DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち   作:大岡 ひじき

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多分、大多数の人にとっては要らない話です。
けど、恋愛はこの「小石」の物語の中では『最も』重要な部分なので敢えて書きます。


12・武器屋の娘はガールズトークする

「あの…このスープのレシピ、教えていただけないでしょうか!?」

 ダイとポップが陽が傾いても戻ってこないので、とりあえず父とネズミ君を先生んちに置いて、女性ふたりを我が家に連れていく事にした。

 母と大人数用の夕食の支度をして、半分以上を取り分けて残しておき、先に女たちだけで食卓を囲んでいたら、メルルの口から出てきたのが冒頭の言葉だ。

 

「あら、気に入ってくれたの?

 けど、レシピなんて大げさなものはないのよ。

 ね、リリィ」

 母さんが謙遜しながらこちらに話を振ってくるので、あたしはここぞとばかりにアピールする。

 

「鶏と玉ねぎと季節のハーブ束を煮てできたブイヨンに、すり潰した薬草と牛乳、少々のバターを加え、塩胡椒で味付けしただけですが、薬草のえぐ味が旨味となり栄養価も高い、大人も子供も大満足な我が家の定番です。

 元々は好き嫌いの多い息子の為に母が考案した愛と渾身の作ですが、その息子も今や大好物、更に食に無頓着な魔界の名工をも唸らせた一品です!」

「やっぱりそうなんですね、ポップさんの御宅の家庭の味…!是非、覚えて帰りたいです」

 そう言うメルルの頬が桜色に染まっている。

 …あたし、前世ではポプメル派だったんだよね。

 ポップとマァムもいいコンビではあったと思うし、一度勇気の告白でメルル振られてるんだけど、最終決戦で文字通りの意味で心が通じ合った2人を見たら、あたしの中でこの組み合わせしかなくなった。

 結局答えは出なかったもののそれは勇者ダイが最終的に行方不明になったからで、そうならない未来に向けてあたしが密かに邁進中なので、この世界ではメルルにはもっと頑張ってもらわねば。

 我が家の味に興味を持ってくれた事は、なかなかにいい傾向だと思うのだが、どうですかね?

 誰に聞いてんのか知らないけど。

 

「そうなのよ。

 ポップは小さい頃は、本当に野菜が嫌いで…!

 けど、リリィも作れるようになってからは、ポップは同じものでもリリィが作る方が好きだったわよね」

 そんなことを思っていたら、母さんがちっさく爆弾を投下した。

 

「へっ?そうだった?」

「そうよ。気付かなかった?

 リリィが作った時は、そうと説明しなくても、一杯は余計にお代わりしてたわよ?」

「まじか。

 っても、母さんに教わった通りにしか作ってないから、違いはないはずなんだけどなぁ」

 強いて言うなら、あたしには昔から分析能力があったから、その時々の調子でブレる母さんの目分量の味付けに比べ、あたしなら毎度、ベスト配分で作成できるって事くらい。

 創業以来変わらぬ味を提供しております。

 って違うか。

 なんだろう、メルルがジト目でこっち見てる。

 はっ。これはまさか未来のお姉さん(候補)に、厄介な小姑だと思われてしまったか!?

 いかん、これはいかん。

 メルルかマァムかを選ぶ以前に、あたしの存在でポップの結婚自体が遠くなってしまう。

 

「こ、これはアタシのポップへの偏執てk…一途な愛が伝わっていたという事かも!」

 ってそうじゃない!

 動揺のあまり何を言ってるんだあたしは!

 

「今、偏執的って言おうとし…いえ、なんでもないです」

 ますますいかん。若干引かれてる。

 うーん、女の子って難しいな。

 村で同世代の女の子っていっこ上のジンジャーくらいしかいないし、彼女とは仲良しだけど、あの子美人なのに頭の中は男以上に脳筋だからあまり参考にならないんだよね。

 つまり同世代の女の子の反応がよくわからない。

 あれ?一応前世も女だったのにおかしいな?

