DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち 作:大岡 ひじき
一応『多角関係』はこの物語で、一番重要なテーマなので……!(言い訳
酷いという自覚は充分ある。だがやめない(爆
何故かマァム視点。
あと、スマホゲームの影響を受けてひそかに改題してます。
レオナが
今度こそ、そこから見える階段を駆け上がり、中に進…
「悪い、みんな。突入する前に…ある意味戯言だけど、聞いて欲しい事がある」
…もうとしたあたりで、背中からポップの声がかかり、全員が足を止めて振り返る。
「……おれさ、事前に知ってたんだ。
しるしの事や、魂の力の事。
なのにおれのしるしはぜんぜん、チカリとも光りゃしなくて、焦って特訓したりフローラ様の本を読んだりしたけど、どうにもならなくて。
だけどみんなに、しるしひとつ満足に光らせられない半端モンなんだと、がっかりされるのが怖くて、相談すら出来なかった」
…一体何を言い出すんだろう。
最初のうちは確かに、みんなの事が気になってかなかなか集中できずにいたみたいだけど、リリィの言葉があってからは問題なく、魂の光を発現できていた筈なのに。
「昨夜、そうやってドツボにハマってるおれに、光を灯してくれたのが、メルルだったんだ。
あの子と話してる時に吹っ切れて、ようやく勇気出して相談する気になった時、このしるしは初めて光った。
そしてその瞬間にわかったんだ。
おれの魂の力こそ、勇気だったと。
そして、しるしに魂を示すためには、足りない勇気があったってことを」
「足りない…勇気?
ポップの心に誰よりも強い勇気があること、おれはちゃんとわかってるよ?
時々臆病なことも言うけど、ポップが最後の勇気をおれに与えてくれたから、おれは今、またここに立ててるんだ。
そんなポップに勇気がないなんて思わないよ!」
ポップの言葉に、すかさずダイが反論し、ヒュンケルがそれに頷く。
それは私も同感だ。
というか、ポップがそんなふうに悩んでいたなんて気がつかなかった。
ポップは、どんな窮地に陥っても必ず立ち上がる。
最初の頃こそ最低なヤツと思ったこともあったけど、戦いをひとつ終えるたびに強くなっていくポップは、私にとっていつしか尊敬の対象になっていた。
だから、その彼と肩を並べて戦う為に、転職までして修業を積み直した。
更にダイやヒュンケル、グエンと一緒にロン・ベルクのところで修業して、パプニカに戻って最初に顔を合わせた時に、はっきりと彼の強さを認識した。
私だって強くなった筈なのに、それでもまだその背中にさえ追いつけないと思うほどに。
多分この中の誰も、ポップがこんな事に躓く事態なんて想定しておらず、今この告白に驚いているのは、私やダイだけではなく全員だと思う。
ポップはダイの言葉を受け、微笑んで彼の頭を撫でた。
…ダイの表情が、グエンにそうされてる時と、明らかに違うのは見なかった事にしようと思う。
全力で。
「おれだってそう思ってたさ。
今まで、なけなしのそれを振り絞って、なんとか戦いを乗り越えてきたしな。
ハドラーやクロコダインのおっさん、竜騎衆、バラン…敵わないとわかってる相手に向かってって、戦いで死ぬことなんて、今更怖くなかった。
けど、それだけじゃ足りなかったんだ。
メルルがおれに、好きだって言ってくれて、そん時に、はっきり気がついた。
お陰で、みんなに迷惑かけずに今、ここにこうして立ててる」
…隣でレオナがハッと息を吸い込んだのがわかって、その顔を振り返る。
レオナは両掌を頬につけて、目をキラッキラさせてポップを見ており、なんでか知らないけど『メルルが告白したの、ほんとに!?で?で?なんて答えたのポップ君!?え、待ってそれだけ?聞きたいのはそこから先なのに!!』という心の声がはっきり聞こえた気がした。
…本当のことを言えば私も気にはなるけど、今はそんな場合じゃないと思う。
気にはなるけど。
「足りないひとつは、さっきリリィが言った『仲間を信じる勇気』。
落ち着いて考えれば、たとえしるしが光らなくても、おまえらがおれを見捨てたりするわけねえのにさ。
今思えば、アバン先生が光らせなかったんだぜ。
そんなことでビクビクしてる子はおしおきです!ってな。
ほんと、バカだよな」
「ポップ……」
けど、そんなふうに言って、自嘲気味に俯く表情が、なんだか少し泣きそうに見えて。
反射的にその肩に伸ばそうとした手が止まったのは、そこで終わったと思ったポップの言葉が、更に続いたからだった。
「あと『弱い自分を認めて、それに向き合う勇気』……そうだ。
その為にひとつ、言っておかなきゃいけないことがあった」
ポップはそこまで言って、ひとつ大きく息を吸い込んでから…何故か、私の方に向き直る。
そしてそこから紡がれた言葉に、私は目を瞠る事となった。
「…おれは、マァム。おまえが好きだ」
…その一瞬、私は確かに、頬に血が一気に上ったのを感じた。が、
「…けど今は、メルルの事も同じくらい、おれの心の中を占めてる」
更にポップの口から聞かされた言葉は、上気した頬の熱を一気に冷ますものだった。
ええと、何なのかしらこの状況。
「最低だけど、今は、これが本心なんだ。
メルルの勇気に報いる為にも、おれは自分が最低だって事も、勇気出して、ちゃんと認めなきゃいけないんだと思う。
……軽蔑したろ?けど、グダグダ言い訳はしねえ!
