DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち 作:大岡 ひじき
なんか知らんけど少しの間ランキング入りしてたっぽいです。
皆さま、ありがとうございます。
…でも実は閲覧数の急激な伸び方に恐怖も感じて、チワワの如く震えていたというね。
やったねグエンちゃん!お気に入りと同時に低評価が増えるよ(爆
わたしはダイの不安な気持ちがよくわかってたから、あの場で一人で行くというダイを、心の中まで一人にしたくなかった。
その気持ちに寄り添えるのは、ここにいる中でわたしだけだと思ったから、思った事を口にした。
『あなたはダイ達の精神的な支柱になってくれ』
別れ際のヒュンケルの言葉が、今になって理解できる。
ダイは、勇者と呼ばれてはいてもまだ子供だ。
すぐには受け止められない現実だってある。
ダイだけじゃない。ポップやレオナ姫だって、本来ならまだまだ親の庇護のもとにあるべき年齢だ。
それが急いで大人にならなければいけないのは、明らかに大人が無力なせいで。
ならばせめて、その心の支えくらいにはなれなければ、何の為に歳だけくってるのかわからないじゃない。
だから…
「…ったく、おれの言いたかった事、全部先に言っちまうんだもんな、グエンは」
「結局一番いいところを、グエンが持ってっちゃったわねー。
なんかズルイわよねー」
…二人とも、そんなジト目で睨むのやめてもらっていいですか。
「ポップさん…」
ほら、そっちでメルルが不穏な空気にハラハラしながら見てるじゃない。
そんな事よりダイの心配してよ、頼むから。
わたしはどうしたって一歩先から声をかけるしかできない。
ダイと同じ目線でものを言えるのは、やっぱりあなた達だけなんだから。
☆☆☆
【まぎれもない…汝は
【
だがその戦慄も長くは続かず、突然現れた闖入者に破られる。
ダイは一瞬のうちに感じ取った。
この男との戦いが、かつてない死闘になろうと。
「超竜軍団長…バラン」
そう名乗った背の高い男に、不思議な感覚を覚えつつも身構える。
【この神殿に立ち入れたということは、この男も
ありえない。
同じ時代に、2人の
水晶が何やら言っているが、その言葉も耳には入らない。
魔王軍の軍団長がこの場に現れた意味。
自分を倒しにきたとしか思えなかった。だが、
「聞いた筈だ、あの竜水晶から、自分が
何を言われているのかわからない。
狼狽えるダイに、男は言葉を続ける。
「私の部下になれ!
ともに人間どもの世界を滅ぼすのだ!!」
この世を治めていた人間と魔族と竜が、それぞれの覇権をめぐり争う事を疎んだその三種の神が作り上げた究極の戦士。
いずれかの種族が世界を我が物にせんとした時、それを滅ぼし天罰を与える事こそ、
「だったら大魔王バーンの方が悪いじゃないか!!?」
そう説明する男に、ダイはそう訴える。
その理屈ならどう考えても、
「悪いのは人間だ。
バーン様は世界の平和のために、人間を滅ぼそうとなさっているのだ」
だが
「おれは誰がなんと言おうと人間の味方だっ!!
アバン先生の生命を奪った魔王軍の手下なんかに、死んでもなるもんかあっ!!」
言ってダイは、その亡き師の必殺技を放つ。
だが、先の戦いで完成をみた筈の
バランが無造作に、剣を持つダイの右腕を掴む。
「できれば傷つけたくは無かったが…おまえがそういう気持ちならば…、
力づくでも連れて帰るぞっ!!!」
バランの額に、先ほど自身のものと同じだと教えられた、“
☆☆☆
ダイが帰ってくるのを、今か今かと待っていたわたし達は、見守っていたその湖の底から大きな渦が巻き起こるのを見て、何事か起こっているのにようやく気がついた。
「……いる…!!