 

「フフッ…ポップが、リリィは自分のこと好きすぎて心配だみたいに言ってたけど、本当みたいね?」

 そしてマァムからは微笑ましげに見られてる。

 なんだこの状況。

 

 そして食事の後一度席を外して、手伝うと言った2人をやんわりと断って簡単に洗い物を済ませてから、取り分けておいた夕食をもう一度こっそり時空扉を使って先生んちに持っていったら、まだ男子たちは戻っていなかった。

 2人(とゴメちゃん)が帰ったらまずここで食事を取らせ、一旦休ませるよう指示して戻ってきたら、母と女子2人がお料理トークに花を咲かせていた。

 

「ねえ、見て見てリリィ。

 テランとロモスのお料理のレシピ、書いてもらっちゃったわ。

 今度作るからリリィも手伝ってね!」

 この世界、都会の裕福な家庭くらいしか学校へ行ける子供はいない筈だが、何故か識字率はあたしの前世の日本と同じくらい、とは言わないが高い。

 どうやら母さんのスープのレシピを教えた代わりに、2人の得意料理のレシピをもらったらしい。

 

「お二人とも、ありがとうございます。

 あたしも母も、この国から離れた事がなくて、他国のお料理は食べた事がないのでとても楽しみです」

 あたしがお礼を述べると、2人がなんだか優しく微笑んでくれた。

 

「本当に、しっかりしてますよね。リリィさんは」

「フフッ、そうね。

 ポップが、自慢の妹だって言ったのも頷けるわ。

 私には兄弟姉妹(きょうだい)は居ないから、少しポップが羨ましいかも」

…そうよ!も、もしポップさんと結婚したら、あの子が私の妹に…!

「…ん?どうしたの、メルル?」

「…いえ!な、なんでもありません…!」

 とりあえずそうこうしてるうちに夜も更けてきたので、マァムをあたしの部屋、メルルを母さんの部屋で、一緒に休ませることになった。

 

 ・・・

 

「ねえ。リリィは、好きな人…とか、居ないの?」

 唐突に切り出されたガールズトークに、あたしは思わず固まり、それを口にしたマァムを見つめる。

 正直、メルルならともかくマァムから、こんな話題を提供してくるとは思ってなかった。

 

「え…居ませんけど、唐突ですね」

「そ、そうよね、ごめんなさい」

「構いませんが…あたしに聞くからには、マァムには居るんですか?」

 忘れていたがそういえば、マァムにも選択肢は存在するんだった。

 というか最初の頃の展開ならマァムにはヒュンケル一択だと誰もが思っていたに違いない。

 

「よく…わからないの。

 ポップには、ヒュンケルを好きなんじゃないかって言われたんだけど…」

 けど、実際のところ、最終戦の頃にはマァムの気持ちはそれほど育っていなくて、しかもヒュンケルは自分には誰も幸せにできないという負い目を抱いたまま、秘めた想いを諦めてしまう流れだった筈。

 けど、何度か自覚なしに二人の世界に入っていた事から、マァムにだってそれなりの気持ちはあったように思えたから、ヒュンケルがまっすぐ自分の気持ちとポップに向き合う姿勢さえ見せてくれたらと、正直あの辺の展開には納得いかなかった。

 

『諦めんなよ、諦めんなよお前!

 どうしてそこでやめるんだそこで!

 もう少し頑張ってみろよ!

 ダメダメダメダメ諦めたら!

 あともうちょっとのところなんだから!』

 と当時は紙の上のヒュンケルに対して、元テニスプレイヤーみたいな事を思っていたし。

 

「…ポップの言葉で意識はしたけど、好きかどうかまではわからない、と?」

 だとしたら、自分で自分の首絞めたよ、ポップ。

 おまえが言い出さなきゃ、この人は未だにそれに気付いてないだろうから。

 マァムのポップの告白の答えに対し、前世で見たネットでは叩く声もあったが、結局のところあの最終決戦の告白の後、この人が答えを出せなかったのは、その気持ちがまだそこまで育ってなかった…言ってしまえば男どもが彼女の気持ちを、女として育てられなかった事が一番の原因だと思う。

