DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち 作:大岡 ひじき
お前は聖◯士星矢か(爆
本来、
その身は天から遣わされし
その際
それが
魔王ハドラーが世界を席巻していた頃、当代の
最後の知恵ある
それを滅ぼし、瀕死となったバランは、
そこで、バランは出会ってしまったのだ。
彼の…太陽に。
傷つき倒れたバランに奇跡の泉の水を与えた、その美しい少女の名は、ソアラ。
現在アルゴ岬と呼ばれている場所の先に、かつて存在したアルキードという王国の、王女。
その出会った場所で彼女と何度も逢瀬を重ね、城へと招き入れられたバランは、すぐに家臣たちの嫉妬を買うこととなった。
自分たちの権力を脅かしかねない存在として。
なにせ、王女と彼が想い合っているのは誰の目から見ても明白であり、このままでいては突然現れたどこの馬の骨とも知れぬ男に、王座が奪われる事になる。
やがて中傷が、王の耳へと届く。
『あの騎士は人間ではないようです。
魔王の手下の生き残りかも…』
単なる中傷であれば、はねのける事は出来ただろう。
バランにとっての不運は、それが半分は事実であった事だ。
魔王ハドラーの猛威も記憶に新しい時節であるのも災いした。
バランは城を追われ、流浪の旅に戻る事となった。
それは彼の心に傷を与えたが、それまでの人生に何度となくあった事。
そう思って、割り切れた。割り切れる筈だった。
ソアラがその時、彼の子供を身籠ってさえいなければ。
本来ならあり得ない事であり、その奇跡ともいえる命を宿した愛する人を、手放す事などバランにできる筈がなかった。
彼女を連れて逃げ、テランの森深くに居を構えた。
一人ならともかく、身重の女性を連れて、遠くまでは行けなかった。
そこで、二人の愛の結晶が、産声を上げた。
その奇跡の子に、二人はディーノと名付けた。
愛する妻と、息子。そして自分。
三人だけの小さな世界。それで良かった。
だがやはり、王女を連れて逃げた事を、国王は決して許しはしなかった。
アルキードの大群に取り囲まれたバランは、人間を傷つける事を良しとせず、妻と子の身の安全を条件に自ら捕縛された。
…結果として、この決断がバランを、修羅の道へと向かわせる事となる。
彼は見くびっていた。人を想う人間の心を。
ソアラは連れ戻され、ディーノは他国の貴族の養子となるべく、船でその国へと送られた。
勿論、母親であるソアラに、その送られる先など知らされる事はなく。
まもなく王女を誘拐した罪人として、バランは処刑される事が決まった。
処刑場でその身を繋がれ、攻撃魔法の集中砲火に、甘んじてその命を与えてやろうとした刹那、王城で軟禁状態にあった筈の王女ソアラが、夫を庇うべくその攻撃魔法の中に飛び込んだのだ。
バランと違い、
『人間を憎むより、探し出した息子とともに、平和に暮らしてほしい』
今際の際に、愛する夫にそう告げて。
国王は王女を失った動揺のあまり、その行為を『恥さらし』と詰った。
その瞬間、本来なら世界の均衡を崩さんとする存在に対して放たれる力が、バランの額から無尽蔵に放出され…、
その日、アルキード王国は、地図から姿を消した。
愛する妻の亡骸を腕に抱きながら、かつて守ってやった筈の人間という種への失望に、血の涙を流す
バランは世界中を探したが、ディーノを見つけることができなかった。
乗せられた船までは特定する事ができたのだが、その船は航海中の事故で難破したらしく、乗客も乗組員も船とともに沈んでしまったとの事。
また、養子となると約束されていた貴族は、その船の目的地であった国には存在せず、恐らくその地に着いたところで、ディーノは人知れず消されていただろう事もわかった。
人間とは、どこまで醜く自分勝手な生き物なのか。
それがわかった以上、もはや迷う事はない。
このような生き物、滅ぼしてしまえばいいのだ。
元々自分は、その為の存在ではないか。
愛する人を亡くした以上、自分と人間とを繋ぐものなど何もない。
その時、大魔王バーンが語りかけてきた。
深い森の中、木の枝にさりげなくぶら下がる、悪魔の目玉というモンスターから。
それを通じても、その者が持つ力、威圧感が伝わってきた。
だがそれをして尚、穏やかに、甘やかに、その者の言葉は、心に染み通った。
『そう、そなたの言う通り。
人間こそ、
我が手を取るが良い、バラン。
そなたの望みは、余が望みでもある』
…こうして
☆☆☆
「バラン様がオレだけに打ち明けてくれた…悲しい過去だ」
語り終えてラーハルトは、少し落ち着いたように息をついた。
先ほどの様子から見て、この男はバランの憎しみと悲しみに呼応している。
恐らくこの男自身も、魔族であるが故の憂き目に遭ってきたのだろう事は、グエンの例を知っているだけに、容易に想像がつく。
彼女が人間を憎まなかったのは、ひょっとしたら奇跡であったのかもしれない。
目の前の魔族の姿は、彼女にもあり得た可能性なのかもしれない。
純粋な人間であるオレですら、ひとときは人間を憎んでいたのだ。
だが…未だ衝撃の影響が残る震える手足に力を込めて、奴を睨みつけながら、オレは立ち上がった。
「なっ!?おまえ…まだ…!!?」
「……ラーハルト、おまえは強い。
グエンが居なければ、あの攻撃を受けて、立ち上がる力は残っていなかったろう。
今の話を聞いたら尚更、このまま倒れているわけにはいかなくなった…!!!
