DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち   作:大岡 ひじき

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関係ないがうちのメルルは、若干妄想癖がある気がする。
イメージは『ぶらり信兵衛道場破り』のおぶん。
って誰も知らねえよな!!

あとクロコダインのガルーダは、実は結構女好き。
性格は恐らく『むっつりスケベ』。


34・武器屋の娘は空気になりきれない

 サババ漁港はここで間違いなさそうだが、どうやら事件の起きている現場からは少し離れた場所に出てしまったらしい。

 位置を微調整する前にダイが扉をくぐってしまい、あたしの肩を抱いたままのグエンさんを含めた全員がそれに続いてしまったので、ここからは歩きになる。

 ふと見れば数百メートル先の方で、黒煙が上がっている。あれだ。

 

 …つか、あの時の『おじさん』…確かリンガイアの将軍だっけ…が登場してたって事は、一緒にいた自己顕示欲高めの『お兄さん』が、勇者一行に暴言吐いたあと飛び出して、先に戦ってる流れって事か。

 ならば、あの黒煙の上がっているあたりに居るのは間違いないだろう。

『北の勇者』と、そしてオリハルコンの戦士達が。

 

「そうか、やっと思い出した!

 あん時、おまえを村まで連れてきた親子連れか!!

 て事は、あいつ(ノヴァ)があン時のガキだったのかよ!?

 あンの野郎〜…あいつのお陰でおれ、後で親父にブン殴られたんだぞ!!」

 …唐突に、あたしの兄は何を言いだすんでしょうか。

 流れからすると、例の森で迷った時の話で、確かにあの日、あたしを探すのを一旦諦めて、大人を呼びに村に帰った事を、ポップが父さんに叱られていたのは知ってるけど、それがなんで『お兄さん』のせいになるのか。

 

「父親の方は元々うちが目的地でさ、息子の初めての実戦に使う剣を誂えに、うちの評判聞いてわざわざリンガイアから来たって言ってたんだ。

 なのにその肝心の息子が『新しい剣なんか要らないからあの子を連れて帰る』って言い出して、それ聞いて瞬時に頭に血がのぼったうちの親父に、2人とも追ん出されたんだよ。

 で、おれが責任持って連れ帰らなかったからリリィに悪い虫がついたって、いきなりガツンてわけ。

 …くそ、思い出したらますますハラ立ってきた!

 あいつの顔は忘れても、あん時の恨み、おれはまだ忘れてねえからな!!

 一発ブン殴らねえうちに死なれちゃかなわねえ、先行くぜ!!」

 …なんかうちの兄、ツンデレみたいなこと言って飛翔呪文で飛び出して行きましたけど。

 つか同じ出来事(エピソード)について、あたしの認識と兄の記憶に、何やら誤差が生じている。

 確かにあの後すぐ母さんに寝かしつけられて、ポップが怒られてた事を後から知って、父さんに猛抗議した覚えはあるが、あの時の父さんの怒りにそんな理由があったのか。

 所詮子供の言ったことだろうに、当時8歳の娘に悪い虫とか…とつっこみたい気分満載だが、その前にポップが飛び出していってしまったのでそれ以上確認のしようもない。

 ついでに言うと、ポップの後を追ってダイが、更にあたしの肩をようやく離したグエンさんがヒュンケルさんと手を繋いで、それぞれ飛んでいった。

 最後に魔法の筒からガルーダを出したクロコダインがマァムを肩に乗せている。

 残されるあたしとレオナ姫とメルル、そして賢者のエイミさんは、このまま歩いて現場へと向かうことになるのだろう。

 グエンさん多分、あたしを守ると言った事を、多分この瞬間に忘れたと思うし。

 てゆーか今気づいたけどこのパーティー、女性率やけに高くない?

 

「…あの自己中勇者、思いこみが激しいのは昔からだったのねぇ〜。

 この後、おかしな接触をしてくるようなら、パプニカ王家の名前で守ってあげるから、遠慮なく言いなさいよ、リリィ?」

「は?」

「リリィさん!

 私、あのひとが姻戚になるのは嫌ですわ!!」

「へ?」

 ううむ、悪いが女の子達の言ってることがまるでわからない。

 そして少し後ろの方でエイミさんが、

 

「やっぱり、一番最初にヒュンケルを排除しなければ…!」

 となにやら物騒な事を呟いた気がするのはきっと気のせいだ。

 排除ってなんだよ。

 アナタ、確かヒュンケルに惚れてたりなんかしてなかった?

