DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち   作:大岡 ひじき

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23・武器屋の娘は魔獣に懐く

 猛攻の中、なんとか体勢を整えたダイが、自身に迫るハドラーの爪を斬り払った。

 それはどうやら身体の一部であったようで、ハドラーの拳から、魔族の青い血が飛沫(しぶ)く。

 

「それがおまえの新しい剣か…いいだろう。

 次の一撃で決着をつけよう。

 このオレの右腕に宿る力と、おまえの剣、どちらが上かをな!!!

 同時に試させてもらうぞ!!

 神が造ったと言われる究極の生物、(ドラゴン)の騎士の一撃で、この超魔生物ハドラーの、戦闘兵器としての完成度を!!!」

 そう言って構えた右腕の拳の、血の滴る傷口が泡立った。

 どうやら、短時間で傷が治ってしまう仕様らしい。なんて厄介な。

 けど右腕に宿る力とは、これのことを言っている…わけではない、よね?

 そうこうしているうちに、手の感覚が戻ったのだろう、ダイはハドラーを睨みつけたまま、剣を右手に持ち替えた。

 

竜闘気(ドラゴニックオーラ)!!!!」

 紋章の力を剣に伝わせながら、再びアバンストラッシュの構えを取る。

 

「鬼岩城を破壊した技はおそらく大地斬…。

 あの剣でアバンストラッシュを放つのはこれが初めてだ」

 使い魔を肩に乗せたキルバーンが、どこか楽しそうに呟いた。

 ミストバーンは黙ったままだが、なにげに瘴気が濃く感じられるところを見ると、やはり気を張り詰めて戦況を見守っているようだ。

 慣れればこの男、思ったよりわかりやすいな…などと一瞬呑気なことを考えたわたしだが、すぐに気を取り直して、彼らを牽制する。

 今、ダイに手を出すつもりはないようだが、だからといって油断はできない。

 もっとも人間のように種族的に弱い生物とは違い、魔族やそれに類する魔界の知恵あるモンスターは、自身の力を誇示するためか、敢えて余裕のある行動を取りがちな習性があるように思う。

 悪く言うなら、慢心癖があるのだ。

 その点で余裕がない分、人間の方が卑怯というか、手段を選ばないものだ。

 良く言えば、人間の戦いは常に全力って事。

 命かかってんだし、当たり前っちゃ当たり前なんだけどね。

 その法則に従えば、彼らはこの時点で下手な横槍は入れないだろう。

 むしろここで一番横槍を入れる可能性が高いのがわたし…ってやかましいわ!

 ふと、なんの脈絡もなく、ルーラの修行をした時のマトリフ様の言葉が頭に浮かんだ。

 

『てめえ、僧侶のくせに頭ん中は俗物だよな…』

 …わたしはいいのよ!

 僧侶とはいえ、どうせ世間の垢にまみれた、汚い大人なんだから!

 未来ある子供の純な魂を守れるなら、俗物だろうが卑怯者呼ばわりだろうが、大いに結構よ!!

 ええ、完全に横槍入れる気満々だわ、悪い!?

 

 竜闘気(ドラゴニックオーラ)を剣の先まで充分に行き渡らせ、ダイがハドラーへ突進する。

 

「アバンストラッシュ!!!!」

「むうぅん!!!!」

 それに対してハドラーは、先ほどショルダーアタックをかましてきた時と同じくらいまで闘気を高めると、先ほどの傷がもう塞がった右腕で、ただブロックしただけのように見えた。

 …本来ならば、ここで勝負が決していた筈だ。

 アバンストラッシュは全てを斬る技。

 生身の体で防ぎきれるはずがない。なのに。

 

 ガキイィィン!!!

