎた、元々居た住民よりも多い人間の衣食住の確保が現在の曹犬軍が総出で取り掛かっている仕事である。というかここまでくればもう街を新しく作っているのと変わらないレベルである。孔明とホウ統、盧植に陳宮が計画を練り、ぽちが「じゃあそれで」と丸投げして他の武将が指揮を取る。周りが忙しそうなのでさすがにアレだなと思ったぽちはいつも書簡をざっと眺める振りだけだったのをたまに書簡を見ながら「これは……どうかな?」と思わせ振りに、しかし具体的な事は一切言わない質問をしたりする。するとどうでしょう。全員で再検討し元々見事な計画が更に立派になって返ってくるのです。

 

 

 暇なくせに周りの仕事増やしてんじゃねえよ。

 

 

 そんな忙しい皆やまだ落ち着かない生活を送っている元洛陽の住民に何か見ていて楽しいような催し、祭りみたいなモノをやろうとぽちは提案した。くそ忙しいのに。しかしぽちは気付いていなかったが若干の疲れを見せていた皆はぽちの息抜きの提案に、この気遣いこそがぽち様だと感謝したらしい。ぶっちゃけ皆には休みを上げて欲しい。

 

 そして行われた犬祭りのメインイベントが大食い大会である。備蓄? やったからにはなんとかなるんやろ。ともかく曹犬軍の将がこぞって参加したこのメインイベント、景品はぽちと一日自由に過ごす。ただそれだけである。つまりだ。ぽちは祭りを開いた挙げ句更に誰かと一日休むつもりなのである。お前まじで働け。まあ、提案したのは孔明とホウ統だけれども。その景品を巡って文字通り死闘となった大食い大会は呂布が無双しただけで終わった。

 

 

 

「……恋さんや?」

「……ん?」

「どうかしたの?」

 

 という訳で今日は一日ぽちと呂布は一緒である。それはいいが呂布がさっきからぽちの背中に抱きついて離れない。そしてなんかくんかくんか匂いを嗅いでいる。ぽちは思う。あれ、昨日湯浴みしたから臭くないと思うんだけどと。

 

「……ぽち様、昨日、華琳様と……寝た?」

「いや普通に一人で寝たけど?」

「……そう」

 

 何言ってんのこの娘とはてなマークを頭に浮かべるぽちと再度匂いを嗅いで不審がる呂布。ほんとなんでやろうなあ。

 

「姉弟だから匂いが似てる……とか?」

「……そうじゃないけど……いい」

 

 そう言って呂布がその身体を、胸をぽちの身体に擦りつける。

 

「ちょ」

「……匂い、上書き」

 

 そんな事して童貞が耐えられると思ってるんですかね? すぐに何処かが固くなるよ。ぽちはやべえと思って前屈みに座り込む。

 

「……恋じゃ嫌?」

 

 その行動を避けられたと思い悲しそうな顔をする呂布。

 

「いやむしろばっちこいだけど、今はちょっと待って」

「……わかった」

 

 二人が街に出掛ける前の一幕である。デートの日に他の女の臭いを付けてくるとか最低ですぽち様。

 二人で街をぷらぷら歩いていると、女性向け衣服店から何やら騒がしい声が聞こえてきた。気になって覗いて見ると曹洪がロリっ娘達を連れ着せ替えさせて楽しそうだった。これは面倒だとぽちは見て見ぬ振りをして呂布を連れてそそくさとその場を後にした。

 

「……ぽち様、良かったの?」

「ん、皆楽しそうで良かったね。女の子の服とか分からないし、栄華はお洒落だから間違いないと思うよ」

「……ん」

 

 ぽちが適当に言って呂布は納得し頷いた。お洒落は間違い無いかも知れないけど性癖が間違ってるんですがそれはいいんですかね。

 

 

 衣服店をスルーしてそのまま適当に歩いていると、広場に人だかりを見つけた。何か皆熱心に聴いているようだったのでなんだろうとぽちが覗いて見ると、人だかりの中心には劉備がいた。

