DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち   作:大岡 ひじき

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11・武器屋の娘は狼狽する

 ここに現れた面子は、確かに勇者の剣捜索パートのメンバーだった。

 勇者ダイ、魔法使いポップ、占い師メルル、武闘家マァムに空手ねずみのチウ。あと、ゴメちゃん。

 つまりあたしがいる以外、原作通りって事だ。

 

 …それにしても勇者パーティーの女子レベル高っ!!

 生マァムと生メルル、二人ともメッチャ可愛いな!

 正確にはメルルは派手さのない美人系。

 マァムは可愛い系の童顔…なのに身体はダイナマイトな、男の夢が詰まったようなエロボディとか。

 うむ、特にそのおっぱいが実にけしからん。

 ちょっとだけでいいから触らせてください。

 

「世界最強の剣…か」

 その勇者一行の話を一通り聞き、ロン先生がため息を吐いて、一瞬何故かあたしの方を見る。

 いかん、集中集中。

 ちなみにこの場面での先生は、原作の『ロン・ベルク』とは違い、ろくに話も聞かずに帰れと突っぱねるような態度は取らなかった。

 確かこの場面の中に、『あんたは魔族だから魔王軍の味方か』みたいなポップの台詞があった筈だが、そんなわけで流れ的にもそうならなかったし。

 つかそれもし言ったらその瞬間、問答無用でぶん殴るつもりだったから、正直助かった。

 フッフフ、命拾いしましたわね、お兄様。

 兄を無条件に甘やかすダメな妹はもう居ないのです。

 

「リリィ」

 と、唐突に先生の声があたしの名を呼んだ。

 

「はい?」

「おまえが『見』たものを、そのまま言え」

 そう言うと先生は、勇者ダイに向かって剣を抜き身のまま一本放る。

 

「えっ?わわっ!」

 ほぼ反射的にだろう、それをちゃんと受け止めたダイが、(つか)を握り直して構えた瞬間、あたしは『みる』を発動させた。

 

「…【ミスリルソード】。

 魔界の名工ロン・ベルクが、斬れ味のみを追求して打ち上げた逸品。

 勇者ダイ、使用可適合。装備可能。

 ただし、全力を出しての戦いに使用して、その後も剣が使用できる確率は、0.0001%です」

「えっ、リリィ!?」

 あたしの言葉に、ポップが驚いたような声を上げる。

 ポップがうちに居た頃は、まだあたしの鑑定能力は通常の商人レベルだったのだから当然か。

 つか勿論あたし的には、頭の中のオッサンの言葉を復唱しただけなのだが、あたしが言うのを聞いて、ロン先生は眉を顰めた。

 

「なるほどな。

 これで駄目だとすれば、確かに並大抵の武器では無理だという事になる」

「…だから困ってるんだ。

 真魔剛竜剣と戦った時は、ベンガーナで買ってもらった破邪の剣に、グエンが呪文をかけてくれたから、技を放つまでは耐えられたけど、結局消滅しちゃったし…!」

 …は?今なんか変なこと言わなかったこの子?

 

「真魔剛竜剣だとおっ!!!あの剣と戦ったのか!!?」

「相討ちだった…でも相手の剣は折れたけど、こっちは剣が消滅しちゃったんだ。

 だから、負けかも…」

「“折った”!?

 店売りの剣で…真魔剛竜剣を…折ったのか…!!?」

 興奮して思わず勇者ダイの肩を掴んだロン先生が、信じられない話に呆然とする。

 いやおかしいだろ!!

 呪文で強化したってあっちはオリハルコン製の剣だぞ!