 この人、カラダは大人だけどそういう面に関しては、全然成熟してないんだもん。

 カラダは子供だけど中身のあたし、前世では痛い趣味を通じて彼氏がいた事もありますから、それなりにはわかりますよ。

 まあ『リリィ』として13年生きてきて、実際に自分がする『恋』はもう忘れてるというか、知らないけど。

 

「そうね…というか、私の今感じている気持ちが『好き』という事なのか、それとも違うのか、それ自体がよくわからなくて。

 …初めて会った時は敵だったけど、怖いという気持ちは起きなくて。

 寂しそうな、悲しそうな目をしている気がして、何か力になってあげたい…そばにいてあげたいと思ったのは、確か」

 言葉にする事で、考えがまとまる事もある。

 考えてみれば、そんな事を話せる相手も、原作のマァムには居なかった。

 …否、彼女自身はその相手をポップだと思っていただろうが、悪いが男と女では明らかに、話を聞くスタンスが違うのだ。

 

 女が話をする時、相手に求めるのは、単に聞く事と肯定だけだ。

 しかし男の場合、相手に話をする事で解決を求める傾向にあり、だから女が単に聞いて欲しいだけの事を、無意識に相談と受け止めてしまい、『これはそうじゃない』『こうした方がいい』などとと意見を述べてしまう。

 男にしてみれば真剣に考えてやってるのに相手が響かない、女にしてみれば肯定して欲しいのに意見されるという、すれ違いによる不満が生まれるわけだ。

 つまり、女が気持ちを吐き出したい時、その相手に男は不適なんだって事。

 

 まあだからと言って『男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛すればいいと思うの』などという極論に走るつもりは毛頭ないが。

 それはさておき、そんな事も踏まえてあたしは、マァムの話を黙って聞くスタンスを取る事にした。

 まあ、聞かなくとも事情はわかっているけど。

 

「…けど、グエンと話をしてるヒュンケルは、私たちと話している時よりもずっと、砕けた表情をしていたわ。

 それを見た時、少しだけ…胸が、痛くなったの」

 …………は?

 え、ちょっと待って。

 ここでも『グエン』なの!?

 てゆーかアンタ何やってんだよ『グエン』!!?

 異分子のくせになんでレギュラーキャラの恋愛相関図に参戦してんの!?

 

「私、修業の為に一時期、パーティーを離れていて…戻ってきた時、2人が一緒に修業に出たと聞いて、私…やっぱり胸が苦しくなったわ。

 なんだかすごく、ドキドキして…!

 これって、やっぱり私、彼のことを好きで、嫉妬してるのかしら?

 それとも私たち以上に彼のことを、理解している人がいる事に戸惑ってるだけ?」

 …けど、これって悪くない変化じゃないだろうか。

 本来の流れならば、マァムがその辺を考えるに至るのは最終決戦の前、一度敗走して、囚われの身になったヒュンケルに対する想いを、エイミに聞かされての事だった筈。

『グエン』の立ち位置がどこになるかはともかく、その時期が早まるって事は、このマァムには原作と違い、考える時間が、もう少しあるって事だから。

 とりあえずは、

 

「…どちらにしろ、大切に思わない相手に対して、普通はそこまで気にかけませんよね?」

 そう、無難に言っておく事にした。

 

 ☆☆☆

 

 その頃。

 

「おまえ、おれを船か気球と勘違いしてんだろ!

 ルーラの連発でもうヘトヘトだよ!!」

「ごめんね、ポップ。

 でもロモスの王様に、ちゃんと報告できて良かった」

「ロモスの国宝を剣に変えちまうわけだし、そこらへんのケジメはきちんとしとかねえとな。

 …あ〜、それにしてもうちの薬草スープ、やっぱ美味いな〜…!

 これ食うと、帰ってきたって気になるぜ!」

「へえ…薬草って、こんなふうに美味しくなるんだ。

 美味しいし、元気になる気がするね」

「ああ。これは母さんが作った味だけど、リリィが作るやつはもっと美味いんだぜ!」




多角関係、継続中…!
ただし主人公とは関わりのないところで(爆
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