凄まじい力を持った何かが…この下に…!!」
青ざめた顔でメルルが、両掌で頭を抱え、震えながら言った。
瞬間、湖面に水柱が立つ。
「あ、あれを見て!!ダイ君が…!!」
レオナ姫が指差す方に目をやると、確かに勢いよく噴き上がった水が引いた先に、ダイの小さな身体が見える。
このままでは自由落下に従い、高い位置から地面に叩きつけられると判断して、わたしはトベルーラを発動させてダイのもとまで飛んだ。
落ちてくる彼の身体を空中で抱きとめる。
右手に握っている剣が、この僅かな時間のうちに戦闘があった事を示していた。
地面に降り立ち、駆け寄ってきたポップとレオナ姫に彼を託して、上空に現れた闘気の塊に、わたしは棍を構えた。
瞬間、ハッとして立ちすくむ。
わたしの視線に気づいたポップ達がやはりそちらに目を向けて、やはり驚愕の声を上げた。
そこに、空中に立っている男は、額にダイと同じ紋章を輝かせながら、わたし達全員を睨みつけている。
「あの男も…
「あ…あいつは魔王軍だ!!
魔王軍の超竜軍団長…バラン…!!」
剣を支えに立ち上がりながら、ダイが仲間達に告げる。
「魔王軍にも
「そんなはずは…伝説によると
メルルの言葉を訝しんでいる間に、男は空中から地面に降りてきた。
「…そう、この私こそこの時代、ただ一人の…
真の
鎧の胸元にヒビが入っているのは、ダイの攻撃の跡だろうか。
背が高い。黒髪。
憎悪や怒り、昏い感情を孕んだ目。
人間と変わらぬ姿をしていながら、どこか獣を思わせる気。
…風貌は少しだけ老けたかもしれない。
無理もない、あの当時でわたしが13だったのだから、あれから12年経っているのだ。
あの当時で30そこそこだったのなら、今は40代前半のはずだ。
目の前に現れた『
それが、ダイを見据えて
それは人間を滅ぼす事だと。
「おまえが成長し、
その時、地獄の苦しみを味わうのはおまえなのだぞ!!」
その言葉に、ダイの瞳が揺れる。だが、
「…その問題は、既に話し合い済みよ。
彼を惑わせないで」
ダイを背中から抱きしめてわたしは、どうやらバランという名前らしい、その男を睨みつけた。
「グエン!?危ないよ、下がってて…」
「……君は…!!?あの時の少女か。
確か名は、グエナヴィアといったな。
…無事に生き抜いたか。大きくなったものだ」
あの時、わたしは彼に、自身の名を名乗った記憶はない。
わたしの名はラーハルトから聞いたのだろう。
だから通称ではなく本名なのだろうし。
そんなわたしとバランのやり取りに、ポップが驚いたように問う。
「な、なんだよグエン!知り合いかよ!?」
「……命の恩人よ、一応ね。
まさか、魔王軍だとは思わなかったけれど」
この男が魔王軍にいるという事は、もしかして。
「相変わらず、人間に希望を抱いているのだな。
その甘さでこの年齢まで生きてこられたのは立派だが、その過程で得た生きる力を、人間に利用されているだけと、なぜ判らぬ。
用が済めば、再び迫害が始まるだけだぞ」
バランは、むしろ優しいとも言えるような口調でわたしに言った。
それにレオナ姫とポップが反論する。
「利用なんて!
私たちとグエンは、心から信頼し合う仲間だわ!」
「そうだ!ダイもグエンもおれたちの仲間だぜ!!
たとえ正体がなんだろうと、迫害なんかするもんかいっ!!」
「…ポップ…!」
「…たしかに、人間にはそういうところがある。
けど、言葉を交わし合えば、彼らは認めてくれるわ。
あなたが言うような、夢物語ではない。
そうでなければ、わたしは生きてこれなかった」
そしてその道は、ダイが照らしてくれたのだ。
「問答をするつもりはない。
…グエナヴィア、そこをどけ。
君もできれば傷つけたくはない」
「だったらあなたが
ダイはわたし達の仲間よ。
彼の意志を無視して連れて行こうとするなら、彼の為にわたしは戦うわ!」
ポップと二人、ダイを背中に庇って、武器を構える。
「あくまで私の邪魔をするというのならば、『もう1人の息子』の大切な者とて、容赦はせん」
「…!!?」
バランの気が、僅かに膨れ上がる。ポップが一歩前に進み出て、レオナ姫に指示を出した。
「姫さん!ダイをベホマで回復してやってくれっ!!
