DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち 作:大岡 ひじき
うん正直、途中一旦寝て起きて、書いたものを読み返して愕然とした。
酔っ払って書くのはいつもの事だが、今日のは少し悪ノリし過ぎたとは思ってる。
でもちょっと面白くなったのでその部分はそのままにしといた。
後悔はしているが反省はしていない。
「…息子…ダイ君がバランの…!!?」
「てっ…てめえが、ダイの父親だってのか…!!?」
正直、ダイが人間ではない可能性を考えた際に、その可能性も考えてはいた。
ダイとバランの持つ気の類似性から、そうであるなら同種族であろうと推測できたし、恐らくは魔族以上に稀有な存在である種族の個体が二体確認できたなら、その二体が血縁である可能性には、当然考えが及ぶ。
ポップの「そんなバカな」という呟きは、信じ難いというよりは、信じたくない気持ちから出た言葉なのだろう。
「この地上に、私以外で
ダイは赤ちゃんの時に、乗っていた船が難破したか何かで怪物島と呼ばれるデルムリン島に流れ着いたのだという。
そこで心優しい鬼面道士が彼を拾って育て、彼自身も心優しく勇敢な少年に成長した。
バランが言うのが本当だとすると、その船に乗っていた際、彼は一緒ではなかったと言うことになる。
もし一緒にいたならここまでの力を持つ者が、みすみす我が子を波に連れ去られる事などあり得まい。
だとしたら、どういうことなのか。
だがレオナ姫は、わたしとは違う点に疑問を感じたようだ。
「じゃあ、
…そうよ!お母さんは…ダイ君を産んだお母さんはどこにいるの!!?」
そうか、母親。
この男が父親だと名乗るならば、ダイの母親という人を当然知っている筈だ。
実際そのレオナ姫の問いに、バランは僅かに表情を変えた。
「…母親か。
確かに、この子にはどことなく、母親の面影がある…」
そう言ってダイを見る瞳に、一瞬温かいものが混じる。
あの日わたしに一緒に来いと手を差し伸べた時の瞳の奥にも、その温かさは確かにあった。
その、わたしやラーハルトを哀れむ気持ちに、人間に対する憎しみが付帯していなければ、あの日わたしも彼の手を取っていただろう。
だが次にはその温かさを覆い隠すように、バランは瞳を閉じ言い放つ。
「…貴様ら人間には関係のないことだ!
ディーノは連れ帰る!!!」
言って倒れたダイの方に歩み寄るバラン。
「やっ…やめろォッ!!」
悲痛に叫ぶポップの前に、考えることもなくわたしは立ちふさがった。
「グエン…!?」
「下がってなさい、ポップ。
レオナ姫は、ダイの回復を。
この男は、わたしが止める」
言いながら棍を構える。
勝てる気なんかしないけど、戦わないわけにはいかない。
わたしはどうやら守ろうとした人を、一番渡してはいけない人に渡してしまったようだから。
…守らなければ。今度こそ、わたしが。
二度と同じ過ちを、繰り返すわけには、いかない。
・・・
「死にたくなければそこをどけ、グエナヴィア」
「どかないわ。
たとえあなたが父親でも、ダイの心は彼自身のものよ。
あなたが好き勝手に扱っていい権利などない!」
スカラで守りを固め、トベルーラで機動力を補う。
そして最後にマヌーサ。
「む…五つ身分身か」
わたし自身の素早さがもう少しあれば最大十分身まで可能だろうけど、今のわたしにはこれが精一杯だ。
こんな時に、以前ベンガーナに滞在していた時にカジノで見つけた、素早さが上がる魔法が付帯した装備品を思い出す。
確か『星降る腕輪』とかいったか。
あれと交換するに近いところまでいったのに、ダブルアップに失敗してコインを全部失ってから、わたしは賭け事には手を出していないが、デザインは悪くなかったし、やはり欲しかったなと今思ってしまう。
まあいい、無い物ねだりをしても仕方ない。
この呪文も大魔道士マトリフ監修のもと、研究途中ではあるがそこそこ強化は為されており、通常のマヌーサに比べればその分身ひとつひとつが、しっかりした像を結んでる。
五人のわたしは次々と攻撃を繰り出す。
だがさすがに軍団長、わたし程度の攻撃など余裕でさばいてくる。
もう少し危機感を持ってくれなければ、次の本格的な攻撃に移れないんだがな。
「なるほど。
僧侶にしては戦い慣れしているらしいな。
大方、分身に紛れて必殺の一撃を放つ作戦だろうが、その武器が棍程度では私には通じん」
「そう馬鹿にしたものではなくてよ。
振れば剣。払えば矛。突けば槍。
棍こそすべての武器の祖なり」
パルナ村の先生の受け売りだけど。
確かに力だけなら、尼僧のわたしなどなんの役にも立たないし、棍なんて武器は頼りないかもしれない。
けど、戦いに必要なのは力だけじゃない。
圧倒的な力をひっくり返すために戦術というものがあるのだ。
そうでなければ補助呪文などというジャンルが確立する筈もない。
わたしの分身がバランに踊りかかり、攻撃を繰り出しては消え、また現れる。
その合間に本物のわたしが一撃加えて、分身に紛れる。
長く続けるつもりはない。むしろ続かない。
バランほどの相手、攻撃のパターンを見抜かれたら、分身の中からわたしを見分け、一撃で勝負をつけようとするだろう。
だがそれでいい。
それまで分身に翻弄され、せいぜい苛つくがいい。
振れば剣。払えば矛。突けば槍。
その通りにわたしの分身たちが棍を振るう。
そろそろだ。
「うっとおしい!」
来たッ!!!
