真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:キンシャサ・ニーストライク
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第七話.聖人君子

 権力を手にして人が変わったと言われる人はとても多い。いきなり漢王朝の軍事実質ナンバー2となったぽちは、曹家の出でありながら本質の小市民っぷりは相変わらずであった。
 華侖から「すっごい美味しい点心の店見つけたっすー!」と言われれば華侖や柳琳と一緒に普通に行列に並ぶ。周りがぽちに気付き、譲ろうとしても「いいからいいから」と普通に並ぶ。店の人間が気付き「お代は結構です」と言えば「いやいや美味しかったよー」と少し多目に払って出る。
 街中で子供が迷子になっていれば手を繋いで一緒に親を探す。子供達とはしょっちゅう華侖と一緒に遊んでいるので扱いは慣れたものである。
 自身が黒と言えば白であろうが黒となる程偉いはずなのに、余所見していてぶつかれば咄嗟に「あ、ごめんなさい」と謝る。下端役人がぽちと気付かずに高圧的な態度を示した際はどこからともなく徐晃が現れぽちと身分を明かし、「……俺死んだ」と諦めた役人に対して「次からはお互い気をつけようね」の一言でなんのお咎めも無しで終わらせる。

 賄賂献金その類い一切受け取らぬぽちではあったが、市民であった時に比べれば遥かに手持ちの金が多くなっていた。小市民ぽちは小金を持てば気が大きくなる。ぽちは軍事の際の報奨を、何進がケチれば身銭を切る。「俺金持ちだし平気平気」と予算をあまり考えずに報奨を出す。なので当然褒美として出すつもりだった金が足りなくなるのは必然だったと言える。ぽちは袁家に金を無心した事は一度もない。援助も全て断っている。お腹一杯食べられれば満足出来る男なのだ。しかしなんとか金を捻出したぽちは褒美を渡す為に皆を集めた会議に出る。

 集められた人間は一様に絶句する。とても役人とは思えぬ、一市民でも着るかなというボロ着。そして何より美しく長かった髪が坊主に近しい短髪となっていた。その変わり果てた姿に皆が言葉を発せず黙る中、盧植が言葉を絞り出し「ぽち様、その……お髪は……どうされたのですか」と聞けば「皆に褒美出す為に売ってきたよー」と笑い話のように答える。ぽちが身銭を切って出していた事を知らなかった一同、余りの出来事と事実に気付き言葉を失う。ぽちが賄賂を拒否している事は既に周知の事実。曹家にも袁家にも、どこからも金銭を頼りにしているとは聞かない目の前の我らが将軍は、皆に褒美を配る為にその美しい髪まで犠牲にし金銭を捻出してきたのだ。その出来事に泣き出すものまで現れる。その場にいた全員完墜ちである。信者といえる人まで現れ始める始末である。あざとい。ほんまあざとい男やで。

 ぽちのこの行動、一気に噂が拡がり「何それ……聖人?」「え、やだ格好良すぎ」「まじかよ真似しよう」となんと部下に献金を要求するのが当たり前の風潮から、部下に褒美出すのマジ格好良すぎという一大ブームがやってくるのである。腐敗した漢王朝を自らの行動で変えつつある男ぽち。

 腐った洛陽、俺を誰だと思ってるんだと無銭飲食する役人も多数いる中で、常勝不敗にして自身の武勇も凄まじいと言われているぽちの変わらないマイペースっぷりは大陸中の噂となり、いつの間にか聖人として持ち上げられ漢王朝は曹犬様がいる限り滅びぬとまで言われる始末である。どうしてこうなった。


 洛陽中の人気を背負うぽち。ここまであからさまになれば、流石に何進も自陣営とはいえ己の立ち位置の邪魔となるかと思い始める。ぽち本人は素直に言うこと聞いているだけなのに。何進もぽちは自身の魅力の虜だと思っているが、ぽちの周りがぽちを持ち上げ巻き込めばクーデターも余裕の様相になってきたから何進的にはしゃーない。しかしぽちを切るのは愚策も愚策だと理解している。己が使える手駒でここまで軍事が優秀な人間などいない。ならば使い潰すしかあるまいと何進は今後の方針を決めた。


「ぽち、長安で馬騰軍と合流しそのまま涼州に行って羌族共の反乱を抑え、返す刀で幽州へ行き幽州軍と共に烏丸の奴らを討伐してこい」
「は?」


 こうして新たに対異民族軍として編成された軍の総大将となったぽち。軍の出立に際し、洛陽中の市民が集まり「護国の英雄、曹犬様万歳!」とまだ対異民族戦をこなす前から護国の英雄扱いに困惑を隠せぬぽちと、軒並みぽちの為ならば自らの命など投げ出す覚悟の将軍並びに兵達、曹芝犬の為なら死ねる会会員一同は洛陽の地を後にするのであった。



短めです。

革命の新キャラ達とイチャイチャさせたくて始めたはずなのに、そこまでなかなか行けない。