 それともグエンさんがヒュンケルさんとコンビで行動してる事で、この辺の展開も違ってきてるのか?

 何せ、あたしの知らない変化が起こってるのは、まず間違いなくグエンさん絡みだし。

 と、あたし達の頭上に急に影がさしたと思ったら、クロコダインがあたしの身体をひょいと掴み上げて、マァムが乗ってるのと反対の肩に担いだ。

 

「おまえを守ると言ったグエンが、さっさと行ってしまったからな。

 あいつの言葉の責任くらいオレが取るさ。

 2人とも、しっかりつかまっているんだぞ?」

 おおう、なんというイケメン。

 あたしはクロコダインに1票入れるよ!

 ちなみにアンケートには願望じゃなく予想を入れてくれよな!ってなんの話だ!!

(注:この話を投稿した当時、グエンのヒーロー予想のアンケートを行なっていました)

 

 クロコダイン+マァムとあたしを下げて飛ぶガルーダさんはとっても辛そうだった。

 うん、なんかゴメン。

 

 ☆☆☆

 

 原作と違い、目的地まで少しの距離だったせいか、ガルーダさんはクロコダインを離した後、びたんと地面に倒れることはなかったが、やっぱりゼーゼー言っていた。

 

「…しばらく休んでていいぞ。

 少しの間、おまえがリリィを守れ!

 リリィ、ガルーダの陰に隠れていろよ、いいな!!」

「了解です!」

 クロコダインの肩から下ろしてもらいつつ、その言葉にあたしが返事すると同時に、ガルーダさんもくわあ、と声を上げた。

 ちなみに自分で軽々と飛び降りたマァムは、とっくに先に着いたみんなの方へ駆けて行ってる。

 とりあえずあたしはポーチから薬草を取り出すと、ガルーダさんの嘴の前に差し出した。

 これはグエンさんと一緒に転移する前に、なにがあるかわからないからとロン先生に、結構大量に渡されたものだ。

 ちなみに、あたし自身には必要ないが念の為にと一緒に持たされた魔法力回復用の白魔晶数個の中に、いつかの『ホイミスライムの心』が混じっていたんだが、これは単に間違えたのか、それともホイミスライムに転職しろという事なのか。

 後者ではないと信じたい。

 ガルーダさんは少し考えるように首を傾げてから、嘴であたしの指を挟まないよう注意しつつ、ぷちぷちと薬草を食んだ。

 あっという間にひと束食べ終えておかわりを要求されたが、心なしか羽毛がツヤツヤになった気がする。

 

 なんて事をやりつつ最前線に目を向けると、青銀の長髪を靡かせた見覚えのある青年…あの頃より背も伸びて、いくらか大人っぽくなっているが、間違いなくあの時の『お兄さん』だ…が、折れた剣に闘気を纏わせ、ヒムに向かって切りかかっていくところだった。

 余裕の表情でそれに構えるヒム。

 だが次の瞬間、2人の間の空間に、この世界では初めて見る女王(クイーン)が割り込んで、青年に向けて光を放ち、それを真正面から全身に浴びた青年は、一瞬にして炙り焼き状態になった。

 

「ノヴァ〜〜ッ!!!!」

 受け身も取れず地面に落ちた彼に、ダイとポップが駆け寄る。

 これ確か、ベギラゴンを針状に放出するとかいう割とえげつない技だったよな。

 名前忘れたけど。

 

「…ニードルサウザンド!!

 あんなレベルの相手にかますとはかわいそうに…」

 そう、それ。

『みやぶる』を使う前にヒムが教えてくれたけど、正直技の名前より、今、気になることがひとつあるんだが。

 

「…あなたの遊び相手にはちょうどいいのでしょうが、これ以上主賓を待たせるのも失礼でしょう」

 女王(クイーン)はその場に勇者パーティーがひと通り揃っている事を確認するようにぐるっと全員を見渡した。

 

「遅ればせながら、自己紹介させていただきます。

 我らは魔軍司令ハドラー様の忠実なる下僕…死の大地を守護する、ハドラー親衛騎団!!