バランが、真っ直ぐこちらに向けて、剣を構えて突進してくる。
分身に紛れて、わたしも構えを取る。
振れば剣。払えば矛。突けば槍。そして…!
「守れば、敵をも滅する盾となる!!!!」
わたしの身に向けられたバランの斬撃は、そのままカウンターでバラン自身に返っていき、バランの身体が後方に吹き飛んだ。
だが……!
「…全っ然本気じゃなかった、というわけね」
「今のは…『刃の防御』か。
この私の剣撃が返されるとは…!!」
一度地面に背中を打ちつけたものの、バランはすぐに立ち上がって、体勢を整えた。
呼吸は乱れているが、さしたるダメージを負った様子もない。
この後どうしようかと、背中に冷や汗が流れるのを感じながら頭を巡らせる。
これほどの男、同じ手は二度とは使えまい。と、
「ダイ!?」
同じく地面に降り立って、間合いを取り直したわたしの前に、ダイが立ちはだかった。
「ありがとう、グエン…もう大丈夫だから…!」
見ると少し遠くに、ポップとレオナ姫もこちらを見つめている。
どうやら二人とも回復は済んだようだ。
「もうよさんか、ディーノ…!
おまえの気持ちもわからないではないが…これ以上私の手をわずらわせるな…」
そうやってわたしを庇うように立つダイに、優しいと言える口調で言葉をかけるバラン。
それに対し、ダイは我慢ならないと言ったように首を横に振りながら叫ぶ。
「うるさいっ!!ディーノなんて呼ぶなっ!!!
おれの名はダイだ!!
じいちゃんからもらった、おれの名前なんだ!!
本当の名前もクソもあるもんかっ!!!
おれは、魔王軍と戦う…勇者ダイだ〜〜っ!!!」
…かつてダイはロモスを救った際、勇者ダイを名乗る事をロモス王に勧められてそれを固辞したという。
それは、自らが一人では勇者たり得ない事を知り、その呼称に自身がまだ相応しくないとしての事だったと。
だから、彼が自ら『勇者ダイ』と名乗りをあげるのは、恐らくこれが初めてのはず。
だがそれは勇者であるという事そのものより、人間の世界を守る者としての意味合いのものであり、だから彼の仲間たちは改めて、ダイのその言葉に勇気を与えられた。
そして、わたしも。
「…そうか、わかった。
では、人間どもの呼び方に従って“ダイ”と呼ぼう…!」
…バランの気が、徐々に膨れ上がる。
あたかも今奮い起こされた、小さな勇気を振り払うように。
「ダイよっ!!
人間どもに味方する勇者として、おまえを倒すッ!!!
素直に我が軍門に下らぬと命が無いものと思えッ!!!」
ダイが、小さく肩を震わせるのが、一番近くで見ているわたしにはわかった。
だが次には剣を握り、独特の構えを取る。
「…何か奥の手を残していたかと思ったらその技か。
アバンストラッシュ、とか言ったな。
人間のあみだした技としては強力だが、私には通じぬのは証明済みのはず!」
話の流れからするとどうやら、湖底の神殿であいまみえた際に、師の必殺技は披露済みらしい。
バランの鎧の胸元にヒビが入っているのはそのせいか。
だが、
「おおおおおお──ッ!!!」
ダイが気合を入れると、例の紋章が額に浮かび上がる。
自分の意思での顕現はまだ確実ではなかった筈なのに。
それだけ切羽詰まっているんだ。
「
天の怒りと呼ばれる光は、本来ならそのまま、勇者の敵に降り注ぐものだが、ダイは呼び起こしたそれを剣で受け止め、闘気とともにそれを、バランに向かってぶつける。
「ライデイン・ストラーッシュ!!!」
それはバランに直撃し……次の瞬間わたし達は、信じられないものを見ることになった。
「ぬううううん!!!」
バランが再び剣を構える。
その剣が
「…普通、
その闘気と勇気に免じて見せてやろう!