ダイの為にも、グエンの為にも…そして、バランの為にもな!!」
オレも、人間に失望していた。
そもそも、モンスターに育てられたオレには、人間など父や仲間たちの仇でしかなかった。
だが、心を開かないオレにもアバンは優しかった。
アバンについて世界をまわりながら、剣の修行と共に、様々な事を学んだ。
『そんな怖い目をしない、ヒュンケル。
テーブルマナーも、レディーファーストも、生きていく上で大切なことのひとつです。
特に女性には優しくしなければ。
いつかはあなたも結婚して、奥さんのお世話になるんですから』
…冗談なのか本気なのかもわからない軽い口調で言ったアバンの、へにゃっとした笑顔が頭に浮かぶ。
アバンが真心で接している事、オレにだってわかっていたのだ。
それがオレ自身、許せなかっただけだ。
慕わしい気持ちを、憎しみで封じ込めて、あの日オレはアバンに剣を向けた。
慕い、憎む。
オレにとってアバンは、己が矛盾の象徴だった。
アバンさえ居なくなれば、その矛盾は解消される。
だから…
「…オレには、バランの気持ちがよくわかる…」
バランは恐らく、あの時のオレと同じ矛盾を抱えている。
人間とは、憎むべきもの。
だが、失った愛しい人は人間だった。
人間を憎む事は、彼女の想いを裏切る事。
ならばその矛盾ごと、消してしまえばいいと。
だが、それは逃げでしかない。
今ならオレにもそれがわかる。
『可哀想な人…あなたはお父さんを失った悲しみが大きすぎて…
オレの為に流された、マァムの涙。
それにより気付かされたオレの弱さ。
『わたしはあなたを、友達だと思っていてよ?
あなたがどう思っていても、わたしはそう決めた』
オレに向けられる、グエンの無防備な笑顔。
裏切られてもそれは自分で決めた事だと、信じる心を持ち続ける、彼女の強さ。
『オレは男の価値というのは、どれだけ過去へのこだわりを捨てられるかで決まると思っている。
たとえ生き恥をさらし、万人に蔑まれようとも、己の信じる道を歩めるならそれでいいじゃないか…』
共に行こうと差し伸べられる、クロコダインの手。
『待ってよ、今はもう悪者じゃないんだっ!!』
そう言ってオレを弁護しようとする、ダイの小さな背中。
『心配なんざしてねえよ…おめえは性格は悪いけど…強さだけは…ピカ一だからな…!』
安心して背中を託してくれる、ポップの憎まれ口。
この仲間を、どうして否定できる?
人間だけでなく、この地上の民全てが、いずれ分かり合える未来を、こいつらを見てそれでも、夢物語と笑えるか?
せめてバランには、オレが伝えよう。
オレならば伝えられるかもしれん。
同じ矛盾を抱えた者として。
☆☆☆
「おまえなんぞに何がわかる!!?
バラン様の心の痛みが、おまえらなどに消せるほど、軽いものだとでも思ったか!!?