 

 確か破邪の剣って刀身は銀だった筈。

 道具として使うとちょっとギラっぽい攻撃ができるのが特徴だけど、どこにも赤魔晶は使われていない。

 鍛える際に溶岩のカケラを打ち込むとかなんとかで、銀自体が呪文や属性効果と相性のいい金属だからそういう作り方ができるだけで、他の金属ではこうはいかない、らしい。

 効果付帯は父さんの専門外だからうちでは取り寄せになるんだけど、使い勝手が良くコスパも高い剣として、どこの国でも結構な人気商品である。

 

 つか一度だけ、村に立ち寄った冒険者がうちに売りにきたのを買い取った事があるんだけど、父さんが研ぎを加えたそれに、母さんが思い切って相場より高値で店に並べたら、それでも売れたって母さんが喜んでて、逆に父さんが渋い顔をしていたのを今思い出した。

 

 もっともベンガーナ王都あたりでは、高値のつく商品の方が人気になりがちだから、安いけど優れてるって品は逆に下に見られがちなんだけどね。

 まあそんな事はどうでもいい。つか、まずい。

 

「お願いします!!

 おれの力に耐えられる強い剣を作ってください!!!

 でないと…真魔剛竜剣にうち勝つことはできないっ!!!」

 勇者ダイの言葉を聞いたロン先生の目に、魔法インゴットの話をした時以上の危ない輝きが現れ始めたからだ。

 

「フッ…フハハハハハッ!!!!

 いいぞ!!…そいつはすごい!!!

 真魔剛竜剣こそ、神が作ったと言われる地上最強の剣!!

 このオレが百年以上も追い求めてやまなかった、究極の武器そのものなのだ!!

 オレの剣で、あれと戦おうというんだな!!?

 店売りの剣で、そいつを折ったというおまえが!!

 面白い、できるぞボウズ!地上最強のけ」

「昂ぶるな落ち着けこの武器オタク!!」

 ほぼ本能的反射的に手近にあったハリセンで、我が敬愛する師の後頭部をぶん殴る。

 なんでそんなものが手近にあった、というツッコミは無しだ。

 

「お前らもオタクに餌与えんな!!混ぜるな危険!!」

 …そろそろ自分でも何言ってるか判らなくなってきたが、確かあたしの知る物語で真魔剛竜剣を折って消滅したのは、魔剣戦士ヒュンケルが貸した鎧の魔剣であり、それによってヒュンケルの武器が、剣から槍にシフトする流れだった筈。

 まあいい。とりあえず情報を整理しよう。

 なんか知らないがそっちの方で、

 

「…なあ。オレ、確かあいつの師匠だったよな?」

 とかうちの父に訴えてる残念魔族は見なかったことにして。

 

「あの…勇者様」

「…ダイでいいよ。なに?」

 心なしか、勇者が怯えている気がするのは気のせいだろうか。

 

「はい。では、ダイ。

 その戦いに使用したのが『破邪の剣』というのは確かですか?

 呪文で強化したと仰ってましたが、その呪文が何かは判ります?」

 あたしの質問に、ダイがふるふると首を振り、代わりに答えたのはポップだった。

 

「ああ、それな。

 おれも後から聞いた話だけど、確かスクルトとトラマナだった筈だ」

「…ぇ?」

 えっと…スクルトってのは防御力を上げる呪文。

 昔、ポップを守る手段のひとつとして、契約しようとして失敗したから覚えてる。

 あと、トラマナってのは確か…バリヤーとか毒沼とかのダメージを無効化する、とかじゃなかったっけ?

 

「ははっ、まあ驚くよな。

 剣の防御力を上げるとか、トラマナを戦闘に使うとか、普通は考えねえもんな」

 そうだよね!それ剣へのダメージを軽減させる目的であって、絶対に攻撃力強化じゃないよね!?

 …結論。

 真魔剛竜剣を折ったのは、勇者ダイの実力だ。

 てゆーか…、

 

「半分魔族だからかもしれねえけど、うちの僧侶は何かと規格外でさ。

 武器で戦っても相当強いし、呪文の使い方の発想がぶっ飛んでんだよ。

 おれ、補助呪文ってどっか馬鹿にしてたトコあったんだけど、あいつ見てると、意外に重要なんだなって思うぜ?」

「半分魔族?僧侶?」

 そう、絶対にさっきから、なんか知らない展開と、名前を耳にしてる。

 

