DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち   作:大岡 ひじき

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前章から少し時間が遡り、お待ちかねの主人公の登場です!
…誰も待ってないとか言うな。
グエンのチート加減を見てからいいだけ待たせてのポンコツキャラの登場に、読者の方々のがっかりした表情が、不思議と今から浮かんできます。
ひとまず「え?アレからのコレなの!?」「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」「ありえなくない?馬鹿なの?死ぬの?」感をたっぷり味わってください。
あと、メイン視点が交代する事で、物語の雰囲気も若干変化するかと思います。ご了承ください。


武器屋の娘
1・武器屋の娘は使命を知る★


 兄が家出した。予定調和ではある。

 けどそれはつまり、ここから先、時間はあまりないって事。

 神様はあたしに、

 

「あなたはこの世界を救える、唯一の存在」

 と確かに言った。

 

 あたしには前世の記憶がある。というか思い出した。

 前の人生はそれなりに生きてきたっていうか、人生の終わりが某イベントで某ゲームのイケメンキャラのコスプレをしていたらそのキャラの大ファンという腐った若い女の子に友達になってくださいって言われて次に会った時になんでスカート穿いてるのとキレられ女だなんて聞いてない騙されたとファビョられた挙句刺されて死んだというどこに出しても恥ずかしい死に様だった以外特筆すべき点も何もない平凡な人生だったので省くけど。

 

 問題は今生きている人生が、その前世での十代前半の頃に読んでた漫画の世界って事実。

 どんなベタですかその展開。

 でも転生する直前に神様って人に会って会話したのは間違いないけど、その記憶はかなり薄れてる。

 だってしょうがないじゃん?

 前世の自分よりも、まだまだ短い今世の方がどんどん大きくなっていって…戻りようがない以上、今のあたしの現実はこっちなんだから。

 

 だから…忘れていた。

 ここがあたしの前世では「ダイの大冒険」というタイトルの付けられていた漫画の世界という事も。

(すごく好きな漫画ってわけではなかったけど、当時のジ◯ンプでは比較的綺麗に終わったのと、ラストが結構衝撃的だったので、あたしの中での印象は強かった)

 あたしのいる村が物語の中盤に、勇者ダイとその一行が訪れる、物語の主要人物の故郷でもある村って事も。

 そして、家出したあたしの兄が…いずれは「大魔道士」を名乗ることになる人物だという事も。

 全部忘れて普通に生きてた。それを急に思い出した。

 

 あたしは小さい頃から、妹っていう立場ながら、兄を守らなきゃっていう気持ちが強くあった。

 それは神様の使命とか関係なく、あたしは兄が大好きだったから。

 小さい頃はお兄ちゃんのお嫁さんになるんだと本気で思ってたし、そもそも小さい頃の兄は今思えば本当に可愛かったから、彼をいじめようとする村の男の子たちとは、取っ組み合いの喧嘩もした。

 この可愛い兄はあたしのものだ。今はまだ。

 兄が欲しいなら、あたしの屍を越えてゆけ。

 そんな素敵な…もといおぞましい世界に、大事な兄を引き込まれてたまるか。

 …けど身体の小さいあたしは、奴らに挑みかかっても負けてばかりいて、思い余って武器の練習をしようとしたけど、父さんにバレて怒られた。

 そもそも剣とか重たくて持ち歩くのすら無理だった。

 魔法も勉強したけど才能なかったらしく、契約は悉く失敗した。

 半ば冗談で同じ魔法陣使った兄がメラの契約ちゃんとできたんで、契約方法も魔法陣も間違ってはいなかった筈。

 まあ、契約できただけでまだ使えない筈だけど、未来の大魔道士にもはじまりはあるって事だよ。

 そんなわけで、どうやら兄は母さんのお腹の中に、あたしの分の魔法の才能を残していってくれなかったらしい。

 って誰だ今残りかすとか言ったやつ。

 

 まあでも、敵わないなりにあたしと喧嘩になると面倒だという認識が定着したものか、いつのまにか兄へのいじめがなくなってたのはいいのだが、単に兄想いで優しくしっかり者の可愛い女の子であるこのあたしが、村の子供たちからは『とんでもなく気の強い女』『間違っても怒らせたらダメなやつ』『実は魔王』って扱いになったのは、些か理不尽だと思っている。

 

 ☆☆☆

 

