DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち   作:大岡 ひじき

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前回の話のどっかに入れようとしてたのにうっかりダイジェストしちゃってました。
時系列的にはリリィ編8話直後、グエン編14話直前くらい。
短いです。


幕間・死神の怨嗟

 冗談じゃない。

 死神人形(アサシンドール)にお気に入りの仮面を着け直しながら、ボクはイライラが止まらなかった。

 人形の頭部に埋め込まれた黒魔晶は、ボクの魔力で人形を操る為の司令中枢であると同時に、いざという時は黒の核晶(コア)に変え、大魔王バーンを殺す為の武器として、ヴェルザー様から賜ったものだ。

 今はそこに溜め込んでおいた魔力がどういうわけかほぼ空っぽの状態になっており、即時補充しないと動かすこともできない。

 予め組み込んだ呪法を使用する際に少しは消費するけれど、ボクが近くにいれば少しずつだけど常に補充される仕組みになっているから、これまで枯渇した状態になんてなったことがなかった。

 これではしばらくの間は、ボクが直接操縦する以外に動かす方法はない。

 どうやったものかは判らないが、あいつの仕業以外に考えられない。

 まったく、忌々しい小娘だ!

 

 (ドラゴン)の騎士であるという可能性のある勇者ダイが、ベンガーナ王国に向かっていると聞いて、正体を見極める為に襲撃を仕掛ける、その舞台をベンガーナと決めた。

 そのついでに悪魔の目玉を通して見たモンスターの襲撃光景で、そのベンガーナ領内にあるやけに統制の取れた戦い方をしていた村の、リーダー格と見られる少女に気まぐれで会いに行ったのが間違いだった。

 彼女には、知り合いが会いたがってるなんて出まかせを言ったものの、()()()()がひょっとしたら興味を示すかもしれないとも思っていた。

 けど、所詮は人間のしかも小娘だぞ?

 それが、出会い頭に問答無用で、こっちを殺しにかかって来るなんて普通思わないよ!

 

 ボク自身は確かに非力だ。

 だが、自分の身分を全てこの人形に映し、自身は使い魔を演じているこの現状を、見破られでもしない限りは、不死身と言ってもいい。

 言ってもいい…筈だった。

 魔界は強き生物のみの世界。

 力無き者の存在は、無いものとして軽んじられる。

 小さな使い魔のボクなど、誰も気にしない。

 それが当たり前だった。

 なのに…あいつは一体なんなんだ!?

『弱い敵から潰して攻撃回数を減らす』だって?

 あんな発想、少なくとも魔界にはない。

 そんな事を考えるのは人間くらい…いや、人間だって強いやつならそんな考えに至らない。

 いやいや、人間は弱いやつだって、なんか知らないが誇りだの良心だのと言って、弱いくせにおキレイに生きようとする奴がほとんどなのに。

 

「…あんな人間がいるなんて、信じられない」

 先ほどから、口をつくのは同じ言葉だけ。

 人間というやつは、予想以上に油断ならない種族のようだ。

 

 これから、超竜軍団から借りたドラゴン達にベンガーナを襲わせなきゃいけないのに。

 気まぐれの寄り道で、まったく面倒な事になったものだ。

 いつもは外から魔力で動かすから、慣れないと狭くて仕方ない。

 人形に着せた死神の衣装をめくり、その下のハッチを開けて、中に入る。

 一応念の為に手動の操縦席をつけたものの、実際に使うのはこれが初めてだ。

 

「このボクに屈辱を味わわせてくれた代償は、他の人間達に払ってもらうよ。

 まさか、自分が手足を動かす事になるなんて、思わなかったけど」




ベンガーナに現れた時のキルバーンは、ピロロを連れていませんでしたよね…。

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