戯言聞かせたことへの借りは、戦いで返す!」
言いたいことだけ言って、背中を向けて駆け出そうとするポップに、私は真剣に対処に困った。
いや待ちなさいよ。そう声をかけようとした時、
「…よくわかんないけど、いいんじゃないかな」
「……へっ?」
そのポップの背中に先に声をかけたのは、意外なことにダイだった。
ポップにも意外だったようで、ちょっと呆気に取られたような表情になっている。
「つまりポップは今、マァムもメルルも好きだって事なんだろ?
最低とかじゃないんじゃないかな。
おれだって、レオナもグエンもおんなじくらい好きだし」
「ちょっとダイ君?」
その小さな勇者の口からあっけらかんと発せられた、あんまりにもあんまりな聞き捨てならない言葉に、レオナが抗議に近い声をあげる。
だが、ダイはそれに気づかずに、更に衝撃的な言葉を続けた。
「父さんだって、母さんより他に誰も好きにならないなんて言ってた割には、おれの中の父さんの記憶を見る限りでは、ちょっとリリィの事好きになりかけてるよ?」
「マジかよあのオッサン」
…いやだから待ちなさいってば。
そろそろ、どこにつっこんでいいのかすら、わからなくなってきたんだけど。
あと私、その情報微妙に聞きたくなかった。
「…そこはオレも似たようなものだ」
そしてヒュンケルがそこに、追い討ちをかけるが如く言葉をかけながら、2人の肩に手を置いた。
「こんなことを言えば、ラーハルトやクロコダインに殴られそうだが…オレとて、グエンにまったく惹かれなかったわけではないのだ。
だが、やはりオレが心の底から望むのは…いや、これは今言うべきことではないな」
そのヒュンケルの視線が一瞬私を捉えたあと、ちょっと気まずそうに逸らされる。
その…つまり、どういう事なのかしら。
「…とにかく、こんなに揺れたオレたちの心でも、問題なくこのしるしは光ったのだ。
戦いを終えて生き残れたら、その時に改めて話し合おう。
ダイ、ポップ、それでいいな?」
「お、おう……!」
「うん!」
…なんか、男同士で勝手に盛り上がり始めた中、つっこむのを完全に諦めた私とレオナは、お互いドン引きの顔を見合わせた。
なんか私たち何にも言ってないのに、ちょっと振られたみたいな雰囲気になってない?
・・・
その直後、ハドラーと親衛騎団が私たちの前に現れ、次の瞬間にはバラバラに引き離されていた。
ポップの
……精神的な意味においては助けられた感があるが、無論、現実的な意味では窮地だ。
「あらぁ、不運でしたね〜?
布石の上でのことですけど、私と一対一で戦うはめになるなんて」
落下感からかろうじて着地し、かけられた声の方に向き直りながら、反射的に迎撃の構えをとる。
私の目の前に立つのは、オリハルコンの戦士。
ブロックやフェンブレンと違い、比較的表情の変化がわかりやすいその姿形は、一見すると少女のように見える。
更に、造形は全く違うのに表情も声も、そして僅かに早口なところもちょっとリリィを思わせて、つい力が抜けそうになるけど、どうにか気を引き締めて、私は相手を睨みつけた。
油断はできない。
先の戦いの時にはヒュンケルと対峙して、彼の攻撃を余裕で捌いていた相手だ。
そう、彼らがチェスの駒を模して作られたというのであれば、彼女こそが最強の駒である『
「…必勝の布石…というわけね。
ポップを
呪文を弾き返す
そして、私の相手がこの
以前クロコダインが言っていたように、彼らは個々の能力は私たちに勝る。
その相手とそれぞれが、一対一で戦わねばならない状況に持ってこられたのだろう。
…
だがそれを言うと、ちょっと不機嫌そうに、彼女は言葉を返してきた。
「最初から一対一の構想はありませんでしたけど?