 

 響いたのは、明らかな金属音。

 次に、ぶつかり合って弾けた闘気が衝撃波となり、わたしの足を一歩退かせた。

 慌てて地面を踏みしめ直し、顔を上げたわたしの目に飛び込んできたのは、竜闘気(ドラゴニックオーラ)を纏わせて放たれたアバンストラッシュの一撃を、完全に右腕一本でブロックしきった元魔王。

 その腕が、まるで虫でも払うように、ダイの身体を振り払う。

 反射的に飛び出したわたしは、地面に叩きつけられる寸前のダイの背中をなんとか受け止めた。

 …結局は二人揃って地面を転がる結果になったけど。

 お互いの身体を支えあうように立ち上がりながら、状況を確認し合う。

 

「その剣はオリハルコン製と聞いたわ…それでアバンストラッシュを放ったのに斬れないなんて…!」

「うん…今、確かになにか、金属的な衝撃を感じた…!!!」

 つまり、さっきの金属音はわたしの空耳ではなかったという事だ。

 

「…フフッ、そうだ。

 ダイ、オレも持っているんだよ。

 おまえの剣に勝るとも劣らない伝説の武器…覇者の剣をな!!!!」

 それは、確かダイの使える剣の候補として名が挙がり、ロモスの武術大会の賞品となっていると聞いて、慌てて飛び出したダイとポップが、結局手に入れられなかったものの筈。

 

「ロモス武術大会の賞品はニセ物…。

 …本物はここだっ!!!

 このオレの…右腕の中にあるのだあッ!!!!」

 言って、感覚としては袖の中に入れておいた道具でも振り出すような動きで、ハドラーが下に向かって一度、腕を振る。

 そして次の瞬間その拳の先に、ダイの剣と同じ輝きを放つ刃が…()()()()()

 

「ぬおおおおッ!!!!」

 更にハドラーが闘気を高め、それをわたし達の方へとぶつけてくる。

 

「熱っ……!!」

 衝撃波だけでなく激しい熱を感じて、わたしはダイを抱き寄せた。

 

「グエンっ…!」

「…スカラ!」

 抱き込んだついでにダイの身体全体を防御膜に包む。

 わたしの鎧なら、魔法や属性攻撃は無効化できる。

 そしてバランの時に学んだ事だが、闘気による攻撃は基本、物理に近い。

 フバーハをかけるよりこちらの方が効果的だろう。

 わたしの魔法力に余裕があれば、迷わず両方かけてあげるところだけど。

 

「この暗黒闘気は…まさかっ!?」

「……魔炎気!!!!」

 キルバーンが驚いたように呟いて、それにミストバーンが一言で答えるのが聞こえた。

 ああ、そういう事ね。

 話に聞いていた限り、ハドラーは元々、炎熱系の呪文に長けていた。

 さっき、わたしの氷結による拘束が効かなかったのは、その身に纏った彼の闘気が炎を帯びていたからに違いない。

 そして、竜闘気(ドラゴニックオーラ)を纏わせて放てば店売りの剣ですら真魔剛竜剣を折れる技であるアバンストラッシュが弾かれたのは、相手が同じ材質の剣だったからだけではなく、そこにやはり同じだけの闘気を纏わせていたからなのだろう。

 

「今の一撃でわかった!!

 もはやオレの力は、(ドラゴン)の騎士に少しも劣らぬ!!!

 ましてや、同じ強度の武器があれば、こちらの方が戦力が上ッ!!!」

 どんな理屈よ!体力か、体力的な差か!!

 とつっこむ間も無く、その言葉を証明するように闘気が高まる。

 …まずいな。

 さっきハドラーの攻撃で肩のパーツが砕けたところから、炎が僅かに入り込んできてる。

 ハドラーがそこをピンポイントで狙ってきていたなら、間違いなくわたしは焼き殺されているだろう。

 バルジ島でヒュンケルが、鎧にあけられた穴からメラゾーマを流し込まれたと言っていたし。

 

「だが容赦はせんっ!!!

 いかなる状況にも慢心せずに戦いぬくことが、おまえ達への礼儀というもの…!!!

 うけよ、ダイ!!!