 私はその行動を統括する女王(クイーン)…アルビナス!!!」

「って、ちっちゃ!」

 我慢できずに思わずつっこむと、全員の目がこちらに向いた。

 その女王(クイーン)と真正面に向かい合っていたダイが「…うん、実はおれもそう思ってた」とか呟いてるし、例の僧正(ビショップ)が「母上!?」とか叫んでこっちに来ようとするのを地味にヒムに止められてるし、クロコダインが『あちゃー』みたいな顔してるし、ポップが明らかに『お前が言うな』と表情だけで訴えてるけど、ほんとそれどころじゃない。

 だって…小さいのだ。

 原作の女王(クイーン)は、他の男性型の戦士達と比べて同じくらいか、ほんの僅か小さいくらいに設定された、手足は普段は収納されてるけどスラッとしたイメージの美人さんだった筈。

 しかし、今この場のアルビナスは、姿の見えていない城兵(ルック)とは比べ物にならないにしても、他の駒達と比べると、明らかに寸が小さかった。

 ヒムとの対比で考えると、恐らくあたしと同じくらいの大きさしかない。

 顔だけは原作とそう変わらないのが微妙にアンバランスだ。

 そしてあたしのツッコミに対し、アルビナスの人形の表情が、確実にムッとしたように変化する。

 

「あなたのせいでしょう、あなたの!」

「へっ!?」

 いきなりそう言われて、あたしは思わず間抜けな声を上げてしまった。

 驚いて固まるあたしにアルビナスの、ヒステリックと言うよりは子供が苛立っているような声が続ける。

 

「私の形状が確立される直前、ハドラー様に強い印象を与えたあなたのイメージが、私に投影されたんですよ!

 それでもこれがハドラー様の好みかと思って、抱き上げてくださるあの方の腕に身を委ねた瞬間、『なんか違う』って言われた私の気持ちが、あなたにわかりますか!?

 私だって嫌ですよこんなちんちくりんな身体!!」

「…よさんか、アルビナス。

 そこはもう、言っても仕方のない事であろう」

 そこまで叫んだあたりで、馬の顔をした騎士(ナイト)が宥めるようにその身体を抱き上げる。

 最後のあたりは既に涙声になっていたあたり、多分だが形状に微妙に精神(なかみ)が引っ張られてるぽい。

 そこら辺は原作も一緒で、自分では駒に性別なんてないと言っていたものの、知らず知らず精神が女性側に寄っていってたし。

 …つか、なんかほんとゴメン。

 あたしは悪くないと思うが、ちょっと心の中で謝ってしまう。

 てゆーか、そんな事言ったんだハドラー。

 なんか違うって何だよなんか違うって。

 

「ん…ゴホン。オレの顔は忘れちゃいまい?

 親衛騎団の兵士(ポーン)・ヒムだ!!」

「私は戦場を駆ける疾風の騎士(ナイト)・シグマ!

 ……以後、お見知り置きを…!」

「我が名はフェンブレン!!!

 親衛騎団の僧正(ビショップ)にして、完全無欠の狩人…そしてそちらにおられるリリィ母上の、血を分けた子でも…」

「ないわ!!」

 そして、まるで今のことがなかったかのように、ヒムがドヤ顔で名乗りを上げたのを皮切りに、他の駒たちもそれに続いた。

 しかしフェンブレンが最後に余計なこと言おうとしたのでとりあえずつっこんどく。

 てゆーかダイ本人以外の勇者パーティーの皆様、「あれか!」みたいな事言いながらあたしとアイツを交互に見るのやめれ!

 と、何か大きなものの足音のような重い音と、地響きが突如起きて、全員が身構える。

 

「…そして、もう一人…!!」

 シグマの腕から下ろされ、平静を取り戻したらしいアルビナスが、徐々に近づいて来る轟音の方向に視線を向けて、それに誘われるように皆がそちらに目をやった。

 最初に見えたのは大きな船だった。

 確かここでは、各国の強豪たちを死の大地へと運ぶ為の船をベンガーナ出資で作っていた筈だから、恐らくはその船なのだろうと思うが、これは輸送や移動の域を超えた、軍艦ではないかという気がする。

 ああ、なるほどあのちょいワル系な王様のセンスか。

 自国の王に対して言うのもアレだが、あのひとの感覚も若干厨二臭いかもしれない。

 それはさておき、その軍艦ちっくな船が周囲の建物をなぎ倒しながら、地響きを立てて進んでくる…ように見えた。

 だが建物の陰から、その船の底がようやく現れた時、全員の目が驚愕に見開かれた。

 船の底を片腕で支えた金属戦士が、その重量をなんの苦にする事もなく、悠々と歩を進めて来る。

 

「…彼の名は城兵(ルック)・ブロック。

 残念ながら言葉を喋れないので、私が代わって紹介いたします」

 …そこまで聞いたところで、さっきから自動展開していた『みる』が、あの船に積載された余計な設備を教えてくれると同時に、この後何が起こるか思い出したあたしは、ガルーダさんの羽根をむんずと掴んで、その背に登りながら声をかけた。

 

「少し離れよう、ガルーダさん!

