【完結】真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:白石基山

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第二十二話.虎の口を塞ぐ

「曹犬様って確か強いのよね? 手合わせお願い出来ないかしら」

「雪蓮、頼むから無礼だけはやめてくれ」

「あら、私がそんな事しそうに見える?」

「見えるから言っている」

「ぶーぶー。冥琳ひっどーい」

 

 城に着いた孫家一同は、現在城に曹犬が滞在している事を告げられた。相変わらずの孫策の勘にもはや呆れる孫策以外の面々。お目通り出来ると知った時、孫策が物騒な事を口走っていたが何時もの軽口だとこの時一同は思っていた。

 

 玉座に通され、美羽と並び顔立ちの整った男が立っていた。あれが曹犬。その男を見た孫策が不思議に思う。

 

 

 あれ? 確か華雄を御前試合で一瞬で倒した豪の者って話よね? 全っ然強そうに見えないんだけど。むしろ後ろに控えてる赤髪の……うわあ、あの娘は底が知れないわね。一度手合わせしたいわ。うん、でもやっぱり曹犬様、まったく力を感じないわ。

 

 

 孫策の勘がぽちの非力を正確に読み取る。合ってます。美羽ちゃんが孫家一同を紹介してくれている間も、孫策はぽちの一挙一動を見続けた。

 

 

 おかしいわ。やっぱりまったく強そうに見えない。実力を隠してるようにも見えないわ。

 

 

 合ってます。しかしこうなると孫策の好奇心が騒ぎ出す。噂で聞くぽちの人となりならば多少の無礼は許されるのでは? なら試して見ちゃえば分かるわよねと罰は受けても最悪極刑は無いだろうと高を括ってしまった。

 

 ぽちが孫策の前に出て握手を求めようとした時、孫策は自身の好奇心を抑えきれなかった。バトルジャンキーの血が騒ぎまくったのだ。孫策は握手を交わす振りをして、自身の腰に帯刀している南海覇王に手を掛けた。掛けたのだが抜けなかった。孫策が抜刀するまでに掛かる時間はコンマ数秒。南海覇王の柄を握り鞘に刃を走らせようとした瞬間にトンっと孫策の身と南海覇王に軽く重量が乗った。

 

 実は握手を交わそうとした時、ぽちは何故か転けた。平地で段差も無い所で転けるとか幼児かお前は。転けた拍子にぽちの顔は孫策の大きな双丘の谷間に突っ込み、握手しようとした手は孫策の腰の南海覇王の柄頭を押さえた。孫策が抜刀する刹那、ぽちが南海覇王の柄頭を押さえ孫策の抜刀を防いだのだ。

 

 江東の虎の娘である孫策も又、虎である。例えるなら虎が牙を剥こうとした瞬間、頭を抑えられ口を開く事すら許されなかった事になるであろう。これには孫策も、又孫策の周りの孫家の面々は驚いた。これでは子供扱いどころではない。孫策の武勇はまさしく天賦の才である。調子の波はあれど、大陸において明確に孫策を上回る事が出来る人物など呂布のみと言って良い。その孫策を同じ舞台にすら立たせなかったのである。同じ舞台に立ったらぽちは即死確定。

 

「あ、申し訳ない」

 

 ぽちが顔を上げ謝罪した。本来謝罪すべきは孫策である。いかにぽちが許そうとも、抜刀していれば何らかの罰を与えなければならなかったであろう。いや、今孫策の手は南海覇王の柄に掛かっているのだ。ぽちが柄頭を押さえている時点で言い逃れは出来ない。叱咤され罰を与えられて当然の状況である。が、ぽちは自ら軽く孫策の身体に当たる事でその件を謝罪し孫策の件を有耶無耶にしたと孫家側からは見てとれた。これだけ書くと実に紳士的な男である。転けて巨乳の谷間に突っ込んだだけなのに。そのまま斬られて死ねば良かったのに。

 

「え、ええ……」

「改めて宜しく、孫拍符」

 

 ぽちは改めて笑顔で手を差し出した。こいつ巨乳に顔突っ込んだのを笑って誤魔化す気である。

 

「はい、宜しく曹犬様」

 

 言葉使いも先程の態度も全てを受け入れ笑顔で改めて握手を求めた曹犬の器の大きさに、孫家一同呆気に取られたと言って良い。そいつの器おちょこくらいだけどな。

 

「雪蓮、ぽち兄様が良いなら良いが次は無いからの」

 

 横から美羽ちゃんの厳しい言葉が飛ぶ。つまり美羽ちゃんも孫策の抜刀の動作を見抜いた事になる。成長してるね。ぽちは抜刀しようとしたなんて全く気付いてないのに。爪の垢でも煎じて飲んどけ。

 

 

 

「雪蓮……」

「冥琳、私の勘もまだまだみたい。今の私じゃ格が違い過ぎて見通せないわ、あの人の事は。……ふふ、やっぱり大陸って広いわね! 強くなったつもりだったけどまだまだ赤子同様に扱われるだなんて」

「いや、策殿は強いぞ? 相手が希代の天才だっただけじゃ。策殿に抜刀すらさせぬとは。大殿とどちらが強いか興味がある。わしも一手指南してもらうかのう」

「祭が指南される側ねえ。ねえ祭。母様以外だと他にいる? 曹犬様と比べられそうな人」

「いや、おらぬ」

「なら私の目標は決まったわね。曹犬様にはまた手合わせしてもらわなくっちゃね」

 

 

「思春、見えた?」

「はっ、雪蓮様が柄に手を掛けるのと同時に柄頭を押さえていました。雪蓮様の動作を見て動いたようにも見えましたので……」

「つまり雪蓮姉様より早い?」

「……そう見えました」

「そう、凄いのね、曹犬様は。一度ゆっくり話してみたいわ。幽州での話を聞けるかも知れないし」

「蓮華様は曹犬様の幽州での逸話が好きなのですね」

「だってまるでお伽噺みたいだって思ったもの。思春は思わなかったの?」

「……私も興味は有ります」

 

 

「すっごーい、ねえ穏見てた?」

「はい、武勇に優れているとは聞いていましたがまさかあれほどとは~」

「シャオも曹犬様と手合わせ……ううん、指導してもらいたい!」

「曹犬様は優しいお方のようですし、頼んでみてはいかがでしょうか。私は涼州のお話を聞いてみたいですね~」

「希代の名将だもんね!」

 

 

 孫家との顔合わせをしただけで、ぽちの化けの皮が剥がれるフラグが此処彼処で乱立してしまった。尚、孫策を遥かに上回る武勇を見せた事になってしまった事により、孫家の方々のぽちに対する好感度が急上昇してしまいました。ちょっとでいいから代わってくれ。

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