 

 

「それでね、ぽち様は、曹犬様は戦場のど真ん中で丸腰で烏丸相手にこう言ったの! 『今まで敵対していた、それがどうした。私達はお互いこうやって盃を交わす事が出来る。ならば友になれぬ道理は無いであろう』って!」

『おおーーー!!!』

『さすが曹犬様だ』

 

 

 

 

 ど真ん中で民衆相手に劉備が布教活動をやっていたのでこれもぽちは見なかった事にした。スルー安定である。劉備さん何で話盛って捏造してるんですかね。見つからないようさっさと逃げたぽちは精神的にどっと疲れてきたので休憩して腹を満たす事にした。ちょうど曹仁が「あそこの角の店の点心、すごく美味しかったっすよー!」とか言っていた店があったのでそこで休憩しようと呂布に言って店に入る。

 

「恋、お腹空いてる?」

 

 こくりと頷いた恋に、財布これで空になるなと思いながらぽちは店主にありったけ点心持ってきてと頼み席に着いた。

 

「おや? ぽち様、奇遇ですな」

 

 声を掛けられ振り返ると、趙雲と関羽が二人で点心を食べていた。

 

「ああ、今日は恋と二人でしたな。これは悪い事をした。恋、すまない。私の事は気にせずゆっくりしてくれ」

 

 意外と気遣いが出来る女、趙雲が呂布に声を掛けた事を謝る。関羽がチラチラチラチラ見てるのはスルーする。こちらに声を掛けた後、趙雲が関羽を嗜める。

 

 

「愛紗、その様なはしたない姿を見せては愛しのぽち様に嫌われてしまうぞ。今日は恋の日だ。私とてぽち様と共に食事をしたいが我慢しているのだぞ?」

「わ、分かっているから黙っているだろう!」

「おやおや、分かっていると言っている人間の態度ではないな」

 

 

 くっくっくと笑いながら酒を飲み始めた趙雲にぶつぶつと文句を関羽が顔を赤らめながら言う。ぽち、全力でスルーしている。

 

 

「……皆で一緒に食べる?」

「恋、私達に気を使わなくて良いぞ」

「……皆で一緒に食べたほうが、ご飯は美味しい」

「ふむ、恋にそう言われては断るのも失礼かな。宜しいですかなぽち様」

「恋が良いならいいんじゃないかな」

「だそうだ。良かったな愛紗。愛しのぽち様のお顔をたんと眺めると良い」

「星! お前飲み過ぎじゃないか。まったく……」

 

 

 趙雲に怒りながらもぽちの顔を良く見られるベストポジションに付く関羽。分かりやすいですね。趙雲はその様子を見ながらからからと楽しそうに笑った。そうこうしている内に卓に山盛りの点心が運ばれてきた。

 

 もきゅもきゅと呂布がひたすら食べ始める。呂布の食べている様子はとても可愛い。ぽちを眺めていた関羽も、いつの間にか呂布がもきゅもきゅ食べている様子を眺めて顔が蕩けてきている。

 

 関羽と趙雲の分までお金足りるかなとぼーっと考えていたぽちに趙雲がこそっと声を掛ける。

 

「おや、ぽち様。……ぽち様の身体から恋の匂いがしますな」

 

 横で聴いていた関羽がぶふぅと噴き出して顔を赤面させた。

 

「ああ、出会い頭に抱きつかれたからかな?」

「なんだ、それだけですか。ふむ。では今度機会があれば私も……」

「星!」

「愛紗、自分もやりたいのであれば素直に言うと良いだろう」

「~~っ!」

 

 

 とても騒がしくなってきた卓をぼーっと眺めながら、明日小遣いをくれと姉に言わなければと現実逃避し始めたぽちだった。




ぺろっ

??「ぽちの身体から他の女の匂いがする……ですって!?」







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