 あたしはランカークス村で唯一の武器屋を営む夫婦の二番目の子として生まれた。

 父の名はジャンク。母はスティーヌ。

 ふたつ上の兄の名が、ポップ。

 そう、あたしは「ダイの大冒険」のもう1人の主人公とも言える、魔法使いポップの妹なのだ。

 あたしがリアルタイムで読んでた「ダイの大冒険」に、こんなキャラ居なかったんですが。

 これも、神様転生物のテンプレってやつか。

 いやそんな事よりだから、その兄のポップが家出したんだっての。

 きっかけは、この村にフラッと立ち寄った、一見ちょっと変わった感じのする旅人さんだった。

 

 その人があたし達の村に立ち寄った時期、ちょっとたちの良くない冒険者が、何故かこの何もない村に滞在していた。

 そいつらは昼間から酔っ払って、村の女の子にちょっかいをかけたり、老人や子供に暴力を振るったりしていて。

 最初の頃に、村長の若い奥さんがちょっかいかけられて、村長がそれを止めようと、僅かながらお金なんか差し出したのがいけなかったみたい。

 そいつら、それで味をしめちゃって、村のあちこちでそういう事やるようになったんだもの。

 そんな中でうちの父さんは例外っていうか、理不尽には鉄拳制裁が信条の人なんでね。

 例によってうちの店に来て、母さんにちょっかい出そうとしたやつがいて、父さんは当たり前のようにそいつを叩き出したもんだから、結構うちは恐れられてたわけ。

 あの武器屋の親父だけは侮れんって。

 

 けどやっぱり、その状況は奴らには面白くなかったらしくて、父がいない時を狙って店の前まで来た奴らの一人に、閉店時間で看板をしまおうとしていたポップがいきなり張り飛ばされた。

 騒ぎを聞いて、母さんが止めるのも振り払って店の中から出てきたあたしは、それを見て思わずカッとして、店の前の道に転がされたポップの前に飛び出した。

 そしたら奴らゲラゲラ笑って、ポップを張り飛ばしたやつが、あたしの方に手を伸ばしてきたから、その腕に噛みついてやったんだ。

 

 …そこから後のことは、正直よく覚えてない。

 目から星が出たような感覚の後、気がついたらポップがあたしの名前を呼んでて、おでこから右の頬までがじんじん痛くて。

 目を開けたらポップが半泣きで、母さんが本気泣きであたしの顔を覗き込んでいて、その後ろには見たことのない、旅の人。

 

「泣かないのは大変結構ですが、女の子の顔に傷が残っては大変ですよ」

 そう言ってその人は優しく笑って、あたしのおでこに手を触れた。

 何か、ぽうっと温かい感覚があった後、そこにあったじんじんとした痛みが消えた。

 

 …あたしは見た瞬間すぐ判った。

 つか、思い出した。その人の名はアバン。

 かつて、この世界に現れた魔王を、仲間と力を合わせて倒したと言われる、勇者。

 この先、それよりもっと強大な敵に立ち向かう事となる、新たな勇者とその仲間たちの(しるべ)となる人。

 あたしはその人を見た瞬間にすべて思い出し…自分に与えられた、真の使命を理解した。

 …理解したと同時に、詰んだと思った。

 

「ああ、傷が!

 ありがとうございます、旅の方!」

 母さんがやっぱり泣きながら、その人にぺこぺこ頭を下げる。

 …ああ、そうか。あたし、顔に怪我してたのね。

 それを今、『アバン様』が治してくれたと。

 

「良かった、リリィ!」

 と、半泣きだったポップが、あたしの身体をぎゅっと抱きしめた。

 抱き返そうとしたらいきなり肩を掴まれて身体を離され、次には咎めるように声が荒げられる。

 

「てか、おまえはいつもいつも!

 なんでおれなんか庇うんだよ!

 逆だろ、普通!おれが兄、おまえは妹!!」

「知ってる。だからだよ。

 あたしはポップの事、大好きだもん」

 じっと目を見てそう言うと、少し悲しそうな目で見返される。

 ここ近年、これは恒例のやりとりになっていたけど、前世の記憶を取り戻した今、その表情を見てハッと気がついた。

 これが普通の距離だと思ってたけど、ポップがあたしに庇われるたびに「逆だろ」って怒るようになったのって、あたし達が幾つくらいの頃からだろう。

 あたしが守ろうと躍起になるたびに、ポップが傷ついた顔をするようになったのは、いつからだったろう。

 あたしの使命はポップを守る事じゃなかった。

 むしろあたしのその気持ちは、ポップのコンプレックスを刺激してただけだった。

 そんなあたし達の心の揺れを知ってか知らずか、アバン様は、

 

「仲のいいご兄妹ですねえ」

 とか言って、緊張感のない顔でへにゃっと笑った。

 

