【完結】真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:白石基山

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第二十五話.犬、猿になる

「月、何進が城外に陣を敷いたわ」

「さすがに何進さんも王都洛陽での籠城は避けたみたいだね」

「当然でしょ。それこそそんな事しちゃったら逆賊の汚名拭えなくなるわ」

「うん、詠ちゃんの読み通り」

 

 

 洛陽城外に布陣した何進軍と対峙するは董卓、馬超の涼州連合である。流石に皇帝のいる洛陽に籠城する訳にはいかず、荒野にて涼州の騎馬軍団と戦わなければならなくなった何進。数は同数程度、どちらも数万の兵ではあるが、片や対異民族で最前線で鍛え上げられた騎馬軍団。片や常勝無敗であったぽちに頼りきりだった挙げ句、その常勝軍団がすっぽりいなくなってしまった何進軍。漢王朝の武官最高位である大将軍とかいう肩書きだけで勝負になる訳がない。

 

 

「……やはり舌戦には出てこないようね」

「詠ちゃん、抜け道は全部塞いであるんだよね」

「勿論、洛陽からの隠し通路は事前に全部調べてあるからこの隙に何進が逃げる事なんてないわ。鼠一匹通さないんだから」

「じゃあ後はいつも通り──」

 

 

 董卓と賈クが相手の布陣を眺めながら、後は鎧袖一触、しかし油断はしないようにと話し合いを進めている所に凶報が飛び込む。慌てて馬を走らせ知らせに来たのは顔面を蒼白させた馬岱である。

 

 

「急ぎだから馬上から失礼するね、後方より砂塵あり、数……十万や二十万を遥かに超えるって!」

「なんですって! 今の何進にそんな軍勢が動かせる訳……」

「詠ちゃん、落ち着いて。旗印は分かりますか?」

「旗は上がってないよ、でもどこからか分かる。私達不在の涼州を抜けて五胡が連合で!」

「ッ!」

「数は百万に下らない、迎え討たないと!」

「……詠ちゃん、正面の何進軍に休戦を要請。共に五胡を迎え撃つよ」

「無茶よ! こっちは何進の所と合わせても二十万にも届かないわ! 野戦で五倍以上の敵を迎え撃つなんて! 大体馬家とならともかく何進の所と連携なんて取れっこないわ!」

「それでも! 背後が洛陽なら逃げられない。分かるでしょ詠ちゃん」

「……くっ! 誰か、早馬を何進の所に……陣の構築が異常に早い!?」

 

 

 

 

 漢王朝滅亡。誰もがそう思ったと思う。五胡側以外。

 

「あれー? なんで軍が洛陽囲んどるん?」

「そんなの知らないのー。真桜ちゃん、もしかして敵だと思われてたりして」

「まあ普通に考えたらそうだろうな。これでも付いていきたいと言った人間を半分に減らしたんだが」

「やっぱそうやんなー。百万も異民族来たら攻めて来たって普通思うよなー。ぽち様が付いて行きたいって言った人らに全部『いいよー』で返すからこんな事にー」

「真桜! ぽち様を悪く言うな!」

「い、言うてへんよ、凪、落ち着いて!」

「凪ちゃんはぽち様にベタ惚れなのー」

「ち、違う! あの人は素晴らしい方だ! 尊敬しているだけだ!」

「あー、凪ちゃん顔真っ赤なのー」

「沙~和~!」

 

 何故か五胡を廻っていたぽち達一向。そして各地で食糧問題を解決したり、長年に渡る民族間の対立をあっさり取り持って解決したりを繰り返す事僅か一年。五胡全てで代表扱いされて面倒臭いと思ったぽちは「じゃあ俺、漢に帰るから」と一言で出ていこうとした結果、皆付いてこようとして今に至る。多分一番苦労したのは三羽烏である。

 

「……なあ、あっちの軍、臨戦態勢に入ってへん?」

「そ、それはまずいの!」

「真桜、牙門旗を掲げろ!」

「よっしゃ!」

 

 ウィーンとこの時代に似つかわしくない音を立てながら、全長三十メートル程の巨大な旗が掲げられた。

 

「どーや! こんな時の為にうちが作った、全自動牙門旗掲げ装置や!」

「下で二十人くらいが手巻きして全自動……?」

「凪ー、細かい事気にしたらあかん!」

 

 全自動(手動)により掲げられた牙門旗、黒地に金にて犬の文字。いやそこは曹にしとけよと思うが、この旗印こそ漢にて常勝無敗を誇り涼州を救った曹芝犬の旗印である。五胡の中からまさかの牙門旗が掲げられた事で涼州軍も何進軍も動揺が拡がりまくりである。

 

「ぽち様」

 

 三羽烏の元へ牧場王に跨がり呂布を伴いぽちがやってきた。ちなみに牧場王は全速力を出すとどの馬も追い付けないが、マスタング走法を始めてしまうので絶対走らせてはいけない。ぽちはその乗り心地に一度気絶した事がある。よく振り落とされなかったな。ロデオの才能あるんじゃなかろうか。

 

「ちょっと恋と行ってくるから留守番宜しく」

「は!」

 

 楽進の元気な返事を聞いて、ぽちは呂布を伴い牧場王をゆったりと進める。急げないだけなんだけどね。ゆったりと五胡から出てきたぽちに気付いた董卓と馬超は急ぎぽちの元へ馬を走らせた。その様子を見てぽちは羨ましいと思った。馬、走らせれないからね。

 

「ぽち様、これは一体!」

 

 馬超が叫ぶ。

 