 覇者の剣をあやつった、このハドラーの一撃を!!!」

 ハドラーの全身を魔炎気が覆い、振り上げた右腕にそれが集中する。

 その右腕と一体化した伝説の剣が、炎を纏う。

 恐らくは手首がぶれないようにだろう、それを左手で押さえるように握り、ハドラーは真っ直ぐこちらに向かって突っ込んできた。

 そして。

 

「超魔爆炎覇!!!!」

 

 魔炎気を剣に纏わせて攻撃を仕掛けてくるそれは、本来(ドラゴン)の騎士のみが操れる剣と魔法の同時使用という概念、即ち魔法剣と、同じ発想だった。

 それに気がついた瞬間、わたし達の目前に迫ったのは、炎か、剣か、それともハドラーの闘気の圧力そのものだったのか。

 それらは一瞬にして混じり合い、その衝撃に耐えきれなかった空間そのものが爆発したように、わたしには感じられた。

 

 ・・・

 

 …あんまり考えてなかった。

 気がつけばルーラでなんとかダイを連れてあの攻撃から逃れ、今は彼を抱えたまま、島の上空を飛んでいる。

 むしろ、考えてたら死んでたから仕方ないけど、もう魔法力も残り少ない。

 決断を急ぐ必要がある。

 

「…グエン?」

「ダイ…今は逃げるわよ。

 わたし達では、あのハドラーには勝てないわ。

 …くっそ、冗談じゃない。

 慢心癖のある魔族からそれ以上の生き物になったくせに、その慢心癖がなくなって全力でかかってきたら、どこに付け入る隙があるっていうのよ。

 開き直るにもほどがあるっつーの!」

 わたしの言葉に、ダイが丸く大きな目を驚きの形に見開いた…いや、違う!

 

「…どこへ行く、グエン!

 そっちは東だ、逃げ帰るなら方角が違うぞ」

 すぐ後ろからかかる無駄に落ち着いた声音に、背中に冷たい汗がにじむ。

 同時に剣の切っ先が身体のすぐ横を掠めた。

 殺られる!

 と思ったと同時に、鳩尾の上あたりを結構な力で叩かれて、腕に抱いていた体温が離れた。

 慣性でその場から少し離れた位置まで飛ばされ、空中で急ブレーキをかける。

 ハッと気付くと、少し離れた宙空に浮かんで、ハドラーとダイが対峙していた。

 

「ダイッ!?」

 見れば、ダイはほんの少しずつ移動して、ハドラーの視界からわたしを外そうとしている。

 この隙に逃げろとでも言いたいのだろうが…馬鹿!

 子供が、そんないっぱしの男みたいな真似しなくていいから!10年早いのよ!!

 

「いつの間にか紋章の力無しで、飛翔呪文(トベルーラ)を使えるようになっていたか…相変わらず、油断のならぬやつよ」

 ハドラーはそんな台詞を、何故か嬉しそうな声で吐く。

 そう、ダイは恐らくもう、紋章の力は尽きている筈。

 スタミナ的な面では確実にこの魔獣の方が上、これ以上戦えば間違いなく殺されてしまう。

 どうすればいい?考えろ、その為の頭だろう。

 ふと、視界の端に2つの黒い点が見えた。

 それはこちらに、少しずつ近づいてきている。

 あれは……!!

 

「この勝負…もらったっ!!!!」

 ハドラーが、抵抗もままならないダイに向けて、もう一度先ほどの技を放つ。

 そのタイミングで、わたしも最後の魔法力を、()()()()()()放った。

 

 

「バシルーラッ!!!!」

 

 

「なにィッ!!?」

 絶対に外す筈もない距離で目標を見失ったハドラーが、驚きの声をあげる。

 一瞬で魔法力に弾き飛ばされたダイの身体は、飛ばされた先で、太く逞しい両腕に受け止められた。

 ああ、これでもう大丈夫。

 

 魔法力を全て使い果たして、トベルーラを維持できなくなった身体が、途端に重力の蔦に絡みつかれ、逆らうすべもなく落ちていく間に…わたしの意識は、黒く塗りつぶされた。

 