真の
ギガデイン!!!!!」
…ダイが呼び起こしたものよりも、遥かにすさまじい天の怒りが、空を貫く。
そのすさまじいエネルギーを、先ほどのダイと同じように、剣で受け止める。
それはバラン自身の気と混じり、膨大なエネルギーがスパークする。そして。
「ギガブレイク!!!!」
…何も考えることができなかった。
気がつけばリリルーラでダイの前に飛んだわたしは、バランのその技を無防備にこの身に受けていた。
「グエン───ッ!!!」
衝撃波がわたしの身体を突き抜け、揃えたばかりのダイの防具を破壊して、彼の身体にもダメージを与えたのがわかった。
庇ったつもりが、なんの意味もなかった。
なんて無力なんだ、わたしは。
薄れていく意識の中で、周囲の空間が、爆発した。
…そのように、見えた。
☆☆☆
グエンとダイが二人まとめて吹き飛ばされ湖に落下して、ゴメが泣きながらその湖面を飛び回る。
なんとなくだが、グエンが近くにいるなら大丈夫だと思い込んでいた自分に腹が立ちながらも、おれはバランに向かおうとした。
こうなったらダメでもともと。
ありったけの呪文をぶつけてでも…!
「待て!!早まるな、ポップ。
その男の相手はオレがする!!!」
その時、おれと姫さんのいる空間に大きな影がさした。
「あああっ…!!?」
そこに立っていたのは…!
「獣王・クロコダイン!!!」
絶望に染まった心に、希望の光が差し込んだ。
「あんたが来てくれりゃあ百人力だぜっ!!」
そう言って思わず握りしめた大きな手が震えている。
「…クロコダインか。
いかに貴様でも、この私と戦ったら、どうなるかわかっていると思うが…」
「…死ぬ…だろうな。
だが、そんなことはもちろん覚悟の上だ」
おれから見れば、クロコダインのおっさんは鬼みてえに強い。
それが目に見えてビビってるなんて。
「…早くダイとグエンを助けるんだ!」
それでも恐怖を振り払い、一人で立ち向かおうとするおっさんに、おれは自分も戦うと申し出る。
同時に姫さんも。
そうだ、3人で立ち向かえば、ひょっとしたら…!
「ムダだ!」
だがクロコダインはおれたちの言葉を、一言の元に切り捨てる。
「…どういう理由かは知らんが…この男には、呪文のたぐいが全く通じないのだ!
直接攻撃以外では、恐らくダメージを与えられまい!!」
「…さすが獣王。見抜いていたか…」
二人を頼むと言ってバランに対峙するおっさんに従い、おれたちは二人から離れる。
「悔しいわ…なんて無力なの、あたしたちって…!!」
姫さんの言葉に、おれも胸がしめつけられる。
グエンはこんな相手に、一人で立ち向かったのに。
おれだって
姫さんじゃねえが自分の無力が、本当に悔しい。
おっさんは、ここまでの経過をあらかた聞いていたらしい。
バランに「何故邪魔をする」と問われ、「ダイの本意ではない」と、グエンと同じように答える。
「…ダイがいなかったらオレやヒュンケルは、いつまでも魔道をさまよっていたに違いない…グエンも悲しみと孤独を抱えたまま、心の傷を増やし続けていた筈だ。
ダイはオレたちの心の闇に光を与えてくれた…太陽なのだ!!
生きとし生けるものには、すべて太陽が必要なのだ…それを奪おうとする者は断じて許せんっ!!
たとえ力及ばずとも戦うのみ!!」
おっさんが斧を構え、戦いの姿勢を見せる。
それに対しバランは剣をおさめ、棒立ちになった状態で、すさまじい闘気を発し始めた。
「…どうした!?かかってこんのか!!?」
「た…戦う気がないなら遠慮なく…その首をもらうまでだっ!!!」
ストレートに首を狙って、クロコダインが斧を横に薙ぐ。
充分にパワーもスピードも乗った攻撃、この体勢では避けようがない…筈だった。
…だが信じられない事に、砕けたのはクロコダインの斧。
「これぞ
砕けた斧とバランの間で、エネルギーの気流が渦巻き、光り輝いた。
「
「やめれ」
棍スキルの最終奥義のカウンター技、本来は「天地の構え」になるわけですが、ダイ大の世界には元ネタであるバーン様のあの必殺技がある為、この名称が使えませんでした。
色々探してなんとか近いものを当てはめた結果、苦肉の策で「刃の防御」に変更に…。
グエンがどこを目指してるのかこの時点でバレるのは避けたかったんだがな。うん、苦し紛れって事は自覚してるから言うな。泣くぞ。
あと、多分誰かの感想への返信に「一応女性なので戦いの方は徐々に男性陣に任せてく形になるかと思います。」と言ったな。あれは嘘だ(爆
書いてて思うがコイツ一体なんなん(白目