 あたし達、ここに居たら危ない!!」

「クワッ?」

 ガルーダさんは訝しみながらも、己が主人に守れと命令されたあたしの言葉に従って、すぐにその場から飛び立ってくれた。

 

「おいブロック!

 その船は、人間たちの大事な物だそうだ。

 返してやりなっ!!」

「ブローム」

 ヒムの言葉に、不思議な言葉で返事をしながら、船を担いでいた城兵(ルック)が、ごく軽い動作でそれを()()()()()

 それは勇者たちの頭上を通り越して、周囲の建物を粉々に砕き、更にそれ自身もその衝撃で破壊されて、周囲に破片と石塊が降り注ぐ。

 更に見た目からして軍艦然としていた大型船が搭載していた大砲の、砲弾の火薬に火がつき、爆発による火柱が、それが落下した周囲で次々と発生した。

 少し離れたところまで飛んで避難してきていたあたしたちの方にも、その爆風は届いてくる。

 

「助かったぁ…間一髪」

「クワァ…」

 あたし達は難を逃れ、あと少なくとも勇者パーティーは無事の筈だ。多分。

 

 ☆☆☆

 

 積載していた火薬に火がついたベンガーナ製の超豪華大型船は、あっという間に大破して炎上し、周囲に爆発の連鎖を起こしている。

 負傷して倒れていた者たちは受け身も取れずに吹き飛ばされて、その身にダメージを重ねられており、放置すればその命が尽きるのも時間の問題だ。

 手の届く範囲内にいる者にホイミをかけ、体力の回復だけ先にしておく。

 わたしやヒュンケルは装備のお陰でここに平然と立っていられ、またパプニカの法術で編まれた布地の服を身につけているダイやポップも特にダメージは受けないようだが、クロコダインやマァムには若干堪えるようなので、2人とついでにダイが一生懸命その身で庇っているノヴァにも、個々に薄皮フバーハを纏わせた。

 それから、インパスを唱えて周囲の状況を確認する。

 あの金属人形どもは、元いた地点から一歩も動いてはいないようだ。

 この炎に乗じて攻撃をしてこられたら厄介だと思ったが、これはこれで舐められてる気がしてならない。

 

「くそっ!!よくもみんなの船を!!!」

「…しかもバカ笑いしてるし。ムカつく」

「……いや!船はやられちまったが、こいつは逆にチャンスだ!!」

 言うや、ポップは立ち上がると、火柱の向こうに影だけ辛うじて見える奴らの方に身体を向け、手にしていた新しい杖…これはどうやらわたしがリリィを迎えに行ってる間に、今着てる服と共にレオナ姫から渡されたものらしい…を、手放して構えをとった。

 爆発による熱風と、ポップ自身の身体から高まる魔法力が、彼の纏うマントを舞い上げる。

 

「この爆炎が、おれたちを包み隠しているうちに、おれの極大呪文で、一気にケリをつけてやるぜっ!!!!」

「極大呪文…奴らのオリハルコンの身体に、呪文ではダメージを与えられないのでしょう?」

「並の呪文ならな!こいつは別さっ!!

 何せ、大魔道士マトリフ直伝、最強にして最恐の切り札だ!!!」

 ポップはそう言うと、構えた両掌の上に、左右で異なる魔法力を集中し始めた。

 否……一見異なるように見えるが、それはエネルギーのベクトルが逆であるだけで、基本は同じ質のものだ。

 けど、楽器などの演奏者が左右の手で違う動きをする為には訓練が必要であるように、真逆の方向性のエネルギーを同時に操るなんて、地味に高等技術よコレ!!

 一見ひ弱なこの少年が、既に並の魔法使いではない事を、この時点でわたしは実感したが、そんなものが序の口である事を知るのは、もう少し後の話になる。

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