 その、ならず者の冒険者が、アバン様の手によって捕縛され、全員がベンガーナの役人に引き渡されたと聞いたのは、次の日の夜の事だった。

 当のアバン様はもう、夕方のうちにこの村を発っており、その夜が明けた時、ポップの姿は家どころか、村の中のどこにもなかった。

 あたしは…正確には、12年ここで育ってきたポップの妹の『リリィ』は泣いた。

 けど、転生者としてのあたしは、自分の使命について考えていた。

 

 前世を思い出したあたしの記憶が確かなら、ポップがダイと出会った頃『おれは一年以上もアバン先生のもとで修行してる』って台詞があった筈。

 つまり、あと2年に満たない期間のうちに、魔王軍の侵攻が始まるという合図なわけなんだけど。

 神様の言う『この世界を救う』は、恐らくこの魔王軍…大魔王の手からじゃない。

 それはこのまま進めば、勇者ダイの勝利で物語は幕を引く。

 世界にとってはそれでいいのだろうけれど。

 それと同時に勇者ダイは、この地上から姿を消してしまう。

 その点において「ダイの大冒険」は、綺麗に終わったにもかかわらず、決してハッピーエンドではなかった。

 むしろその後も続くはずの課題を、消えた勇者に丸投げしたまま終わった物語だったから。

 

 あたしが救うべきなのは物語そのもの。

 勇者ダイが…主人公が消えた事で、止まってしまう時間を、このまま動かし続けるのが、恐らくは神様が与えたあたしの使命……なのに。

 

 その為に与えられた特典(ちから)がアイテム鑑定と発掘って、どういうことよ神様!

 生まれも育ちもスペックもただの武器屋の娘に、どうやって世界を救えっていうのよ──ッ!!!

 

 …ぜえはあ。取り乱しましたごめんなさい。

 ちなみにこの神様ってのは勿論、この世界の神様とは違う。

 この世界には人間と魔族と竜の、3人の神様がいるんだけど、それすらももっと上の神様の創造物でしかなく…ってその創造神ってひょっとして原作しyうわなにをするやめしかもあたしの前に現れた神様ってのはまた別の世界に属する存在らしい。

 最初は女性だと思ったけどよく見たら薄っすらヒゲはeおや誰か来たようだでもって、あたしの知識にはこの神様の力でなんらかの制約がかかっているらしく、あたしが知ってるこの世界の未来の出来事は、誰かに伝えようとすると、その瞬間声が出なくなり、文字で書こうとすると手が動かなくなる。

 つまり誰かに事情を話して協力を仰ぐことができず、あたしは一人でこの世界を救わなければならない。

 明らかに無理ゲーでしょうが。

 ん?来客?誰モ来てナイヨ、なんデ?

 

 ・・・

 

 …兄の家出から数日経過してから、旅のメッセンジャーが、アバン様からのうちの両親への手紙を届けに来た。

 内容は、ポップを責任持って預かりますという事と、ポップが署名したのであろう契約書の控えだった。

 ポップは割と字が汚いので間違いない。

 

 予定調和ではある。

 けど時間はないしその力もない。

 色々忘れてた間に時間は過ぎ去っていて、正直詰んだと思ってた。

 

 ☆☆☆

 

 父さんの仕事に使う、鉱石の採取はあたしの仕事だ。

 あのならず者たちがうろついてた間は、一人で外に出ると危険だと父に止められていて、しばらく採取に出かけられなかったのだが、いい加減そろそろ材料が尽きてきた。

 武器屋が武器を揃えられないとか目も当てられない。

 いつも採っている、質のいい鉄鉱石のあるポイントで、発掘の特技を使う。

 厳密には「あなほり」と「たからのにおい」の複合技で、あたしのオリジナルスキル。

 この能力なら、何か埋まっているものがある場所がピンポイントでわかるから、探す為にあちこち掘り返す必要はない。

 そしてその場所に何があったかさえ覚えておけば、目的のものは容易く手に入る。

 早いうちにこの能力が開花し、父から「オレが探すよりおまえの目の方が信用できる」とのお墨付きを貰った結果、自慢じゃないけどうちは、

 

「イナカ村の武器屋にしてはいい武器が揃ってる」

 と、そこそこ評判がいい。

 勿論それは、あたしの採取する材料の質もさることながら、父の鍛冶職人としての腕があってこそなんだけど。

 

 いつも通り、あたしの視界の中でチカチカ光って見えるポイントにタガネを当てて、槌でコンコン叩くだけで、すぐに鉄鉱石が姿をあらわす。

 そういや、神様との約束を忘れてたまだ小さい頃に母さんに、どうして父さんと結婚したのって聞いたら笑いながら、

 

