DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち 作:大岡 ひじき
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「ダイ…!!!」
「ポップ、マァム…レオナ姫まで…!!」
地面を砕いた上、紛うことなき正義の闘気が鎧兵士たちをも粉砕して、現れた勇者の姿は、覇気を纏ってどこか神々しくさえ見えた。
更に同じ穴からダイに続いてマァムが、更に何故かレオナ姫を文字通りお姫様抱っこしたポップが、それぞれあたし達の前に降り立つ。
「へへへっ…!!おっさん流地底移動の技だ!!
もっとも、おれの火炎呪文で掘ったんだけどな!!!」
レオナ姫の身体を下ろしながらポップがそう言って、自信たっぷりな顔で笑った。
今朝メルルに会った時、ポップが勇気の光を顕現できた事を聞いていたから、今のポップに不安材料がない事はわかってる。
この表情も、その裏打ちがある故にだろう。
「無事で良かった、グエン!」
ダイの方はグエンさんに駆け寄り、グエンさんは微笑むと、ダイの頭を撫でた。
それにすごく嬉しそうな微笑みを返すダイを、レオナ姫がぎゅむと抱き込む。
その傍でヒュンケルさんとマァムが、お互いに万感の想いを込めた視線で見つめ合っており…うん、実にいつも通りの光景だ。
だが、そこでグエンさんが一度周囲を見廻し、少し表情を曇らせると、ダイに向かって問いかけた。
「……………そういえば、バランは?まさか…」
その問いには、ダイのかわりにあたしが答える。
「バラン様はダイの命を救う為、
生きてはいますが、もう戦えません。
なので、ここは敵地ゆえ詳細は省きますが、彼は今、然るべき場所で保護してもらってます。
そしてラーハルトは、彼の代わりの戦力としてここにいます」
あたしが言うのに、ラーハルトが頷いて肯定する。
説明しながら、バランの別れ際に慕わしげに見つめてきた目を思い出し、あたしは一瞬、形容しがたい想いに囚われた。
…バランは今の自身の状況、全てに納得しているわけじゃなかっただろう。
そうするには時間がまだまだ足りなかった。
その心が
その誇りを、無理矢理捨てさせたのはあたしだ。
だから、彼があたしを『母』と呼んだ時、あたしはそれを拒否する事ができなかった。
時間が全てを解決するまでは、ある程度依存する存在が、彼には必要なんだと思ったから。
「……そう。
生きていてくれたなら、それでいいわ。
ちゃんとお願い事も聞いてもらったことだし、ね」
そう言ってグエンさんは、やけに愛情溢れる目でダイを見つめ、その視線に気付いたダイが、キョトンとした顔で彼女を見返した。
……その瞬間、レオナ姫とラーハルトがおんなじような、なんとも言えない表情をしてたのは見なかったことにする。
…それはさておき。
先にも言ったがポップは勇気の力を光に顕現させる事が既にできている。
だから、物語ではポップのせいで手間取った
ならば、出来る限りさっさと済まして、彼らを一刻も早く
物語ではこの後のザボエラの介入が、結果としてポップの覚醒を促す事になるが、既にポップが勇気の光に目覚めている以上、そのエピソードを辿ったところで、単にメルルの命を危険に晒すだけで、メリットが何ひとつないのだから。
「さて皆さん。これより、レオナ姫を加えたアバンの使徒5人の力で、大破邪呪文を完成させます。
アバンのしるしを所持しているメンバーはそれを首にかけ、
他の者は彼らの周囲に近づく敵を、可及的速やかに排除してください。」
「待て!なんでおまえが仕切ってんだよ!!」
「…いえ、始めましょう。
色々つっこみたいことはあるけど、時間が惜しいわ」
時間を無駄にしない為に手短に状況説明をしたら、ポップにいきなりツッコミ入れられたが、レオナ姫は納得して、人質だったメンバーの為に、呪文の説明をしてくれた。
それを横で聞いていたグエンさんの目に、とても危険な輝きが灯る。
そうだよ!そういえばこのひと呪文オタクだった!!
真魔剛竜剣を初めて見た時のうちの先生とおんなじ目になってる!!
「……破邪の洞窟ですって!?
書物によれば、相応しき魂を示す者には力を与え、求める力にその魂が値しなければ、その者を聖なる炎が焼き尽くすと言われる、聖なる封印の施されし迷宮だったはず。
まさか、それが実在したなんて…!」
しかもなんか
「ああ、何故その踏破の場面にわたしは居なかったのかしら!」
「大魔王の捕虜になっていたからですね」
「そうよ!なんて忌々しい!!
こうなったらせめて発動の瞬間をこの目で見てみない事には気が済まないわ!
絶対に邪魔はさせないから、大船に乗ったつもりでいなさい!!」
「わかった。
「オレは竜騎衆がひとり陸戦騎ラーハルト!