笑わせるなあッ!!!」
片手にグエンを抱えたまま、ラーハルトの槍が、オレの心臓を狙ってくる。
奴のその攻撃を、肩先のパーツを掠るのみで躱したと同時に、オレは
「…!!?」
驚愕するラーハルトに、オレは言い放つ。
「おまえの攻撃は見切った!」
バランと対戦する為の余力を考え、必要以上の間合いで躱そうとしていたオレの動きには無駄があった。
今は“くらってもかまわん”という覚悟で、致命傷にならない紙一重で避けている。
鎧化を解除したのも、その覚悟をより強くする為だ。
ようやくグエンから手を離したラーハルトの、閃光のような連続突きがオレを襲った。
「なっ…なめるな──ッ!!!!」
が、何度攻撃しても掠るのみで、奴が動揺を露わにする。
その間隙をついて地面に落とした剣を拾い、オレはようやく攻撃に移った。
距離を詰めて、何合か打ち合う。
接近戦になれば、剣の方が勝手がいい。
オレの斬撃を槍の柄で受け止めたラーハルトが、驚きを隠さずに言葉を発する。
「どこにこんな力が残っていたんだ!!?
それに…先ほどよりも速い!!」
「これが生命を賭けた時の、人間の力だ!!」
「そんなもの…認めんっ!!!!」
柄で押しのけた剣の間を縫って、奴の槍の穂先が、オレの胸を切り裂く。
それにより間合いを離された瞬間、再び槍が閃く。
グエンのかけた、防御力を上げる呪文は、とうに効果が切れているらしい。
先ほどまでより深く肉を抉ってくる突きと、その速さゆえに起こる衝撃波で、オレの身体が跳ね飛ばされ、オレは再び地面に叩きつけられた。
手から剣が離れ、遠くに落ちる。
…やはりオレの最大の技でなければ、この男を倒せない。
そして、確実に命中させなければ、次はない。
怒りに我を忘れているらしいラーハルトが、先ほど見せた大技の構えに入る。
オレは敢えて防御姿勢を取らず、その瞬間を待った。そして…
「ハーケンディストール!!!!」
「…かかったな!
オレの生命を囮にした最後の罠に…!!!」
最後に手に残った武器に闘気を集中させて、奴の槍の軌跡を止める。
二つの武器が描く形は…
オレの渾身の闘気は、その形に凝縮され、一気に放出されて…
「グランドクルス!!!!!」
この体勢と距離なら、躱しようがない。
オレの最大の技をまともにくらったラーハルトは、空中高く吹き飛ばされた。
「これがオレに残された…最後の武器だ…!!」
オレの手の中にあったものを見て、地面に叩きつけられたラーハルトが、驚きに目をみはる。
「そっ!そんなチャチな鎖で…!!?」
「…この鎖は誰にも切れん…。
オレたちアバンの使徒の、絆の証なのだからな」
それは、アバンのしるし。
アバンが教え子に与えた卒業の証、その鎖。
かつて捨てようとしたそれは、最後の切り札となって、オレの手の中に輝いていた。
絆…そう呟いて力尽きたラーハルトの、その胸に最後に去来したのは、敗北の悔しさか、それとも羨望か。
・・・
やはりグランドクルスを使った直後は身体がきかない。
ハドラーの時のように、意識を失わないだけマシだが。
何とか立ち上がり、手放した剣を拾う。
…その時背中に、大きな影がさしたのがわかった。
同時に、放たれる凄まじい殺気。
反射的に動いて、 後ろからの攻撃をかわす。
「き、貴様、まだ生きていたのか!?」
そこには先ほどオレが胸を貫いてやったトドマンが、怒りの目でオレを見据えていた。
だが、いくら体力を使い果たしていても、この程度の奴が今更出てきたところで、何ということもない。
「よかろう、二度と化けて出ないよう、今度は顔面をぶち抜いてやる!」
だがトドマンは、ブラッディースクライドを受けた傷からおびただしい血を流しながらも、何故か不敵に笑ってみせる。
「グ…フフッ…できるかな?」
「そのくらいの力なら残っているぞ…!!」
だが剣を構えた次の瞬間、そいつが掴んで目の前に突き出したそれに驚愕し、オレは思わず叫んだ。
「グエンッ!!」
「さあ、武器を捨てろ。
さもないと、この女の頭を握りつぶすぞ!」
その無骨な手の中には似つかわしくない、美しい半魔族の女性は、悲鳴どころか呻き声もあげず、ただ苦痛に顔を歪ませた。
ラーハルト「バラン様がオレだけに打ち明けてくれた…悲しい過去だ」
ひじき「さりげに特別な関係アピールやめてください」