「…お父さんには、キラッと光る何かがあったの」

 って言ってたから、ひょっとしたら母さんにも似たような能力はあるのかもしれない。違うか。

 そんな事より、出てきたものをリュックに数個入れて、今日はここまでにしようと、後方を振り向いて…不意に、少し範囲を広げてみようと思い立った。

 こういう勘は、大事にした方がいいのだ。

 今日は…そうだな、もう少し南を掘ってみるか。

 

 南の方にある崖の壁に、何やらチカチカ光る範囲があるので、やはりタガネと槌を使って掘ってみたら、鉱石ではなく宝石の原石っぽい石が出てきた。

 透き通ってはいるけど青白く濁った石と、同じような感じの赤黒い石。

「みる」を発動させると頭の中に、紫の縦縞の服を着た太ったオッサンが現れて解説を始める。

 

『この石はそれぞれ【白魔晶(はくましょう)】【赤魔晶(せきましょう)】といいます。

 魔界にある【黒魔晶(こくましょう)】という、魔力を無尽蔵に吸収する石が、何らかの地殻変動で地表に現れて、長い年月の間に劣化または変質したものです。

 黒魔晶のように無尽蔵にではありませんが、魔力を吸収して貯めておける性質があります。

【白魔晶】はそれでも比較的産出地が多く、その特性を生かして【祈りの指輪】などのアクセサリーに使用されますが、非常に脆く壊れやすいのが欠点です。

【赤魔晶】はなかなか産出されない貴重な石で、ある特殊な加工を施すことで魔力とともに呪文やキーワードを記憶させる事ができ、特殊効果のある伝説の武具には、ほぼ間違いなくこれが使用されています。

 店屋で売れば、【白魔晶】は410ゴールド、【赤魔晶】は980ゴールドになるでしょう』

 そこまで解説してオッサンは頭の中から消えた。

 …この仕様だけは、ホント意味がわからない。

 そもそも誰なんだこのオッサン。

 昔からだからもう慣れたけど。

 それはさておき、こんな伝説の武具に使うような材料なんか、手に入ったのはいいが、はたしてうちの父にこれが生かせるんだろうか?

 伝説の武具…うん、まだなんか忘れてるような気がする。

 まあ、一応持って帰って父さんに見せてみるか。

 役に立たなきゃ売っ払って、そのお金は母さんに渡せばいい。

 そう考えてあたしはそれを、スカーフに包んでポケットに入れた。

 

 ちょっと考えてる間に、あたしは足元の安全を確認するのを怠ってしまった。

 次の瞬間足を滑らせ、あたしは崖の斜面を滑落していた…って、ちょ、嘘でしょっ!!?

 

 ☆☆☆

 

 次に目を覚ました時、一応ベッドには居たが見知らぬ部屋で、薄汚れた毛布から不快な匂いがした…絶対これ酒呑みのオッサンの匂いだ。

 自分に移るのが嫌でベッドから出て、自分の身体を確認する。

 怪我はしてるけど手当てされてるみたいだ。

 ありがとう誰だか知らないが酒呑みのオッサン。

 この程度なら薬草のひと束くらい食べれば、一晩もすれば傷は癒えるだろう。

 食べるだけで小さい傷ならすぐに塞がるとか、この世界の『薬草』の効能は魔法レベルだと思う。

 割とえぐ味があって、あたしはそのまんま食べるのがあんまり好きじゃないが、これ実はスープにすると、そのえぐ味が逆に美味しいのだ。

 母さんがあたしたち子供の為に考えたレシピで、ポップも好き嫌い多かったけど、あれはちゃんと残さず飲んでた。

 父さんも好きで二週間に一度は食事にこれが出てくるおかげで、あたしたち兄妹、ヒョロとチビの割には、風邪ひとつひかない健康優良児だったもの。

 ともあれ自身の状態を確認した後、見るともなしに周りを見渡すと、ごちゃごちゃと雑然と剣が数本置いてある中に、うちでも見慣れた道具がある。

 それは、(ふいご)とか金床とか槌とか、うちの父さんみたいな、武器職人が使う道具。

 見ればあっちの端に炉もあるし。

 ということは、この家の人は父さんの同業者か。

 けど武器屋の娘としてこの雑然さが見るに耐えず、綺麗に並べようと一番手近な剣を手に取った瞬間「みる」が自動的に発動して、頭の中のオッサンが喋り出した。

 

『これは…【名もなき(つるぎ)】です』

 そんなもん解説する為にわざわざ出てくんな!