「ああ。おれたちの仲間(パーティー)の女僧侶。

 グエナヴィアってのが本名らしいけど、おれたちはグエンって呼んでる。

 今は槍の修業に出てるんで、ここには来てないけどな。

 うちには他に、ヒュンケルって戦士と、クロコダインってワニのおっさんと、あとパプニカの姫さんなんてのも…」

 ポップが言う内容から考えるに、今話に出てきた女僧侶さんがダイの破邪の剣を強化して保たせた為に、鎧の魔剣の消滅イベントは消え、代わりのヒュンケルの武器になる筈の鎧の魔槍は、今はそのひとが使っているらしい。

 どうやら『ダイの大冒険』だと思ってたこの世界には、あたしの知らないキャラが堂々とレギュラー枠に居て、その影響で知らないストーリー展開が既に繰り広げられていた模様。

 

 …もっとも、それ言うならあたし自身の存在が、既に原作からは離れてるわけだけど。

 

「ん…ゴホン。そろそろいいか?

 ボウズ、同じ材質でオレが、おまえの為に作れば、その剣なら必ず真魔剛竜剣に勝てる」

 と、さっきより冷静さを取り戻したらしいロン先生が、ダイに向かって言う。

 

「えっ!!ほっ…本当に!?

 お願いしますっ!!今すぐにでも…!!!」

「…慌てるな」

 嬉しそうなダイを制しながら、ロン先生はチラッとあたしの方を見て、その視線を追ったダイが、うっと口をつぐむ。

 …ってどういうリアクションだそれは!!

 

「同じ材質でと言ったろ?

 真魔剛竜剣と同じ、オリハルコンで出来ていなければ結果は同じだ。

 話は、オリハルコンを見つけてきてからだ。

 …あいにくオレは錬金術師じゃないんでね。

 材料が無きゃ剣は作れんよ」

『錬金術』が使えても構成要素が揃わなければ無理ですー。

 

 けど、物語的には別に探す必要はなく、ここまでの勇者ストーリーが原作通りに進んでさえいれば、あっさり手に入る筈で…。

 

「あるっ!!デルムリン島だぁ──っ!!!」

 …次の瞬間、うちの兄と勇者様は手を繋いで仲良く、先生んちの天井に頭をぶつけました。

 飛び出す前に安全確認。

 ルーラは屋外で。基本だからね!?

 

 ☆☆☆

 

 改めて小屋の外に出て、2人がルーラで飛び立った後。

 

「リリィは、何か呪文が使えるの?」

 残った女性2人に話しかけられ、改めて自己紹介をし合ってから、マァムから個人的にちょっと耳の痛い質問を受けた。

 

「…いえ。

 あたしはポップと違い、魔力的にポンコツです。

 幼少の頃、本で読んで契約しようとした呪文が悉く失敗し、その同じ魔法陣を使ったポップが契約を完了させているのを見て、子供心にあたしの兄は天才なんだと思っていました」

 兄妹でなんでこんなに違うんだと思ってたけど、ポップはポップであたしの発掘とか鑑定の能力に対してそう思っていた筈だから、今思えばお互い様だったのだろう。

 けど早い段階で開き直ったホンモノのポンコツのあたしと違い、本来天才なのにそれに気付かれなかったポップのコンプレックスの方が根深かったのは、割と父さんが悪いと思ってるけど。

 

「…でも、村の自警団のリーダーはリリィなのよね?」

「設立の提案をしたのがあたしというだけです」

 訝しげに問うマァムの質問の意図が読めない。

 なんか知らないけどそれを見ながら、メルルと大ねずみ君がハラハラしたようにじっと見守ってるし。

 

「モンスターが襲ってきた時に、あなたが中心になって戦ったって聞いたわ。

 呪文ではないとすると、何か特殊な武器を?」

「致命的に腕力がない為、武器の扱いもままなりません。

 鍛治職人になる才能もないと太鼓判を押されましたので、ロン先生に弟子入りしたのは、主にものを見る目を養う為です」

 これは弟子入りした際に、誰かに聞かれたらこう言おうと、ロン先生と話し合って決めたことだけど。

 

「まあ幸いなことに、商人としての才はあったので、将来は家業を継ぐ事になるかと」

 そんなあたしの答えに、マァムがますます不得要領な顔をした。

 

「そうなんだ…でも、それじゃどうやってモンスターと戦ったの?」

「ああ、なるほど。

 先ほどからの質問はそういう意図でしたか。

 自警団のリーダーとかモンスター殲滅作戦の中心とか聞かされて、どんなゴリラが出てくるかと思ったらちんちくりんのチビガキで逆に驚いた、と」

 ふむ、ようやく理解できた。

 あたしがようやく納得すると、マァムは焦ったようにぶんぶん首を横に振ったけど。

 

「そこまで言ってないから!

