ヒーローは笑顔と共にやってくる。

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私が来たッ!

 僕は生まれた時から肉体が優れていた。生まれたばかりなのに赤ちゃん特有のプニプニ肌ではなく、筋肉のような硬さを触ると感じ取ることが出来た。

 

 数年経ってからは更に顕著になった。同年代よりも大きい身体、鍛えなくても付いていく筋肉、そのどれもが普通とは違う異端だった。更なその頃の僕は自分の力を持て余していて色んな物を壊していた。

 

 そんな子供を気味悪がったのか、両親は日に日にこちらを避けるようになり、遂には僕を置いて

夜逃げてしまった。

 

 僕は、子どもの鳴き声が止まないことを不信に思った近所の人が通報した警察に保護され、後日孤児院に預けられた。

 

 そこでは僕を怖がっていた子が多かったけど、アニメが好きな子が僕のことを怖がることもなく接してくれたり、院長先生が普通に接してくれたをかげでどうにか馴染むことができた。

 

 だけど小さい頃の経験は僕を内気な性格にしてしまい、肉体が優れていてもそれを発揮する事はなかった。

 

 それに、この世界は脅威で満ち溢れているとはいえ、それに対抗しなければならない状況なんて遭遇しなかった。

 

 

 ……そう、あの時までは。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「やっぱり、このスマイルマンってアニメは最高だよね。どんな危機的状況でも笑顔を絶やさず皆を安心させちゃうんだから。」

 

「確かにそうだね。前借りたやつも面白かったけど、僕はこっちの方がすきかな…。」

 

「ああ、zoo-menね。チーム系ヒーロー特撮では一番初心者向けだしね。スマイルマンの方が人間のドロドロした部分も多い、大人向けだしね。どこが一番よかった?」

 

「やっぱりーーー」

 

 

 なんてたわいない話を孤児院で一番最初に親友になったあいつとしていると、突如として家が破壊はれ中から怪人が現れた。それと同時に放送が流れ始めた。

 

 

『災害レベル虎が現れました。近隣住民の方は、外出しないようにお願いします。』

 

 

「うわー!」

 

「今の放送はこいつのことか!?」

 

「逃げろ、逃げろぉお!」

 

 

 突然の事で動揺したが、近くの人が逃げ出したのに釣られて反射的に逃げ出してしまった。

 

 …驚いて尻餅をついてしまった親友を置いて。

 

 

(た、助けないと!!で、でも僕なんかが怪人を倒すことができるのか?いやヒーローが来るまでの時間稼ぎなら…。いや、やっぱり無理だ!)

 

 

 そんなネガティブなことが頭の中を走り抜け、動けないでいると…

 

 

「あがあああ!目がああぁぁ!!」

 

 

 友人の悲鳴が聞こえ、考えている暇がなく直ぐにでも行動しなければならないが、膝が震えて動くことが出来ない。

 

 

(はは、こんな状況になっても友の為に動くことが出来ないなんて、…僕ってとことんダメな奴だな……。)

 

 

 どうしようもなくネガティブな思考が頭をぐるぐるループして、もうだめかと思ったとき、すぐ横を風が通り抜けていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪人と闘うその姿は、まさにヒーローと言うにふさわしかった。見ず知らずの他人の為に、傷つくのも厭わず果敢に立ち向かって行く姿は、よく友人と話していた画面の向こう側のヒーローに似ていた……いや、ヒーローそのものと言ってもよかった。

 

 

 あれだけ怖いと思っていた怪人と闘う姿を見ているだけでそんな気持ちはどこかえ消え去っていき、別の感情が胸の内からむくむく大きくなってきて、その感情のままに叫んでいた。

 

 

 

「が、頑張れー!」

 

 

 その言葉が聞こえていたのかは分からないけど、あの人(ヒーロー)は拳を大きく振り上げて怪人に当てると、怪人は少しよろめくと仰向けに倒れそれからは動かなかった。

 

 

 怪人を倒したあと、親友を安心させるために作ったであろう笑顔はとても輝いていて、そんな姿に僕は憧れた。

 

 

 何か僕の親友と話すあの人(ヒーロー)に向かって駆け出していくと、ちょうど話終わったのかこっちを向いたあの人(ヒーロー)に向かって興奮気味に話かけた。

 

 