その調子じゃロクに戦えないぜ!
こ…こいつは、おれがなんとか…!!」
「…身のほどを知らぬ奴というのは哀れだな…。
死にたくなければそこをどけ」
「どくかよおっ!!離れてろグエン!
ポップの指示に従い、わたしはトベルーラで距離を取る。
瞬間バランの周囲に重力の力場が発生し、その足元の地面が割れた。
これは確かマトリフ様の
先日お訪ねした際に説明は受けたが、どうも複数の攻撃呪文の適性がないと習得できないものであるらしく、わたしは「おめえにゃ無理だ」と一蹴されていたのだが、ポップはどうやら教えてもらっていたらしい。
「初めて会った時にゃ『あんな弱そうな魔法使い、オレがなんとかしてやらんと死ぬ』とか思ったもんだが、どうにも素質だけはありやがる。
気性的なもんで伸び悩んでるが、壁を越えさえすりゃあ、あの若さで伸び代もあるし、大化けする可能性は充分あるぞ。
ああ、オレがこう言ってた事は、ポップには内緒だぜ。
あの野郎、褒めると調子に乗りやがるからよ」
とこっそり教えてくれたのは、贔屓目ではなかったようだ。
…だが、普通の人間ならば押し潰されてペシャンコになっていてもおかしくないその力場の中を、少し歩きにくそうにしながらもバランは歩を進めてくる。
「ドッ…ドラゴン数匹をしとめたおれの最大呪文が…足止め程度にしかならないなんて…!!!」
「…竜の群を束ねる軍団長が、ドラゴンより弱いとでも思ったか…?」
そしてまた、バランの気が膨れ上がる。
それも今度は止まる事なく。
「ひっ…姫さん!!急げっ!!」
「そんな事言われても、一瞬で完全に回復しないわ!」
「うわあああっ…じゅ、呪文がやぶられるッ!!!」
「くっ……フバーハ!!」
わたしが辛うじて防御壁を完成させたと同時に、バランの周囲の力場が破壊され、その重力はすべて、わたし達の方に返されてきた。
フバーハは完全な障壁にはならない。
属性攻撃に対するダメージ軽減の役には立つが、対物理攻撃のスカラと同様、その威力がフバーハで散らせる値を上回れば、残りの威力はダメージとして通ってくる。
ポップの
なんとか起き上がってみれば、バランの周囲の地面がえぐり取られたような形となっており、バランを中心とした半径1メートルの範囲だけが、そのまま残されている状態。
強い。
わたしは軍団長レベルの敵との交戦経験はないが、彼が今まで勇者パーティーが倒してきたそれのレベルを、遥かに凌駕する力を持っている事は、わたしでも容易に理解できた。
とりあえず、自分のダメージを回復させる。
そうしてからダイのところへ行こうとしたら、地面を蹴って軽々と抉れた部分を飛び越えてきたバランが、倒れたダイとレオナ姫のそばに降り立った。
「…その子はもらっていくぞ!」
「だ、だめよ!渡さないわ、ダイ君は…!!」
レオナ姫が這いながら、ダイの身体を抱きしめる。
「そうだ!
いくら同族だからって、ダイを自由にできる権利なんかねえ筈だぜっ…!!」
ポップが言うと、バランは一呼吸置いてから、重く言い放った。
「…権利なら…ある!
親が子供をどう扱おうと勝手のはず…!!」
バランの言葉にその場の全員が、息を呑んだ。
「なんて…今、なんて言ったの…!?」
レオナ姫が、少し呆けたように問う。
「この子は私の息子だと言ったのだ。
本当の名は…ディーノ!!」
時間が、止まった。
「本当の名は…ディーノ!!
ちなみに、
「知っとるわ!!」
関係ないけど最初に「ちょ、お前誰、