 …でも…その、『魔王』なんてあだ名で呼ばれてるって聞いて、どんな子なんだろうと思ったのは、本当」

 気まずげにあたしから目をそらすマァムを見て、あたしは何とか安心させようと笑ってみせる。

 

「強くなろうと思ってたのは間違いないんですけどね。

 ポップは小さい時分には割といじめられっ子体質でしたので、あたしが守らなければと、少々暴走しすぎまして。

 あたしたち兄妹と同世代の村の子達は、その頃あたしに受けた陰しt…地味な嫌がr…報復の、トラウマが抜けていないようで、大きくなってからもおかしなあだ名で呼ばれています」

「あの…今、陰湿な嫌がらせって言おうとしましたよね…」

「しっ!メルル、そこは気づかなかった事にしないと危険よ」

「は、はい。失礼しました」

 色々誤解されているようなので、実際は大したことないと説明した筈なのに、何故か女性陣がますますドン引いた気がする。

 まあいい。話題を元に戻すことにしよう。

 

「…先ほどの質問の答えですが、あたし1人で戦ったわけではありません。

 あたしはせっせと穴を掘っていただけで」

「穴……?」

 またも目をぱちくりさせるマァムの足元で、答えがわりにほんの少し、土を砕いてみせる。

 

「本来なら商人の技能なんですけどね。

 土中に埋まってるお宝を掘り出す為の。

 襲ってきたモンスターが、幸いにも空を飛ぶタイプではなかったので、これを広範囲に発動させて、落とし込んで生き埋めにしてから、動けなくなったところを他の者に、爆弾石や飛び道具で攻撃させました」

「うわあ…」

 そこにやはりドン引いた声をあげたのは、それまで黙っていた大ねずみ君。

 えげつないのはわかってるからそんな顔すんな。

 

「ありとあらゆる状況の想定と、その対応のシミュレーションとマニュアル作成。

 あたしの存在が重要だったとしたら、そこまでの話で。

 危険からただ逃げるにしても、闇雲に逃げるよりも、訓練をしていた方が、より生存率は上がる。

 なにせ個々の戦闘力はほぼ皆無に等しいただの村人ですからね、あたし達。

 生き残る為には、備えが必要なんです」

 弱者には弱者の戦いがある。

 強い人たちに理解してもらえるかどうかはわからないけど。

 

「…私もね、故郷の村を守る立場だったのよ」

 あたしの話を聞いて、しばし考え込んでいたマァムがようやく再起動して、何故かしみじみと語り始めた。

 

「でも村にいた頃の私は、あなたみたいに、みんなと力を合わせるという発想に至らなかった。

 私1人で守るんだと、そう思っていたわ」

「…マァムは強いのでしょう?

 ならば、それでいいと思いますが」

 武闘家になってからは言うに及ばないが、僧侶戦士だった頃の彼女も、地味に強かった筈だ。

 けどあたしの言葉に、マァムは小さく首を横に振る。

 

「ううん。やっぱりそれじゃダメなのよ。

 敵の強さには上限なんかないもの。

 あなたの話を聞いて、チームワークは本当に重要なんだと、改めて感じたわ!