 

「あ、あの、友人を助けてくれてありがとう御座いました!!」

 

「別にいいって。それよりもお前の友人、目の所を怪我してるみたいだから病院に連れて行ってやれよ。」

 

「は、はい!それはもちろん。でもあなたも大怪我じゃないですか、直ぐに病院に行かないと…。」

 

「これぐらいつば付けとけば治るって。ま、早めに病院いけよ。」

 

 

 そう言って手を振って去っていくあの人(ヒーロー)に向かって声を挙げる。

 

 

「あの!どうやったらあなたのようなヒーローに成れますか!!」

 

 

「知らん。…けど俺だってなれたんだ、その気になれば誰にだって成れるだろ。」

 

 

 そう言って彼は今度こそ去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……凄かったな。」

 

「うん、そうだね。まるで本物のヒーローみたいだったね。」

 

「そうだね。……ねぇ。」

 

「うん?」

 

「僕…ううん、私はヒーローになりたい。なれると思う?」

 

「ふっ、愚問だね。君がなれない訳ないじゃないか。君にはそんなに優れた筋肉があるし、何より君が優しいってことはよく知ってるしね。」

 

「……ありがとう。」

 

「礼なんて要らないよ。君と僕の仲だろ?」

 

「……そうだね。」

 

 

 私の夢が決まった。今までの内気で自信がなかった私だが、あの人のような誰かを安心させる笑顔のできるヒーローに…………。

 

 

 

 

 

 

 

「所で、怪我が痛いからそろそろ病院行かない?」

 

「ああ、ごめん!そうだったね!直ぐ救急車呼ぶよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

『災害レベル竜の怪人が出現しました。住民の方は避難シェルターに避難してください。』

 

 

 

 避難放送がなった直後そいつは地面を突き破って現れた。巨大なムカデ型怪人で街を破壊しながら暴れていた、そこらじゅうに怪我をした人や崩れてきた建物に挟まれてみうごきがとれなくなっている人がいた。そんな中、俺は一緒に買い物に来ていた妹を探していた。避難する人の波ではぐれてしまった。

 

 

「ゼンコー!どこにいんだ!返事してくれ!」

 

 

 声を張り上げなが走って妹、ゼンコを探す。

 

 

(ッ!ゼンコの奴、どこに行っちまったんだ!?)

 

 

 心の中が焦りで満たされるなか、どこからかゼンコの声が聞こえた気がした。

 

 

バットお兄ちゃん!

 

 

 

 

「ッ!ゼンコ!そこか?!」

 

 

 声が聞こえた方に向かって走っていくと、多少埃などで汚れているが、怪我のない姿でいた。

 

 

「怪我がなくて良かった、ここは危険だからシェルターまでいくぞ。」

 

「まって!この瓦礫の下に人がいるみたいなの。瓦礫をどかすの手伝って!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃねぇぞ!早く逃げなきゃ────」

 

「それでもほっとけないでしょ!ここに埋まってたら死んじゃうかもしれないんだから!」

 

「ッ!じゃあさっさと助けてにげるぞ!」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 なんとか瓦礫をどかして埋まっている人を助け出すと意識を失っていたから背負って、ゼンコと一緒に逃げようとすると、何かに気づいたゼンコの叫び声が聞こえた。

 

 

「お兄ちゃん!危ない!」

 

 

 ゼンコの向いてるほうに顔を向けるとムカデ怪人がコッチに向かって凄まじい勢いで向かって来るのがみえた。

 

 

(ゼンコを抱えてよけねぇと!!!)

 

 

 しかし、気づくのか遅すぎて避けれないタイミングだった。

 

 

(やばッ、これ────死───)

 

 

 どうしようもなく死を覚悟した瞬間ヒーローが現れた。

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫!」

 

 

 

 

 

 

 その人は向かって来た怪人に対して大きく振りかぶった拳を突き出した。

 

 

 

 

 

「何故って?」

 

 

 

 

 突き出した拳が怪人に当たると同時に怪人は木っ端みじんになった。

 

 

 

 

 

 

 

「私が来たッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オール……マイト………」

 

 

 

 

 

 

 ヒーローは皆を安心させる笑顔と共にやってきた。

 

 

 

 

 




キングの本名分かんないので、ちょっと変な感じですけど、許してください。


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