この槍の届く限りダイ様の敵は、全てこのオレが屠ってくれよう!!」
「いやそれ悪役のセリフだから」
グエンさん、クロコダイン、ラーハルトの3人がそれぞれの戦意を口にして、その場の緊張が一気に高まったのがわかった。
グエンさんが真っ先に飛び出していく。
「気をつけて、グエン!」
「クロコダイン、ラーハルト。
彼女を(くれぐれも暴走しないように監視を)頼む!!」
ダイがグエンさんの背中に向かって声をかけ、それに続くヒュンケルさんのどこか心の声だだ漏れの言葉が終わらないうちに、ラーハルトも飛び出した。
クロコダインがあたしをひょいと肩に乗せ、あたしはそこから、崖の上に届かせる勢いで声を上げる。
多分、上で待っている仲間達ももう限界だ。
「お待たせしましたっ!総員、いざ、戦闘開始です!!!」
「だから、なんでおまえが仕切ってんだよ!!」
ポップのつっこむ声は、弓弦から放たれた矢の如く飛び出してきた、戦いを待ちかねた戦士たちの雄叫びによってかき消された。
☆☆☆
「隊長──ッ!!」
クロコダインの肩の上から、チウを見つけて声をかけると、チウは『ビョンビョンヌンチャク』を棒に戻しながら、こちらに向かって駆け寄ってきた。
「クロコダインさん!
そしてリリィさ…じゃなく、あにまる子ちゃん!!」
「隊長、御覧の通り獣王様はご無事です!
さあ、今こそ預けていた例のものを!!」
「はいっ!」
…どうやらチウはまだ、あたしを部下として扱うのに慣れていないらしいが、それはさておき。
チウの指示により、背中に大きな荷物を背負ったグリズリーが、重さなど気にもならないふうに走ってきた。
そしてその荷物をクロコダインに手渡して、かわりにあたしを受け取って一礼し、地面に置いて引っ込む。
うん、よく躾けられてる。
「獣王様。うちの先せ…もとい、魔界の名工が作った新しい斧です!どうぞお使いください!!」
「ホウ…?」
手渡されたそれの重量に、クロコダインが目を瞠る。
なにせ、長く使い続けてきた真空の斧ならば、片手で振り回していたクロコダインが、両腕で柄を握らなければいけないくらい巨大な戦斧なのだから。
こうなるともはやクロコダイン以外に使える者など居らず、事実上これは、彼専用の武器という事になる。
…てゆーか、なんでこんなにデカくしたんですか先生。
「前の『真空の斧』も素晴らしい武器でしたが、この『グレイトアックス』には、それ以上の性能をもたせてあります。
具体的には
などと言ってる間に、明らかに戦闘中に増殖されただろう鎧兵士の群れが、一斉に襲いかかってきた。
こんにちは演出効果。ありがとう噛ませ役。
「さあ獣王様!
そのまま、斧を振るって叫ぶのです!!
『唸れ、轟火よ』と!!!」
「!?……唸れっ!! 轟火よっ!!!」
言われた通り叫んだ
更に別な方向からやってきた敵に今度は『爆音』を試すと、金属のパーツがまるで風船のように弾けて散った。
「…グレイトアックスか。
ちょっとしたアバンストラッシュ気分だわい…!!
リリィ、こいつは凄いっ!!
おまえは寝ていてもいいくらいだぞ!!!」
「あにまる子ちゃんです、獣王様」
「…そのキャラは必要なのか?」
呆れたようにクロコダインが言ったが、ちょっとくらいノってくれてもいいじゃん。
…その後クロコダインは、ノリノリで鎧兵士の一団に突っ込んでいって、なんか知らないがラーハルトと、殲滅する敵の数を競い始めた。
グエンさんはグエンさんで、
「……ヌウウウッ!!おのれ小娘!
この私を散々
と、地を這うような圧し殺した声が背後から聞こえて、ハッとして振り返る。
そこには白いローブ……ミストバーンがあたしでも気がつくほどに不気味な闘気を、明らかにあたしに向けて放っているのが見えた。
え?ちょっと待って!?
なんかこの状況、すべてのことに対する怒りが、全部あたしに向いてない!!?理不尽!
「まずは貴様から血祭りに上げてくれようっ!!!
闘魔滅砕陣!!!!」
あたしの心の叫びも虚しく、ミストバーンの足元から影が伸びるように、黒い闘気があたしに向かってきた。まずい。
この技は種別的には麻痺の効果にあたるんだろうが、同時に闘気による攻撃でもある。
あたしの『即死及び行動不能系攻撃完全耐性』の能力は、通常の麻痺攻撃であれば無効にするが、闘気攻撃は物理ダメージの範囲内でこれは無効化できない。
「うえっ!!?」
突然のことに驚いたせいか、一瞬あたしは対処に窮した。
もう少し冷静だったなら、ミストバーンの足元に穴を掘って体勢を崩すとか、時空扉で滅砕陣の範囲内から逃げるとか、取れる方法はあっただろう。
だがどれも実行に移されることはなく、あたしはミストバーンの暗黒闘気の蜘蛛の糸に呆気なく捕らえられ……なかった。
ズガアッ!!
地面に突き刺さった一振りの剣が、まるで影を縫い止めるように、ミストバーンの暗黒闘気の動きを止める。
そこに込められていた闘気が、闘魔滅砕陣を霧散させる。
「…オレの弟子は、こう見えて引く手数多だ。
おまえの相手してやれるほど暇じゃないとさ…!」
それを為した剣を、地面から無造作に引き抜く青い手は、剣技と鍛冶の神に愛された至宝。
細身だがバランスのとれた長身の、長い脚が足取り確かに、あたしとミストバーンの間の空間に歩み入る。
「どうしてもってんなら、オレを倒してから口説くんだな……ミストバーン!!」
「……先生っ!!」
魔界の名工にして随一の剣士ロン・ベルクは、なんかふざけた台詞を口にしながら、あたしに向けられたミストバーンの怒りの覇気を、真っ向から受けてそれを受け流していた。
もう完全に
「お父さん、お嬢さんを僕に下さい!」
「貴様にお父さんなどと呼ばれる筋合いはない!」
的なやつ(違