 …アバン先生はそういう事も含めて、私の為にこれを作ってくださったのね」

 マァムはそう言って、セクシーな太ももに巻きつけていたホルスターから、丸っこいフォルムの武器を取り出した。

 いや、実はさっきから気にはなっていたんだ。

 この時点では破損している上、転職して以降は頼る必要もなかっただろう、マァムの初期装備。

 それを、何故ここで身につけているのか、と。

 

「……これは!!」

魔弾(まだん)(ガン)というの。

 魔法の弾丸に呪文をつめて、撃ち出す事ができるのよ。

 私は攻撃呪文が使えないから、攻撃呪文を使いたい場合は、それのできる人にあらかじめ詰めておいてもらわなければいけないんだけど、その時点で誰かに頼らなければならないわ。

 今思うと確かに、私の弱点を補う武器として、設計されたものなのね。

 攻撃呪文だけでなく、他人に頼るという事までも」

 言って、なんか感慨に耽ってるけど…あたし的にはそれどころじゃない。

 見た感じ、壊れてるところはどこにも見当たらないが、本来の物語においてこの武器は、バルジ島でふたつの呪文をつめてレオナ姫を救出した際、その代償のように役割を終えたはずなのに。

 

「えと、珍しい武器ですね…見せていただいても?」

「ええ、どうぞ」

 何を疑うこともなく差し出されたそれを手に取り、『みる』。

 

『【魔弾(まだん)(ガン)】。

 先ほど持ち主の方から説明があった通り、勇者アバンが作成した、魔法をつめて撃ち出す鉄砲です。

 使用する弾丸は先端に魔力を貯めておける聖石が埋め込まれており、それに指を当てて呪文を唱える事で、その唱えた呪文を弾丸の中に詰める事が可能です。

 魔弾(まだん)(ガン)本体は、それを撃ち出す道具で、どちらも単体では役に立ちません』

 それは大体判る。破損状況は?どこが壊れてるのこれ?

 

『いいえ、どこにも壊れたところはありませんよ?

 持ち主が女性だからという事もあるでしょうが、今もすごく大事に使われているみたいです。

 現在5本の弾丸の中にベホマ、バギマ、ベギラマ、ヒャダルコ、メラゾーマが入れられているようですが、4本は空ですね。

 もっとも、属性攻撃が有効な場合ならともかく、通常の敵が相手なら、今はこれに入っている攻撃呪文の威力と、持ち主の方の物理攻撃の威力とで、与えられるダメージはそう変わらないと思いますけど』

 マジか!どんだけ強いんだよマァム!

 いやそんな事よりも、さっきちょっとだけ、引っかかる単語があった気がするんだけど?

 

『【聖石】ですね?

 基本的には大きい結晶の白魔晶を、磨き砂と一緒に魔力を遮断できる容器に詰めて、4日以上その状態で持ち歩いて振動だけで研磨した後、天使のソーマで洗浄して、最後まで形として残ったものがそれになります。

 白魔晶自体が脆い上に、少しでも魔力を吸収したら、それが抜ける時に壊れるので、最後の洗浄の段階で、結晶が残らない場合も少なくありません。

 ただ、最後まで残って聖石となったものは、白魔晶だった時よりもずっと状態が安定します』

 結構コストかかってるな!

 勇者アバン、制作費どこから捻出した!?

 天使のソーマって贅沢すぎだろ!

 それ考えると、壊れてなくて本当に良かった。

 けどやはり、疑問は残る。

 

「…どうしたの?」

 ふと気がつくとマァムが心配そうに、あたしの顔を覗き込んでいた。

 

「…あの。つかぬ事をお伺いしますが、パプニカの王女様が、魔王軍に捕らえられている間、氷漬けになっていたというのは本当ですか?」

 自分でも唐突過ぎるとわかっているが、確認の必要がある。

 魔弾(まだん)(ガン)が壊れてないとするなら、レオナ姫の救出はどのようにして行われたのか。

 

「…え?ええ、そうよ。

 もっともグエンの話では、実際には氷の形をとった、無力化の結界だったらしいの。

 グエンが見抜いて、解呪呪文(シャナク)でそれを無効化したから、レオナは無事に救出できたけど、それに気付かずに先にフレイザードを倒してしまっていたら、フレイザードの魔力から解き放たれた結界がただの氷そのものになってしまって、逆に危なかったそうよ」

 また『グエン』か!つまりアレだ。

 基本的には原作通りに話は進んでいるものの、細かい点であたしの知る物語とは違ってきていて、その変化の原因になっているのが『グエン』というひとの存在と考えて、間違いはなさそうだ。


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