 ☆☆☆

 

 グエンの身体が冷たい海に落下して、大きな水柱を立てる様子をただ見つめながら、彼は自分を振り向いたその異形を睨みつけていた。

 

「獣王クロコダイン…そしてポップか。

 なるほど、今度は貴様らが相手か…!!?」

 だが、そう問うたハドラーに答えず、クロコダインはダイの身をポップに預けると、眼下の水面に向けて闘気弾を放つ。

 

「お、おっさん!!?ちょっと待っ」

 それは激しい爆発のような水柱を、先ほどグエンが落ちた時とは比べ物にならないほどの高さに跳ね上げた。

 

「なっ…なにっ!!?」

 更に水飛沫が煙のように視界を塞ぎ、それが晴れた時にはもう2人…否、3人の姿はどこにもない。

 

「あの獣王が、いきなり逃げを打つとは…!」

 …だが、ハドラーは唇に、どこか嬉しげに笑みを浮かべていた。

 超魔爆炎覇を放とうとしたあの瞬間、いかなる防御も不可能と悟ってか、ダイはとっさに攻撃をしかけようとしていた。

 残る力も僅か、ささやかな紫電を剣に纏わせた、あの技の構えはまさに…ギガブレイク。

 

「…さすがは勇者。こうでなくてはな…!

 良かろう。こんなところであっさり死なれては、この身を魔獣に変えた甲斐もない!」

 

 ・・・

 

「仕方ないなぁ…腹いせに、あのコだけでも回収しとこうっと。

 人質としての役にも立たないんなら別に要らないけど、せめて泣かせてやらなきゃ気が済まないからね。

 …ミスト、キミはハドラー君の方を見てやりたまえ」

 傍のミストバーンにそう言って、キルバーンは先ほど、ポップを待ち受けた場所まで戻った。

 だがその場所に、あるはずのものがない。

 

「……え?居ない?いや、呪法檻ごとない。

 参ったね。ボクらがあのオネエサンに構ってる間に、まんまと奪い返されたってわけだ。

 あ〜あ、こりゃバーン様に怒られちゃうなあ。

 …一度狙った獲物を、二度も逃がすなんて、生まれて初めてだ。

 妹は勿論だけど、兄の方も相当許し難いね…!」

 本人が聞けば『誤解だ!』と叫びそうな言葉を呟きながら、『キルバーン』は憎々しげに顔を歪ませた。

 

 ・・・

 

 3人分のルーラの軌跡が島から離れたのを見計らい、クロコダインがほうっと息を吐く。

 身を隠していた氷塊の陰で傍を見れば、この窮地を脱した少年たちが、俯いて肩を震わせていた。

 

「…おれ、グエンを置いて逃げたくなかった…」

「…おれだって同じだ、ダイ。

 妹を残して逃げたくなかった…けど、他にどうすることもできなかったんだ…!!」

 何もできなかった自分を責める少年たちに、クロコダインが穏やかに言葉をかける。

 

「…わかっている。

 だが、窮地の中で『一番の正解』を示したリリィの度胸と、自分の命と誇りを捨ててもダイを守ろうとしたグエンの献身。

 どちらも汲んでやらねばと思ったからこそ、オレはためらうことなく逃げを選んだのだ。

 …だから、責めるなら、オレを責めていい」

 だが少年たちは、彼を詰るようなことはしなかった。

 そのかわり2人とも、その大きな身体に取りすがると、それまで耐えていたものを吐き出すように、大声で泣きだした。

 

 ☆☆☆

 

「……どうやら本当に、ただの人間の小娘らしいな」

 頑丈に見えた呪法檻の格子をあっさりとこじ開けたその腕の中に、すっぽりおさまった(檻が破壊された途端外気の冷たさに凍えそうになりしがみついたら抱き上げられた。そうだったよ!雪が降らないだけでここ、オーザムよりも北だからね!)あたしを見て、そのひとは少しがっかりしたように言った。

 

「それは一目見ればお判りでしょう?