「大丈夫、五胡はもう敵じゃないよ。皆もう仲間だから」

 

 その一言に絶句する董卓と馬超。長年漢民族と争ってきた五胡、全てを僅かの間に纏め上げ引き連れ凱旋してきたというのだ。目の前の事実とあり得ないという思考が喧嘩をして理解が追い付かない。

 

「何進に久しぶりに会うから通ってもいい?」

「……はい、皆さん、道を開けて下さい!」

「おい、ぽち様が通るぞ! 散開しろ!」

 

 まるで旧友に会いに来たかのような口振りのぽちに困惑しながらも、董卓と馬超は涼州軍を二つに分けた。人の海が割れ、その中をゆっくりと歩みを進めるぽちに困惑しながらも付き従う両名。ぽちの命を奪う号令を掛けようとした何進に対し、恩義に報いる為に兵を動かした両名はぽちの内心を計りかねていた。そりゃあそうだろう。ぽちは時間大分たったし、反曹犬連合なんてもう流れただろくらいにしか思ってないから事実を知らないのだから。無知は強い。なので本当に旧友に会いに来たくらいの感覚で五胡全部うちで面倒見るからと報告しに来ただけなのである。

 

 漢王朝の常勝軍と五胡の軍勢全てを支配下に置くとかどういう事か多分分かってないのは本人だけだろうね。

 

 ともかくまるでモーゼのように割れた人の海をゆっくり歩みを進めると、何進軍もその異様な雰囲気に圧倒されたのか自然と軍が二つに割れていった。何進の元まで一直線にである。元々魅力バグによりぽちに陥落されている洛陽の方々が目の前に本人が現れたら戦意喪失してしまうのも仕方ないのかも知れない。白馬に乗ったぽちはまるで絵画のように見えたであろう。見た目だけはいいからね。神々しい煌めきを放ちながら、遂にぽちは何進の元へたどり着いた。何進の隣には妹、何太后までいる。

 

 

「よくその顔を私の前に出せたなぽち!」

 

 いきなり何進に怒鳴られ困惑するぽち。

 

「黙って下さい何進さん。漢王朝を我が物とし、自身の私物化の象徴としてぽち様の命を奪わんとするとはそれでも貴女は漢の臣でしょうか。貴女は漢を私物化しようとする逆賊です!」

「黙れ! 涼州の田舎者風情が何を偉そうに!」

「なんだあー? その田舎者に異民族との防波堤させて自分は何もせず引きこもってる大将軍様が偉そうに!」

「ふん、馬臭い涼州の──」

 

 

「あ、ぽち君久しぶりー」

「おー瑞姫元気?」

「うん、私は元気だけど姉様が暴走しちゃってねえ」

「そっかー大変だなー」

 

 冷静な口調ながらも何進を非難する董卓と喧嘩口調の馬超に対して思いっきり偉そうに罵倒する何進と、久しぶりに駅で会った同級生くらいのノリで話しているぽちと何太后。温度差が激しいね。罵り合う三人を見ながらぽちが何太后に聞く。

 

「これどうしよっか」

「……姉様がやりすぎて取り返しがつかなくなってるのは事実よ。ねえぽち君、姉様助けてあげられない?」

「ふむ」

 

 状況がまったく分からないが、どうやら何太后は何進を助けて欲しいらしいと理解したぽちは今にも斬りかからんとする馬超の槍に手を添えて止め、三人の中に割って入った。そしてぽちは内心で良く分からないがしょうがないよねと考えながら口を開いた。

 

「年増婆」

「なっ──」

 

 ぽちの一言に何進のドMスイッチが入る。そこから怒濤の罵倒を捲し立てる。ぽちらしくない一面に驚愕したのは董卓と馬超であるが、どんどん様子がおかしくなる何進を見て察した。顔が紅潮し、息を荒げ、身を悶えさせ地に堕ちた何進に口撃を緩めないぽち。そして何進は、遂に大勢の前で絶頂に至った。これ殺してあげたほうがマシだったんじゃないかな。失神した何進を担いでと恋に頼むも色んな液が駄々漏れしていた何進を担ぐのを恋が嫌がった為、ぽちは何進を何進の旗で巻いて牧場王に乗せた。ぽちも触りたくなかったらしい。

 

「待って下さい! 何進は!」

 

 董卓がぽちを止める。そりゃあそうだろう。

 

「まあ、いいんじゃない? 許してやってよ」

 

 よく原因は分からないがとりあえず許してやってよとぽちは言った。漢王朝の大将軍から逆賊の汚名を着せられ命を狙われた男が許すと言うのだ。一歩間違えば歴史に汚名が刻まれていたというのに、それでもぽちが許すと言ったのだ。そのやり取りを目撃していた誰かが言った。

 

「大聖者様だ……」

「まさに曹犬様は天にも斉(等)しい大聖者だ!」

 

 この日よりぽちの異名は斉天大聖となり、人々から大聖様と呼ばれる事となる。それ西遊記の孫悟空のやつやん。犬なのに猿になった。天界に殴り込みそう。ていうか天は陛下を指す言葉の筈なのに誰もがぽちを斉天大聖と言ってまったく不敬に思わない時点で、漢王朝からこの犬猿野郎の時代に移る事を皆が自然と認識していたのは言うまでもない。

 

 

 何進はしょうがないのでぽちがそのまま引き取りました。そしたら何太后も何故か着いてきました。後、大変そうなので洛陽は董卓と馬超に任せてさっさとぽち達は離れてとりあえず姉のいる所へ帰っていきました。

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