「麗羽、洛陽から袁家を通して打診が有ったというのは本当なの?」
「ええ、随分洛陽は混乱しているようですわね」
庭先にて優雅にティータイムを取っているのは曹操と袁紹であった。
「どうせぽちは断ったのでしょう?」
「勿論、『特権なんかいらない。美味しいご飯食べられれば幸せだから』だそうですわ。ふふ、我が夫の器の大きさは計り知れませんわ」
「ええ、さすが我が弟ね」
「ふふふふふふ」
「おーっほっほっほ」
洛陽にて政を任された董卓は、政争に関わらなかった。両陛下の確保も行わず、政争に関わらない代わりに民に対する政治に口を出すなと首筋に鎌を押し付けて笑顔で政治屋を説得した。董卓にとっての王とは既に曹柴犬である。そして今まで何進と何太后の庇護にあった両陛下は魑魅魍魎共の格好の餌となった。幼き両陛下は堪えきれず董卓に泣きついた。が、優しい笑顔の董卓は非情であった。
「お辛いのであれば、同じ劉姓である益州の劉璋様を頼られては如何でしょうか?」
辛いなら田舎にでも引っ込んでろという不敬極まりない発言である。素っ首落とされてもおかしくない発言であったが現実、今の洛陽に笑顔で首筋に躊躇無く鎌を押し付けた董卓に対抗出来る人間などおらず、更に言えば董卓の後ろに見える曹柴犬の機嫌を伺っている政治屋共が董卓に手を出せる筈が無く、董卓はこの件に関して突き放し知らぬ存ぜぬを貫き通した。その結果、陛下が口にしたのは禅譲である。曹柴犬にその位を明け渡すと言い出したのだ。そして我らがぽち、それを拒否。「あの方らしいですね」と董卓は笑ったが、お陰で洛陽は大混乱である。
「……で、実際どうなの?」
「どうとは?」
「ぽちの考えよ」
「ふふっ」
「麗羽?」
「この国は新しくなりますわ。文字通り、今までに無い新しい形に生まれ変わりますわ」
「どういう事よ」
実際、禅譲の話が来た際、袁紹はぽちを説得するつもりであった。最悪形だけでもと言うつもりであった。政争が続けばそのまま洛陽が火に包まれてもなんらおかしくはない。それはぽちだって望まぬ筈だからと。しかし、ぽちは面倒なので適当にのらりくらりと避けていたつもりだった会話が、袁紹の心を打った。
「王にはならないそうですわ。特権なんていらない。もっと言えば王なんていらないと。民が村の中から優秀な者を長として村の代表にしている。異民族なんかでもそんな事は良くある事。なら国の運営も優秀な人間が代表してやればいい。その代表も民が選べばいいと」
「……へえ?」
「州もそのようにすれば良いと言っていましたわ。王ではなく、民主導でと」
「麗羽は、袁家としてその話を認められるというの?」
「現世代はぽちさんのお陰で一枚岩になれると思います。ですがその遥か先をぽちさんは見てらっしゃいます。殿方に夢を語られたらその夢を追ってみたくなるではありませんか」
「ぽちの夢?」
「千年先も人々が笑って暮らせる泰平の世」
「千年……ふふっ、これが笑わずしていられようか。私が見ようとしていた未来は百年先。それを、我が弟は遥か先の未来まで案じようとしていたなんて」
「先ほど言った民主導というのは法の整備こそが要ですわ。今、朱里と雛里、桂花を主としてまずその礎となる根幹の部分に着手している所です。勿論、華琳さんも手伝って下さるのでしょう?」
「当たり前でしょう。千年国家の根幹となる大事業に携われるだなんて、後の人間の誰もが羨む誉れだわ」
「ええ、皆目を輝かせて取り組んでいますわ。……王権などいらない。こんな事が言える人間、如何に大陸が広かろうとまさしくぽちさんしかいない、だからこそ生まれる発想ですわね」
「さすが我が弟ね」
「さすが我が夫ですわ」
「ふふふふふふ」
「おーっほっほっほ」
本当にぽちがそんな事言ったのかは袁紹の頭の中にしかないが間違いなく都合良く解釈された結果、この国はとんでもない方向に向かおうとしていた。そしてそんなぽちはというと。
「ぽっちと日向ぼっこ久しぶりっすねー」
「だねー」
華崙とのんびり日向ぼっこしていたりする。勿論無理矢理であったが柳琳や栄華も一緒である。
「あっ、そうだぽっちにお願いがあるっす!」
「何?」
「おっぱい揉んで欲しいっす!」
「は?」
「ちょ、姉さん何言ってるの!」
「だってー、柳琳だって栄華だっておっぱい大きくてずるいっす。ぽっちはおっぱい大きいほうが好きなんすよね? おっぱいは揉むと大きくなるって聞いたっす!」
「ちょっとそこでわたくしを巻き込まないでくれます!?」
「落ち着いて華崙、華琳姉を見るんだ。春姉や秋姉が夜な夜な揉んでいる筈なのに華琳姉は大きくない。だからそれは迷信だ」
「あー、きっとそれは男の人が揉まないと効果無いって事っすね!」
「姉さん!」
「だっておっぱい大きくなってぽっちにお嫁さんにしてもらいたいっす」
「いやそこはおっぱい関係無いというか」
「じゃあ私はお嫁さんは駄目っすか?」
「華崙がいいならいいけど……」
「わ、私はどうなんですか!」
おっぱいからのまさかの流れに困惑しながらもぽちが答えると横から柳琳が食い付いてきた。
「柳琳、落ち着いて」
「姉さんが良くても私は駄目ですか!?」
「いやむしろばっちこいなんだけど……なんだこの流れ」
更にぽちが困惑しているとぽちの袖をくいくいっと引っ張り、俯き顔を赤らめながら栄華が言う。
「わ、わたくしは駄目ですか」
「駄目な訳無いよ。でも何というかいいのこの流れで」
曹操と袁紹が国の行く末の話をしている中、屋根の上では遠縁の親戚筋の綺麗所を纏めて頂いた糞野郎がいるらしい。
「あ、そうでしたわ。これ華琳さんに返しておきますわ」
「何よそれ」
「ぽちさんの部屋に新しく置いてあった姉系貧乳物の艶本ですわ」
「 」
「無駄な努力でしたわね」
「 」
これはぽちのでは無いなと思った分を曹操に返した袁紹。ぽちが隠していたその他艶本の分は見て見ぬ振りをしていた。まあ別に艶本をぽちが読んでようが、側室をどれだけ迎えようが笑って受け入れる女、袁紹の懐は海より深い。