泰平道という新興宗教がある。三国志の時期の中華の人口はおよそ五千万人弱と言われているが、この泰平道の信者の数は一千万人を超える超巨大宗教となっている。若い世代や軍事、農業に関わる者が挙って集うその宗教の教祖の名を劉備、崇めるは曹柴犬である。劉備、まだぽち生きてるよ?
「あ、ぽち様こっちこっちー!」
劉備に手招きされぽちが訪れたのは泰平道本部。ぶっちゃけ洛陽の城よりデカく豪華である。これ全部寄付金で出来たとかそれまこと? そしてその城を見てぽちが一言。
「悪趣味」
「解体! すぐに解体して!」
ぽちの一言に反応した劉備の指示で即刻解体され、装飾は売り払われその資金は民への炊き出しに使われた。ぽちが食欲以外興味を示さないのを知っていた筈の劉備、悪手を打つ。まあぶっちゃけ資金が集まり過ぎて使い方が分からなくなった元々庶民の出である劉備だから仕方ないかも知れない。勿論、民への炊き出しや、農業指導等も無料で各地で行っていたが使っても使っても金子が集まってくるのだ。
「……あははー。失敗しちゃった」
「ていうかこれ何?」
「ぽち様の素晴らしさを皆に広場で定期的に話してたら、皆協力してくれていつの間にかこんな事になっちゃった」
そう、劉備はぽちの話を広場でしていただけである。大袈裟だったりしたがただそれだけである。それが大規模になってきて気付いた曹操が、さすがに方向性をコントロールせねばまずいと判断した。そこから曹犬軍の面々、主に伏龍鳳雛が裏で色々動いた結果、大陸最大宗教の誕生した。ぶっちゃけ劉備本人はよく分かっていない。またお前の仕業か孔明。
「でもねでもね! 皆ぽち様の話を聞きたがってるし、話をするとすっごく喜んでくれるの!」
ぽちは内心知らんがなと思う。こんな面倒臭そうなものにこの男が関わりあいたい筈がないのだが、姉から行ってこいと言われ仕方なくやってきたのだ。ぶっちゃけ今一番大陸の火薬庫となっているのがここ泰平道だと思う。ぽちが血迷った事をぽつりとでも洩らせば大陸は血の海に染まるだろう。ていうか血の海に染めれる案件多すぎませんかね? 馬鹿に核ミサイルの発射スイッチ持たせたら駄目だと思うよ。
「えーっと、とにかく皆の前で話せばいいんだよね?」
「はい!」
にぱーっと人懐っこい笑顔を見せる劉備。その笑顔を見て思わずぽちも笑顔で返す。美男美女、魅力バグと魅力チート。この組み合わせはあかん。
「おっほん! ぽち様、こちらへ!」
「おう?」
わざとらしい咳き込みをした関羽がぽちを誘導しようとし、その様子を見た張飛と趙雲が煽る。
「にゃははー、愛紗、桃香に嫉妬してるのだ」
「鈴々にすら言われるとは。愛しのぽち様の前でそのような余裕の無い態度では嫌われてしまうぞ愛紗よ」
「うっうるさいぞ二人共!」
からかわれ顔を真っ赤にして怒鳴る関羽とにやにやしながら煽る張飛と趙雲。それを笑顔で見守る劉備とこの面子は本当に仲が良いなとぽちは思う。
「やれやれ、まぁ私はぽち様に貰って頂く予定なので愛紗より余裕があるのは仕方ないか」
妖艶な笑みを浮かべながらつつつーっと寄り添うように近付いた趙雲が関羽を挑発する。ぽち、えっ何それ初耳と困惑。しかしぽち、低脳故にもしかして約束してたっけと悩み出す。適当に約束してるから悩む羽目になるんだよ。ちなみに趙雲と約束なんてしてない。
「ええー!! 星ちゃんそうなのー!! ねね、ぽち様、私はどうかな!!」
趙雲の言葉にいち早く劉備が食い付いた。あれ、この流れ知ってるぞとぽちは思う。そしてその通り、全員ぽちの嫁となる事になった。多分信者の方々的に劉備も嫁になっといたほうが暴走を押さえられるとは思う。
「麗羽様、あの、美羽様の所の孫家の面々がぽち様の所に約束通り嫁ぎにきた、と言っています」
恐る恐る袁紹に報告したのはネコ耳軍師である。つい先日、劉備、関羽、張飛、趙雲が側室となったばかりである。間違いなく曹犬軍の面々はこのまま皆側室になるだろうと思われる。いくらなんでも節操が無いのではないか、本妻である袁紹を蔑ろにしているのではないかとネコ耳は思う。
「あらそうですか。美羽さんから話は聞いていますわ。では部屋を用意してあげて下さいますか?」
なんでもない事のように言う袁紹にネコ耳は違和感を感じた。
「はっ……、あの、麗羽様。お聞きしても宜しいでしょうか」
「なんですの?」
「その、側室がこうも急に増え続ける事に麗羽様はどうお考えなのかと」
「ぽちさんがいいと言ったのであれば別にいいではありませんか。増やす増やさないはわたくしが関与する事ではありませんし」
「しかしこれでは麗羽様が蔑ろにされてしまっているように感じてしまいます」
「心配して下さいますのね。ありがとうと言っておきますわ。ま、蔑ろにされるというのであればこの麗羽はその程度の人間という事ですわね」
「そんな!」
ネコ耳は袁紹が自身をその程度と言った事に噛みついた。大陸でも有数の富を持ちながら驕らず民の為の治世を敷き配下の者へ事細かく配慮を忘れぬネコ耳の主が自身を卑下するのは認められなかった。
「麗羽様がそのように扱われるなど私は許せません! ぽち様に抗議してきます!」
「ふふっ」
「麗羽様?」
ネコ耳軍師の頭にぽんっと手を乗せ慈愛の表情を浮かべながら袁紹が言う。
「ありがとう桂花。でも大丈夫ですわ」
「しかし……」
「何故ならわたくしが一番ぽちさんを愛していますから」
曹家の従姉妹を除けばぽちに対する感情は敬愛であろう。従姉妹のぽちに対する感情は親愛に近い。ぽちに純愛と慈愛を向けているのは自身ともう一人だけだろうと袁紹は思う。
「まったく、業が深い姉弟ですこと」
「麗羽様?」
「なんでもありませんわ。それよりあの件はどうなっていますか?」
「はっ、大枠は整ったかと」
「では朱里に伝えて下さいな。こちらの準備は整ったと」
「ではいよいよですか」
「ええ、董卓さんにも連絡していますわ。歴史を動かします。桂花。その智謀、思う存分振るいなさい」
「はっ!」
主人公がイチャイチャしてるだけで歴史は進んでいくらしい。