 

『まあ、そう言わずに。

 これは伝説の名工が打った剣で、本来作りたかった剣の、どうやら試作品のようです。

 とはいえ、さすがは伝説の名工の作、使用にはまったく問題ありませんよ。

 鋼鉄製の剣ですが、そんじょそこらで売っているものとは、品質が全然違います!

 店屋で売れば…』

 いやもういいわ。

 なんぼなんでも人様の持ち物を売れば幾らとかあんまり知りたくない。けど…、

 

「伝説の名工の、剣…!?」

「随分懐かしい呼び名が出てきたな」

 突然かけられた声に、ハッとしてそちらを振り返ると、背の高い男が立っており、睨むようにあたしを見ていた。

 

「しかも剣を見ただけで看破するとは。

 持ってたモノといいその目といい、ただの人間のガキじゃないな、おまえ」

『人間の』という言葉に、場違いに納得する。

 何故って、その男は明らかに人間ではなかったから。

 人間の形はしているけど、肌の色はほの青く、黒く真っ直ぐで長い髪の間から飛び出ている耳は大きくて先が尖っている。

 黒い眉が二股に分かれているように見えるが、よく見れば上の方にはねているのは痣のような模様らしい。

 このひとは魔族だ。

 本物は見た事なかったけど、間違いない。

 年の頃は、人間で言えば二十代後半から三十そこそこといったところか。オッサンじゃなかった。

 けど、男の特徴として際立っていたのは、その魔族の身体的特徴よりも、顔の真ん中に刻まれた、バツ字形の古傷だった。

 瞬間、前世の記憶の蓋がカチリと開くのを感じた。

 

「まあ、おまえの正体なんぞ興味はない。

 だが、答えろ。こいつをどこで手に入れた?」

 男は手にしたあたしのリュックを足元に投げると同時に、あたしのスカーフを目の前に突き出した。

 正確には、スカーフに包まれた例の石。

 あたしをどこで発見したのかは知らないが、あたしの持ち物を見たのならば、単に拾ったのではなく発掘したものとわかった筈だ。

 なら、その近くだと推測できるだろうとは思うんだが。

 まあ闇雲に探したって出てこないか。

 あたしの能力にしたって、そこに『何か』あるとわかって掘ることはできても、『何が』あるかまでは掘ってみるまでわからないのだし。

 けど、あの場所には、かなり奥までチカチカが見えた。

 そればかり掘り続けるようなバカをやらなければ、かなりの量の産出が期待できるだろう。

 あの石の特性と、目の前の男。

 この二つを重ね合わせた時、自分のやるべき事が見えた。

 

「…お答えできません」

「なんだと?」

「ですが、あなたが欲しいなら、差し上げる事はできますよ。

 そのかわり、あたしを弟子にしてください。

 …ロン・ベルク先生」

 唐突に現れた可能性に、あたしは迷う事なく飛びついた。

 武器は使えない。

 魔法の才能もないあたしは、ポップと一緒には戦えない。

 ならば。

 その戦いを後押しするくらいしか、できる事はないじゃない。

 

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 けど。

 

「諦めろ。女にゃ無理だ」

 って、次の瞬間に酒瓶(あお)りながら一蹴された。

 ムカつく。

 

 これが魔界の名工と呼ばれた武器職人ロン・ベルクと、あたしの最初の出会いだった。




と、いうわけで。
グエン編14話でのポップの台詞を読み流さず気に留めて下さった皆様が推測した通り、二人目のヒロインはポップの妹でした♪

2個目の石

名前:リリィ
性別:おんな
職業:ぶきやのむすめ
転生特典:みる、はっくつ

ランカークス村の武器屋夫婦の間に生まれた、ポップの2歳下の妹。
髪や目の色はポップに準じる(爆
小柄(ダイよりはちょっと大きくてレオナより小さい)で幼児体型。
主に年齢的な理由で、本当に年齢的な理由で、大事な事だからもう一度言うが年齢的な理由で貧乳。
↓おおまかな外見イメージはこんな感じ。
【挿絵表示】
実はイラストだけは以前からずっと公開してたw
転生者で、「ダイの大冒険」は連載時にリアルタイムで読んでた。
故に自分の兄が何者か、このまま進めば『主人公』がどんな結末を迎えるかを知っており、その運命を回避する方法を模索していく事になるわけだが、基本スペックが一般人という結構絶望的な状況。
他人にはない特殊な能力は一応特典として授けられており、けど現時点ではその特典が意味不明。
頭の中に某商人に激似の謎のオッサン飼ってる。
とりあえず兄とは違いポンコツで若干発想が腐ってるだけの普通の女の子(激爆
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