 他のなんだと思って連れて来たんですか」

 至極当然の疑問を口にしたあたしの問いに、一瞬そのひとは目を丸くする。

 だが次には何故か、面白そうに唇に笑みを浮かべて答えた。

 

「あの忌々しい死神がやけに拘っているようだったから、ささやかな嫌がらせのつもりで横取りしただけだ」

 嫌がらせだったんだ。いいぞもっとやれ。

 ただし、あたしに関係ないところで。

 自分に起きている完全に想定外の出来事に若干ついていけずにいるあたしの様子をどう見たものか、腕の中のあたしを観察していたそのひとは、笑みを浮かべたまま言葉を続ける。

 

「まあしかし、『ただの』という言葉だけは、撤回した方が良さそうだな」

「……どういう意味ですか?」

「こうして魔獣の腕に捕らわれた人間のしかも女が、怯えるでも睨むでもなく言葉を返してこられるだけでも、屈強な戦士並の心臓の持ち主だと思うがな」

 しまった。

 多分自分のスペックでは絶対に会わずに終わるだろうと思っていた前世最萌のキャラを間近に見て、怖そうだけどやっぱカッコいいよなー、なんて呑気に眺めてしまっていた。

 やはり思った通り、吹っ切れた感から漂う大人の色気、まじでハンパない。

 加えてこの至近距離、今のあたしが精神(なかみ)はともかく肉体的に、13の小娘でなく充分に成熟した大人の女性だったら、鼻血吹いて卒倒しててもおかしくなかった。

 異性に対するこういった感覚は、やはり肉体由来の反応なんだなとつくづく思う。

 

「ただ愚かでものを知らないだけの子供、という可能性の方が高いとは思われませんか」

 そう、子供(ガキ)だからだよ。それでいこう。

 今更怖がる演技などしたところで白々しいだけだ。

 けど、そのひとはあたしの言葉を小さく鼻で笑い、その指先であたしの頭を、弄ぶようにつつく。

 髪が乱れる、やめれ。

 

「少し前ならば、オレもそう考えたろうな。

 だが、そんな事を言うヤツが本当に愚かだった事例を、残念ながらオレは知らん」

 あ、これと似た台詞、確かオリハルコンのナイトが、ポップに向かって言ってた筈だ。

 禁呪法によって生まれる生命体には創造主本人の精神状態が出るのだとは、確かポップの師匠マトリフ様の台詞だったっけ。

 

「…そもそもオレが何者か、知らぬわけではあるまい?

 かつてこの地上を支配せんとした魔王、人の子など何百人も殺している。

『ただの』小娘ならば、暴れて泣き叫んでいてもおかしくなかろうし、そうであればオレも躊躇なく、我が地獄の爪でその身体を引き裂いているところだ」

 …これは、どう解釈すべきなんだろうか。

 一応は落ち着いて、大人しく抱かれている事が正解だったと、考えていいんだろうか。

 てゆーか、そもそも抱きついたのあたしだし。

 寒さには勝てなかったし。

 逞しい異形の腕の中から、その持ち主の元魔王、今は超魔生物に改造済みの魔軍司令ハドラーの顔を見上げながら、あたしは今の自身の状況に想いを馳せた。

 どうしてこうなった。

 …けど、まあ、とりあえず超魔生物体温高い。寝そう。

 

 ・・・

 

「…まったくもって、豪胆な小娘よ。

 しかし、こいつをどうすべきか…。

 慰むにはいささか寸が足りぬし、飾りたてて愛でるほどの美姫でもなし。

 それならば、先ほど海に叩き込まれたあの跳ねっ返りの方が余程使えようし…さて…」

 その体温と腕の安定感で、あっという間に眠りに落ちたあたしを見て、ハドラーがそう呟いた事など、あたしには知る由もなかった。




【悲報】元魔王様、ロリコン疑惑がにわかに浮上する

…たまたま見つけた仔猫が懐いてきたからつい抱き上げた、くらいの感覚のようです。
他意も邪心もない…はず。

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