真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:キンシャサ・ニーストライク
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第九話.馬超、心酔する

 聖人、その噂に偽りなく。

 名将、その采配に曇りなく。

 皇帝の懐刀、その尋常ならざる切れ味に留まること知らず。


 馬超軍のぽちに対する評である。

 まず出会いで礼を失する態度で接した馬超にその器の大きさをぽちは示した。サボれるやったーなんて思ってたなんて馬超は気付かない。

 涼州に入り、少数の武装した羌族がこちらを見て逃げ出したのを見つけた馬超が強襲しようとしたのをぽちは止めた。ふざけんな今だろと憤慨する馬超。しかし斥候を出してその少数が罠だった事を知る。こちらを誘い挟撃する為の布陣を敷いていた。ぽちの制止にて馬超軍は罠を回避する。ぽちは長い乗馬での移動で尻が痛くて急ぎたくなかっただけである。

 次の少数の羌族はぽちが蹴散らすだけでよいとの指示を出す。馬超は指示を疑い、無視し羌族を捕らえ尋問するも相手は羌族の中でも既に群れから独立していた集団で何の情報も持っていなかった。そこまで分かるのかと驚く馬超。面倒だっただけである。

 再び少数の武装した羌族が逃げ出す様を馬超が見つける。今度も馬超を止めるぽち。そしてまたも斥候にて羌族の罠であった事が分かる。

 そして三度、またかと馬超が今度も羌族を見逃すのであろうと考えるもぽちが全軍に号令を掛ける。殲滅せよと。馬超は半信半疑ながらも羌族を苛烈に追う。追った先にはどうせ漢の奴らは臆病風に吹かれ追ってはこまいと油断した羌族の集団がいた。油断した相手に遅れを取る筈も無く一網打尽と打ち倒すのは簡単であった。次から次へとズバリ的確な采配を振るうぽちに本当に羌族を相手にするのは初めてかと驚く馬超。尻の痛みに慣れてきたので一回くらい行っとくかと思っただけです。


 まあぽちの内心は置いといて、その迷いなく的確な采配は大打撃を負いかねなかった馬超軍を救い、当初の予想より遥かに少ない被害で最大限の戦果を上げたといえよう。そしてその采配に一切の迷いなく従う曹犬軍。強い。馬超は第一印象でただの優男だと決めつけた自分を恥じた。いやそれで大体合ってるんだけど。そしてこれ程の采配を振るうぽちに反抗的な態度を示した己を恥じる。いや適当に采配振ってるんだから本当なら怒っていいのよ? 曹犬、尊敬すべき人物であると馬超は考えを改めた。一度そう思えば馬超は全てぽちの言うことを素直に聞くようになった。脳筋だからね。

 強襲した羌族の集団から涼州内で暴れている羌族の本体の位置を把握した曹犬軍と馬超軍は、一路敵の本体へ向かう。だがぽちは思う。やはり尻が痛いので休みたいと。



「曹犬様、近くに董卓の街があるがどうする?」

 言葉遣いは相変わらずだが、ついに様付けで呼び出した馬超は一応ぽちに聞く。常識で考えれば遊牧民族相手に余分な時間を与えれば相手が移動していなくなる公算が高い。一刻も早く相手を捉え叩くべきである。だが。

「よし寄ろう」

 ぽちは即答した。尻が痛いからだ。寝台で寝たいのだ。馬超は、そして馬超軍はもはやぽちを疑わない。ぽちがそう言うのであれば、自分達には分からないがそれが正しい事なのだろうと考える。いやどう考えても間違ってるんだから誰か止めろよ。曹犬軍、特に軍師やってる盧植、お前だよ。「なるほど……、先に董卓と接するほうが利が有るとお考えですか。流石です」とか納得してんじゃねえよ。軍師ならちゃんと助言して止めろ。後、尻が痛くならない馬の乗り方誰か教えてあげて下さい。鐙とかいうチートアイテム? 無いよ。よく三国志系のチートもので出てくるけど無いよ。そんな物考えつく頭なんてぽちにある訳がないのだから。

 急遽官軍が街に大挙して押し寄せる事になったその董卓達は焦る。普通に考えれば食料の現地調達だと思うであろう。官軍に差し出さないのであれば逆賊の汚名を着せられ街ごと襲われる危険がある。しかし街に余分な食料などない。寒冷地であり痩せた土壌が広がる涼州。懐事情が明るい訳がない。それを知りながら官軍を連れてきた馬家を呪った。同じ涼州の民でありながら自分可愛さに仲間を売るのかと。

 しかし、しかしである。例のごとくめっちゃ余計に糧食を持つ曹犬軍。なんと現地調達どころか食料を配り始める。ぽちが「なんかみんな痩せてない? 飯分けてあげてもいいかな?」と自軍の皆に相談する。糧食を分ける。それは自軍の取り分、つまりそれぞれの報酬が減る事。喜ぶ人間がいるだろうか。むしろ自軍のやる気を削ぐ行為と言えよう。その愚行に反対する者、勿論一人も居る訳がない。
 皆、喜んで協力して糧食を分ける。元々総大将たるぽちが相談する必要などないのだ。しかし皆一人一人に、ただの一兵卒にまで「いいかな?」と確認していくぽちに反対する者がいる訳もなく、むしろぽちの行いに協力出来る事に喜びを皆覚えるのであった。曹犬軍、ちょっと狂ってきてませんかね?

 喜んで食料を受け取り感謝する街の人々。何事かと驚き、その曹犬軍の行動を董卓軍の人間が何の企みかと怪しむのは仕方のない事だろう。ただ、100%良かれとぽちは善意でやってるのでいくら怪しんでも何も出てこないよ。何も出てこないのだが、疑惑の目は向けられたまま董卓の館にぽちは迎えられた。
 
 現漢王朝実質No.2と目される曹犬に対し董卓の軍師賈詡文和は出来る限りの金を集めて董卓に便宜を図ってもらう為に渡そうとした。が、当然ぽちは受け取らない。額が足りなかったのかと賈詡は聞く。しかしぽちは「そんなに金があるなら子供達に少しでも食べさせてやってくれ」と賈詡に頭を下げ頼む。賈詡は驚愕したと言っていい。辺境の、官位も何も無い己に、漢王朝の将軍たる曹犬が頭を下げ頼むなど誰が考えるというのか。賈詡は慌ててそのようにするから頭を上げてくれとぽちに願う。ぽちは「ほんとに? ありがとう」と心から喜び笑顔で賈詡の手を握った。賈詡文和、そのぽちの笑顔を間近で見て顔を赤らめ慌てる。惚れたな。なまじ地位があるせいか、ぽちの笑顔の効果がどんどん上がってる気がしないでもない。「あんなの反則よ……」とは後の緑髪の眼鏡軍師、賈詡の談である。



日刊一位に自分の書いた物が凄く久しぶりに載りました。とても嬉しいです。お気に入りと評価の伸びが凄すぎてびっくりしてます。本当にありがとうございます。