あの不思議な生き物が邪魔をしなければ、もう一人のお姉さんもお連れできたんです。
つまりこうなったの全然私のせいじゃないんで、そこは恨まないでくださいね?」
「不思議な生き物…?」
「…てゆーか、私の『目』は、お姉さまほどレベルが高くないので、あの距離と短時間で詳細までは見通せなかったんですけど、あれスライムじゃないですよね?なんなんですか、一体?」
「………は?」
彼女が何を言っているのかよくわからない。
多分、スライム、というからにはゴメちゃんの事ではないかと思うけど。
以前戦いに赴く際、あの子が私の服の中に入り込んでいた事があったし、今回も一緒に来ていたと言われても、今更驚きはしない。
今回はレオナの服の中に入り込んでいて、恐らくはこのアルビナスが私と一緒に彼女を連れ出そうとした時に、ゴメちゃんが何かをして、レオナをルーラの有効範囲外へ押し出したという事なんだろう…というところまでは、なんとかわかるけども、最後の言葉の意味だけは、考えても判らなかった。
あと、お姉様って……?
あ、いやなんとなくわかるような気もするけど。
…だが、その質問の意図を問い返そうとしたところで、
「…まあ、どうでもいいですね。そんなことは。
ハドラー様と勇者ダイの一騎討ちも始まったみたいですし」
「ちょっと待って。
ハドラーとダイの一騎討ちって…」
「はい。そのお膳立ての都合により、あなた方と勇者ダイを引き離させていただきましたので」
そう言ってアルビナスは、ひと呼吸置くように一旦言葉を切る。
「今のハドラー様の肉体はどんな治療も受け付けない。
その最後の生命を、生涯の宿敵と認めた勇者アバンの後継者である、ダイとの勝負に懸ける事こそ、ハドラー様の望み。
私たち親衛騎団は、その望みの為に動いています」
その言葉のあと、一瞬顔を伏せたアルビナスの人形の顔に、どこか哀しみのようなものを確かに感じる。
禁呪法で与えられた生命であっても、彼女には間違いなく『心』がある……私たちと同じように。
「それじゃあ…あなたたちはハドラーに、最後の望みを叶えさせる為の、捨て石になろうとしているの…?
ヒムも…シグマも……あなたも…!!?」
言って、思わず一歩踏み出した足が、止まる。
何故かは自分でもわからない。
普段の私であれば、泣きそうなその肩に手を置いて、説得の言葉をかけたはず。
彼女が訴えているのは間違いなく仲間を、
それは私たちのそれと変わらない。
その相手と戦うことはできないと。なのに。
……その理由は、すぐに明らかになった。
「ニードルサウザンド!!!」
その小さな身体の前面から放たれたのは、針状の閃光と、そして熱。
後から考えると、武闘家としての本能というか、直感だったんだろう。
考える間もなく、反射的に左腕が防御の形を取り、直撃するのを辛うじて避けた。
…左腕に装着された『それ』が、その閃熱エネルギーを弾く形によって。
それでもこの状態では完全に無傷というわけにはいかず、それがもたらした衝撃に、私の身体は背後の柱に当たる。
防御姿勢をなるべく早く崩さぬようにして、なんとか身を起こす私を、睨みつけながらアルビナスが言葉を発した。
「捨て石という言葉は心外です。
ヒムやシグマはともかく、私は捨て石になど、なるつもりはありません。
この場であなたを倒して、ヒムやシグマがたとえ討ちもらしたとしても、私がヒュンケル、ポップを倒し、必要なら勇者ダイも始末する…!!」
そう言うとアルビナスは、人間でいえば胸を張るといった動きのあと、更に高らかに言い放った。
「ハドラー様の最後の時間を共に過ごすのは、妃であるお姉様からその役割と愛を託された、この私なのですから!
私に同情してくれるなら、時間をかけさせずに、一瞬で死んでください!」
そして、再びの閃光が私に向かってきた。
ハドラーの妃って確か、リリィのことだった筈よね…などというどうでもいい事が心を過ったのは、ある種の現実逃避だったのかもしれない。
この時空のマァムは、以前に牙殺法の修業をした事で、原作よりも武闘家としての感覚が鋭敏になってます。
リリィの『みやぶる』には及ばないまでも、相手の力量を大まかに推し量ることくらいはできるようです。
大魔王の前では、相手があまりにも桁外れだった為に活かせませんでしたが、その後破邪の洞窟での冒険を経て、結果、原作より少しだけ強くなりました。
これも小石が描いた波紋の影響。